地域が担う子育て支援~専門職は何をすべきか

2015/6/7
今子育てで何が!
1)孤立
家族の支えのない子育て
ママ友:いいことばかりではない
地域が担う子育て支援
~専門職は何をすべきか~
2)情報過多
インターネット情報、チラシの氾濫
3)回避
子どもへの関わりを回避(どうしたら
いいのかわからない)
大正大学名誉教授
 小児科専門医
 中村
敬

4)発達への懸念
第Ⅰ部
孤立した子育て
子育て支援の視点
昼間子どもとだけ部屋にこもっているのは辛い。
子どもが騒ぐので、仕方がないから、外に連れ出す。
1)子育ての孤立を防ぐ
早く昼寝の時間にならないかと思う。子どもとの遊びにイライラが
募る。上の子は二人目が生まれたとたんに酷くなった。
2)子育てのストレス軽減
->
ひろば
ワークグループ
最近、少し、自己主張が強すぎる。思うようにならないと荒れる。
3)親のメンタルサポート
->
ひろば
乳健
叱っても仕方がないこととは知っていても叱らずにはいられない。
4)子どもへの関わりを学ぶ
怒り声が大きくなるのが自分でもわかる。
もしかしたら、虐待していると思われないかしら。
5)子どもに関する幅広い相談
わずかな時間でもいい、ちょっと、子ども
を見てくれる人いないかな。
6)児童館、子育て支援センター、子育てグループなど
自由な集まりの中での気楽な相談
-> ひろばの小児科医
夫の帰りは遅いし!!
おばあちゃん遠いし!
子育て支援がなぜ必要か
1)子どもへの関わり方がわからない。。「うちの子発達障害?」
2)子どもとだけ居るのが不安。。「ひろばに行こう」
->
->
1)
親の子育て労働の軽減
2)
母親の仕事と子育ての
両立
3)
子どもの発達支援(療育)
子どもの社会性の醸成
4)
親の息抜き(レスパイト)
子どもから離れる時間
5)
子どもへのかかわり方
の学習
5)子どもは順調に育っているのだろうか。。「健診は通過したけど」
6)自分の子育てはこれでいいのか。。「自分に自信が持てない」
ひろば
家庭訪問
ひろば
各種教室
ひろば
乳健
デイケアのニーズ
3)情報が多くて、何が正しいのかわからない。。。。
4)子どもから、一時でも離れていたい。。「自分の時間がほしい」
->
7)しつけはどのようにしたらいいのか。。「ペアトレって?」
8)子どもの叱り方がわからない。。「叩くのは絶対いけないの?」
ダメダメの連発、ちっとも効果がないし。。
1
2015/6/7
親が求めるかかりつけ医像
1)きちんと子どもを叱るが思いやりがあり、適切に専
門病院を紹介してくれる。親の勉強会などへも積極
的に参加してくれる。
2)症状や薬について、丁寧によく説明してくれる。
3)夜間でも診てくれる、家から近い、設備がいいなど。
4)小児科が専門、スタッフの対応がよい。
5)子ども好きで、近所の評判がよく、はやっている。
2001、2002
厚生労働科学研究
子育て相談での医師への期待
親の生のことば!
はっきり症状でもあれば別だけど、子どもが病気かどうかその
判断に困っている。インターネットで調べると、もしかして重い
病気の可能性もありそう。でも、子どもは元気で遊んでいるし、
とてもどこか悪そうには思えない。
ひろばや保育園で聞いてみても、異常ないという人もいるし、
お医者さんにみてもらった方がいいという人もいるし。
お医者さんにかかろうかとも思うが、病気らしくないし、忙し
い診療の時間に混み入った相談をするのは、正直言って叱られそ
うで怖い。
医学的にはたいしたことはないかもしれないけれども、親とし
ては心配なことに相談に乗ってもらえる医師がいい。
(やはり、医師でない人の回答では不安がある。)
医師による子育て支援
医師の重み
!要望は多いが!
いろいろな悩みとくに子どものことについて、いろ
いろな人に相談してみると、それこそさまざまな判断
が戻ってくる。どれがほんとうなのかわからない。
3.ボランティアとして参加
!大いなる抵抗!
ジレンマ
でも!子どものためになりたい!
最終判断を医師に求める。しかし、医師の判断をす
べて受け入れるわけではない。別の医師のセカンドオ
ピニオンとして、都合よく利用される可能性がある。
当事者にとって都合のいい判断を引き出す。
4.乳幼児健診での医師の対応!評判がいいとは言えない!
