阿多岐層について (1)阿多岐層の概略 阿多岐層は、新第三紀の鮮新世に起こった烏帽子火山岩類によって生じた堰止め湖 に珪藻の死骸や火山噴出物が堆積してできた地層であり、おもに、珪藻土、凝灰質砂 岩、凝灰質泥岩からなる。 200 倍 また、珪藻土をつくる珪藻化石(右図)は淡水性であることがわかっており、顕微鏡 で容易に観察することができる。(観察方法は別紙記載) (2)教材として用いる露頭について 郡上市白鳥町阿多岐の路頭は、地元の小学校を中心にこれまで野外観察学習においてしばしば利用されて きた露頭であり、その主要部は岩相上、下位から A 層、B 層、C 層と大きく三層に区分され、それらは以下 のような過程で形成されたと考えられる。 ←陸 湖→ A 層 ほぼ珪藻土で構成されている。 ① 火 山活 動に 伴っ て形 成さ れた 湖で 珪 藻が繁殖し、その死骸が湖の岸から遠 3.2m C層 い中心部分に堆積する。 (A 層) ※A 層の岩石薄片を作成し、顕微鏡で 観察すると、細かな縞模様を観 B層 察することができる。これは、おそらく 珪藻の種類や大きさによって よりわけられて堆積したことで生じた縞であると考えられる。 B層 泥岩層。間に薄く珪藻化石を多く含む層が挟まれる。 A層 砂や泥 ②水によって運ばれた砂や泥 ←陸 湖→ によって埋まり、湖が狭ま る。(B 層) C層 砂岩と泥岩の互層。 ③B 層の上から更に砂や泥 に 砂や泥 ←陸 湖→ C層 よって埋まり、湖は狭まる。 (C 層) B層 A層 珪藻化石を多く含む部分 現在観察に用い 砂 られている露頭 シルト に対応する部分 粘土 ○珪藻について 珪藻は黄褐色植物門の珪藻綱に属する単細胞の藻類であり、細胞膜に含水シリカが沈積してできた珪質の殻壁 の中に原形質を包み込んでいます。海水・汽水・淡水のいずれにも浮遊性あるいは底生の形で分布しています。 珪藻は種類によって水温、pH、塩分量などの違う地域に住み分けていることから、その化石は示相化石として有 効であります。 <珪藻化石の簡易観察方法> ○準備するもの ・A 層の試料 ・スライドガラス ・ビーカー ・カバーガラス ・駒込ピペット ○方法 ① かたまりを押しつぶすようにして指で細かく砕く。 ☆乳鉢などを用いてすりつぶすとと珪藻化石の殻が割れる可能性がある。 ② 珪藻土 0.3gをはかりとり、 ビーカーに入れる。 ③ ビーカーに水 5ml を ピペットを用いて 勢いよく入れる。 ④ 数秒たってから、濁った水を 簡易法で顕微鏡観察したもの(倍率 400 倍) 一滴スライドガラスにとる。 ※一般的に珪藻化石の観察には堆積物中の有機物な どを取り去り、できるだけ見やすく、見つけやすく するためには薬品処理をする必要がある。この方法 は、生徒一人一人が授業時間内で自分でできるこ ⑤ カバーガラスをピンセットで と、また、手軽に観察をすることを重視した。 つまみ、試料の上に載せる。 ⑥カバーガラスを軽く押さえ、顕微鏡で観察する。 参考文献:微古生物学 (中巻) 浅野清編 自然を調べる地学シリーズ『地層と化石』地学団体研究会編
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