平成 26 年度 奈良県租税教育推進連絡協議会長賞 税を思う 広陵町立

平成 27 年度
奈良県租税教育推進連絡協議会長賞
文化財と税金
奈良育英中学校
三年
髙間
匠
先日、幻の伏見城とも呼ばれ、その存在さえも文献にしか登場しないため実
在が疑われていた「指月城」の発掘現場説明会が行われました。あいにく僕は
土曜登校日にあたっていたため残念ながら見学に行くことができませんでした
が、幸いにもそれに参加された方のお話を伺う機会がありました。
お伺いした話のなかで興味深かったことのひとつに、マンション建設地だっ
たために一部の遺構を重機で破壊してしまったことにより、今まで解明されて
いなかった石垣の深いところでの構造をつぶさに調査できたということがあり
ます。この研究により、高速道路などの法面への石垣構造の応用にもつながる
可能性が広がるのではないかとおっしゃられていました。と、いうのも、新名
神高速道路の法面の一部には石垣構造が試験的に用いられており、土盛法面よ
りも頑丈であることとコンクリート等で法面を固めるよりもはるかに災害に強
い可能性が高いことが期待されて採用されたそうです。歴史に学ぶことによっ
てよりよいものを作り出すことができる可能性が広がるということは、まさに
先人の知恵に学ぶということだと思います。
時々、
「文化財なんぞに税金を投入するなどもってのほか。困っている人に税
金を使うべきだ!」という意見も耳にします。確かにそれは正しいことだとは
思いますが、未来の人々へ先人の知恵というバトンを渡すことが文化財保護・
研究の役目であるならば、長い目で見れば人々の役にたっていることがわかり
ます。例えば、今回の「指月城」石垣の研究が進むことによって、その先人の
知恵から地震国である日本の道路法面や河川の堤防に石垣構造を加えることで
災害に強い社会を実現することができます。またその技術を輸出することで世
界の人々が助かります。
こういったことを実現できるのも、これらの調査・研究に対して税金から補
助金等が支給されるからではないのでしょうか。歴史上に名前を残した人もそ
うでない人も、いま僕たちが暮らす社会を連綿と築いてきた人たちであり、そ
の人々が残したものを調査研究することによって僕らの生活に活かせ、さらに
未来の人々へつないでいくことができるのならば、これほど素晴らしいことは
ないと思います。だからこそ、比較的短期での結果を求められる民間に対して、
「国家百年の計」という言葉もあるように、国家・社会を育てるという、比較
的長期間にしか結果の出ないところに税金が遣われることの大切さを忘れない
でほしいと僕は考えます。