病気の発見だけではない 子育て支援であることを理解
医師の判断が誤まっていると判断すると、その後の
批判の矛先を向けられ、信頼関係が大きく揺らぐ。
5.子育て支援活動に参加したい医師と医師に参加を求めた
い支援者がいる。
!ぜひ制度的な裏付けを!
医師の立場は責任が重い。最終決断はできるだけ当
事者の自己決定に委ねる工夫が必要。
1.日常診療の場での子育て支援
2.親子の集まる場「ひろば」
診療外活動の正当な評価がない。
!忙しすぎる!
うつ病になった母親
この子は初めての子ですけれど、赤ちゃんの時代には、私、たく
さんお友達もできて、楽しい毎日を送っていました。
でも、この子が1年を過ぎた頃、グループの子どもたちに比べて
発達が遅いのに気がつきました。だんだん、そのことが重荷になっ
て、グループの活動にも身が入らなくなり、いつしか脱落してしま
いました。
子どもの発達が心配でいろいろな人に相談しましたが、返ってく
る答えはまちまちで、どれを信じたらいいのかわかりません。
そうこうするうちに、外へ出るのが億劫になり、元気に遊んでい
るよその子どもをみるのが怖くなりました。
家事はまったくできなくなり、子どもが寝ている時間帯だけが安
らぎのときでした。子どもが起きてくると、きゅっと胸を締め付け
られます。
子育て満足度とサービス利用
フォーマルサ
ポートの活用
数字はパス係数
子育て
満足度
0.44
自己肯定
感の強さ
0.42
子どもへ
の寛容性
インフォーマル
サポートの活用
こども未来財団平成19年度児童関連サービス
調査研究等事業報告書:
中村 敬「地域における子育て支援サービス
利用の積極性について」
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2015/6/7
増え続ける発達障害
学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、
高機能広汎性発達障害(HFPDD)、軽度精神遅滞
(MR)を5歳児健診を基盤として発生頻度をみると、
8.2~9.3%である(平成18年度厚生労働科学研究班)
2012年の文科省の学校調査の結果があり、これに
よれば、児童生徒の6.5%にみられるという。
発達障害への認識が高まり、掘り起こしが進んでい
ることと、診断基準がかわり、スペクトラムという概
念が導入されたことに起因すると思われる。
気になる行動の子どもが発達障害とラベリングされ
てしまう事例も増加しているように思う。
行動評価のためのスケール
(1)
(2)
(3)
(4)
AD/HD評価スケール(DSM-IVベース18項目)
アスペルガー症候群尺度(ASQ)27項目。
Strength and Difficulties(以下SDQ 25項目)
CBCL(Child Behavior Checklist、113項目)
質問紙のみでは鑑別診断は困難であり、ADHDや自閉症
スペクトラム等の診断には医師による診察や詳細な問診が
不可欠である(平成18年度厚生労働科学研究班)。
子どもの気になる行動とは
1)視線が合いにくい、ことばが遅い、逆さバイバイ、指差しをしない。
2)特定のおもちゃへの固執、手順やパターンへのこだわり
勝つ事へのこだわり(いつも自分が1番!)、道順へのこだわり
3)パニック(こだわりのパターンが乱されたときに起こる感情の興奮)
4)感覚の過敏、特定の音や触覚を極端に嫌う 感触を楽しむ
5)遊びや人物、ことば、音に対する極端な嗜好や嫌悪
6)反響言語(おうむがえし)
7)自分をあなたと呼ぶなど人称の転換
8)会話が通じない、会話のずれなど(幼児期後半以上)
9)身振り手振りが極端に少ない(非言語性言語の未発達)
10)一人遊びが多い、周囲に共感を求めない
11)一方的な大人びた話し方(敬語で話すなど)
12)笑いや悲しみなどの感情の共感性が乏しい
13)表情が場に合わない
14)周囲の雰囲気が読めない 子どもを極端に避ける(怖がる)
15)大人の指示が理解できない
16)多動や落ち着きがない、頼んでもすぐ忘れる、人の話を聞かない
17)すぐ手が出る 高いところに登ってしまい危険
18)勝手にどこかに行ってしまう 集団遊びができない 友だちができない
19)煽動的行動をとり集団行動を著しく乱す
診断の補助としての評価スケール
ASD用の評価スケール
2歳ぐらいまで
Mchat日本語版
3歳以上
PARS
SCQ日本語版
ADHD用評価スケール
