台風1330号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域

IS S N 1 3 4 6 - 7 3 2 8
国総研資料
第 816 号
ISSN1346-7840
港空研資料 第 1301 号
平 成 27 年 3 月
国土技術政策総合研究所資料
TECHNICAL NOTE of
National Institute for Land and Infrastructure Management
March 2015
No.816
港湾空港技術研究所資料
TECHNICAL NOTE
OF
THE PORT AND AIRPORT RESEARCH INSTITUTE
No.1301
March 2015
台風1330号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾および
その周辺地域における被害調査報告
河合 弘泰・有川 太郎・淺井 正・本多 和彦・藤木 峻・関 克己
Damage to Ports and their Surrounding Areas in the Philippines
due to Storm Surge and Waves of 2013 Typhoon Haiyan
Hiroyasu KAWAI, Taro ARIKAWA, Tadashi ASAI, Kazuhiko HONDA, Takashi FUJIKI, Katsumi SEKI
国土交通省 国土技術政策総合研究所
National Institute for Land and Infrastructure Management
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, Japan
独立行政法人
港湾空港技術研究所
Independent Administrative Institution,
Port and Airport Research Institute, Japan
国土技術政策総合研究所資料
No. 816
(YSK-N-298)
港湾空港技術研究所資料
No. 1301
2015 年 3 月
台風1330号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾および
その周辺地域における被害調査報告
河合弘泰 * ・有川太郎 ** ・淺井
正 *** ・本多和彦 **** ・藤木
要
峻 ***** ・関
克己 *****
旨
2013年11月8日午前,台風1330号(アジア名:Haiyan,フィリピン名:Yolanda)は,フィリピンの
中東部に位置するレイテ湾を中心気圧895hPaという歴史的にも猛烈な勢力を保って西進し,それに伴
い発生した高潮は湾の北端に位置するタクロバンの街を襲った.しかし,この台風1330号による高潮
や波浪を捉えた観測データはほとんどない.そのため,国土技術政策総合研究所および港湾空港技術
研究所では,台風1330号のコースに沿った幾つかの港湾や空港において,事前に実施した高潮および
波浪の推算値の妥当性も確認しながら,施設の被害等に関する2回の現地調査を実施した.さらに,
現地調査において得られた情報をもとに港湾運営事務所を活用した住民避難行動を整理し,住民避難
において公共施設の避難所への活用に向けた配慮点を考察した.また,台風1330号のコースをはさむ
多くのケースのモデル台風を用いてフィリピン中部を対象とした高潮や波浪を推算し,その特徴を考
察した.本資料は,これらの現地調査結果および考察の結果を報告するものである.
本研究で明らかになったことは以下のとおりである.
(1) 概ねどの港湾でも,事務所等の窓ガラスが割れ,屋根が壊れ,雨漏りがするなど,風や雨による
被害が生じていた.
(2) 沿岸部では一時的に避難できる場所の確保が重要であり,港湾運営事務所のような既存のRC構
造の高層の建築物を一時的な避難に活用することが期待される.
(3) 台風1330号はフィリピン中部の限られた範囲に高潮をもたらしたに過ぎない.台風1330号の進
路が南北にずれると,タクロバンやエスタンシアの周辺以外に3mを超える高潮偏差が生じ得る.
(4) 台風1330号によってタクロバン周辺の潮位は,北寄りの風で下がった後,吸い上げによる峯の伝
播と南寄りの風で急上昇した.
キーワード:台風,高潮,高波,被害,現地調査,数値計算,避難行動
*元 港湾空港技術研究所 海洋情報研究領域長
(現 国土交通省九州地方整備局鹿児島港湾・空港整備事務所長)
**港湾空港技術研究所 海洋情報・津波研究領域上席研究官
***国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部沿岸防災研究室長
****港湾空港技術研究所 海洋情報・津波研究領域津波研究チーム主任研究官
*****港湾空港技術研究所 海洋情報・津波研究領域海象情報研究チーム研究官
〒239-0826 横須賀市長瀬3­1­1 独立行政法人 港湾空港技術研究所
電話:046-844-5052 Fax:046-844-1274
e-mail: [email protected]
i
Technical Note of NILIM
No. 816
(YSK-N-298)
Technical Note of PARI
No. 1301
March 2015
Damage to Ports and their Surrounding Areas in the Philippines
due to Storm Surge and Waves of 2013 Typhoon Haiyan
Hiroyasu KAWAI * , Taro ARIKAWA ** , Tadashi ASAI ***
Kazuhiko HONDA **** , Takashi FUJIKI ***** , Katsumi SEKI *****
Synopsis
On November 8, 2013, Typhoon 1330 (hereinafter, T1330), named Haiyan in Asia or Yolanda in the
Philippines, crossed the Leyte Gulf in the east-central Philippines with a 895 hPa central pressure, and
triggering disastrous storm surge flooding, in particular at Tacloban which is located on San Pedro and San
Pablo Bay in the northwest head of Leyte Gulf. Unfortunately no tide record and no wave data are available
for the Leyte Gulf coast during the passage of T1330. Therefore, the field surveys of the damage to port
facilities, the effects of wind, storm surge and waves of T1330 were carried out at Tacloban Port and Airport
on Leyte Island and at several ports on Panay Island, where T1330 crossed with high intensity. Those
surveys include the interviews on the evacuation attitudes of residents against storm surges. Moreover, this
study estimated the storm surges and waves due to T1330 and model typhoons having parallel tracks to
T1330 in the middle-latitude zone of the Philippines by using numerical simulation.
This paper summarizes the results of field surveys, characteristics of T1330 and those model typhoons,
and the advantages and the problems of locating public facilities along coast for safe evacuation during and
after storm surges. The major outputs are as follows:
(1) The windows and roofs of the port office buildings were broken owing to intense wind at most of the
ports.
(2) As sufficient temporary evacuation facilities are required for safety evacuation around a coastal area,
the existing multistory buildings with RC structures, such as port management offices, are expected to
be used for temporary evacuation.
(3) The simulation with T1330-based model typhoons showed that the storm surge can exceed 3m not only
around Tacloban and Estancia.
(4) The simulation led at Tacloban that the storm surge waveform began with a trough due to north wind and
subsequently showed a quick rise up due to the suction-induced crest and the drift by south wind.
Key Words : typhoon, storm surge, wave, damage, field survey, numerical simulation, evacuation
*
Ex-Director of Marine Information Division, PARI
(Director-General of Kagoshima Port and Airport Office, Kyushu Regional Development Bureau, MLIT)
**
Principal Researcher, Marine Information and Tsunami Division, PARI
***
Head of Coastal Disaster Prevention Division, Marine and Disaster Prevention Department, NILIM
****
Senior Researcher, Tsunami Group, Marine Information and Tsunami Division, PARI
*****
Researcher, Marine Information Group, Marine Information and Tsunami Division, PARI
3-1-1 Nagase, Yokosuka, 239-0826 Japan
Phone:+81-46-844-5052 Fax:+81-46-844-1274
e-mail:[email protected]
ii
目
次
1.まえがき ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
2.台風1330号の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
3.現地調査概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2
3.1 調査行程および調査メンバー ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2
3.2 調査方法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2
4.被害調査結果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
3
4.1 レイテ島東部 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
3
4.2 パナイ島北部 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
4
5.住民避難行動調査結果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
8
5.1 港湾運営事務所を活用した住民避難の事例 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
8
5.2 住民避難における港湾運営事務所の活用に向けて ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14
6.数値計算 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 18
6.1 計算条件 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 18
6.2 数値計算モデル ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 19
6.3 台風1330号とモデル台風群による高潮推算 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 19
6.4 台風1330号による高潮・波浪推算(レイテ湾) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 19
6.5 台風1330号による高潮・波浪推算(パナイ島北部周辺) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 22
7.まとめ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 23
8.あとがき ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 24
謝辞 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 24
参考文献 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 24
付録A 事前配布した調査票 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 25
付録B 痕跡調査票 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 26
付録C 施設構造物諸元の調査結果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 28
付録D 提供された資料 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 35
付録E 事前に実施した高潮推算結果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 38
iii
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
1. まえがき
4章では,港湾等における被害および測量した痕跡に関
する調査結果について述べる.
2013年11月8日午前,台風1330号(アジア名:Haiyan,
5章では,港湾運営事務所を活用した住民避難の事例お
フィリピン名:Yolanda)はフィリピンの中東部に位置す
よび住民避難における港湾運営事務所の活用に向けた配
るレイテ(Leyte)湾を中心気圧895hPaという歴史的にも
慮点等ついて述べる.
猛烈な勢力を保って西進し,その高潮は湾の北端に位置
6章では,台風1330号による高潮および波浪の数値解析
するタクロバン(Tacloban)の街を襲った.さらに台風
結果および台風1330号と同じようなコースを通るモデル
1330 号 は , ヴ ィ サ ヤ ン ( Visayan ) 海 を 越 え , パ ナ イ
台風群による高潮の数値解析結果について述べる.
(Panay)島を横切った.これらの時の高潮や波浪を捉え
なお,本資料の一部の概要は,淺井ら(2014),河合
た観測データはほとんどなく,その状況を調べるために
ら(2014a,b)およびKawai et al.(2014)に記載されてい
は,現地調査とともに,高潮および波浪の推算が不可欠
る.
である.また,同じような台風が少し異なるコースで再
来する可能性もあり,顕著な高潮が発生し得る海域を調
2. 台風1330号の概要
べておくことは,将来の沿岸防災にも役立つ.そこで,
事前に実施した高潮および波浪の波浪推算結果をもとに,
図-2.1に,台風1330号を含むフィリピンに中心気圧が
台風の道筋に沿った幾つかの港湾や空港を調査対象に選
930hPa程度以下で上陸した主要な台風の経路と中心気圧
定し,図-1.1に示す推算値の妥当性も確認しながら,施
の推移を示す.各時刻の緯度・経度・中心気圧は気象庁
設の被害を調査した.また,台風1330号のコースをはさ
の確定値である.台風1330号は,レイテ湾やヴィサヤン
む約50ケースのモデル台風を用いてフィリピン中部を対
海を通過した時の中心気圧は895hPaであり,この値は
象とした高潮や波浪を推算し,その特徴を考察した.
1951年以降にフィリピンに上陸した台風の中では最低で
また,現地調査結果をもとに,住民避難行動を整理し
ある.台風1330号はフィリピンに上陸した台風の中では
たところ,周辺住民が港湾運営事務所へ自主避難した事
南限に近い.フィリピンに上陸した主要な台風では,台
例,および,被災後に港湾運営事務所を被災者に開放す
風1330号のように西進するものについては,1970年以降
るとともに,支援物資の配給先として活用された事例が
に集中している.
