木材質が培地の基本になる〉(きのこ生産資材要覧、83年)

木材 質が培地の基本 にな る
革H
本
知
孝
きの こを育て るには環境や品種 の選択 も大切
食 用菌 は栄 養菌糸 の時代 で も生 殖菌 糸 の時代
だが,適 切 な培地 も重 要 で あ る。 しか し,適 切
で も木材 だ けを食 べ てい るわ け で , そ の点木造
な培地 が ど うい うものか とな る と,確 実 な こと
住宅 の柱 を食 べ る木材腐 朽菌 で あ る ことには 変
は全 くわ か っていない。 シイタ ケの原木 に何故
わ りな い。
コナ ラや クヌギ を選ぶ のか とい った こと もそ う
ところで木材 は どん な風 にで きてい るか とい
だが, この方面 につ い ては現場 で の経験が先 行
し,学 問的分析 が 後 を追 ってい るか らで あ る。
いて, 日には 見 えな い
うと, マ ンシ ョンに l l l て
一
つ
が , 穴 が 沢山 あ る。
ひ とつ の穴 , これ を細
しか し, こ うした〕調犬も徐 々に改善 され, 市
胞壁 とい うが , これが マ ンシ ョンの部屋 に相 当
に合 った培地 が考 え られ,人 工 的 に作 られ る よ
す る。 部屋 には壁が あ る。 マ ンシ ョンの壁 は鉄
筋 コン ク リー トだが , 木 材 の細胞 の壁 は主 に 3
うに な る と私 は考 え てい る。 そ の時,培 地 の ベ
ース とな るのはや は り木材質 で あ る。 何 故 な
ら,木 材質 は セル P― スが 密 に詰 ってい る 点で
つ の ものでで きてい る。鉄筋 に あた る のが セル
ロースで , 全 体 の 5 害」
を 占め る。 コン ク リー ト
質 を利用で きる とい う特 徴 が あ るので 今後 も基
に あた るのが リグ ニ ンで , 全 体 の 2 ∼ 3 害J を占
め る。鉄筋 とコ ンク リー トを くっつ き易 くして
本 に な る と思われ る。
い るのが, ヘ ミセル ロー スで , こ れ も 2 ∼ 3 割
他 の植物体 よ り優れ てお り,食 用菌 のみが 木材
こ うい う前提で きの こが どん な栄 養要求 を持
を 占め る。 そ のほか , 木 材 が腐 るのを防 ぐよ う
ってい るか,そ れが現在使 ってい る培地 とど う
な薬品が, 5 分 ほ ど入 ってい る。 抽 出成分 と呼
い う関係が あ るか とい う問題 に限 って研究 の現
ばれ る。
状 を紹介 したい。
きの この一生 は , よ く知 られ てい る よ うに ,
きの この傘 か ら胞子が落 ちて,最 初 は 一 核菌糸
木材腐 朽菌 は, この よ うな木材 の どこを食 べ
るか とい うと, セ ル ロースや ヘ ミセル ロース を
食 べ る。 これ らはデ ンプ ンの よ うな もの な ので
が生 れ る ことに始 まる。 これ は細胞 に一 つ の核
しか な い菌糸 で他 の一 核 菌糸 と結 び つ いて二 核
栄 養 に な る。 木材腐 朽菌 の種 類 に よっては, リ
菌 糸 に生 まれ変わ るが , この経過 を電子顕 微鏡
リグ ニ ンを食 べ られ な い菌, 褐 色腐朽菌 と区別
下 で人工 的 に交配す る試 み もあ り,商 品 とな っ
され てい る。 食用 きの こは不思議だが全 て 白色
てい る例 も多 い。 そ して二 核菌糸 が生 まれ ,培
腐 朽菌 で あ る。
グ ニ ン も食 べ られ , これ は 白色腐 朽菌 と呼ばれ ,
地 に蔓延 し,あ る時期 に低温刺激 を受 け る子実
白色腐 朽菌 には どん な特徴が あ るか とい えば
リグ ニ ンを分解す る ラ ッカ ーゼ とい う酵素が あ
体 がで きる。 この子実体が で きる前 は ,栄 養菌
