ヒノキを使った家具で 日本の新しい文化発信

㈱ようび
ヒノキを使った家具で
日本の新しい文化発信
にこの村で﹁木工房ようび﹂と
島正幸社長︶は、二〇〇九年夏
を森林が占める。㈱ようび︵大
田郡西粟倉村は、面積の九五%
岡山県の北東端部に位置し、
兵庫県・鳥取県と境を接する英
ました﹂と笑う。
﹁その翌日に会社に辞表を出し
活動の一端を担いたいと決意。
者の説明を聞いて、自分もその
を抱いて訪問し、村役場の担当
活動﹁百年の森林構想﹂に興味
るみで取り組む森林保全・育成
して 業した。ここで育成され
という社会性の高い目標を掲げ、
の森林保全・育成にも貢献する
風を巻き起こすとともに、日本
を製造・販売して家具業界に新
しい出口が必要と聞いたときに、
需要は少なくなっています。新
すが、昔に比べ木造住宅向けの
は百十年くらいが収穫期なので
﹁木にも収穫期があり、放っ
ておくと腐ってしまう。ヒノキ
たヒノキの無垢材を使って家具
着実に歩を進めている企業だ。
ました。良い家具を作ることで、
半年後、空き家を借りて﹁木
工房ようび﹂の看板を立てた。
どの広葉樹に比べ、スギやヒノ
の家具に使われるナラやブナな
び﹂というのは、日々の暮らし
の中で用いられてこそ美しいも
のという意味だ。
た。伝統的な木組み技術を使う
る工法を開発、実用新案登録し
ヒノキはもともと住宅の柱と
して重宝されるが、家具に使う
もので、それまでの固定観念を
ついに生活強度を持つ家具を作
あげく、一年三カ月ほどして、
に没頭した。失敗を繰り返した
ために、一日十五時間毎日研究
大島社長は、ヒノキを何とか
家具に仕上げる方法を見つける
当時二十八歳。人口約一千六百
販売
キなどの針葉樹は材質が軟らか
坂根 43 ☎ 0868-75-3223
人という山村でのたった一人の
http://youbi.me/
く、接合部が壊れやすいからだ。
良い森ができるのです﹂
自分の手で家具にしたいと思い
試行錯誤を重ねながら技術を
磨く一方で、中小機構の支援を
受けて国の地域資源活用認定事
業等を活用し、国内外で積極的
に販路開拓に取り組んでいる。
6 名(役員含む)
従業員数
大島正幸社長
2009 年
業
2013 年 4 月
設 立
家具、木製小物の製造・
業 種
岡山県英田郡西粟倉村
本 社
出発だった。ちなみに、
﹁よう
企業データ
のはタブーとされてきた。西洋
ヒノキ材で家具を作る
工法を開発
0
﹁百年の森林﹂
構想に
共感し移住
同社が誕生したのは、 業者
で職人の大島社長が二〇〇九年
一月に西粟倉村を訪れたのがき
っかけ。大島社長は金沢大学で
建築学を学び、岐阜県高山市で
二年間無給で家具職人として修
業したあと市内の大手家具メー
カーに就職して四年を経ていた。
大島社長は、西粟倉村が村ぐ
0
地域資源活用
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 広報統括室広報課
商工ジャーナル 2015.4 72
LET S COLLABORATE!
すべて捨てることで、たどり着
に事業を拡大してきた。二年目
客が西粟倉村まで訪ねてくるな
でに米サンフランシスコから顧
ものではない。ヒノキは木目や
新案技術を知れば作れるという
になるが、これを読破して実用
が自分の目で見極め、経験に基
ど、手応えを感じているという。
築士の夫人も三年目に移住・合
国内店舗は現在、工房に併設
された本店のほかに東京・赤坂
づいて作業を進めるしかないと
に女性を職人として採用したの
接合部の強度さえクリアでき
れば、ヒノキは家具用木材とし
流しており、現在は大島社長を
のサントリー美術館に小物コー
いう。同業他社が追随しにくい
をはじめ、毎年一人を採用。建
ての利点のほうが大きい。色艶
含めて社員は六人。二〇一三年
ナーがある程度だが、口コミで
いた工法だという。
が美しく、香りも良く、抗菌作
四月に株式会社化した。
硬さが不均質で、一つ一つ職人
用もある。何といっても軽いの
は軟らかいが、時の経過ととも
るように丈夫でもある。加工時
ある法隆寺の柱にも使われてい
ができる。日本最古の建築物で
地域産業資源活用支援
PANブランド育成・
対象にした小規模事業者等JA
けた。続いて、同認定事業者を
地域産業資源活用事業認定を受
の開発・販売﹂という事業名で
・ノウハウを活用した木工製品
る伝統的な﹃木組み﹄等の技術
る。一四年二月に﹁美作材によ
作品を出品、認知度向上に努め
チ︶
﹂や﹁中小企業総合展﹂に
﹁N I P P O N M O N O I
C H I︵ ニ ッ ポ ン・ モ ノ・ イ
て、中小機構が主催する展示会
活用事業認定を目指す。並行し
一〇年に中小機構のアドバイ
ザーと知り合い、国の地域資源
文化になる﹂と評価された。
この道の専門家からは﹁新しい
軟らかいので座り心地も良い。
一般的に使われるナラ材に比べ
くて軽い製品に仕上げたのだ。
が、ヒノキを使うことで逆に白
な椅子の中の椅子として有名だ
ウィンザーチェアは黒くて重厚
界関係者から大きな反響を得た。
ィンザーチェアを出品、家具業
昨年秋のインテリア関連展示
会﹁IFFT﹂ではヒノキ製ウ
超える状態が続いているという。
高く、工房稼働率が一〇〇%を
てもらいたい﹂と話している。
るということを多くの人に知っ
景になるものづくり〟につなが
をきれいにできる、
〝やがて風
は﹁特に、家具を使うことで森
向上に努める方針だ。大島社長
今後は、引き続き中小機構の
支援を得て、販路開拓や認知度
は語る。
が誇りを持てます﹂と大島社長
日本の未来を良くできる。職人
います。しかも、それによって
ビジネスモデルといえる。
に硬さが増すためだ。とりわけ、
補助金にも同年四月に
お問い合わせ先
顧客が増えていてリピート率も
西粟倉村のものは﹁美作 檜 ﹂
採択された。同補助金
同社は今までもこれからも、
大島社長をはじめとする職人の
中小企業基盤整備機構
で、女性や高齢者に優しい家具
として知られ、高品質を誇る。
事業の一環として、物
技術力に大きく依存していくこ
広報統括室広報課
﹁職人が職人らしく生きてい
けるのは素晴らしいことだと思
房はほとんどないそうだ。
品まで一人ですべて仕上げる工
そもそも、現在の日本の家具
業界には、職人が素材から完成
業以来、同村のスギを使っ
た家具や小物も含めて、各種展
流サービス会社と提携、
とになる。大島社長が書いた技
☎03 ︱5470 ︱1515
職人が職人らしく生き
誇りを持てる仕事を
示会等で積極的に作品を発表。
海外からも注文を受け
術解説書はタウンページ三冊分
73 商工ジャーナル 2015.4
地域資源 活 用 事 業 認 定
を取得
主に口コミで顧客が増え、順調
られるようにした。す
「イトシロ」ウィンザーチェ
ア。ヒノキの板座は軟らかく
お尻が痛くなりにくい