得られた.そこで,これらの事例をもとに,沿岸部の住
台風1330号に伴う被害は強風によるものだけではなく,
民避難において公共施設の避難所への活用に向けた配慮
沿岸部においては台風に伴って発生した高潮および高波
点を考察した.
による被害が生じた.この台風による死者数は6,190名,
以下,2章では,台風1330号の概要について述べる.
行方不明者数は1,785名,被災者数は1,410万人であり,建
3章では,2回に分けて実施した現地調査について,そ
物被害も110万棟にも上る(2014年1月13日現在).
の調査行程,調査方法等について述べる.
図-2.1 台風 1330 号とフィリピンに来襲した主要な台風
図-1.1
簡易モデルによる高潮の推算値と現地調査地点
の経路と中心気圧の推移
-1-
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
3. 現地調査概要
3.2 調査方法
現地調査では,各港やタクロバン空港において,風・
3.1 調査行程および調査メンバー
図-1.1に,事前に簡易モデルで推算した高潮偏差の値
波浪・潮位の変化や施設の被害とその対応について関係
とともに現地調査地点を示す.台風1330号によるフィリ
ず,事前に各港に調査票(付録A)を配布し,調査当日
ピンにおける被害等について,現地調査を2回に分けて
に担当者から聞き取りを行った.調査項目は,①台風時
実施した.
の気圧,風,潮位,②浸水高さを示す痕跡の有無,③他
者にヒアリングを行った.ヒアリングにあたっては,ま
1回目の現地調査については,フィリピン国運輸省か
の被災情報入手先の有無,④港湾施設の破損,⑤周辺の
らの要請を受けて実施したものであり,タクロバン周辺
被災状況,⑥災害情報とこれに対する対応,⑦過去の被
の被災概況を把握するために,レイテ島とサマール
災経験の7項目である.そして,そのヒアリング調査の結
(Samar)島の①~⑥を対象とした.1回目の現地調査は,
果を踏まえながら,被害の状況を写真に撮り,護岸や岸
JSCE-PICE合同災害緊急調査団の先遣隊をかねており,
壁の天端,建物内に残る浸水の痕跡,証言に基づく浸水
その結果を受けて,JSCE-PICE 合同災害緊急調査団がレ
位の高さを海面から計測した.計測方法には主にレーザ
イテ島とサマール島の浸水深および遡上高を調査してい
ー測距計を用いた水準測量を採用したが,一部の簡易な
る(Tajima ら,2014).
計測はスタッフのみを用いて行った.計測値から計測当
2回目の調査は,パナイ島北部の⑦~⑪とレイテ島の
時の天文潮を引いて,観測基準面上の高さに換算して計
④⑤を対象としたものである.なお,レイテ島では第1
測値を整理した.なお,本資料中では現地時刻で事象の
回の調査で得た情報の確認や施設構造物断面の計測に重
発生時刻を記載する.
きを置くとともに,住民の避難行動についても調査した.
これら2回の現地調査の行程を表-3.1および表-3.2に
表-3.3
示し,また,それらの調査メンバーを表-3.3および表-3.4
第1回調査メンバー(所属等は当時のもの)
所
属
役
職
氏
名
に示す.
表-3.1
日 程
2013 年 12 月 3 日
12 月 4 日
12 月 5 日
12 月 6 日
12 月 7 日
日 程
2014 年 1 月 28 日
1 月 29 日
1 月 30 日
1 月 31 日
2月 1日
2月 2日
2月 3日
2月 4日
第1回調査行程
場 所
マニラ
タクロバン港
タクロバン空港
パロ
ギワン
ギポルロス
マラブット
タナワン
日本
表-3.2
港湾空港技術研究所
アジア・太平洋沿岸防災
研究センター
内
入
表-3.4
第2回調査メンバー(所属等は当時のもの)
所
現地調査
内
入
属
役
職
氏
名
港湾空港技術研究所
海洋情報研究領域
領域長
河合弘泰
国土技術政策総合研究所
沿岸海洋・防災研究部
沿岸防災研究室
室長
淺井
港湾空港技術研究所
アジア・太平洋沿岸防災
研究センター
主任研究官
本多和彦
港湾空港技術研究所
海洋情報研究領域
研究官
藤木
動
国
第2回調査行程
場 所
マニラ
エスタンシア港
クラシ港
ドマギット港
リパタ港
カティクラン港
マニラ
タクロバン空港
タクロバン港
パロ
マニラ
マニラ
日本
有川太郎
容
国
現地調査
移
帰
上席研究官
正
容
国
現地調査
現地調査
移
動
現地調査
資料整理
セミナー
帰 国
-2-
峻
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
4. 被害調査結果
汀線が着陸帯の間際まで後退していた.また,着陸帯の
東側のエプロンで草が北西に倒れ,着陸帯の西方の通信
4.1 レイテ島東部
(1)タクロバン港
施設では西向きの流れで地盤が洗掘されているのを確認
した.これらは証言にあった西向きの流れと合致する.
本資料では,レイテ島での調査結果については,図-4.1
に示すタクロバンとパロ(Palo)の調査地点について報
告する.なお,以下では,主として1回目の調査の再確
認を含む2回目の調査の結果を記す.
レイテ湾の北西端にある小湾をサン・ペドロ・アンド・
サン・パブロ(San Pedro and San Pablo)湾と呼び,タク
ロバン港の位置はその奥に近い.フィリピン港湾公社
(PPA)の関係者から以下の情報を得た.以降では,ヒ
アリングで得た情報は下記のように箇条書きで記す.
・ 風は,6時頃から7時頃にかけて最も強く,東寄りであ
った.高潮は1回のみ北から来襲し,その水位は7時か
ら7時半にかけてピークとなり,事務所も浸水した.波
はそれほど高くなかった.
図-4.1
・ 埠頭近くに錨泊していた1隻の船がエプロンに打ち上
タクロバンとパロの周辺における調査地点
げられ取り残された.コンテナや沖泊していた船の中
には,北方の海岸に打ち上げられたものもある.
・ 台風後に港内や港外の海底を調べると,海中に砂の山
がたくさんあった.
写真-4.1がエプロンに取り残された船であり,第2回調
査のときもそのままであった.岸壁の高さは港内の地区
によって異なり,事務所の周りはDL+3.1m程度である.
事務所の1階の床はこれより0.5m程度高く,当時の天文潮
写真-4.1
位がDL+0.0m程度であったことから,3.6mを超える高潮
タクロバン港の岸壁に取り残された船
(第1回調査)
が来襲したことになる.図-1.1よりも空間分解能を上げ
た6章の高潮推算値も4.0m程度でこれに近い.
(2)タクロバン空港
タクロバン空港は,北に向かって延びる幅1kmほどの
平坦な半島の東半分を占め,サン・ペドロ・アンド・サ
ン・パブロ湾に面している.旅客ターミナルや空港事務
所では,屋根や窓が壊れ,建物の角の地盤には強い流れ
で生じたと思われる洗掘も見られた.空港事務所関係者
から以下の情報を得た.
写真-4.2
タクロバン空港の堤防(第1回調査)
写真-4.3
タクロバン空港の北端(第2回調査)
・ 空港事務所周辺では,水位に6時頃,7時頃,8時頃の3
回のピークがあり,3回目は梁(地盤から4.2m)に達
し,11時頃には引いた.西向きの流れだった.
・ 着陸帯(舗装部分)の北端から汀線までの距離は,台
風前の150m程度から50m程度になった.
これらを踏まえて踏査すると,空港の東側の堤防には,
写真-4.2に示すような,陸側への決壊や法尻地盤の洗掘
が見られた.空港の北端では,写真-4.3に示すように,
-3-
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
(3)パロ
・ 港湾公社の港の北側に隣接する桟橋に接岸していたバ
タクロバンの南に位置するパロの海岸でも,写真-4.4
ージから油が流出し,時刻は不詳だが事務所にも到達
に示すように,護岸の決壊,法尻地盤の洗掘,中詰石の
した.台風直後はその油の跡が建物の中にも残ってい
後背地への飛散が見られた.この護岸の高さはDL+3.4m
たが,清掃をしたため今は明瞭ではない.
程度である.この公園の南隣りには写真-4.5に示すホテ
・ 突堤型の桟橋の床板は,台風前から陥没している箇所
ルがある.床面の高さがDL+3.2m程度の1階では,コンク
があったが,台風でさらに破壊が進行した.埋立護岸
リート・ブロックと化粧版からなる厚さ15cmほどの隔壁
は,吸い出しによって広範囲が陥没した.
が破れていた.浸水位を示す痕跡は見つからなかった.
これらを参考に事務所と荷役施設を踏査した.写真
-4.6において,右手(北側)の岸壁や岩場が油で黒ずん
4.2 パナイ島北部
(1)エスタンシア港
でいるのが分かる.事務所の右隣りの建物では,海に面
エスタンシア(Estancia)は,周りを島に囲まれた小さ
た.事務所とその右隣りの建物において,明瞭な浸水の
な内湾の奥に位置し,フィリピン港湾公社の港と市営の
痕跡を見つけることはできなかったが,関係者からのヒ
港がある.まず,港湾公社の港で港湾公社の関係者から
アリングを通じて最も確からしい3点を選び,その高さを
以下の情報を得た.
計測すると,DL+4.8~5.1mであり,これは高潮偏差で4.1
・ 9時半頃から北風が吹き始めた.そして,事務所2階の
~4.4mに相当する.6章の高潮推算値も4.0m程度でこれ
窓ガラスが割れ,エアコン室外機が床に落ち,隙間風
に近い.写真-4.7が吸い出しで壊れた埋立護岸である.
で居室を仕切るガラスも割れた.11~15時にはさらに
港湾公社の港の北方にある市営の港でも,目撃者から
した厚さ約15cmのコンクリート外壁の一部が壊れてい
強い東風となった.
以下の情報を得た.
・ 11時と12時の間に急に事務所の1階が浸水し,15時頃
・ 風は10時半頃から強まった.最初のうちは北風で,後
まで引かなかった.高潮の来襲はこの1回のみであり,
に東風に変わった.
この時の波浪は1m程度であった.
・ 風速と潮位のピークは12時半頃であった.魚の仕分場
では胸の高さまで浸水し,波しぶきは屋根の上まで届
いた.屋根の上に逃げた人も1人いた.
