1 実需者と生産者の連携による特色ある豆腐の開発

新
技
術
情
報
¥食07-01
実需者と生産者の連携による特色ある豆腐の開発
農林総合研究センター(食品加工担当)
キーワード:だいず、加工利用、官能評価、製品開発
1
技術の特徴
埼玉県農林総合研究センターでは県内の大豆在来種28種を始め、51種の在来種を保存してきたが、
これまで加工利用面からの検討はなされていなかった。そこで、豆腐加工への利用を図るため、在来
種の食味に関する要因を解明するとともに、豆腐製造業者・大豆生産者と連携し、豆腐・豆乳の官能
評価を行い、特色ある豆腐を開発した。
2
技術内容
(1)
豆腐製造業者、大豆生産者、関係機関等により大豆在来種を原料として製造した豆腐11種及
び豆乳16種について評価した。その結果、豆腐では、「白光」、「行田在来」、「武甲豆」の
評価が高く(表1)、豆乳では、「白光」、「武甲豆」、「行田在来」、「旭」、「春日部在来
2」、「借金なし」、「茶豆(妻沼産)」の評価が高かった(表2)。豆腐製造業者からは、
「白光」、「行田在来」、「箕田在来」、「借金なし」が豆腐加工用大豆として有望と選定され
た。
(2)
豆乳官能評価で評価の高かった在来13種の糖含量を分析した。大豆が含有する糖は主にショ糖
で、ショ糖含量は、「借金なし」、「花園在来莢褐豆緑」、「茶豆(妻沼産)」で高く(図2)、
ショ糖含量は、豆腐の官能評価の甘み、こくと1%の正の相関があった(表3)。
(3)
在来種「行田在来」と一般栽培品種「タチナガハ」を使用し、県内豆腐製造業者の加工場にお
いて豆腐の製造実証を行った。原料大豆10kgに対し、それぞれ木綿豆腐80丁(300g)、寄せ豆腐10
0丁(300g)が製造され、製品の歩留まりに差はなかった。豆乳のBrixは「行田在来」が「タチナ
ガハ」に比べ木綿豆腐と寄せ豆腐の場合とも約2%高く、豆腐破断強度は木綿豆腐で「行田在
来」が「タチナガハ」に比べ低かった(表4)。
豆腐加工適性評価、豆腐・豆乳官能評価、豆腐業者における豆腐の製造実証試験の結果をもとに、
豆腐業者・大豆生産者と連携し、大豆生産から豆腐加工までのルートづくりを行い、「行田在来」、
「白光」、「箕田在来」を原料とした特色あるの豆腐が製品化され、販売された(写真)。
3
具体的データ
表1 豆腐11種の官能評価結果
外見 青臭味 甘味
3.7
2.5
3.6
3.7
2.4
3.1
3.8
2.7
3.1
3.4
3.2
3.4
3.7
3.0
3.8
2.6
3.5
4.0
3.7
2.6
2.9
3.9
2.6
3.1
3.7
3.1
3.5
3.7
3.1
3.4
3.8
2.9
2.9
こく
3.5
3.0
3.0
3.5
3.9
4.0
2.9
3.2
3.4
3.3
3.0
えぐ味
2.2
2.1
2.0
2.4
2.3
2.4
2.4
2.3
1.7
1.8
1.9
硬さ おいしさ
2.9
5
2.8
3
2.6
3
2.8
5
3.5
4
3.3
4
2.9
3
3.1
3
2.7
5
3.1
4
2.6
3
6
ショ糖(%)
評価事項
白光
秩父在来
箕田在来
行田在来
借金なし
茶豆(妻沼産)
白花埼1号
鬼裸埼1号
武甲豆
花園在来黒目
赤豆
8
4
2
0
花
) 2
し
旭 来 来 来 来 号 ハ
な 豆緑 産 来 甲 豆 在 来 光
在 在 在 在 1 ガ
沼 在 武 田 白
金
森 瀞 田 父 埼 ナ
借 莢褐 ( 妻 部
行
影 長 箕 秩 白花 タ チ
日
来 豆
在 茶 春
園
図2 良食味大豆のショ糖含量
表3
表2 豆乳16種の官能評価結果
評価事項
白光
武甲豆
秩父在来
影森在来
鬼裸埼1号
白花埼1号
箕田在来
行田在来
長瀞在来
平豆
旭
春日部在来2
借金なし
茶豆(妻沼産)
花園在来莢褐豆緑
こさ豆
青臭味
2.6
2.9
2.7
2.8
3.0
2.9
3.4
3.6
2.9
2.7
2.7
2.9
3.1
3.0
2.8
3.4
甘味
3.4
3.4
2.7
3.1
2.8
2.8
3.0
3.4
3.0
2.6
3.3
3.5
3.9
3.7
3.4
3.0
こく
3.2
3.1
3.0
3.2
3.0
3.1
3.3
3.4
3.1
2.7
3.5
4.6
3.8
3.6
3.3
2.9
ショ糖含量と豆腐官能評価間
の相関(n=8)
えぐ味 粘性 おいしさ
2.5
2.9
4
2.5
2.9
4
2.6
3.2
3
2.9
3.4
3
3.2
2.9
2
2.9
3.2
3
3.0
3.3
3,4
3.1
3.1
4
2.9
3.3
3
2.8
2.7
3
2.7
3.6
4
2.9
3.4
4
2.7
3.1
4
2.8
3.2
4
2.7
3.3
3
3.0
3.1
2,3
ショ糖
甘 味
**
0.91
こ く
**
0.95
**
有意水準: 1%
表1及び表2
注1)5:感じる 4:やや感じる 3:ふつう 2:ほとんど感じない 1:感じない
注2)パネラー数55人(実需者、生産者、行政機関等)
表4
豆腐製造実証結果
豆腐数 豆乳Bx 豆腐破断強度
4
(丁)
(%)
(gf)
行田在来 木綿(300g)
80
13.4
63
寄せ(300g)
100
10.6
37
タチナガハ 木綿(300g)
80
12.6
115
寄せ(300g)
100
10.6
30
写真
製品化された在来種の豆腐
注1)大豆10kg使用、浸漬時間一晩、
凝固剤;大島産にがり
注2)豆腐破断強度測定条件
プランジャー径10㎜、試験速度6cm/分
適用地域
県内大豆生産地及び豆腐製造業者
5
普及指導上の留意点
在来種の生産については豆腐製造業者との契約栽培が基本となる。
6
試験課題名(試験期間)、担当
実需者・生産者連携による特色ある豆腐の開発と大豆生産(2005~2007)、食品加工担当