大阪府の私立高校無償化政策の 改善点とメリット

高校進路研究会
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hingaku
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月号、中嶋哲彦
大阪府の私立高校無償化政策に
つ い て は、 批 判 的 な 立 場 か ら の コ
メント 『(世界』
氏論文 、)当サイトにて当時の政策
担当者側からの政策の目的や実情
の説明 室
( 井俊一氏インタビュー
が公開されています。
私 は、 私 立 高 校 無 償 化 批 判 を 繰
り広げられた中嶋氏と同じ教育行
政 学 を 専 門 と し て い ま す。 教 育 委
員会制度を専門とされる中嶋氏に
対 し、 教 育 財 政 を 専 門 と す る 私 の
立 場 か ら は、 批 判 も 重 要 だ け れ ど
も、 大 阪 府 の 私 学 無 償 化 の プ ラ ス
の要素についても位置付けていく
こ と が、 教 育 を 通 じ た「 子 供・ 若
者の幸福」の実現につながるとい
う主張となります。
大阪府での私立学校無償化につい
ては改善も必要な点が多いと考え
て い ま す が、 同 時 に 低 所 得 層 へ の
進 学 機 会 の 保 障 と い う 観 点 か ら は、
全都道府県に普及するべき政策で
あるとも評価しています。
大阪府の私立高校無償化政
)
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策の課題と改善点
1.
森上教育研究所
大阪府の私立高校無償化政策の
改善点とメリット
日本大学 准教授 末冨 芳
等の厳しいペナルティを課してい
の中~低所得層に対しての授業料
択に関する情報量は相当に大きく
参加度等 を
) 評 価 し、 公 開 す る こ
と で、 生 徒 や 保 護 者 の 側 の 学 校 選
視 や
) 教育の特徴 少
( 人数指導、課
外 学 習 の 有 無、 学 校 行 事 へ の 生 徒
力 レ ベ ル で も、 公 立 学 校 の み の 受
中 学 力 層、 低 学 力 層 の い ず れ の 学
校の生徒数比率が高く、高学力層、
会 が 保 障 さ れ た こ と で す。 大 阪 府
無償化により私立高校への進学機
な る と 思 わ れ ま す。 こ れ に 実 際 の
験では確実な進学機会は確保され
学校の校風 自
( 由重視←→規律重
学 校 見 学 や、 上 述 し た よ う に 定 員
ま せ ん。 私 立 学 校 と の 併 願 も し く
く 方 針 を 明 確 に す る こ と で、 こ う
1 点 目 は、 定 員 超 過 問 題 で す。 の 側 も 統 廃 合 を 回 避 す る た め に 定
朝日新聞 ( 月 日・大阪版・ 面 ) 員 削 減 を 実 施 し て お り、 私 立 高 校
で 報 道 さ れ た よ う に、 私 立 高 校 無 だ け で な く 公 立 学 校 の 側 の モ ラ ル
超過等のペナルティ情報も提供す
は専願により進学先を確保する入
ま ず、 大 阪 府 の 私 立 無 償 化 政 策
の課題と改善点は大まかに言うと
ハザードも厳しく指導されるべき
る こ と で、 情 報 量 の 豊 富 な 学 習 塾
試 制 度 が、 長 年 に わ た っ て 構 築 さ
償化
校
校 で、 在 校 生 の 合
年 目 の 入 試 の 結 果、 私 立 高
校のうち
まったモラルハザード 倫
( 理欠如
の行動と位置付けられます。
るという安易な手法にはしってし
高 校 が、 定 員 を 超 過 さ せ て 合 格 す
提供することで生徒を集めるべき
で、 本 来 で あ れ ば 魅 力 あ る 教 育 を
いう私学無償化のシステムのもと
徒数に応じて補助金を獲得すると
回 っ た こ と が 判 明 し て い ま す。 生
にあった学校を選ぶことが「子供・
) 大阪府の高等学校政策の中心にあ
り ま す。 こ の 場 合、 公 立 私 立 問 わ
せ る と い う メ カ ニ ズ ム が、 現 在 の
育を提供する学校に資金を集中さ
選択行動を重視することで良い教
枠 を 撤 廃 し、 生 徒 や 保 護 者 の 学 校
す。 公 立
計人数が府の認めた収容定員を上
私 立 学 校 振 興 助 成 法 で は、 定 員
超過した場合には補助金の削減や
若者の幸福」を実現するためには
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ず、 良 い 教 育 を 提 供 し 生 徒 の 個 性
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大阪府の私立高校無償化の
メリット
ていたように年収
万円以下
も っ と も 大 き な メ リ ッ ト は、 室
井氏のインタビューでも強調され
教育機会の実質的保障
高校で初めて不合格者が出るなど
の 事 態 が 発 生 し、 低 所 得 層 は 私 立
高等学校への選択もままならない
などの危機的状況であるという分
無 償 化 は、 経 済 的 な ハ ー ド ル な し
は い え ま せ ん。 大 阪 府 の 私 立 高 校
校 の 進 学 が「 機 会 均 等 」 で あ る と
機 会 が 保 障 さ れ な い 限 り、 高 等 学
こ う し た 状 況 の も と で は、 低 所
