GENERAL LECTURE - BSC Japan 矯正歯科研究会

GENERAL LECTURE (一般口演)
鈴木 善雄
第2日
9:00∼9:40
静岡 凌雲堂矯正歯科医院
細川 淳子、鈴木 智子、大迫 淳、広瀬 豊
■ 略歴
1973年
1980年
1990 年
2005年
2008年
大阪歯科大学卒業
岐阜歯科大学 歯科矯正学講座助手
凌雲堂矯正歯科医院(浜松市)開設
岐阜歯科大学 歯科矯正学講座非常勤講師(∼ 2004 年)
日本矯正歯科学会 認定医、指導医
朝日大学歯学部 補綴学講座非常勤講師
朝日大学歯学部 客員教授
成長期の矯正治療の意義(早期治療で咬合・咀嚼機能が改善された上顎前突症例)
【目的】
成長期に来院する子供の多くは、習慣性口呼吸のため、舌が挙上不足になり、低位舌、舌突出癖など
の問題を抱えている。 その結果、上下顎歯列の狭窄、口腔容積の減少、舌運動の制限、難食化がおこり、
合や咀嚼機能の低下を招くと考えている。 そしてこのような機能の問題を客観的に評価するため、数
年前からセファロの評価と共に口腔機能検査を行ってきた。 今回、口腔機能検査において改善の見られ
た上顎前突症例を通して、成長期の矯正治療の意義を考察したい。
【資料と方法】
症例は Angle Class Ⅱ div.1. 上下顎歯列の狭窄を伴う下顎遠心 合の9歳女子。 New Orthopedic
Positioner( NOP )を用いて早期治療を行った。 口唇閉鎖力の測定には LIP DE CUM(コスモ計器製)、
咀嚼能率の測定には市販のグミ(ノーベル製菓:2700㎣)を用いた。気道の評価はセファロを用いて面
積を計測した。 成長期の治療には、下顎の成長のピークや成長の終了の時期を特定する必要があるため、
手根骨 X 線を用いて骨年齢を評価した。(ライズ社製 CASMAS)
【結果と考察】
治療期間は 2 年 10 ヶ月。 使用した装置は一個であった。 口唇閉鎖力は 5.1N から 10.5N に増加し、グ
ミを用いた咀嚼能率は 1432㎣(最大片の体積)から 178㎣に向上した。 下顎が成長促進されオーバージェッ
トが減少したことにより、気道面積が拡大し、口唇閉鎖力が増加した。 上下顎歯列は、計画通り整直拡
大され、舌房の容積が確保されたことにより、舌の挙上が促進され舌機能が向上し咀嚼能率が改善した
と考えられる。 また、治療終了時には、35μ(株式会社 GC)と 10μ(山八歯材工業)の 合紙を用いて
合接触の確認をした。 なおこの症例は、口腔機能訓練は行っていない。
【結論】
成長期の矯正治療の目的は、成長発育期における子供の機能回復にあると考えている。 今回早期治療
を行うことで、 合および咀嚼機能の改善が確認でき、患者の健康増進に寄与したと考える。 また、口
腔機能検査を行うことで、 合および咀嚼機能の改善が客観的に確認できた。 客観的な評価は、成長期
の矯正治療の意義をより明確にすることができると考える。
16
第2日
GENERAL LECTURE (一般口演)
新藤 勝之
■ 略歴
1985年
1988年
同年
2015年
9:00∼9:40
東京 まちの歯ならびクリニック
日本歯科大学卒業
東京歯科大学矯正歯科学教室卒後研修過程終了
新藤矯正歯科クリニック開院
診療所を移転「まちの歯ならびクリニック」へ
K18(5/5)リンガルアーチを例にした、アンカレッジの階層的とらえ方
【緒言及び目的】
R. M. Ricketts は、矯正歯科処置におけるアンカレッジを、
「間質液の動態、歯根膜、歯槽硬線、海面骨、
皮質骨、筋肉、成長」の 7 種の階層に分け、これらを踏まえて個体別にメカニクスを構築することの重
要性を説いた。
そこで演者は上記の階層概念に照らして、高い粘り性を発揮する K18(5/5)の丸線をバンド鑞着型リ
ンガルアーチの主線に採用し、下顎第一大臼歯あるいは第二乳臼歯(以下「固定歯」)の歯根を皮質骨中
に固定してアンカレッジを強化する術式への応用を試み、その効果の有無ならびに階層概念そのものの
有用性を検討した。
【資料】
2009 年から 2013 年に本装置を用いた、種々のタイプの不正
齢 5 歳から 49 歳。
合患者 223 名(男 84 名、女 139 名)。年
【方法】
固定歯にリンガルアーチを装着し、その移動量ついて術前、術中、あるいは術後の側貌セファログラ
ムの重ね合わせによる評価を行った。K 1(
8 5/ 5)の丸線の直径は、0.8mm、0.85mm、0.9mm、1.0mm であった。
【結果】
(1)小臼歯抜歯症例では比較的簡素なメカニクスにて固定歯の近心移動が概ね防止され、
(2)Ⅱ級ゴムの使用や下顎前歯の圧下移動に際しては固定歯の 出が回避され、
(3)成長期中の患者おいては Facial axis の保全または閉鎖が確認された。
【結論及び考察】
矯正歯科臨床には、頭頸部の解剖学的な構造関係のほか、呼吸・咀嚼・嚥下といった機能の生理性も
複雑に関わる。そのような中、アンカレッジを階層的にとらえ、さらにそれを治療計画の立案や具体的
処置の明確化に援用する方法は、少なくとも 223 名のリンガルアーチのアンカレッジについて有効かつ
実践的であると判断された。
17