糸 といい,で きた後 は生 殖菌糸 と呼 ば れ て ヽヽ
る。
る こ とに大 きな特 徴 が あ る。 なお セル ロース を
分解す るのは セル ラーゼで あ る。
―- 32 -一
ところで, 菌 は木材 を分解 して生 きてい くわ
うだ。
けで あ るが, 木 材が全 く菌 に とって理 想的 な栄
12 栄 養菌糸 の 成育促進効 果
養物 で あ るか とな る と必ず しもそ うでは ない。
普通 は栄 養菌糸 を育 て る際,液 休培地 で,特
例えば木材 には窒素 が非 常 に少 な くて, 普 通 は
0 . 0 1 % ほ どに過 ぎな い。糖分 もセル ロース とい
に問題 に な るのは菌が塊 って しま うことだ とい
う形 に な ってい るので利用 しに くい し, しか も
われ てお り, これ を避 け るためデ ンプ ンを培地
に入 れ, グル コー スの代わ りの栄 養分 とす る こ
それが リグ ニ ンとい う抗菌性 の強 い成 分 に包 ま
とも行 われ てい る。 つ ま リデ ンプ ンに は 粘性 が
れてお り, 良 い培地 とはいえ な い条件 が 数 々あ
あ るので菌 が塊 ま らず に済 み,そ の後菌 の生 長
る。そ こで , きの こ培地 に 関す る研究 は , 木粉 を
とと もにデ ンプ ンが分 解 し,非 常 に都合が 良 く
主体 とす るおが粉培地 と, お が粉 を全 く使 って
な る とい う性質 を利用す るわけだ。
い ない人工培地 の両 面 か ら研究 が 進ん でい る。
きの この生 育 を早 め る研究 で比 較的新 しい も
何故な ら木材質だけ では菌 の生 育が お そ く, 研
のには ,パ ル プ製造 時 の廃液 を利用す る ものが
究が しに くいた めだ。 しか しおが粉培地 と人工
あ る。 パ ル プを作 る際 の亜 硫酸法 でで きた廃液
培地 が同 じ効果 を上げ るのか違 うの か と な る
が 菌糸 の生 長 を促進す る ことがわか って きた。
と, は っき りした関連性 はわか ってい な い。 そ
生 長量 は 無添加 の ものに比 べ て 5倍 とされ ,廃
こで両方をわ け て と りあげ, 研 究 の 紹 介 を 行
液 の多糖 か あ るいは多糖が リグ ニ ン と結 びつ い
う。
た ものが 効果 を与 え る といわれ てい る。
1.3 予 実体形成
1.
人
工
増
人工培地 で育 てた菌 糸をそ の ままほ っぼ って
おいては子 実体 がで な い ので 一旦 水を切 る とか
地
1.1 栄 養要求 と分泌酵素
違 った培地 に移す とか して子実体,つ ま りきの
シイタ ケにつ い ては大変詳 しい 研究 の蓄積 が
こを出す工夫 を してい る。 食用菌 では な いが ,
ある。 四 つ の主 な栄 養要求 は炭 素源,窒 素源 ,
ス エ ヒロダ ケで 非常 に詳 しい 研究 が 行われ てい
無機塩, ビ タ ミン類 だが, シイ タ ケの場合 ,そ
れが グル コース,ア ンモ ニ ア体 の窒素,マ ンガ
る。
ン,チ ア ミンで あ る。 ただ し,チ ア ミン以外 の
栄養分 につ いては類TJAの
栄 養分 で代替 で きる。
それ か ら,菌 が 栄養 を取 る とい うことには ,
栄 養菌 糸 の場合 には糖 としては ペ プ トン とか
デ ンプ ン とか 培地 の粘性 を増す ものが 好 まれ て
い る。 ところが 子実体 が で きる時 は砂糖 が 良 い
とわか ってもヽる。
細胞膜 を通 して栄 養分 を吸収す る とい う取 り方
とともに ,い わ ば 消化酵素 を出 して培地 を分解
合 つ ま り C/N比 が菌
堵地 の炭素 と窒素 の 筈」
を育 て る上 で重要 だが,そ の害」
合が40以 下 だ と
して取 り込 む とい う仕組 もあ る。 た とえば ,セ