日本語版ADHD RS
発達スクリーニング
遠城寺式発達スクリーニング
乳幼児発達スケール
(Kinder infant development scale)
この子変なんです
この子男の子で1歳半を過ぎましたが、ことばがありません。私の
こともわからないようです。
おもちゃは好きですが、遊び方がおかしいのです。自動車をひっく
り返し車輪を回して、いつまでも遊んでいます。普通に走らせてほし
いのですが、すぐ、ひっくり返します。
私の膝には乗ってきますし、だっこは大好きです。でも目を合わせ
ません。お人形を抱いている感じです。
ひとりで黙々と遊んでいます。私がいなくてもほとんど気にならな
いようです。
外出すると石ころを集めていちいち口に入れます。他の子どもの居
る場は嫌がりませんが、子どもに近づかれると怖いようです。
これって、私のせいなんですね。。。。
うちの子は何でもありません
保育園からの訴えで、発達相談で面会した。児は3歳11か月であ
り、多動で落ち着きがなく、担当保育士の指示を聞かない。勝手に動
き回る。他の子どももつられて動き出し、集団としてまとまらない。
ことばの発達は悪くないというより、多弁で他の子を煽動してしまう。
順番に拘る「1番グセ」があり、常に1番においてやらないと騒ぎ
出す。一度スウィッチが入ると興奮状態になり、収拾がつかない。仲
間とのトラブルも多い。
保育園としては困っており、加配を要求しているが、親の承認がな
く、申請できない。親は活発でいい子ととらえており、保育園が勧誘
する集団の場面の参観には応じてくれない。落ち着いているときには
担当保育士の指示を理解している様子。
集団の場と自宅での行動に差があり、親と保育園側と評価が異なり、
対処に苦慮している。
3
2015/6/7
発達障害を考える
地域における態勢を考える
幼児期後半になると、子どもは家庭での顔と集団での顔が異なる。
集団では群衆意識が働き、刺激に反応しやすく問題行動が生じや
すい。
親と集団の場での保育者双方から、子どもの行動を聞き取る必要
がある。また、安易に「発達障害」というラベリングをすべきでは
ない。実際の場での子どもの行動を観察すること!!
幼児期前半まではグレイゾーンというとらえ方でいいように思う。
無理に「発達障害」と診断すべきではない。
しっかりとフォローアップし、経過を見極める必要がある。子ど
も自身が困っている行動、社会的に逸脱している行動は、好ましい
行動に変容させる必要がある。グループワークとセラピストによる
個別指導の組み合わせで経過を観察することが大切である。
地域における態勢を考えるⅡ
子ども発達相談センター?
子育て支援セン
ターの相談
乳幼児健診
気にな
る子
年齢別グ
ループ
ワーク
他の相談機関
家庭児童相談室
NPOなど民間
のひろば
医療・療育
センター
NPOによる
通園療育サービス
企業による
通園療育サービス
乳幼児健診
医療・療育
センター
発達健診
発達相談
子育て支援セン
ターの相談
気にな
る子
他の相談機関
家庭児童相談室
年齢別グ
ループ
ワーク
気になる子の
相談ひろば
NPOなど民間
のひろば
NPOによる
通園療育サービス
企業による
通園療育サービス
社会福祉法人
通園療育サービス
就学・相談
保育園
幼稚園
特別支援学級
乳幼児健診の意義
疾病の早期発見 ->
健康増進
健康増進
子育て支援
->
子どもと親のメンタルヘルス
社会福祉法人
通園療育サービス
発達障害の早期発見
就学相談
保育園
幼稚園
特別支援学級
虐待防止
乳幼児健診への親の否定的な感想
子育て支援における専門職の役割
医師が機械的で質問できる雰囲気にない。
混んでいて、医師と関われる時間がない。
 頭ごなしに注意されて落ち込んだ。
 指摘されただけで、納得いく解決策が示されなかった。
 欠点ばかり指摘されて、自分の子育てを否定された。
 心配事について、的確な解答がえられなかった。
 子どもの機嫌の悪さをしつけのせいにされた。
 あまりにも流れ作業過ぎる。
親や子のポジティブな側面を褒める。とくに、子ども
のいいところを見つけて褒めることを忘れない。


ネガティブな側面に注目しすぎない。
問題点を親や子どもの責任にしない。
本人にとって深刻な悩みを無造作に聞き流さない。
その場で判断できないことは必ずフォローする。
決して機械的な扱いはしない。
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