・ 風と海水で事務所1階が破壊された.事務所の前に置い
てあったコンテナが事務所の横へ流された.大きな漁
船の衝突で岸壁が破壊された.
写真-4.8が破壊された護岸,浸水した仕分け場である.
この写真の左奥には写真-4.9に示す事務所があり,屋根,
一階の窓や壁が壊れていた.建物内に明瞭な浸水の痕跡
を見つけることはできなかった.事務所の左手に2つのコ
ンテナが傾いて止まっているのを確認した.
写真-4.4
マッカーサー上陸記念公園の護岸
(第2回調査)
写真-4.6
写真-4.5
オリエンタル・レイテ・ホテル
(第1回調査)
-4-
エスタンシア港(港湾公社)の事務所
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
(2)クラシ港
クラシ(Culasi)港は,パナイ島の主要都市の一つであ
るロハス(Roxas)市で,西に延びる小さな岬の先端付近
に位置する.クラシ港の港湾公社の関係者から以下の情
報を得た.
・ 風速は10時~13時に強かった.防波堤の外では波高が
5mを超えているように見えた.
・ 防波堤や岸壁に被害はなく,岸壁や事務所の浸水もな
かった.ただし,事務所の窓は強風で割れた.
・ 港内には4隻の船が係留されていた.そのうち2隻は
swayが大きくなって14時頃に係留索が切れ,1隻は港
写真-4.7
内を漂流して防波堤で止まり,もう1隻は港外へ流され
エスタンシア港(港湾公社)の吸い出された
た.
護岸
埠頭の様子を写真-4.10に示す.左奥に見える防波堤が
シブヤン(Sibuyan)海からの波浪をさえぎる役割をした.
岸壁の天端を測るとDL+2.9mであり,これは台風接近時
の天文潮位より2.1mほど高い.岸壁の一部は斜路になっ
ていて遡上しやすく,事務所の地盤は岸壁よりやや低い.
それにも関わらず事務所が浸水しなかったことは,エス
タンシア港のような顕著な高潮が発生しなかったことを
意味する.図-1.1の高潮偏差は顕著でなく,これより空
間分解能を上げた6章の推算値でも0.7m程度と小さい.
(3)ドマギット港
ドマギット(Dumaguit)港は,東西に延びる半島の先
端で,シブヤン海とは反対側に位置する.
・ 強風で事務所や旅客ターミナルの屋根や窓が壊れた.
写真-4.8
・ 潮位は,13時~15時に最も高く,タイヤ型防舷材から
エスタンシア港(市営)の岸壁の破壊
下に0.5m程度であり,これは高潮偏差で0.9mに相当す
る.この時の港内の波高は0.5~1mであり、この状況
を撮影した映像もある.
・ 防波堤や岸壁に被害はない.
岸壁の高さを計測するとDL+3.1mであり,台風最接近
時の天文潮位より2mほど高い.したがって,クラシ港と
同様,顕著な高潮は発生していなかった.6章の高潮推算
値も1.0m程度と小さく,ヒアリングによる潮位から推定
写真-4.9
した高潮偏差0.9mと近い.
エスタンシア港(市営)の事務所
(4)カティクラン港
カティクラン(Caticlan)港は,パナイ島の北西端にあ
り,1kmほど離れたボラカイ(Boracay)島への玄関にな
っている.西側はスールー(Sulu)海,東側はシブヤン
海に面している.当日責任者として港湾管理事務所に残
っていた職員から,以下の情報を得た.
・ 風は14時~16時に強かった.
写真-4.10
・ ターミナルビル1階では,(風が強かった時間帯から半
クラシ港の埠頭
-5-
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
日近く後の)24時頃に30分間ほど,床上10cm程度の浸
(5)リパタ港
水があった(岸壁から60cmの高さに相当).このとき
リパタ(Lipata)港はパナイ島の西岸に位置し,スール
ビルの背後の道路も浸水した.
ー海に面している.埋立と桟橋構造を接合した埠頭を有
・ 波高は,風が強かった頃に1.5~2m,高潮時に2m程度
している.リパタ港の港湾公社の関係者から以下の情報
であった.ただし,ターミナルの周りでは浸水時にそ
を得た.
れほど波立ってはいなかった.
・ 13時頃から北風が強くなり,その後の風向は不明であ
るが,14時頃に最も強く,17時半頃まで強かった.
・ 岸壁や桟橋に被害はなかった.
・ 潮位は,14時半と15時の間の10~20分間に最も高かっ
写真-4.11にターミナルビルとその周辺の様子を示す.
この浸水位を測量したところDL+3.7mであり,浸水時の
た.この高潮は津波のように急に現れ,すぐに消えた.
24時の天文潮位より2.4mも高いことが分かった.ところ
事務所が浸水した時の写真もある.事務所から沖を見
が,図-1.1で高潮偏差は顕著でなく,6章の推算値も0.5m
て左手から来襲し,右手に抜けた.
・ 15時半頃から16時半頃には,埋立護岸の前面から波し
と小さく,何れも台風が最接近した昼間に最大となった.
ぶきが電灯(照明)の高さまで上がった.
現地で観察された高潮の概況を再現するには,6章の数値
・ 埋立地のインターロッキング・ブロックは,波によっ
計算で考慮されていない他の要素を考える必要がある.
て事務所の前に打ち寄せられたものもあるが,多くは
どこかに流失した.
・ 埋立護岸のうち事務所から向かって左面では,護岸に
穴が開き,前面の捨石の一部が護岸に沿って波打ち際
の方へ移動した.
・ 埋立護岸の沖側に接した桟橋の一部に穴が開いた.
・ 埋立護岸や桟橋の左遠方で,浅瀬の縁にあたる位置に
は,岩の列が現れた.
・事 務 所 周 辺の 集 落 (フ ィリ ピ ン で はバ ラ ン ガイ
(barangay)という.)は200~300世帯が暮らしてい
たが,その90%ほどの家屋が主に風,そして部分的に
は高潮や波浪により壊れた.
写真-4.11
これらの情報を参考に踏査を行った.写真-4.12は旅客
カティクラン港の岸壁とターミナルビル
ターミナルビルであり,屋根や窓が壊れている.この建
物の隣に事務所があり,浸水当時の写真を見ながら浸水
高を計測するとDL+3.4~3.7mであり,当時の天文潮位
(DL +0.8m)より2.6~2.9m近く高い.図-1.1で高潮偏差
は顕著でなく,6章の推算値も0.9mと小さく,波浪による
効果などといった他の要素を考えないと説明がつかない.
写真-4.13の左は埋立護岸に接した桟橋の端が欠落し
たものである.護岸の前面で重複波ができ,その揚圧力
写真-4.12
によって鉄筋コンクリートの床板が吹き飛ばされたもの
リパタ港の旅客ターミナル
と考えられる.写真-4.13の右は岸壁に空いた穴であり,
吸出しによるものと考えられる.沖合に岩の列ができて
いるのも目視によって確認した.海の色がその辺りで変
化しており,この港がリーフ状の地形になっているもの
と思われる.
写真-4.13
リパタ港の桟橋および岸壁の破壊
-6-
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
(6)内陸部
第2回調査においてパナイ島の各調査港湾等を移動す
る際に,移動の車中から確認できた被害の様子を以下に
記す.なお,その経路の概略を図-4.2に示す.
エスタンシア港からクラシ港の移動区間については,
に示すように道路沿いの椰子の木の中には,幹が倒れた
り,特定の方向の葉だけがちぎれたりしたものがあった.
それらの方角は概ねそろっており,海から陸(北から南)
に吹いた強風によるものと考えられる.木々は,列をな
して立っているところもあったが,日本の防風・雪・砂
林ほどの密度はなく,また,石垣島等にある防風石垣も
見られなかった.建物については,コンクリート製のも
のは都市部を除き少なく,写真-4.15に示すように道路沿
いは家屋には木・竹の壁にトタン葺きの家屋が多く,そ
図-4.2 パナイ島における移動経路(Google マップを加
の中には屋根の全てまたは一部が壊れているものもあっ
た.なお,堅牢な構造となっている教会の建物に被害は
工して作成,©2014 Google –
見られなかった.道路沿いの電柱については,木,モル
Google -)
地図データ©2014
タル,金属製八角形断面の3種類が見られ,それらの中に
は転倒・傾斜・折れ曲がったものもあった(写真-4.16).
これら被害が生じている電柱は,概ね海から陸(北から
南)に向かって倒れていた.このような風による被害は,
移動経路の道路は内陸を通っているため,移動中の車内
から見渡せる範囲においては,沿岸部のエスタンシア港
やクラシ港の周辺に比較して小さい.
パナイ島の内陸部における風による被害程度の定性的
に把握するため,写真-4.17および写真-4.18に示すよう
に,およそ同じ構造をした学校の被害程度を指標として
評価すると,エスタンシア港からクラシ港の区間が最も
大きく,次いで,クラシ港からドマギット港の区間,ド
マギット港からカティクラン港の区間となり,そして,
写真-4.14
パナイ島西部に位置するカティクラン港からリパタ港の
被害が生じた椰子の木
(エスタンシア港~クラシ港)
区間では風の被害は特に小さい.これは,パナイ島の東
部に上陸した台風1330号は上陸後に勢力を減衰したこと,
そして,パナイ島西部は山間地が広がっていることが原
因だと考えられる.
ドマギットに向かう道路のうちシブヤン海に面する区
間では,被災した護岸が確認できた.これは,後述の高
潮および波浪の推算結果から,高潮による被災ではなく,
波浪による被災であると考えられる.
写真-4.15
トタン葺きの家屋
(エスタンシア港~クラシ港)
-7-
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
5. 住民避難行動調査結果
5.1 港湾運営事務所を活用した住民避難の事例
(1)エスタンシア港および周辺集落
エスタンシア港(図-5.1の①)は,図-5.2に示すよう
にパナイ島の北東部,周りを島に囲まれた小さな内湾の
奥に位置する.フィリピン港湾公社(PPA)が管理運営
する港湾と市営の港湾があり,本調査はPPAが管理運営
する港湾を対象とした.マニラ近郊のバタンガス
(Batangas)港行き航路があり,セメント,米等の生活
物資を取り扱うほか,周辺で生産された水産物やサトウ
キビ加工品を輸送している.
写真-4.16
図-5.2および写真-5.1の港内平面図に示すように,エ
被害が生じた電柱
スタンシア港は沖合の小島群の島影に位置するため,外
(エスタンシア港~クラシ港)
かく施設が整備されていない.物揚場が砂浜を埋め立て
て整備されており,沖側に延びる桟橋に船舶が係留して
いる.事務所の左手に,沿岸警備隊の小さな桟橋が設置
されている.