ル ラー ゼ とか ラ ッカ ーゼ とか ア ミラー ゼ とか タ
栄 養菌 糸時代 には最 適 で あ る といわ れ てい る。
ンナ ーゼ とか の酵 素を 出す こ と 力`わ か って ヽヽ
る。 セル ラーゼ は セル ロース を分解 し, グ ル コ
少 な くな って C/N比 が40つ ま りCが Nの 40倍以
ース な どに して 吸収す る と理 解 され てい る。
ところが子実体 を形成す る時期 は 窒素 の割合が
上が 良 い とわか ってい る。 窒 素源 としては ,栄
養菌糸 の時代 は グル タ ミンな ど塩 基性 の ア ミノ
ところで , 酵 素 と栄 養素 の関係 は必ず しも単
純 ではな く, 普 通 ラ ッカ ーゼ は リグ ニ ンを分解
酸 が 良 く,子 実体 の時 は どれが 良 い と決 ま って
はいない。
す る といわれ てい るが, リ グ ニ ンが な い場合 で
マ ッシュル ー ムにつ いて も研究 が あ り,子 実
も菌 は ラ ッカ ーゼ を出す ので菌 は リグ ニ ン分解
体 の時 に栄 養 として取 った糖が ど う変わ るか と
い うもので ,子 実体 の なか の糖 は マ ニ トール と
のためだけ に ラ ッカ ーゼ を 出すわけ ではない よ
―- 33 -―
ー
トレハ ロー スが多 く, とくに マ ニ ト ルは子実
た場合 で も炭 素 の割合 が 大 きい。 この よ うに コ
体 の時 に急 に 多 くな る と知 られ てい る。 そ して
メ ヌカには窒素 を補給す る役割が あ るが, そ れ
ばか りでな く水分 が適 当 に保 持 で き, 水 と ヨ メ
子実体 が熟成 した時 には 急 に減 るので , お そ ら
ー
ー
く培地 に あ る グル コ ス を吸収 して マ ニ ト ル
に変 え る と考 え られ る。 つ ま り子実体 がで きる
ー
時 は栄 養菌 糸 が 持 ってい るマ ニ ト ルだけでは
一
足 らず, 自分 で培地 か ら補 ってい る。 も う つ
ヌカが ノミイ ン ダ ーに な って培地 が とぎれ な い と
らに な ってい る。
い う効果 もあ る こ とが l l r lか
そ の他 に コ メ ヌカ とか コ
ー ンブ ラ ン とか には
っぱ い あ る
の トレハ ロースは栄 査菌 糸 に も もヽ
独持 の成 分 が あ って 効 くのだ とい う 説 が あ る
一
が, は っき り証 明され てい な い。 方, お が 粉
し, 移 動 し易 い糖 であ る こ とか ら栄養菌 糸 か ら
につい ては広 美樹 と くに ブナが 非常 に好 まれ て
子実体 が取 り入れ てい る らしい。
エ ノキ タ ケが生 育 してい く時, つ ま り沢山あ
い るが, 栄 養面 か ら見 て ブナが 何故 よいか , 理
由はは っき りしな い。針美樹 に比 べ てはデ ンプ
る小 さな子実体 の なか で大 きない くつ か の子実
ンが多 く, これ が プ ラスにな ってい る よ うだ。
体 が で きる時, 糖 類 に何 が起 きるか といえば,
大 きな子実体 は 自分 を大 き くす るため に周 りの
また, 菌 の成 育 に悪 い ヤ ニが 少 な い こ とも ブナ
が好 まれ るひ とつ の理 由か も しれ な い。
小 さな子実体 や菌糸 の栄 養を皆吸 い上 げ て しま
うことがわか ってい る。小 さな子実体 の貯蔵物
2 . 2 おが 粉 の 害
おが 粉 を使 った場
合 ,そ の なか の生 育
と同 じ大 きな子実体 とな るため新 しく培地 か ら
を促進す る物 質,阻
も栄 養分 を吸収す る こ とがわか って い る。 これ
害す る物質 につ いて
は ア ミスギタ ケで も証 明 され てい る。
も研究 が あ る。針美
樹 のおが 粉 が エ ノキ
2.
