No3 - Biglobe

2015/9/12
はじめに
音楽療法の発達支援的機能を
教育活動全体の中で活用する
~自立活動との関連から~
音楽療法の有効性
情緒面・・・リラックス、安定した気持ち
身体面・・・音や音楽に身体で反応する活動における
手の操作性や運動能力、姿勢保持
言語面・・・発語の発達促進
社会面・・・他者の演奏に耳を傾ける 他者の前で演じる、
自分の番まで順番を待つ、
音楽的対話によるコミュニケ-ション
認知面・・・数や色、形の概念理解、文字の理解
身体の各部位、左右の理解の知的な面の促進
音刺激による適応行動の獲得 →
静かに歩く、立つ、座る
「音楽は机上の学習にも決してひけをとらない」(加藤博之)
和歌山県立紀北支援学校
川﨑 亜希子
平成27年9月12日
音楽療法の多岐にわたる有効性
音楽療法の多岐に渡る有効性
・幅広い対象児に有効的なアプローチである
・動的にも静的にも使い分けられる
・他の臨床法にはみられない多様さを持っている
・障害児への音楽療法は、音楽そのもののもつ特質による貢献
心理療法的側面、さらに能力的支援的な側面といった多様な
目的をもち、多様な発達段階の子どもにアプローチ可能であ
るといえるといえるだろう
(宇佐川浩)
・音楽はきわめて多彩、多様な性質を持っており
どんな対象にも適用できる、すなわち適用範囲がきわめて広い
(松井紀和)
音楽療法には多岐に渡る有効性
特別支援学校において音楽療法を活用する
支援の一つに音楽療法が活用できる
「障害児の発達支援にとっては、音楽療法は利用しやすいアプローチの
ひとつであると考えてよいだろう」
(宇佐川浩)
特別支援教育の中心的な指導である自立活動と関連させる
「障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するため
に・・・」
自立活動は特別支援学校の指導の基盤
弾力的運用、各教科と連携、学校教育活動全体
音楽療法を音楽の授業だけではなく学校教育活動全体
の中で活用する
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先行研究にみる特別支援学校での音楽療法の活用
○特別支援学校における音楽療法あるいは音楽療法的視点による活用に関す
る事例は多い → 活用場面が3つに分類される
1.音楽科の授業内
・井戸(2001)らは、養護学校におけるピアノとタンバリンの呼応を図る音楽療法楽曲の活
用とそれによるコミュニケーション力の促進効果を指摘している。
・大島(2001)は養護学校における、中学部の生徒を対象とした、豊かな生活に結びつけ
る表現活動による自己表現力を高めた実践(音楽科)
・加藤(2004)は、肢体不自由児に対して発達援助をねらいとして対象者の提供とそれに
よる発達援助の有効性を指摘している。
2.自立活動の時間内
・高山(2011)は特別支援学校における重度重複障害児へ「心のケア」「音楽的対話」
を目的とした音楽療法士の外部人材として実践
・土野(2003)は自閉傾向の生徒への情緒安定や身体動作を目指した実践
3.その他(生活、特別活動・・・)
・根岸(2004)は小学部において小学部全体授業として、コミュニケーション能力を高める
ことを目指した集団音楽療法を実践
・山本(2005)は児童の発達段階に応じて、個々に目標をたて、クラスの時間内で音楽療
法を実践
自立活動の指導内容
「自立活動」の指導内容に対応する音楽療
法の考え方
1.健康の保持
(1)生活のリズムや生活習慣の形成に
関すること。
(2)病気の状態の理解と生活管理に関
すること。
(3)身体各部の状態の理解と養護に関
すること。
(4)健康状態の維持・改善に関する
こと。
「音楽療法とは、クライエントのウェ
ル・ビーイングを改善、維持、回復す
るために音楽的経験が使用される、相
互人間関係的プロセスである」
2.心理的な安定
(1)情緒の安定に関すること。
(2)状況の理解と変化への対応に関す
ること。
(3)障害による学習上の又は生活上の
困難を改善・克服する意欲に関する
こと。
「音楽療法により情動を発散させ、情
動の安定を計り、自己の情動をコント
ロールできる能力を養う」
(松井紀和 1980)
「音・音楽は振動を伴い触覚や聴覚に働
きかけやすい」
「音楽に合わせて身体を動かすリトミッ
クが、聴覚と運動の協応性を育てること
に貢献した」
(宇佐川浩 2007)
(ブルシア 1987)
「精神的および身体的健康の回復、維持
(全米音楽療法協会 1980 )
改善」
ケネス・E・ブルシア著、『音楽療法を定義する』
生野里花訳
東海大学出版会 2001
(遠山文吉2005)
「リズミカルな動作や運動は、情緒の安
定に最も効果的で、・・・」
(佐々木正美 1984)