得層に対しても私立学校への進学
析 が、 私 立 学 校 無 償 化 政 策 の 出 発
こ う し た 改 善 点 は か か え つ つ も、
なお大阪府の私立学校無償化政策 点であったことが指摘されていま
す。
には大きなメリットがあります。
に 限 ら ず 都 市 部 で は、 私 立 高 等 学
ことだと思われます。
に通う余地の少ない低所得世帯で
れてきました。
2 したモラルハザードは防止される
と 思 わ れ ま す。 も っ と も 府 立 学 校
点 目 は、 生 徒 や 保 護 者 に 対
し、 学 校 選 択 に 十 分 な 情 報 が 提 供
あ っ て も、 生 徒 に あ う 良 い 学 校 選
点にまとめられると考えます。
されているかどうかという課題で
択につながりやすい制度になる可
返納が求められるペナルティ制度
重 要 で す が、 行 政 や 各 学 校 の 努 力
・
が 定 め ら れ て い ま す。 大 阪 府 も 現
には向上の余地が大いにあると思
という
在 調 査 中 と の こ と で す が、 私 立 高
わ れ ま す。 た と え ば、 府 立 高 校 も
:私立
校 の 定 員 超 過 に 対 し て は、 法 令 に
私立高校も個別に学校評価を行っ
能性が高いと思われます。
大阪府でもリーマンショック後
の 家 計 急 変 に よ り、 公 立 の 定 時 制
もとづき支援金や補助金を削減す
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て い ま す が、 共 通 の 指 標 で 生 徒 が
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る だ け で な く、 学 校 名 を 公 表 す る
2.
(1)
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政策として評価できるのです。
していない高いレベルの機会均等
意 味 で は、 他 の 都 道 府 県 で は 到 達
う、 教 育 機 会 の 実 質 的 保 障 と い う
学校選択を行うことができるとい
に、 公 立 高 校 も 私 立 高 校 も 自 由 な
金・ 支 援 金 収 入 の 安 定 化 と い う 面
が 大 阪 府 か ら 示 さ れ て お り、 補 助
年間の継続の方針
な 面 も あ り ま し た が、 現 行 の パ ー
により急に減額されるなど不安定
成 は 府 の 財 政 状 況 に 伴 っ て、 年 度
い る そ う で す。 ま た 従 来 の 私 学 助
という経営上のメリットが生じて
の予測や見通しが立てやすくなる
こ と に よ り、 私 立 学 校 側 も 財 政 上
て 生 徒 や 保 護 者 へ の 情 報 提 供 や、
校 教 育 の 本 質 を 見 失 わ ず、 協 力 し
と 進 路 を 保 障 す る と い う、 高 等 学
公 立 高 校 も、 生 徒 に よ り 良 い 教 育
な け れ ば な り ま せ ん。 私 立 高 校 も
つ な が る よ う な 課 題 は、 改 善 さ れ
削 減 な ど、 保 護 者 や 生 徒 の 不 安 に
た だ し、 大 阪 府 で 生 じ た 私 立 高
校 の 定 員 超 過 や、 府 立 高 校 の 定 員
るはずです。
れ る 子 ど も は、 限 り な く 少 な く な
立学校間の経常費補助の配分ルー
私学無償化政策を拡充していくこ
と く に 教 育 機 会 の 実 質 的 保 障 と (以上)
い う 視 点 か ら は、 大 阪 府 以 外 で の
ヘッド配分は
からもプラスの効果があるという
定員問題に取り組んでいくことも
私学助成の配分ルールの透明化
と安定化
評価が行われています。
私 立 学 校 無 償 化 政 策 に は、 も う
つ大きなメリットがあります。
ル が、 府 側 に も 私 立 学 校 側 に も 明
と は、 国 全 体 の 教 育 の 機 会 均 等 と
補助金を生徒数に応じたパー
ヘ ッ ド 配 分 に す る こ と に よ り、 私
確 に な っ た 点 で す。 室 井 氏 の イ ン
万円未満の家
いう観点からは重要なことだと思
府 で も、 年 収
タビューによると従来の私学助成
倍の格差が
わ れ ま す。 大 阪 府 と 隣 接 す る 京 都
年度で約
計に対する私立高等学校無償化が
つ
の府の間での越境入学者等の無償
と な っ て い る そ う で す が、 こ の よ
どのような基準により発生した格
す。
計の所得により進学機会を制限さ
うな事例が全国的にひろがれば家
しかし生徒数と家計所得に応じ
た配分というルールが明確である
化についての相互協力制度が課題
です。私立学校関係者から見ると、 実 施 さ れ て い ま す。 現 在 は、
私立学校間に存在したということ
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差なのかがわからなかったそうで
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と
制 度 の も と で は、 生 徒 単 価 に す る
重要なのではないでしょうか。
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