おが粉増申J
タ ケや ヒラタ ケな ど
に利用 され る場合 ,
次 におが 粉培地 につ いてふれ る。 おが 粉 は大
使 う前 に屋 外 で ヤ ニ
きな鋸暦 の粉 の ことで大鋸暦 と書 き, 比 較的荒
い木 粉 で, そ のた め通 気性 が 良 い ことが 喜 ばれ
抜 き とい う作 業が行
てお り, 普 通 の九鋸 で切 った鋸 層 とは 区別 され
ャ ニゃ タ ン ニ ンは菌
てい る。 研究 の 中心 は , お が 粉 を使 うので栄 養
われ てい る。木材 の
の生 育 に悪 い とされ
が 少 な い とい うことに 関連す る。 木材 は色 々毒
てい るが,研 究結果
に な る成分 を含 んで い るので毒 は ど うい う作 用
もそれ を裏 づ け てい
をす るか とい った ところであ る。
る。
2H 栄
た とえば エ ノキ タ
養
木粉 の ェ ノキ タ
ケ培地 へ の適 性
(適 (十), 不 適 (一))
樹 種
名
ノ
ド ナ イ イ イ
グ ン
ー
の グ リコー ゲンを分解 し, ま た マ ッシュル ム
適性
キ
マ ツ
十
ノ キ
十
リ
ノ キ
ヤ
十
キ
ツ ガ
十
ス ギ
カ ン
十
ー ル
十
ン
十
ン
十
ング ロー ブ
十
ル モ
ラ
ー カ
ピ
リ
栄 養菌 糸 の時代 には , お が 粉 は 普通 ヨ メ ヌ
カ, コー ン ・ブラン, フ る マ な どを加 え て培地
合 が多いが, 昔 , 熱
として使 うが , 大 体全体 の2 5 % く らい コ メ ヌカ
な どを加 え る と ヒラグ ケや エ ノキ タ ケの生 長が
帯林 を色 々使 ってみたが生 育 が悪か った例 が あ
ー
る。 そ の理 由が何か調 べ た ところ, フ ェノ ル
4 ∼ 5 割 増 え る とわか ってい る。 この場合 C / N
比 は , お が粉 の場合 2 7 1 だ が, コメ ヌカを2 5 %
成分, 詳 し くい うとガ リ ック酸 が生 育を妨げ た
とわか った。 シ イタ ケは ヤ マ モモの樹皮 な どに
合 は大体 3 0 く
入れ る と7 0 6 に な る。 C と N の 害」
らいが 良い とされ てい るので , コ メ ヌカを加 え
ー
含 まれ る フ ェノ ル成分 に生 育を阻害 され る こ
とも確認 され てい る。 ア カマ ツの材や樹皮 に脂
ヶは スギで 育 て る場
―- 34 -一
ョ ン コ ン
↓
傘 ひ ら く
a
マ
灯
ー
︲
ヽ
ー
もある。
み
れなか った りす るので なか なか 断定 で きな い面
原基 発 生←
堵地 の微妙 な変化 で , 害 がは っき りした り, 現
低 温 移 行←
酵 素 活 性 の相 対 値
るといわれ てい る。 それ か らス ギ の樹 皮 に あ る
フ ェノギ ノ ール も同様 の妨害 をす る。 ただ し,
︱
A︲
︲
︱
ド
肪酸が多 く含 まれ てお り, これ らも生 育を妨 げ
、 、
菌 の生 育を促進す る方 では , 前 述 のパ ル プの
、
亜硫酸廃液 が 効果 が あ る とわか ってい る し, ネ
L
︲
ギ, 玉 ネギ, ク ロ レラな どの抽 出物 も 3 ∼ 5 割
くらい増量 させ る と判 明 してい る。
色 々研究 され てい る。 栄 養菌糸 の時 は培地 か ら
ールを分 解す る酵素が沢山で
きるが,子 実体 が
ー
で きる頃 に な る とラ ッカ ゼ は段 々出な くな っ
て,セ ル ラーゼや ヘ ルセル ラーゼが 出 て くる。
これは ラ ッカ ーゼが 測定 で きな くな った とい う
ことで,全 く出ないか ど うか は判 然 としな い。
この測定で きな い理 由 は,出 た ラ ッカ ーゼが不
安定なせいであ るか , ラ ッカーゼ を分解す る よ
うな酵素が 出 て くるのか も しれ な い し,あ るい
は ラ ッカーゼ を菌が 作 らないのか ど うか も よ く
わか っていない。
ヒラタ ケの場合 も,26度 で菌 が 育 ってい る状
態 では10曰 くらいで ラ ッカ ーゼ の活性 は非常 に
強 くな り,そ れ以後 弱 くな るが ,24日 目に16度
に落 としてゃ る とラ ッカ ーゼ は どん どん 滅 る も
のの,セ ル ラーゼや ヘ ルセル ラーゼ は 多 く な
り,30∼ 32日頃子実体が 出 る時 には セル ラーゼ
や ヘルセル ラーゼ の活性が強 くな る。 しか し,
低温処理 しなけれ ば, ラ ッカーゼの活性 もそ う
急 には減 らず,セ ル ラーゼ な どの活性 も増加 し
32
40