聞き取り調査の結果から,当該港湾では9時半から北風
が吹き始め,11~15 時にはさらに強い東風となった.強
風のため周辺住民約70名が自主的に事務所に避難した.9
時半頃から1 階に滞在し,11 時頃に2 階に上がった.事
務所は1階のみが浸水した.この浸水は,風向が東向きに
変わってから,11 時と12 時の間に急に生じ,15時頃まで
続いた.また,エスタンシア港における高潮推算値の時
系列変化は図-5.3に示すとおりであり,聞き取り調査の
結果とよく一致している.
写真-4.17
港湾運営事務所は写真-5.2に示すようにRC構造の2階
学校の状況(エスタンシア港~クラシ港)
建ての建物である.台風1330号の高潮により1階が浸水し,
風による屋根や2階の窓ガラスの破損があったものの,建
物の構造には大きな被害がみられず,住民の一時避難に
は問題なかった.これに対して,事務所に隣接する木造
の倉庫(写真-5.3)およびその背後にある沿岸警備隊の
桟橋(写真-5.4)は台風1330号による高潮や風により半
壊していた.
これに対して,周辺集落では,台風1330号による高潮
や風により全壊もしくは半壊している住宅が多くみられ
た.これらの住宅は,写真-5.5に示すように,沿岸の道
路に沿って建てられており,現地のがれきの状況から木
造構造が多くみられたと推測される.
写真-4.18
学校の状況(カティクラン港~リパタ港)
-8-
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
写真-5.2
図-5.1
港湾運営事務所(エスタンシア港)
台風 1330 号の経路と調査対象港湾の位置図
図-5.2
エスタンシア港周辺の平面図
写真-5.1
写真-5.3
破壊された木造倉庫(エスタンシア港)
エスタンシア港平面図
写真-5.4
破壊された沿岸警備隊の桟橋(手前)
(エスタンシア港)
図-5.3
写真-5.5
エスタンシア港における高潮推算値の経時変化
-9-
周辺集落の被災状況(エスタンシア港)
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
(2)ドマギット港
ドマギット港(図-5.1の③)は,図-5.4に示すように
細い半島の先端部にあり,シブヤン海とは反対側に位置
する.管理運営はPPAが行っている.本港も,マニラ近
郊のバタンガス港からの航路が就航している.
聞き取り調査によると風は12時~15時に強く,大雨も
伴った.風向は14時にSEからSWに変わった.潮位は,
13時~15時に最も高く,タイヤ型防舷材の下0.5m 程度に
達した.この時の港内の波高は0.5~1mであった.防波堤
や岸壁に被害はなかった.ドマギット港における高潮推
写真-5.6
港湾運営事務所(ドマギット港)
算値の時系列変化は図-5.5に示すとおりであり,聞き取
り調査の結果とよく一致している.
港湾運営事務所は写真-5.6に示すようにRC構造の2階
建ての建物であり,写真-5.7に示すように台風1330号の
風により屋根や窓ガラスの破損がみられた.事務室のあ
る2階は雨漏りがするため,居室を移しているものの建物
の構造には大きな被害がみられなかった.
このため,被災直後は,写真-5.8に示すように1階にあ
る旅客待合所を被災者に開放していた.また,写真-5.9
に示すように事務所のスペースを活用して,緊急支援物
写真-5.7
資の整理や配給を実施していた.
図-5.4
港湾運営事務所の屋根の一部が破損
(ドマギット港)
ドマギット港周辺の平面図
写真-5.8
港湾運営事務所1階の旅客待合所を被災者に
開放(提供:Mr. Erdie S. Cocoy, PPA)
写真-5.9
図-5.5
港湾運営事務所内で緊急支援物資の整理
(提供:Mr. Erdie S. Cocoy, PPA)
ドマギット港における高潮推算値の経時変化
- 10 -
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
写真-5.10
隣接する沿岸警備隊の詰所(ドマギット港)
写真-5.14
写真-5.11
旅客ターミナル内(カティクラン港)
カティクラン港平面図
写真-5.15
背後の集落(トタン造り)
(カティクラン港)
(3)カティクラン港および周辺集落
カティクラン港(図-5.1の⑤)の平面図は,写真-5.11
に示すとおりである.港湾の管理運営は民営で行ってい
る.対岸のボラカイ島行きの小型の旅客船が頻繁に往来
しているほか,桟橋の先端からマニラ方面のフェリー航
写真-5.12
旅客ターミナル兼港湾運営事務所
路が就航している.旅客ターミナルビルは,写真-5.12
(カティクラン港)
および写真-5.13に示すようなRC構造のビルであり,写
真-5.14に示すように1階部分に広い待合スペースが設置
されていた.また,港湾運営事務所は,ターミナルビル
の2階部分に設置されていた.
台風1330号は11月8日の夜間にカティクラン港を通過
した.浸水は地盤高から数cm程度であり,大きな被災に
はいたらなかった.台風通過の間,旅客ターミナルは閉
鎖されており,港湾運営事務所の職員数名が2階の事務室
に待機していた.
背後の集落は,写真-5.15に示すようにトタン造りであ
った.集落は,港湾と空港の間にある平地に密集してお
写真-5.13
り,港湾および空港の建物の他,近くに大きなRC製の建
旅客ターミナル兼港湾運営事務所遠景
物は見られなかった.
(カティクラン港)
- 11 -
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
(4)リパタ港および周辺集落
リパタ港(図-5.1の④)の平面図は,図-5.6に示すと
おりである.管理運営はPPAが行っている.砂浜に突堤
を整備して,その先に桟橋を整備している.図の赤色の
部分に建物と野積場がある.主要な貨物として建設資材
(砂,石)を扱っており,対岸の主要港であるコロン港
からの航路が就航している.
以前,旅客船が就航しており,写真-5.16に示すよう
に旅客ターミナルが港湾運営事務所の前に残っていた.
旅客ターミナル内の様子は写真-5.17に示すとおりであ
写真-5.16
り,待合スペースは一定程度の広さがある.構造はRCだ
旅客ターミナル(中央)と港湾運営事務所
(右側)(リパタ港)
が,屋根が萱葺きであったため風により飛ばされており,
窓ガラスが割れていた.
旅客ターミナルの背後は,写真-5.18に示すように港湾
運営事務所と沿岸警備隊の詰所があり,高潮により数cm
程度の浸水被害はあったものの構造物の破壊には至って
いなかった.
隣接する砂浜上に,写真-5.19に示すようにトタン造り
(写真-5.19の奥の茂み内の白い建物)の集落があり,台
風1330号の風により一部破損していた.
写真-5.17
旅客ターミナル内(リパタ港)
(5)クラシ港および周辺集落
クラシ港(図-5.1の②)の平面図は,写真-5.20に示す
とおりである.管理運営はPPAが行っている.聞き取り
を行ったところ,現在は貨物の取扱を停止中とのことで
あった.
港湾運営事務所の概観は写真-5.21に示すとおりであ
る.階上に見張所があり,写真-5.22に示すように台風
1330号の風を受けて屋根と窓ガラスが破損していた.平
面図の右下に沿岸警備隊詰所があった.
背後の集落は,写真-5.23に示すようにトタン造りの建
物であり,平地だけでなく,背後の高台にも建設されて
写真-5.18 港湾運営事務所(左側)と沿岸警備隊の詰所
いた.ヒアリングによれば,高台の影響により,集落の
(右側)(リパタ港)
付近は風が減衰し,構造物への被害は比較的少なかった.
写真-5.19
図-5.6
リパタ港平面図
周辺の集落(白いトタン造りの建物)
(リパタ港)
- 12 -
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
(1)タクロバン港および周辺地区
タクロバン港(図-5.1の⑤)は,管理運営はPPAが行
っている.主要な貨物としてコンテナを扱っており,被
災調査時は世界各国から救援物資を受け入れている.荷
役作業等のオペレーションは,被災前は地元業者により
行われていたが,被災調査時にはフィリピン国マニラ市
内に本社のある国際ターミナルオペレーターのICTSI社
(International Container Terminal Service Inc.)が代行して
行っていた.
港湾運営事務所は,写真-5.24に示すようにRC製の3階
建ての建物である.構造自体には大きな被害は見られな
写真-5.20
かったが,写真-5.25に示すように,高潮が浸水した部分
クラシ港平面図
では,窓ガラスが割れるなどしている.
背後の集落は,写真-5.26および写真-5.27に示すとお
りである.市街地にはRC構造の複数階の建物があり,台
風1330号による被災を受けて,下層階の壁や窓ガラスは
破損しているが,構造の骨組みは残っていた.タクロバ
ン港周辺は平坦になっており,鉛直避難が重要と考えら
れる.また,トタン造りの建物も多く,台風1330号の高
潮による流れの影響により,大きく被災していた.
写真-5.21
港湾運営事務所(クラシ港)
写真-5.24
写真-5.22
風で破損した見張所(クラシ港)
写真-5.25
写真-5.23
港湾運営事務所(タクロバン港)
1 階の窓が破損した港湾運営事務所
(タクロバン港)
背後の集落(トタン造り)(クラシ港)
- 13 -
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
5.2
住民避難における港湾運営事務所の活用に向け
て
(1)台風1330号高潮災害時の住民の避難行動
写真-5.28は,タクロバン市の市街地にあるコンベンシ
ョンセンターである.台風1330号が来襲した際には,市
の避難所として使用されたが,多くの避難者が詰めかけ
台風1330号により国内の各世帯に与える影響について,
たため,避難者の受入制限をした.このため,今後の対
フ ィ リ ピ ン の 民 間 調 査 機 関 ( Social Weather Station ,
策として,十分な数の避難者を受け入ることが可能な避
2014)が世論調査を行っている.調査は,被災の約1ヵ月
難施設の確保が必要である.
後の12月11日から16日の間に,フィリピン国内の1,550人
を対象として実施した.その内訳は,メトロマニラ300
人,メトロマニラ以外のルソン地区300人,ビサヤ地区650
人(領域6:イロイロほかペナイ島・ネグロス島西部周辺
250人,領域7:セブほかセブ島・ボホール島・ネグロス
島東部周辺250人,領域8:レイテ・サマール150人),ミ
ンダナオ地区300人である.
この世論調査によると,ヴィサヤ(Visayas)地区住民
の台風上陸前の避難行動について,自宅にいたと回答し
た者が58%であり,過半数を占めていた.避難所の利用
者は12%であったが,民間のビル(23%)や教会(3%)
写真-5.26
の利用もみられている.
