統合型貫入試験による河川堤防土質モデル構築に関する基礎

第 49 回地盤工学研究発表会
108
C - 03 (北九州) 2014 年 7 月
統合型貫入試験による河川堤防土質モデル構築に関する基礎的研究
統合型貫入試験
三成分コーン
堤防
京都大学大学院
学生会員
京都大学大学院
国際会員
三村
衛
(株)ソイルアンドロックエンジニアリング
国際会員
吉村
貢
地域環境地盤研究所
国際会員
1. はじめに
○宮下
隆太郎
岩崎
好規
川周辺の治水地形分類図である.治水地形分類図より旧河
近年,大型台風や局地的集中豪雨に伴って河川水位が上
道跡が存在する三川合流から上流右岸堤防 3.85~4.0km に
昇し,越流や堤体内部への浸透に起因する堤防の被害が増
着目し,調査範囲を同右岸堤防 3.6km~4.2km とした.
大している.そのため,河川堤防の安全性検討に向けて今
まで以上に堤体の質的整備の重要性が高まっている.本稿
では,京都府下木津川堤防を試験サイトとし,電気探査と
統合型貫入試験によって得られた結果を活用した堤防の
断面土質モデルの構築法について報告する.具体的には,
堤内浸透等土水連成作用による堤防の不安定化を念頭に
置き,原位置試験によってその構造的要因となる堤防断面
の地盤性状を精度良くかつ効率的に推定する手法の確立
を目指した.一連の研究の特長は,堤体断面の土質区分を
明確に示すことによって堤防の構造を的確に把握し,防災
図 1 治水地形分類図(平成 19 年)
対策に寄与しうる有用な情報を提供できることにある.
2.
3. 統合型貫入試験の概要
調査方法
統合型貫入試験とは,既往の電気式静的コーンの背部に
本研究では以下の手順で調査を行った.
ガンマ線源,中性子線源を配置した RI コーン貫入試験に
①治水地形分類図よる旧河道の位置の特定
よる地盤調査である.RI コーンは電気式静的コーン貫入
②既存堤防地盤調査によるボーリング結果,堤防断面情報
試験から得られる,先端抵抗,周面摩擦,間隙水圧に加え,
の結果収集
ガンマ線源を有する密度計コーンは湿潤密度を,中性子線
③想定される危険な堤防位置の特定
源を有する水分計コーンは体積含水率を測定することが
④現地踏査による調査実施可能性検討と調査位置の選定
できる.本研究で使用した装置は 2 軸傾斜計と温度センサ
⑤牽引式電気比抵抗探査による縦断側への電気探査
ーも組み込んでいるため,鉛直貫入の確保と温度補正によ
⑥縦断断面の電気比抵抗分布とボーリング調査結果から
り測定結果の信頼性向上が図られている 1).
横断探査測線を決定
4. 統合型貫入試験の実施結果
⑦統合型貫入試験の実施
図 2 に木津川右岸 3.8km 地点天端川表側の統合型貫入試
⑧多点電磁探査の実施
験の結果を示す.深度 0~2m では,先端抵抗,周面摩擦が
⑨統合型貫入試験結果の解析より,砂質土,中間土,粘性
大きいことから砂質土,深度 10.4~15.0m では先端抵抗,
土層の境界と境界相当電気比抵抗値を求める.
周面摩擦が小さく,間隙水圧が静水圧よりも大きい正の過
砂礫層で形成された旧河道と堤体との交点では,河川水
剰間隙水圧を示していることから粘性土と判断できる.深
位が高まれば砂礫層の間隙水圧も上昇するため,噴砂やボ
度 8.9~9.2m の区間は含水比と間隙比がきわめて大きな値
イリングが生じやすい.こうした観点から調査対象範囲は
を示していることと,河川敷レベルにあることから,緩い
木津川旧河道と堤体の交点を含む領域とした.図 1 は木津
砂層で,パイピングの痕跡かと思われたが,先端抵抗,周
Ryutaro MIYASHITA, Kyoto University
Mamoru MIMURA, Kyoto University
Mitsugu YOSHIMURA, Soil and Rock Engineering Co.,Ltd.
