SAP for Retail Solutions デジタル化された小売環境における マーケティングとマーチャンダイジング Retail Systems Research 社へのインタビュー デジタル化された小売環境におけるマーケティングとマーチャンダイジング デジタル化の影響は今や世界中の企業全体に広く及んでおり、 マーケティング担当の幹部には、 売上成長から、顧客期待値の管理、広告宣伝の有効性まで、あらゆる領域の意思決定に対する 説明責任が強く求められています。 その一方で、 マーケティング担当幹部たちが自社の商品選定や価格設定、業務の有効性に 関して、 マージンの観点からマーチャンダイジング担当幹部と責任を共有しているかどうかは、 疑問の残るところです。 こうしたトピックについて業界のさまざまなお客様と意見交換を行ってきており、 SAPでは、 小売業が従来よりも遥かに深いレベルで顧客の理解とエンゲージメントを行おうとする際に 直面する課題や機会について、幅広いフィードバックをいただいております。 今日のマーケティング担当幹部には、ITランドスケープと、 それを活用して多岐にわたる 目標を達成する方法について、深く理解していることが求められています。 SAP Retailソリューション担当グローバルシニアディレクターである ポール・ドノバン (Paul Donovan) は、最近、Retail Systems Research(RSR) 社の マネージングパートナーであるポーラ・ローゼンブルム (Paula Rosenblum) 氏に インタビューする機会を得ました。そして、上記のような課題と小売業界における取り組みの 現状について、世界中の小売リーダー企業に取材をされている同氏ならではの見解を 伺うことができました。この文書ではインタビュー内容の一部をご紹介します。 ポール・ドノバン ポーラ・ローゼンブルム SAP Retail ソリューション担当 Retail Systems Research(RSR)社 グローバルシニアディレクター マネージングパートナー © 2015 SAP SE or an SAP affiliate company. All rights reserved. 2/6 デジタル化された小売環境におけるマーケティングとマーチャンダイジング Retail Systems Research 社へのインタビュー ポール:小売業は自社のデジタル活動を消費者の購買行動 につなげるために、どのようなアプローチを取るようになって いるのでしょうか ? ポール:小売業において、品 え、プロモーションなどマー チャンダイジング・オペレーション業務領域の計画に「顧客」 という要素(次元) を取り入れることが、現在のように難しくなっ てしまった理由は何だとお考えですか ? ポーラ氏:顧客の再ターゲッティングが最もコストのかから ないアプローチであることは間違いありません。顧客にとって ポーラ氏:品 を高めるのは明らかです。とはいえ、再ターゲッ 回収率(ROI) れは計画「キューブ」と呼ばれます。 は大きな迷惑というところですが、実際に機能し、企業の投資 (残念ながら ティングは短期的な ROI には効果がありますが、 えやマーチャンダイジングに関する従来の計 画は、商品、場所、時間という 3 つの次元から構成されます。こ 顧客文脈での) 「気味悪さ」感を強める副作用も正直あります。 このキューブを利用することで、マーチャンダイジング担当者 買い物客は常に監視されていると感じ、個人情報保護につい やマーケティング担当者は季節が変わっても、手持ちの仕入 ります。 らくスプレッドシートを使って行われてきましたが、 この方法で より先進的な小売業は、Amazon.com がやっているような (詳細の表示が省略) され のうち 1 つは実質的にロールアップ ての懸念も生じるため、将来の取り組みを阻害する恐れがあ れ予算を失わずに済みます。こうした 3 次元の計画策定は長 は、2 次元の画面で操作できるようにするために、3 つの次元 「お客様が購入された商品を購入された他のお客様は、こち ます。例えば、計画担当者がカテゴリー別の売上高を時間軸 らの商品も購入しています」といったレコメンデーションを、 に沿って検討したい場合、場所に関する詳細情報を見ること 電子メールや自社の Web サイトで提供しようとしています。そ ができません。あるいは、 場所を時間軸に従い検討したい場合、 こにインセンティブやプロモーション・オファーなどを追加し、 商品の詳細情報を見ることができません。 コミュニケーションの価値がさらに高まります。 第 4 の次元として顧客データを追加することは、コンピュー ただし、小売業が消費者の購買行動 / 経路をチャネル横断で ティングテクノロジー上は何ら問題ありません。そうした(4 次 ラインで追跡するのは簡単です。消費者を店舗内で追跡する 違いなく存在していますから、むしろユーザーインターフェー 追跡しようとすると、大きな壁に突き当たります。消費者をオン のも、高額なコストがかかるかもしれませんが、不可能ではあ りません。しかし、チャネル間を自在に飛び回る消費者を追跡 元以上の) データ処理をこなすハードウェアテクノロジーは間 スの問題なのです。 (スプレッドシートを使う限りは、3 次元の) 計画キューブを使う場合でさえ、 どれか 1 つの次元を省略する するのは、現時点ではほぼ不可能です。店舗でのみ利用でき しかないのですから。とは言え、4 次元のモデルを合理的に閲 除けば、消費者が店舗に向かった時点で追跡はできなくなり 界ではここ数年、 この問題を克服できない状況が続いた結果、 るオファー(割引クーポンなど)をオンラインで提供した場合を ます。消費者自身には Web のように追跡するための cookie 覧できる効率のよい方法など、存在するのでしょうか ? 小売業 多くの小売業が諦めてしまったように思われます。 が内蔵されているわけではありませんから。 © 2015 SAP SE or an SAP affiliate company. All rights reserved. 3/6 デジタル化された小売環境におけるマーケティングとマーチャンダイジング ポール:現在のマーケティング担当者には明確な、つまり定 量的な ROI を示すことが求められており、その説明責任は高 ポール:ほとんどの調査では、多くの小売業が顧客分析機能 を社内で独自に構築したいと回答しますが、小売業界では顧 まっていますが、その達成に向け、どのような取り組みが行わ 客分析のアウトソーシングが大きく成長しているというデータ れているのでしょうか ? もあります。こうした矛盾する動きが見られるのはなぜでしょ うか ? ポーラ氏:マーケティング投資の ROI を定量化する手段とし ては、 より詳細な分析が行える高度なアナリティクスの導入が ポーラ氏:業務部門の幹部たちは IT 部門の対応の遅さにシ 進んでいます。いくつかの点において、デジタルマーケティン ビレを切らし、 自分で物事を進めるしかないと考えるようになっ は比較にならないほど大きくなっています。結局のところ、 スー かったツケで、IT 部門の立場は弱まっています。IT 部門が「配 グに対するプレッシャーは、従来型のマーケティングの場合と パーボウル(米国のプロアメリカンフットボールリーグ NFL たのだと思います。何年にもわたり十分な投資を行ってこな 管」 (=基盤の統合)に手間取っている間に、ほかの業務部門 の優勝決定戦)のスポンサー広告のハード ROI を定量化した は IT 部門の感知しないところで独自のプロジェクトに資金を いた広告を打ち、 ブランド認知度を高めさえすれば、最終的に であり、独自のアナリティクス担当部署を設け、独自のツール は売上が伸びる」という前提に立っているにすぎないのです。 で広告主をサポートしている例も少なくありません。 話など聞いたことがありません。 「膨大な資金を投じて気の利 投じているのです。こうした動きが特に目立つのは広告部門 小売業は、いわゆる「カスタマージャーニー」の把握にも取り ここで指摘しておきたいのは、こうしたプロジェクト (とりわけ 組んでいます。自社の顧客についてのジャーニーを把握でき れば、個々のディスプレー広告(バナー広告)の ROI を正確に 測定することは無理だとしても、少なくとも、購買経路に沿って (顧客の背中を押す上での) ディスプレー広告が果たす役割を 特定することは可能になります。 デジタルマーケティングの場合、以前とは比べものにならな いほど豊富なデータが得られるため、ROI を過信し、あらゆる ものに ROI を要求する傾向があります。しかし、多くの小売業 は、デジタルマーケティングが二次的な行動にどれほどの影 響を及ぼしたかを把握する方法を、深く理解しているわけで 顧客データ分析)は、小売業がそのデータを別の業務プロセ スへのインプットとして活用したいと考えない限り、 アウトソー シングでも何ら問題がないということです。そのような活用が 必要になったときに、あらためて IT 部門に支援を求めればよ いのです。ただし、最初から IT 部門と協力していた場合と比 べると、 コストはかさむことになります。 (業務部門が独自の IT また、IT ガバナンスの問題もあります。 プロジェクトを積極的に認める)企業は、すべての業務部門の 経営幹部レベルの代表者から構成される IT 運営委員会を設 ける必要があるでしょう。この運営委員会は、IT 予算総額の は計測できます。 しかし、 観点から、企業全体の IT プロジェクトの優先順位を設定する はありません。確かにクリック率 (CTR) 同じオンライン広告を見たものの、 クリックはせずに店舗に直 行した人々については、どうするのでしょうか ? こうした二次 的な効果を、 「直接計測できないから」という理由だけで無視 するのは危険です。 役割を担います。ただし、ビジネスとテクノロジーの両方に精 通している CIO が存在し、プロジェクトの優先順位設定や進 の迅速化を支援できることが、この IT ガバナンス体制の大 「独自システムの開発にこだわる」と 前提です。また CIO は、 いった IT 部門に対する従来の偏見を打ち破り、会社のテクノ ロジーバックボーンに容易に統合できるパッケージソリュー ションにも目を向けなければなりません。 © 2015 SAP SE or an SAP affiliate company. All rights reserved. 4/6 デジタル化された小売環境におけるマーケティングとマーチャンダイジング ポール:デジタル領域とアナログ領域の両方に渡り、マーケ ブランドの全商品が売り切れることは、想定の範囲内でした。 ティング部門とマーチャンダイジング部門の業務が効果的に もともと短期集中の売り尽くしイベントとしての企画だったか 連携している事例をご存じでしょうか ? また、これを成功させ るために企業が行うべき取り組みについて、 アドバイスがあれ ば教えていただけますか ? ポーラ氏:残念ながら現時点では、 マーケティング部門とマー チャンダイジング部門が強固な業務連携を確立している事例 らです。しかし、 プロモーションが生み出した消費者行動から 店舗が何の利益も得られないというのは、明らかに想定外の 結果です。店舗内での接客を通して追加販売につなげること を狙った「目玉商品」の在庫が無くなってしまったため、追加 での販売が一切発生しませんでした。プロモーションを見て 来店した客は、そのブランドの商品が売り切れだと聞くと、そ は把握していません。実際、マーチャンダイジングに関する弊 のまま出口に直行したのです。 計画をサポートするためにマーケティングを連携させる」こと しかしながら、複数の小売業では、 「マーケティング部門が推 社の最新ベンチマーク調査によると、 「マーチャンダイジング を業務課題のトップ 3 にあげている回答企業は 50% を超え ており、昨年よりも増えています (昨年この項目をトップ 3 に挙 進するブランド理念(ブランドが約束する価値)に沿った商品 提供をマーチャンダイジング部門が実現できなければ、会社 。今やこの問題は、 「マーチャンダイジン げたのは 44%でした) 全体の業績が悪化する」ということを認識し始めています。ま 横断したマーチャンダイジングの複雑さを管理する」ことと同 始めている、という話も耳にします。今後 2 ∼ 3 年のうちには、 グとサプライチェーンの連動性を高める」 ことや、 「チャネルを じくらい重要だと認識されているのです。 た、マーケティング部門と IT 部門が(遅ればせながら)連携し こうした成熟化のプロセスが実を結ぶことになると、私は確信 しています。 その一方で、ぞっとするような話は実際に耳にしています。こ の事例は、 マーケティング部門とマーチャンダイジング部門の 調整がいかに複雑であり、想定外の結果がどれほどのインパ クトをもたらすかを示していると思います。 ある小売業が、映画スターを使ってファッションブランドの大々 的なプロモーションを展開し、同時に「 (ネットで購入し)店舗 から配送」の取り組みも立ち上げました。ほどなく、 このブラン ドの全商品がオンラインで完売したのですが、この企業は最 小限の店舗在庫を確保するための仕組みを用意していません でした。そのため、会社がこの事態に気づいたときには、店舗 向けの在庫もオンラインの注文に充当されてしまったのです。 © 2015 SAP SE or an SAP affiliate company. All rights reserved. 5/6 デジタル化された小売環境におけるマーケティングとマーチャンダイジング 小売事業のシンプル化 小売事業はここ数年で急激に複雑化しています。インターネッ こうしたテクノロジーを導入すれば、マーケティング担当者と ト、スマートフォン、ソーシャルメディアといったテクノロジー マーチャンダイジング担当者は、買い物客の行動と好みにつ 的な変化を遂げました。企業に自分をどのように扱ってほし ムでコラボレーションできるようになるため、パーソナライズ の進歩により、消費者が小売業や店舗と関わり合う方法は劇 いかの顧客の期待値はかつてないほど高まっており、顧客は 自分自身の運命を完全に掌握しています。 いて (以前なら想像もできなかった)洞察を獲得し、 リアルタイ された魅力的なショッピング体験を創出し、あらゆる接点や チャネルで一貫して提供することが可能になります。 SAP では、消費者主導を促したのと全く同じテクノロジーを 最新のテクノロジーを適切に活用すれば、小売業は先手先手 服し、かつてない斬新な方法で買い物客に対応できるように ことができます。ぜひ詳細をご確認ください。 活用することで、小売業は今日のデジタル世界の複雑さを克 なると、強く確信しています。 の対応を通じて、今日のつながり合った買い物客を魅了する SAP の Web サイト › でフォロー › Facebook(英語) でフォロー › Twitter(英語) © 2015 SAP SE or an SAP affiliate company. All rights reserved. 6/6 お問い合わせ先 www.sap.com/japan/contactsap/ 0120-786-727(受付時間:平日 9:00 ∼ 18:00) © 2015 SAP SE or an SAP affiliate company. 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