背後の集落の被災(コンクリート造り)
避難所を利用しなかった理由として,自宅の方が安全
(タクロバン港)
だと思ったと回答した者が36%で最大であったが,避難
所へのアクセスが悪いと回答した者も13%あり,周辺に
適当な避難施設がなかったことが考えられる.
台風に関する警報・注意報等の情報の取得状況につい
ては,1~2日前に取得した者が45%と一番多く,前日以
前に取得した者は全体の86%となっている.台風による
被災が深刻であるビサヤ地方に限ると,前日以前に取得
した者は全体の98%であり,1週間以上前に情報を取得し
ている者が23%であった.このことから現地の被災者に
は避難の準備のために十分な時間があったことが推測さ
れる.安全な避難のために適切な情報を与えることが重
要と考えられる.
写真-5.27
台風に対する準備について,台風の被災者と被災者以
背後の集落の被災(トタン造り)
外で比較したところ,安全な場所に避難した者が被災者
(タクロバン港)
では35%であり,被災者以外の29%と比べて多くなって
おり,被災地域では避難に対する意識が強かったと考え
られる.これに対して,家屋を補修した者が被災者では
26%に対して,被災者以外では19%であり,台風の来襲
時に補修した家屋に留まっていた者も多かったと推測さ
れる.
この他,ロウソクや懐中電灯,乾電池を準備した(被
災者77%,被災者以外77%),食料や水を準備した(被
災者64%,被災者以外67%),ラジオでニュースを確認
した(被災者31%,被災者以外34%),洪水に対して使
用する道具を準備した(被災者10%,被災者以外10%)
写真-5.28 避難所となった Tacloban Convention Center
等の質問については,被災者と被災者以外の間で回答に
(タクロバン港)
- 14 -
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
表-5.1
差が見られなかった.
港湾運営事務所周辺の集落の状況
周辺集落の存在
構造
(RC 構造が多いか)
被災
○:なし
△:あり/流出小
×:あり/流出大
周辺の地形
○:高地
△:低地/高台あり
×:低地/平坦
(2)港湾運営事務所周辺の集落
表-5.1は,図-5.1に示す①~⑥の各港湾の周辺におけ
る集落の状況を示している.本調査で対象としたすべて
の港湾で,周辺に住宅の密集地帯が存在している.荷揚
げされた生活物資を輸送したり,生産された農水産物を
輸送したりするためと考えられる.また,エスタンシア
港(①,写真-5.5参照)やタクロバン(写真-5.29参照)
では海岸線に沿って住宅が建設されていた.周辺は漁業
が盛んであり,湾奥や島影のように波浪が小さいと思わ
①
○
②
○
③
○
④
○
⑤
○
⑥
○
△
△
△
△
○
○
×
△
△
△
△
△
△
△
×
×
×
×
れる場所を選んで,海岸沿いに住宅が建設されているこ
とが考えられる.
住宅の構造については,比較的大規模なカティクラン
港(⑤)やタクロバン港(⑥)にはRC構造もみられるが,
他の小規模港湾の周辺には木造の簡素な住宅が多い.す
べての港湾で高潮や風による被災が発生していた.周辺
の地形については,平坦なところが多く,周辺に高台が
ない場所もあった.
被災後,最も被害が大きかったタクロバン港の周辺で
は,海岸線から40mの範囲は住宅建設が禁止された(写
写真-5.29
真-5.30参照).復旧にあわせて集落の場所を高台に移動
タクロバン北部海岸沿いの集落
(左下の白四角部分が集落)
させることは重要である.しかし,多くの場所で適当な
高台がなく,漁業活動のために海岸から遠く離れて生活
することが困難であるため,住民が高潮時に高層の建物
へ避難できる手段の確保が重要と考えられる.
(3)避難への活用における構造上の要件
表-5.2は,本調査で調べた各港の港湾運営事務所につ
いて,住民の避難に必要な構造上の要件を満足するか整
理したものである.要件の整理において,旅客待合所も
検討の対象とした.貨物用の倉庫は,平屋建てのものが
多く浸水時の避難場所がないこと,建物内の柱が少なく
写真-5.30
構造強度が比較的小さいこと,さらに,浸水時には貨物
が漂流する危険性があることから,検討対象から外した.
住宅建設禁止エリア(タクロバン市街)
旅客待合所は,ドマギット港(③),リパタ港(④)
ここで,避難施設の構造上の要件として,津波避難施
およびカティクラン港(⑤)の3つの港湾にあり,すべて
設の設計ガイドライン(国交省港湾局,2013)を準用し
RC構造であった.ドマギット港およびカティクラン港で
て,対象とする高潮に対して十分な高さに避難できるス
は,港湾運営事務所の1階部分に設置されており,旅客待
ペースを確保すること,高潮や付随して発生する漂流物
合所に避難しても浸水がある場合には,港湾運営事務所
の衝突等による損傷等に対して機能を損なわず安全に使
への移動を余儀なくされると考えられる.また,リパタ
用できることと設定した.具体的には,建物の2階以上に
港では旅客待合所が単独で設置されていたが,写真-5.31
避難スペースを持つことと,台風1330号により被災を受
および写真-5.32に示すように,風により建物の屋根と窓
けていないことを判定条件とした.あわせて,津波避難
ガラスが破壊され,避難者が安全に滞在できない状況で
ビルに係るガイドライン(内閣府,2005)を参考に,RC
あった.
またはSRC構造であることを判定条件とした.
- 15 -
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
表-5.2
また,港湾は,さらなる遠隔離島への物資輸送の中継
避難への活用における構造上の要件
旅客待合所の有無
構造(2 階以上か)
構造(RC/SRC 構造か)
被災
○:なし
△:あり/使用可
×:あり/使用不可
構造
(事務所と併設か)
港湾運営事務所の有無
構造(2 階以上か)
構造
(RC/SRC 構造か)
被災
○:なし
△:あり/使用可
×:あり/使用不可
沿岸警備隊と隣設か
①
×
-
-
-
②
×
-
-
-
③
○
×
○
△
④
○
×
○
×
⑤
○
×
○
△
⑥
×
-
-
-
拠点の役割を果たしている.写真-5.36および写真-5.37
はリパタ港(④)から対岸へ建設材料を輸送していると
ころである.
本調査の対象港湾には国際航路が就航している施設は
なかったが,国際港湾の場合には避難者の誘導にあたり,
保安対策等の港湾管理上の課題をクリアする必要がある.
-
-
○
×
○
-
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
△
△
△
○
△
○
○
○
○
○
○
これに対して,港湾運営事務所はすべてRC構造で2階
以上を有しており,更なる避難に活用が可能な監視塔が
写真-5.31
設置されている事務所もみられた.風により屋根や窓ガ
風により被災した旅客待合所(リパタ港)
ラスが破損していた事務所があるが,被災後使用不可に
なった事務所はなかった.ただし,事務所内は避難者を
受け入れるスペースが会議室等に限られているため,被
災後の避難者の生活支援等を含めて考える場合には,旅
客待合所と役割分担することが重要と考えられる.
また,港湾運営事務所は通常沿岸警備隊(Coast Guard)
と隣接しており,災害時には情報を共有している.被災
時の当直職員が上層階の窓や監視塔から風や波,潮位の
状況を観測している事務所もあった.避難者等へこれら
の災害情報等を提供することは有効と考えられる.
写真-5.32
(4)避難への活用における配慮点
旅客待合所の萱葺き屋根(リパタ港)
写真-5.33および写真-5.34はタクロバン港(⑥)にお
ける緊急援助物資の荷揚げ作業の様子である.写真-5.35
はカティクラン港(⑤)とマニラ近郊の港湾を結ぶフェ
リーである.島嶼部からなるフィリピンでは,港湾は復
旧時の物資輸送の拠点であり,ドマギット港(③)の事
例に示すように被災者が支援を受ける場所として港湾運
営事務所を活用することは適当であると考えられる.
ただし,比較的大規模なタクロバン港においても,緊
急支援物資の荷揚げスペースが不足しており,車両が輻
輳していた.このため,避難スペースを確保するにあた
り,復旧のための緊急物資輸送との調整を十分行う必要
写真-5.33
があると考えられる.
WFP による緊急援助物資(米)の荷揚げ
(タクロバン港)
- 16 -
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
表-5.3
章・節
1.
2.
3.
写真-5.34
3.1
WFP による緊急援助物資(米)の荷揚げ
(タクロバン港)
3.2
3.3
4.
5.
写真-5.35
6.
7.
マニラ方面行きのフェリー
(カティクラン港)
緊急事態対応計画策定ガイドラインの構成
項
目
緊急事態対応計画
The Contingency Plan(S)
計画の概念
Concept of Planning
緊急事態コントロールセンターと警報発令
の条件
Emergency Control Centers and Alert
Conditions
中央緊急事態コントロールセンター
The Central Emergency Control Center(CECC)
地方緊急事態コントロールセンター
The Local Emergency Control Center (LECC)
警報発令の条件
Alert Conditions
緊急事態対応計画の概要
Contingency Plan Outlines
緊急事態 Contingency
・軍事侵入 Infiltration/急襲 Raid
・市民の暴動 Civil Disturbance
・火災 Destructive Fires
・地震 Earthquakes
・嵐 Storms/台風 Typhoons/洪水 Floods
訓練/演習
Training Rehearsals/Drills
報告 Report
施行日 Effectivity
(5)PPAの緊急事態対応計画について
台風来襲等の緊急事態に対して,PPAでは,現在,PPA
Memorandum Circular No. 24-91(1991)の緊急事態対応
計画策定ガイドラインにもとづき災害対応を行っている.
台風1330号の来襲時においても,警報の発令等と同時に
発令され,速やかに実施されている.現状では,緊急事
態対応の対象は,PPA管轄エリアにおけるあらゆる損失
を防ぐことであり,周辺集落への援助行動は含まれてい
ない.
写真-5.36
ガイドラインの構成は表-5.3のとおりであり,その概
対岸の港へ建設資材を運ぶ土運船
要は以下のとおりである.
(リパタ港)
ガイドラインでは,緊急事態対応計画とは,あるエリ
ア内で発生する緊急的な状況に対して,タスクとして採
択し,組織化され訓練された集団により実行される一連
の動作のことと定義されている.計画は,項目毎にもし
くはすべてについて,事前に準備され,適正に普及され,
定期的に演習しなければならないとされている.