自立活動の指導内容
「自立活動」の指導内容に対応する音楽療法
の考え方
5.身体の動き
(1)姿勢と運動・動作の基本的技能に関
すること。
(2)姿勢保持と運動・動作の補助的手段
の活用に関すること。
(3)日常生活に必要な基本動作に関する
こと。
(4)身体の移動能力に関すること。
(5)作業に必要な動作と円滑な遂行に関
すること。
「音楽は、身体的運動を誘発する」
6.コミュニケーション
(1) コミュニケーションの基礎的能力に
関すること。
(2)言語の受容と表出に関すること。
(3)言語形成と活用に関すること。
(4)コミュニケーション手段の選択と活
用に関すること。
(5)状況に応じたコミュニケーションに
関すること。
「太鼓等の楽器を高度に演奏し合うこと
で相互的なコミュニケーションスキルが
発展する」(宇佐川浩2007)
「即興音楽は、その芸術に属するあらゆ
る資源とともに用いられた場合、コミュ
ニケーションを樹立し、人間関係を発展
させ、発語と言葉の発達を促し、病的な
行動パターンを追い払い、強くより豊か
なパーソナリティを形成することができ
る」
(クライブ・ロビンス)
「音楽はコミュニケーションである」
「自立活動」の指導内容に対応する音楽療
法の考え方
3.人間関係の形成
「神経や筋肉のアンバランスな状態を取
(1) 他者とのかかわりの基礎に関する り除き、外界との関係を正しく計り、行
こと。
動の統制を身につけていくことにある」
(2) 他者の意図や感情の理解に関する
(ダルクローズ1977)
こと。
(3) 自己の理解と行動の調整に関する 「まず他人に注意を払う、他人の動きに
合わせる、共同する、協調する等の社会
こと。
(4) 集団への参加の基礎に関すること。 性が要求される」
4.環境の把握
(1)保有する感覚の活用に関すること。
(2)感覚や認知の特性への対応に関す
ること。
(3)感覚の補助及び代行手段に関する
こと。
(4)感覚を総合的に活用した周囲の状
況の把握に関すること。
(5)認知や行動の手掛かりとなる概念
の形成に関すること。
自立活動の指導内容
(松井紀和)
「歌唱活動は姿勢の保持等、全身的な運
動であることに加えて、強力な身体的解
放をもたらす」(村井靖児)
(松井紀和)
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音楽療法・音楽療法的視点を活用した場面
時間
ねらい
原理 考え方 手だて
使った音楽
朝の会
順番を待つ
言語の促進
コミュニケーション
声や行動の調整
ノードフ=ロビンス音楽療法
自立活動の内容と音楽療法の適応性は非常に高い
ものがある
○硲間(2001) 自立活動に音楽療法が対応できるのでは
提案:抽出の音楽療法
○斉藤(2010)「音楽療法の考え方や方法は自立活動の内容と関
連しており、障害児の実態に合わせて活動を工夫
することによって、音楽指導を幅広いものにしている」
自立活動の 聴覚と運動の協応
時間(集団) 行動の調整
様々な動きの獲得
『Fun For Four Drums』他
音楽でのやりとり
(休符、アクセント、ダイナミクス、テンポ)
リトミックの即時反応運動
(テンポ、ダイナミクス、高低、アーティキュ
レーション、拍子、休符、表情、 アクセント
増和音、減七和音)
即興演奏でのやりとり
「音楽療法を活用する」場面については、音楽療法の有効性からも
学校教育活動のカリキュラム全体を見据えて編成していくための手
立て、並びに音楽療法あるいは音楽療法的視点を用いた活動を取り
入れていく原理の理論的裏付けと方策とを具体化していくことが重要
な課題
時間
ねらい
原理 考え方
使った音楽
自立活動の 色の名称を覚える
時間(個別) 形の弁別
言語の促進
歩行の促進
リトミック(拍子を利用)
即興でのやりとり
神経学的音楽療法の視点
(DSLM)
一語に一音つけて・言葉にアクション
楽器を演奏を通じて
手だて
障害児へ適応可能な様々な音楽療法の技法や考え
自立活動の 言語力の向上
時間(個別) 二語文の獲得
ノードフ=ロビンス楽曲
わらべうた
5音音階での即興やりとり
(音程の飛躍)
グル-プ;
言語力の向上
課題別学習 明瞭な発音
ことば・かず ひらがなの習得
やりとりができる
形の弁別
ノードフ=ロビンス楽曲
神経学的音楽療法の視点
(DSLM) 言葉にアクション
即興でのやりとり
音楽
ノードフ=ロビンス楽曲
姿勢の保持
言語力の向上
手の操作力の向上
聴覚と運動の協応
コミュニケーション力
(児童の発声しやすい調の模索、リ
ズム、メロディー)
即興でのやりとり
・神経学的音楽療法
言語促進に音楽を使う代表的なトレーニング法
高い専門性
DSLM(音楽発達発語言語トレーニング)