Yoshinori IWASAKI, Geo-Research Institute
Development of soil profile model for levee based on RI-CPT
215
面摩擦が有意に大きいことから,これらは高有機質土であ
6. 河川堤防断面土質モデルの構築
ると判断した.
湿潤密度 ρt 乾燥密度 ρd
(g/cm3)
BG(cps)
0 100200300 0.0
0
2
2
4
4
地盤深度 GL.-(m)
地盤深度 G.L. - (m)
0
6
6
8
8
10
10
12
12
14
14
16
16
0.4
0.8
1.2
統合型貫入試験は 1 断面につき 5 点実施したため,1 断
先端 周面
飽和度
含水比
間隙比 飽和度
(%)
(%)
抵抗 摩擦 間隙水圧
含水量 ρm
1.6
2.0
含水比 w
2.4
0
50
100 150 0
間隙比 e
1
2
0
40
80
周面摩擦
fs (kPa)
先端抵抗
qt (MPa)
Sr
3
120 0 5 10 15 20 25
0
100
間隙水圧
u (kPa)
逆算α
200 -100 0 100 200 300 400 0
面につき 5 本の柱状図が得られた.図 4 は統合型貫入試験
によって得られた柱状図から木津川右岸 3.8km 地点の堤
防断面図を描いたものである.
同じようにして木津川右岸 4.0km,4.2km 地点の断面図
も得られるため,それらを堤体縦断方向に並べた結果が図
5 である.図 5 より,木津川右岸 4.0km~4.2km は縦断方
向に連続しており 3.8km では堤体の土質構造が大きく変
砂
粘性土
中間土
高有機質土
貫入
引揚
間隙水圧
貫入時
引上げ時
18
柱状図
0.1 0.2
静水圧
18
わっていることが分かる.
11
OP +20.00m
図 2 木津川右岸 3.8km 地点天端川表側の
OP +15.00m
統合型貫入試験結果
OP +10.00m
木
津
川
5. 土質分類指数による土質分類
OP +5.00m
三成分コーン貫入試験によって得られた先端抵抗 Qt ,周
OP 0.00m
面摩擦 Fr より,土質分類指数 I c を求め,土質分類を行っ
OP -5.00m
砂
粘性土
中間土
高有機質土
た.土質分類指数 I c は以下の式(1)で求められ,表 1 から
I c の値によって土質分類が可能である 2).図 3 は木津川
図 4 木津川右岸 3.8km 地点の断面図
右岸 3.8km 堤内側小段(上段)の土質分類指数を用いて土
質分類を行った結果である.
Ic  {(3.47  logQt )2  (logFr  1.22)2}0.5
(1)
表 1 土質分類指数 I c による土質分類
4.2km
Ic
土質分類
1.31以下
礫質土
1.31~2.05
砂~シルト質土
2.05~2.60 シルト質砂~砂質シルト
2.60~2.95 砂質シルト~シルト質粘土
2.95~3.60
シルト質粘土~粘土
3.60以上
有機質土
Ic
0.00
0.50
1.00
1.50
2.00
4.0km
3.8km
砂
粘性土
中間土
高有機質土
図 5 木津川右岸 3.8~4.2km における
堤防断面のパネル表示
7. まとめ
2.50
3.00
3.50
4.00
本研究では堤防断面モデルの効率的な構築法の開発を
0.00
1.00
行った.その工程の一部である統合型貫入試験によって得
2.00
3.00
られた地盤特性より砂質土,中間土,粘性土の境界位置を
4.00
特定し,柱状図を描くことができた.また,土質分類指数
5.00
(
深
度 6.00
m
)
を用いても土質分類が可能である.土質分類によって描い
7.00
8.00
た柱状図を地点ごとに並べることで堤防の断面の土質モ
9.00
デルが得られた.
10.00
11.00
12.00
参考文献
砂
砂質土
中間土
粘性土
粘性土
中間土
1) 三村衛,吉村貢:土木学会論文集,2007
2) Jefferies M.G. and Davis, M.P., “Use of CPTu to Estimate
Equivalent SPT N60, ”Geotechnical Testing Journal, Vol.16,
図 3 木津川右岸 3.8km 堤内側小段(上段)の
No.4, December 1993, ppp 458-468
土質分類指数 I c による土質分類
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