計画の概要については次のとおりである.①計画は,
港湾運営事務所(PMO)がエリア内の他の政府機関や民
間企業と共同で策定する.②PMOはこれらの団体と協力
して計画を実施する.③計画では,緊急事態における人
写真-5.37
員や施設などの資源を把握する.④PPAが雇用する保安
建設資材を土運船に積み込むダンプ
- 17 -
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
要員に加えて,民間企業や政府機関の人員も合わせたチ
ームを作成する.⑤計画には演習の行程や実施について
も含まれており,演習により計画変更や改善の必要があ
れば速やかに対処する.⑥速やかな変更を行うにあたり
必要な情報がすぐに適用できなかったり,情報が非常に
冗長であったりした場合には,附属書を使うべきである.
緊急事態コントロールセンター(Emergency Control
Center)は,警報のレベルが2または3の時に,中央にあ
る PPAの 本 局 ( CECC) と 地方 に あ る 港 湾 運 営 事務 所
(LECC)の間で命令と統制を行うために設置される.こ
こで警報レベル1は平常時であり,レベル2は48時間以後
に事案・災害が発生する状態,レベル3は48時間以内に事
案・災害が発生する状態を示している.
図-6.1 台風 1330 号の経路と中心気圧およびモデル台風
緊急事態計画は,軍事侵入・急襲,市民の暴動,火災,
の経路
地震,嵐・台風・洪水の5項目について検討し,それぞれ
について付属書を作成する.
演習や訓練は,CECCとLECCでそれぞれ実施する.訓
練を通じて,手順について熟練させ,実際の緊急事態に
おいて混乱を起こさないようにする.
報告は,①PPAの管轄エリア内の状態,②港湾のオペ
レーション,人員や施設の状態,③自然現象,攻撃やそ
の他の予測しえるコスト損失やダメージ,④警報レベル2
または3が発令された場合,⑤警報レベルが1に回復した
場合のそれぞれについて行う.
6. 数値計算
図-6.2
台風の中心気圧と最大風速半径の関係
6.1 計算条件
図-6.1に台風1330号のコースと中心気圧を示す.各時
刻の緯度・経度・中心気圧には気象庁の速報値を用いた.
レイテ湾やヴィサヤン海を通過した時の中心気圧は
895hPaである.
台 風 の 気 圧 分 布 に は Myers の 式 ( Myers and Malkin,
1961)を用いた.海上風には移動座標系で気圧傾度力,
コリオリ力,遠心力の釣り合いを解くモデル(Mitsuta and
Fujii, 1987)を用い,アイウォール付近の超傾度風を表現
する風速低減係数のモデル(Mitsuta and Fujii, 1987)も用
いた(パラメタの詳細はKawai et al., 2014).これらの式
では最大風速半径(いわゆるr 0 )を与える必要があり,
本研究では気象庁が推定した最大風速,強風半径,暴風
半径を参考に設定した.その値は,図-6.2に示すように,
過去の台風の平均(河合ら,2005)より小さめとなった.
図-6.3
- 18 -
フィリピン中部の水深の分布
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
分を計算した.実際にタクロバンでは,台風接近時の8
日4時~11時に天文潮位が約0.1mしか変動していない.海
面抵抗係数はMitsuyasu and Kusaba (1984)を基本とし,風
速30m/s以上は一定値とした.
波浪推算には第三世代浅海波浪推算モデルである
SWAN(CycleⅢ,Ver.40.91)を用いた.周波数分割は0.02
~1.0Hzを41分割,方向分割数は90とした.その他のパラ
メタにはデフォルト値を用いた.入力する風場は高潮推
算と同様に算出した.
なお,計算に当たっては,台風中心位置が計算領域か
ら十分に離れている時刻から計算を開始した.
図-6.4
6.3 台風1330号とモデル台風群による高潮推算
図-6.4は,図-6.3に示した2km間隔の格子に対して台
台風 1330 号による最大高潮偏差
風1330号の高潮を推算した結果である.台風の進路に沿
って高潮偏差が0.5m以上の海域が帯状に延び,水深の浅
いヴィサヤン海ではその幅が南北に広がっている.タク
ロバンとエスタンシアの周辺では3mを超えている.
フィリピン中部の高潮リスクを概略的に把握するため
に,図-6.1に示したように,台風1330号のコースを経度
で南に2度,北に3度の範囲で0.1度ずつずらしたモデル台
風を設定し,それぞれの台風で生じる高潮偏差を求めた.
その最大値を図-6.5に示す.広範囲で1mを超え,タクロ
バンやエスタンシアの周辺以外でも3mを超える値が得
られた.なお,コースの範囲の北と南の端の付近では,
さらに北と南のコースを追加することで大きな値が得ら
れる可能性がある.
図-6.5
6.4 台風1330号による高潮・波浪推算(レイテ湾)
(1)台風1330号による高潮
モデル台風群による最大高潮偏差
計算領域をレイテ湾周辺に絞り,1km間隔の格子で高
海底地形のデータベースEDMとして,ETOPO1(球面
潮を推算した結果を図-6.6に示す.(a)は通常の方法(海
座標系,1分間隔)やGEBCO_08(同,30秒間隔)がよく
面で気圧と風の変化を与え,海岸線は壁境界)による結
知られている.フィリピン中部では,これら2つの水深に
果である.高潮偏差はレイテ湾の北半分で1m以上,タク
大差があり,それらを用いた高潮推算値に大差を生む(付
ロバン周辺では3m以上となった.タクロバンの北にある
録E参照).本資料では,海図に近く実現象に近い高潮
海峡については,幅が格子で1つか2つしかなく,レイテ
が得られたGEBCO_08を用いることにした.図-6.3は,
湾の高潮が海峡のある程度奥まで影響したことを示唆す
高潮推算用に作成した平面座標系で2km間隔の格子デー
るものの,その距離や高潮偏差の定量的な議論は難しい.
タを図化したものである.この海域の島々の大半は100m
図-6.6(b)は,海面で気圧の変化のみを与え,風速は
以下の比較的浅い海域に囲まれている.タクロバンやエ
0m/sで一定として推算した結果であり,吸い上げ効果と
スタンシアの周辺では,南東すなわち台風の強風が吹い
それに続く動的な効果を表したものである.高さ約1mの
て来る方角に,50m以下の浅い海域が続いている.
峯が台風の目に追従して西進し,タナワン(Tanauan)付
近の海岸で行く手を妨げられ,北のタクロバンに向かっ
6.2 数値計算モデル
高潮推算では,天文潮位を一定とし,単層の非線形長
て進んだ峯が水深の減少に伴って増幅したと読み取れる.
図 -6.6(c)は, 海面 で風 の 変化 の みを 与え ,気 圧は
波方程式のモデル(例えば,河合ら,2000)で高潮偏差
- 19 -
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
1013hPaで一定として推算した結果であり,吹き寄せ効果
図-6.6(f)は,(a)に加え,陸上への氾濫も考慮して推
とそれに続く動的な効果を表したものである.レイテ湾
算した結果である.高潮推算モデルのみを実行している
の北端のみで顕著な値が得られており,台風の進行方向
ため,越波や打ち上げは考慮していない.1km間隔の格
の右後方(北東側)で吹く南東風によるものと考えられ
子と粗いため,陸上地形の再現性はよくない.それでも,
る.
タクロバン周辺で浸水する様子は表現できている.
これら図-6.6(b)と(c)の最大高潮偏差は必ずしも同時
さて,タクロバン空港は,滑走路が概ね南北に伸び,
に生起してはいない.図-6.7は,タクロバンにおける図
その東側の海岸の大半には護岸が整備され,その一部区
-6.6(a),(b),(c)の条件下の高潮偏差の時系列変化を示
間が台風時に倒壊した.空港関係者によると,6時頃,7
したものであり,気圧起因のピークと風起因のピークに
時頃,8時頃にそれぞれ浸水が生じ,8時頃が卓越してい
は30分程度の時間差を確認できる.気圧と風の両方を考
た.そこで図-6.8に,代表的な時刻の気圧・風・高潮偏
慮した場合の最大偏差は約3.9mで,現地のヒアリングで
差の平面分布を示す.6時と7時に周辺海域では,北~北
推定したタクロバン港における浸水高と対応しており,
東の風が吹き,高潮偏差は負,という計算結果である.
また,高潮が急に氾濫し短時間で引いた状況を定性的に
可能性の一つとして,この北寄りの風で湾内に生じた波
は表現できている.
が滑走路の北側から遡上したことが考えられる.そして,
図-6.6(d),(e)は,(a)に対し最大風速半径をそれぞれ
7時から8時にかけて,風向は南東に変わり,高潮偏差も
2倍,3倍にしたものである.タクロバン周辺の高潮偏差
急上昇して+3mを超え,波高も後述するとおり2m前後に
は(a)よりやや大きくなるものの,図-6.7に示すように高
達する,という計算結果である.これが滑走路の東側か
潮の継続時間が長くなり実現象とかけ離れてしまう.
らの浸水に対応するものであると考えられる.
図-6.6
台風 1330 号によるレイテ湾周辺の最大高潮偏差の分布
- 20 -
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
図-6.7
台風 1330 号によるタクロバンの高潮偏差の時系列変化
(a)第1領域
図-6.8
代表的な時刻の気圧・風・高潮偏差の平面分布
(2)台風1330号による波浪
波浪推算には図-6.9に示す2つの計算領域を用いた.レ
イテ湾の外の有義波高は,10km間隔の格子の第1領域で
は14~16m,1km間隔の第2領域で18~20mに達した.図
-6.2 で 示 し た よ う に 台 風 1330 号 の 最 大 風 速 半 径 は 約
20kmと小さく,10km間隔では風場を緻密に表現すること
ができない.その一方で,極めて強い風場における波浪
推算のソース項の応答については議論の余地があるだろ
(b)第2領域
う.レイテ湾の縁では地形性砕波や小島による遮蔽によ
図-6.9
って波高が低下し,レイテ湾内では10m以下になってい
る.タクロバン周辺では岬にも遮蔽されて2m程度である.
- 21 -
レイテ湾周辺の最大有義波高とピーク波向の分
布
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
図-6.10
高潮偏差がピークのころ(11 月 8 日 8 時)の
図-6.11
パナイ島周辺の高潮偏差の分布
有義波高の分布
図-6.12
エスタンシアにおける高潮偏差,天文潮および合成潮の時系列変化
図-6.10はタクロバンで高潮偏差がピークに近い8時の
有義波高の分布を示す.第2領域において,レイテ湾の
北部では7mを超える海域もあるが,タクロバン周辺では
2m程度であった.