言葉に音やアクションを結び付ける・楽器の演奏を通じて数や形を学ぶ
・創造的音楽療法
中でも即興演奏を用い人間関係を構築していく
覚えやすく
ノードフ=ロビンス音楽療法
安心
*ノードフ=ロビンスの楽曲の特徴
歌詞が容易で日常生活題材と会話調をもっている、反復
対話的やりとりを生み出す構造をもっている
シンプルな楽器に対応した楽曲
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・リトミック
心と身体の調和を目指した音楽教育でダルクローズ創
案のメソード
1917年にジュネーブで障害児教育のためのリトミック教室
が開かれ以来、盲・ろう・神経症・精神疾患・・・適応
身体機能の向上
行動調整力の獲得
外界との関係を正しく計り、行動の統制を身につける
聴覚と運動の協応にせまる
特別支援学校における音楽の授業づくりは
音楽教育的
音楽療法的
音楽を学ぶ
音楽で学ぶ
両極の視点から指導内容を考える
即興が中心、音楽のニュアンスや構造を活用
対象児に応じて
・宇佐川浩の感覚と運動の高次化理論
発達初期段階の児童への音楽の使い方
音楽教育的
音楽療法的
教材・教具 楽器の工夫
音楽の時間(肢体不自由児)
音楽療法
小集団での活動→個人セッション(即興)
大切にしていること
➀言語力を促進するための選曲、方法の検討
②生の演奏を鑑賞する機会を持つ
③手指の操作性を高める→楽器を工夫
④聴覚と運動のつながりを目指す
➄音楽によるコミュニケーション力の促進
音楽療法は
「音楽の力を借りてそうした課題を解決したり、
問題点を改善したりする」遠山文吉(2005)
特別支援学校において音楽療法は障害を軽減、行
動変容、心身の発達促進につながる有効な支援の
ひとつである
教育活動全体の中で活用できる
課題:音楽療法ができる教師
自立活動の内容
知識、技術(即興演奏力・・・)
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参考文献・資料
ご清聴ありがとうございました。
加藤博之『音楽療法 特別支援教育の発達的視点を踏まえて』明治図書2007
宇佐川浩『感覚と運動の高次化からみた子どもの理解Ⅰ』学苑社 2007
宇佐川浩『感覚と運動の高次化による発達臨床の実際Ⅱ』学苑社 2007
齋藤一雄 「Ⅰカリキュラムと授業構成 4.音楽療法の技法や視点を取り入れた授業
構成」『学校音楽教育研究 14』2010
日野原重明監修 篠田知璋・加藤美知子編集『標準音楽療法入門 上理論編』春秋社
ケネス・E・ブルシア著 『音楽療法を定義する』生野里花訳 東海大学出版会2001
全音楽譜出版社1997
マイケル・H・タウト『リズム・音楽・脳神経学的音楽療法の科学的根拠と臨床
応用』三好恒明・頼島敬・伊藤智・柿崎次子・糟谷由香
・柴田麻美訳 協同医書出版社 2006
松井紀和 『音楽療法の手引』牧野出版1980
ケネス・E・ブルシア著『即興音楽療法の諸理論上』林庸二監訳 生野里花・岡崎
香奈・八重田美衣訳 人間と歴史社 1999
ケネス・E・ブルシア著 『音楽療法を定義する』生野里花訳 東海大学出版会2001
遠山文吉 『知的障害のある子どもへの音楽療法―子どもを生き生きさせる音楽の力
―』明治図書2005
竹林地毅監修『新時代の知的障害特別支援学校の音楽指導』ジアース教育新社 2015
フランク・マルタン他板野平訳 『エミール・ジャック・ダルクローズ 』
参考資料
井戸和秀大森雅恵「音楽教育における音楽療法的視点(1)―養護学校の音楽指導
に基づいてー」岡山大学教育学部研究集録 第118号 2001
大島節子「養護学校中学部における集団での音楽学習―集団の中で個々の表現を生
かす創作活動を中心に」遠山文吉 『知的障害のある子どもへの音楽療
法―子どもを生き生きさせる音楽の力―』明治図書2005 p.131
高山仁 「教育と療育の視点から見た子どもと「音楽」との本質的関わりー重症
心身障害児の特別支援教育における音楽活動を再考するー」『育療』2011
土野研治「個人音楽療法―情緒が不安定な自閉的傾向の高校生への音楽療法」遠山
文吉 『知的障害のある子どもへの音楽療法―子どもを生き生きさせる
音楽の力―』明治図書2005 p.139
山本久美子「児童の発達段階や表現方法を考慮した集団音楽療法の実践」
根岸由香 「他者との豊かなかかわりを目指した集団音楽療法の実践」
遠山文吉『知的障害のある子どもへの音楽療法』2005.4
硲間純子「盲学校、ろう学校及び養護学校における音楽教育の現状と音楽療法の
実践」平成13年度 和歌山大学教育学部障害児教育学教室 内地留学
研究報告書 2002
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