ヒラ タケ の 酵 素 活性 の 変化
なるか とい う点だが,マ ッシ ュル ー ムの場合 で
糖分が な くな る。 同時 に菌 が 出す酵素 は ,栄 養
菌糸 の時 は ラ ッカーゼ とい う リグ ニ ンや フ ェノ
24
接 種 後 の 日数
子実体がで きる時 の栄 養 と酵素 の分泌が ど う
リグニ ンや タ ンパ クが な くな るのだが ,子 実体
がで きる時は セル ロースや ヘ ルセル 占―ス な ど
16
8
4 日
7
2 3 予 実 体 形 成
ッカ ーゼが 子実体 が で きる頃弱 くな る こ とと,
セル ラーゼ, ヘ ル セル ラーゼが強 くな る ことは
確 か で あ る。 この こ とは どの きの こに も起 こる
共通現象 で あろ う。
そ うは い って も ラ ッカーゼに は 色 々な仕事が
あ り, セ ル ラーゼ との関連性 は確定 した もので
は な い。 例 えば, シ イタケで調 べ る とラ ッカ ー
ゼ は植菌後, 5 0 時 間後 で一 番活性化す るが, セ
ル ラーゼの活性が強 くな るのは 1 0 0 日 以降であ
る。 ここではか な りの減少 と増加 の間 には, 時
間的 にギ ャ ップが あ る。
きの この生 育促進 につい ては面 白い 研究 が あ
る。 食用菌 が 出す酵素 の中で, タ ンパ ク質 を分
解す る酸性 プ ロテア ーゼ につ いて もそ の活性 を
抑 えてや る と, き の こが 早 く沢山で きる と知 ら
れ てお り, 酸 性 プ ロテ ア ーゼ を妨害す る阻害 剤
で, 放 線菌 か ら取 った S ― P l を 培地 に加 えて
や る と効果 が あ る。培地 の量 1 ミ リリ ッ トル 当
た り2 . 5 な い し1 0 マイ ク ログラム とい う微量 を
加 え てや る とエ ノキ タ ケの発生 が 7 日 早 まって
数 も 4 本 増 えて1 0 本に な る とい う, か な り顕 著
な効果が 出 てい る。
以上 は 人工培地 で あ るが, お が 粉培地 の場合
ヒラタ ケで研究結果 が 出てい る。 おが 粉 1 9 0 グ
ない。 あ るいは,低 温処理 して もきの この原基
ラム, コ メ ヌカ3 8 グラムで S ― P l を 加 え てや
を直 ぐ摘み取 って しま うと,ち ょうど低温 処理
る と収率が 3 倍 に増 えた とされ てい る。 この添
しない場合 と同 じ結果 に な る。し たが って, ラ
加 の時期 は , 子 実体発生 のため に低温処理 した
―- 35 -―
時 に加 え るのが 良 く, 濃 度 が 1 ミ リリ ッ トル 当
た り 2 . 5 マ イ ク ログ ラムで あ る ことが 一 番 良 い
半J ってい る。 したが って コス トは非 常 に安 くな
とい う。
る と推 定 され る。
り, ス ギのあ ま皮 の ところ に大 量 に あ る ことが
2 . 4 害 菌 に対 す る培地の役割
培地 の 中 に あ って害菌 を抑え る ものは商品 と
1精 密実験 が重要 空子暉
してい くつ か あ るが, 天 然物 の中で も追究 され
てい る。 ナ ラや タ ヌギ な どの樹皮 が好 まれ てい
食用 きの こと栽培用培地 との関係 は , い ろい
るのは樹皮 の中 に害菌 を抑制す る成分が あ るた
ろな学 問領域 の境 に あ る。 は や りの言葉 だ と学
め と考 え, そ の分析 の結果, プ ロア ン トシア ニ
ン と呼ばれ る成分が主 因 で あ る と判 明 した。 こ
際領域である。 したがって,研 究の成果は,低
とん ど,体 系だっていない。業界がいろいろな
れ は きの この成 育を妨害 しないで, 害 菌 のみ 抑
試 みを され てい るが, そ れ らか ら多 くの こ とを
え る もので, ピポ ク ンア, ト リコデ ルマ な どに
研究者 が くみ と り, 条 件 を整理 して, 精 密 な実
効果 が あ る。 この研究 は人 五培 地 のみ でおが 粉
験 を してい くのが , こ れか らも重要 な研究 の手
培地 の実験 は まだだが , 天 然物か らこの よ うに
阻害剤 が 取れれば, この健康食 品 の イ メ ー ジ作
順 に なろ う。 そ の ことが , 研 究成果 を体系 化す
りに役 立 つ と思われ る。
ことに もな るに違 い ない。
この プ ロア ン トシア ニ ンは ナ ラや ク ヌ ギ よ
―- 36 -一
るのに役立 つ し, ま た業界 に研究成果 を も どす
( 東大農学部林産 科教 授 ・農学博 士)