6.5
台風1330号による高潮・波浪推算(パナイ島北部
周辺)
(1)台風1330号による高潮
パナイ島周辺もレイテ湾周辺と同様に1km間隔の格子
で高潮を推算した結果を図-6.11に示す.パナイ島では台
風の経路から離れた南西部を除くと0.5m程度かそれ以上
となり,エスタンシアを含む北東部では3mを超えた.
図-6.12はエスタンシアを例に,天文潮位,高潮偏差,
図-6.13 パナイ島周辺の最大有義波高およびピーク波向
これらを線形的に合成した潮位の時系列変化を示す.東
の分布
- 22 -
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
者の避難状況について明らかにした.
寄りの風となった12時半頃に,高潮偏差は4mに達した.
現地調査で沿岸の建物の1階に残っていた水跡と思われ
② ドマギット港において,港湾運営事務所が被災後の避
るものの高さから推定される高潮偏差は4.1~4.4mであ
難者に開放されていた事例について,聞き取り調査を
り,推算値はこれに概ね一致している.
行い,被災状況,港湾施設の条件および被災者の避難
状況について明らかにした.
③ 調査場所周辺の集落は,木造の簡素な住宅が多く,近
(2)台風1330号による波浪
パナイ島周辺の波浪推算は,図-6.13に示す計算領域
くに高台のない場所も多いため,災害時に一時的に避
(格子間隔は1分)に対して行った.エスタンシアは,岬
難できる施設の確保が重要と考える.港湾運営事務所
や島に北側を囲まれており,波高はそれほど高くなった.
のような既存のRC構造の高層の建築物を,一時的な避
パナイ島,セブ(Cebu)島などの間も距離が短いため,
難に活用することが重要であると考えられる.
強風が吹いても波浪があまり発達しなかったものと考え
④ 一時的な避難施設への活用にあたり,構造上の配慮事
られる.一方,パナイ島の北西部では沖合で10mに達し
項として構造強度,施設の高さ,避難スペースの3点に
ている.西海岸に位置するリパタ港では,現地調査によ
着目して整理した.港湾運営事務所は,すべての港湾
って波浪による港湾施設の被害が確認されている.
でRC構造かつ2階建て以上であり,使用不可となるこ
とはなかった.旅客待合所は事務所の1階部分にあるも
7. まとめ
のが多かった.平屋建ての旅客待合所は台風1330号の
風により使用不可になった.このため,被災者の受け
(1)被害調査
入れには,十分な避難スペースの確保が課題であると
台風1330号の道筋に沿った幾つかの港湾や空港におい
考えられる.
て,風・波浪・潮位や施設の被害について関係者にヒア
⑤ 一時的な避難施設への活用にあたり,災害情報の入手
リングをし,その被害状況の確認及び施設の天端高や浸
も重要である.港湾運営事務所は,本局や沿岸警備隊
水位の計測を実施した.その結果をまとめると以下の通
から情報の入手が可能である,その有効な提供方法が
りである.
今後の課題になると考えられる.
① 概ねどの港湾でも,事務所等の窓ガラスが割れ,屋根
⑥ 被災後の支援活動においても,支援物資の輸送拠点で
が壊れ,雨漏りがするなど,風や雨による被害が生じ
ある港湾の運営事務所の活用は有効であると考えられ
ていた.風の観測データを得ることはできなかったが,
る.ただし,船舶航行上の保安対策等が被災者の受け
風速がピークとなる時刻や風向の変化など,今後の数
入れにあたり課題になると考えられる.
値計算の検証を助ける情報が得られた.
② カティクラン港の高潮は台風通過から半日近く後に
(3)高潮推算および波浪推算
来襲しており,複雑な地形を考慮し,副振動にも注意
台風1330号の高潮と波浪,台風1330号をモデルにした
を払った検討が待たれるところである.リパタ港では,
台風の高潮も推算し,フィリピン中部の高潮・波浪の特
リーフ状の地形における浅海波浪変形計算も合わせた
性を考察した.主要な結論は以下の通りである.
検討が必要である.これら2つの港を除けば,高潮推算
① 台風1330号はフィリピン中部の限られた範囲に高潮
の結果は現地の概況を捉えていた.
をもたらしたに過ぎない.台風1330号の進路が南北に
ずれると,タクロバンやエスタンシアの周辺以外に3m
(2)住民避難状況調査
を超える高潮偏差が生じ得る.
台風1330号によるフィリピンのタクロバンおよびパナ
② 台風1330号によってタクロバン周辺の潮位は,北寄り
イ島北部の港湾の被害とその対応についての現地調査結
の風で下がった後,吸い上げによる峯の伝播と南寄り
果をもとに,港湾運営事務所の住民避難への活用状況を
の風で急上昇した.
整理し,今後の活用に向けた配慮点について考察した.
③ 台風1330号のような中心気圧の低い台風では,最大風
その結果をまとめると以下のとおりである.
速半径が小さくなることもあり,波浪推算の計算格子
によって得られる波高に大きな差が出る可能性があり,
① エスタンシア港において,港湾運営事務所が被災初動
さらなる検討が必要である.
時の住民の一時避難に使用された事例について聞き取
り調査を行い,被災状況,港湾施設の条件および被災
- 23 -
台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
8. あとがき
海岸工学論文集,第47巻,pp.321-325.
河合弘泰・本多和彦・富田孝史・柿沼太郎 (2005):2004
本資料は,台風1330号の風,高潮および波浪によるフ
年の台風の特性と高潮の予測・再現計算,港湾空港
ィリピンの港湾等の被害に関する現地調査結果,および,
技術研究所資料,No 1103, 34p.
台風1330号来襲時のフィリピン沿岸部の住民避難行動に
河合弘泰・有川太郎・本多和彦・淺井 正・藤木 峻・桑島
関する現地調査を取り纏めるとともに,台風1330号およ
隆一(2014):台風1330号の風・波浪・高潮による
び台風1330号と似たモデル台風による高潮および波浪推
フィリピンの港湾施設の被害の現地調査,土木学会
算を実施しその特性を考察したものである.
論 文 集 B2 ( 海 岸 工 学 ) , Vol. 70 , No. 2 ,
被害に関する現地調査により,今後の数値計算の検証
pp.I_1436-I_1440.
に必要な情報を得るとともに,今後の課題として,一部
河合弘泰・関
克己・藤木
峻 (2014):台風1330号によ
の港湾においては浅海波浪変形計算による検討が必要で
るフィリピン中部の高潮・波浪特性,土木学会論文
あることを示した.
集B2(海岸工学),Vol. 70,No. 2,pp.I_221-I_225.
住民避難行動に関する現地調査により,港湾運営事務
国交省港湾局(2013):港湾の津波避難施設の設計ガイ
所の住民避難への活用に関する課題を整理し,活用に向
ド ラ イ ン , http://www.mlit.go.jp/common/0010169
けた配慮事項を示した.
01.pdf.
高潮推算および波浪推算の考察により,今後の課題と
内閣府(2005):津波避難ビル等に係るガイドライン,
して,計算格子による推算結果の変化についての検討が
http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/h17/pdf/guideli
必要であることを示した.
ne.pdf.
Kawai, H., K. Seki and T. Fujiki(2014):Storm surges in Leyte
(2014年12月12日受付)
Gulf, Philippines caused by 2013 typhoon Haiyan and
major typhoons with similar Tracks, Proc. 24th ISOPE,
謝辞
pp.845-852.
Mr. Ildefonso T. Patdu Jr,Ms. Cielo Eulin,Mr. Abelardo
Mitsuta, Y and Fujii, T (1987):Analysis and synthesis of
D. Sorre,Mr. Yuri Andro Cabangbang Architect II,Mr. Roy
typhoon wind pattern over Japan, Bulletin Disaster
Arthur Cabangbang,Mr. Art Balderas,Mrs. Ri Melle Romano,
Prevention Res. Inst., Kyoto Uni., Vol.37, Part 4, No.329,
をはじめフィリピン運輸通信省の多くの方々,東洋建設
pp.169-185.
株式会社フィリピン営業所の今井清吾氏,野村康行氏,
Mitsuyasu, H. and Kusaba, T (1984):Drag coefficient over
Mrs. Espie E. Pastorには,現地調査の随行や調整でご尽力
water surface under the action of strong wind, J. Natural
いただいた.とくに,フィリピン運輸通信省に国際協力
Disaster Science, Vol 6-2, pp 43-50.
機構長期専門家として派遣されている桑島隆一氏には,
Myers, V A and Malkin, W (1961) : Some properties of
現地調査の随行と調整の中心的な役割を担っていただい
hurricane wind fields as deduced from trajectories, U. S.
た.さらに,PPAドマギット港湾運営事務所のMr. Erdies S.
Weather Bureau, National Hurricane Research Project,
cocoyには,港湾施設の被災状況や被災者へ開放している
Report 49.
当時の状況の写真や動画を提供していただき,また,各
PPA (1991) : Guidelines in the Preparation of Contingency
港湾運営事務所の関係者の方々からは貴重な情報をいた
Plan, PPA Memorandum Circular, No.24-91.
だいた.ここに記して,深くお礼を申し上げたい.合わ
Social Weather Station(2014):Survey on the Impact of
せて,被災地の早期の復興を心より祈念したい.
typhoon Yolanda on Filipino Households December
11-16,2013 National Survey.
参考文献
Tajima Y., T. Yasuda, B.M. Pacheco, E.C. Cruz, K. Kawasaki,
淺井 正・河合弘泰・本多和彦・藤木 峻・桑島隆一(2014):
H. Nobuoka, M. Miyamoto, Y. Asano, T. Arikawa, N.M.
台風1330号(Haiyan)による高潮災害時におけるフ
Ortigas, R. Aquino, W. Mata, J. Valdez and F. Briones
ィリピン沿岸部の住民避難行動,土木学会論文集B2
(2014) : Initial report of JSCE-PICE joint survey on the
(海岸工学),Vol. 70,No. 2,pp.I_1441-I_1445.
storm surge disaster caused by typhoon Haiyan, Coastal
河合弘泰・平石哲也・佐藤孝夫・大川郁夫 (2000):台風
Eng. J., vol. 56, No. 1, 1450006, pp. 1-12.
9918号による九州沿岸と瀬戸内海西部の高潮の特性,
- 24 -
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
付録A 事前配布した調査票
Questionnaires
1. Do you have atmospheric pressure, wind, and tide observation records during the typhoon?
2. Does any water mark (indicating the maximum water level) remain in and around your
office?
3. Did anyone watch the flooding in and around your office?
- Location and/or distance from coast
- Time (Starting, maximum, and disappearing)
- Water surface (Maximum level, Smooth or rough in strong wind and waves from sea,
Constant level for a few minutes or sudden up-down)
4. Was any port facility damaged?
5. Is there any major damaged area around your office, where we can go easily and shortly?
6. How and what kind of typhoon prediction information did you get? Did you stay in your
office or evacuate to some locations during the typhoon?
7. Have you ever met a disastrous typhoon?
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
付録B 痕跡調査票
*2014/1/29~30 パナイ島調査
ID
latitude
Location
longitude
date
time
sec
37.0
36.0
36.0
14.0
deg
123
123
123
122
min
9
9
9
42
sec
8.0
10.0
10.0
33.0
2014/1/29
2014/1/29
2014/1/29
2014/1/29
10:30
10:30
10:30
15:25
Survey data
Measured height
(Optional)
(Optionnal)
from sea level
Measured height Wave height
[m]
from the ground
[m]
4.07
1.32
3.96
1.10
3.84
0.95
2.35
-
Type of
data
(Optional) (Optional)
Terrain
Distance
elevation
from
0
0
0
2.35
-
1
2
3
4
Port Estancia, panay
Port Estancia, panay
Port Estancia, panay
Port of Culasi
deg min
11 26
11 26
11 26
11 36
5
Port Dumaguit, panay
11
35
42.0
122
28
53.0
2014/1/29
18:00
0.94
-1.50
-
P
0
-
6
7
8
Port Lipata, panay
Port Lipata, panay
Port Caticlan, panay
11
11
11
28
28
55
8.2
7.5
40.7
122
122
121
3
3
57
22.1
22.0
1.2
2014/1/30
2014/1/30
2014/1/30
10:10
10:10
12:45
3.04
2.78
2.88
0.50
0.20
0.10
-
I
I
I
0
0
0
-
9
10
*2014/2/1 レイテ島調査
Tacloban Air Port, Leyte
Tacloban Air Port, Leyte
11
11
13
13
59.7
58.9
125
125
1
1
48.9
45.9
2014/2/1
2014/2/1
10:20
10:20
3.14
1.78
-
-
-
-
-
11
MacArthur Landing Park
11
10
21.7
125
0
45.7
2014/2/1
13:45
0.71
-
-
-
-
-
12
13
14
15
MacArthur Landing Park
MacArthur Landing Park
MacArthur Landing Park
Oriental Hotel
11
11
11
11
10
10
10
10
20.9
21.2
22.4
12.9
125
125
125
125
0
0
0
0
45.8
45.2
41.6
39.5
2014/2/1
2014/2/1
2014/2/1
2014/2/1
13:45
13:45
13:45
14:10
3.45
2.88
3.52
3.26
-
-
-
-
-
*1 Type of record
R: runup
I: inundation height
P: no inudation but measurable at the port
W: very small
V: including wave effects
*2 Reliability
A: (High) clear mark, small error of survey
B: (Medium) unclearmak, small error of survey
C: (Low) unclear mark, hearing from witness or runup at the beach, large error of survey
D: (Very low) unclear mark, low confidence, large error of survey
Name
◯Hiroyasu Kawai
Tadashi Asai
Kazuhiko Honda
Ryuichi Kuwajima
Takahi Fujiki
Affiliation
PARI
NILIM
PARI
DOTC
PARI
- 26 -
I
I
I
-
Target
wall in building
wall in building
wall at building
top of quaywall
tidal level was 1.5m below
the top of quaywall
wall in building
a shelf in building
wall in building
parapet
center of run way
top of sea wall, side of
sea(near sea surface)
parapet
back land of sea wall
road in front of the park
1F floor at oriental hotel
国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
*2014/1/29~30 パナイ島調査
Survey data
ID
Reason
Tidal correction (this column can leave blank)
Reliability*2
Group name
Comments
1
2
3
4
hearing from witness
hearing from witness
hearing from witness
-
C
C
C
-
PARI
PARI
PARI
PARI
building next to Port Management Office
Port Authority Office building
Port Authority Office building
NOT inundated
5
hearing from witness
D
PARI
NOT inundated
6
7
8
water mark
hearing from witness
hearing from witness
B
C
C
PARI
PARI
PARI
Water Area
Tidal level
at survey
[m]
0.99
0.99
0.99
0.52
date
2013/11/8
2013/11/8
2013/11/8
-
time
13:00
13:00
13:00
-
[m]
0.70
0.70
0.70
-
location
-
a+b-c (m)
4.36
4.25
4.13
-
0.68
2013/11/8
14:00
0.73
-
0.89
1
0.64
0.64
0.85
2013/11/8
2013/11/8
2013/11/9
14:30
14:30
0:00
0.84
0.84
1.38
-
2.84
2.58
2.35
1
1
1
passenger terminal building
passenger terminal building
passenger terminal building
Astronimical tidal level at event
Corrected height
1-saltwater/2freshwater
1
1
1
1
9
10
*2014/2/1 レイテ島調査
-
-
PARI
PARI
-
0.11
0.11
2013/11/8
2013/11/8
8:00
8:00
0.02
0.02
-
3.23
1.87
1
1
11
-
-
PARI
-
-0.07
-
-
-
-
-
1
12
13
14
15
-
-
PARI
PARI
PARI
PARI
-
-0.07
-0.07
-0.07
-0.06
-
-
-
-
-
1
1
1
1
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
付録C 施設構造物諸元の調査結果
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国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
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国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
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国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
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国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
付録D 提供された資料
PPA Memorandum Circular No. 24-91
17 May 1991
PPA Memorandum Circular
No. 24-91
To All Concerned
SUBJECT Guidelines in the Preparation of Contingency Plan
Disaster/calamity/eventuality strikes anytime at any place with or without warning and may happen one after the other or
simultaneously. Under all circumstances, an emergency or contingency plans is necessary to meet these adversities with
promptness and dispatch so as to ensure that the port’s properties and personnel are secured and protected and that the services
therein are continuously rendered to minimize the disaster’s negative effects in the economy.
In order to arrive at the condition envisioned above,PDOs/PMOs must adopt the emergency/contingency plan taking into
consideration the following guide1ines.
1. The Contingency Plan(S)
A contingency plan is an outline of courses of action to be adopted with tasks and to be undertaken by an organized and trained
group(s) should an emergency situation occurs in an area. It shall be prepared, properly disseminated and regularly rehearsed
for each or any of the following.
1.1 Infiltration by unlawful elements/groups,armed or unarmed,purpose1y to conduct sabotage, harassment, liquidation of
Very Important Person(s) (VIPs) or to take-over illegally an area or facilities,
1.2 Destructive fires of various kinds,
1.3 Disturbance resulting from chaos or risks staged by demonstrations, strikes or other illegal assembly,
1.4 Storms/typhoons, floods, and
1.5 Earthquakes.
2. Concept of Planning
2.1 PMOs shall prepare an integrated contingency plan in coordination with other government agencies and/or private firms
in the area.
2.2 PMOs sha11 enjoin other government agencies and private establishments inside the port zone to give their fu11est
support or assistance in the various contingency plans envisioned in this guidelines.
2.3 Plans sha11 consider existing personnel/equipment and other resources at any instance of the emergency.
2.4 In addition to PPA-hired security guards, a composite team of different security agencies retained by private firms
operating inside the port zone may be organized as security personnel complement in addition to those that can be provided
by friendly forces (BOC/NCP, PCG, PNP, etc.).
2.5 Rehearsal schedules shall be included and carried out. Should there be a need to revise or modify any portion Of the
plan,it must be done immediately.
2.6 In case of immediate changes in the needed information not readily available or too lengthy for inclusion in the basic
plan, attachments or annexes shall be used.
3. Emergency Control Centers and Alert Conditions
Emergency Control Centers shall be established at the Head Office and the different PMOs of the country which shal1 provide
direction and control to port personnel during the emergency situation and when alert conditions 2 and 3 are in effect.
3.1 The Central Emergency Control Center(CECC)
It shall be formed at the Head office to be manned by the Following
3.1.1 General Manager
- Chairman
3.1.2 AGM-Operations
- Vice chairman
3.1.3 AGM-FLAMS
- Member
3.1.4 AGM-Engineering
- Member
3.1.5 Manager, Port operations and Services Department (POSD) - Member
3.1.6 Manager, Port Police Department (PPD)
- Member
3.1.7 Manager, Legal Services Department (LSD)
- Member
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
3.2 The Local Emergency Control Center (LECC)
It shall be formed in the PMOs to be manned by the fo1lowing
3.2.1 Port Manager
3.2.2 Manager, Port Police Division (PSD)
3.2.3 Manager, Terminal Services Division (TSD)
3.2.4 Manager, Engineering Services Division (ESD)
3.2.5 Manager, Resource Management Division (RMD)
- Chairman
- Vice chairman
- Member
- Member
- Member
3.3 Alert Conditions
Emergency Control Centers shall be responsible in settling the “Alert Conditions” - which are to be classified as follows
3.3.1 Alert Condition No.1 - Normal condition exists,normal operations continue.
3.3.2 Alert Condition No.2 - Threat of impending disaster/incident is imminent.It is likely to happen in more than
forty-eight (48)hours.Port operations may be partly and temporarily stopped.
3.3.3 Alert Condition No.3 - Incident/disaster is about to occur or will occur within forty-eight (48) hours or 1ess. Port
operations are completely stopped. Office work is suspended/port personnel to be sent home.
For nationwide emergency, CECC sets the “Alert Condition”. When the exigency so warrants, the LECC may set higher
“Alert Condition”. In cases of local emergency situations,the LECC shall set the.“Alert Condition” and inform CECC about
it accordingly.
4. Contingency Plan Outlines
As a general guide, the following planned outlines for the different contingencies have been prepared with their corresponding
CODE name and the formats attached as Annexes to this Circular.
Planned Outlines
Contingency
Infiltration/Raid
Civil Disturbance
Destructive Fires
Earthquakes
Storms/Typhoons/Floods
Code Name
Annex
Oplan APAHAP
A
Oplan BANGUS
B
Oplan CORACHA
C
Oplan GALUNGGONG D
Oplan DILIS
E
Considering the available equipment, personnel and other resources at an instance of an emergency, Only applicable
provisions/portions of the Out1ines may be used.
5. Training Rehearsals/Drills
The CECC and LECC shall conduct training rehearsals/drills of the different contingency plans. Lectures shall be scheduled to
orient/refresh all concerned port personnel. Dril1s shall be conducted quarterly to develop proficiency in the procedures and
avoid confusion in actual emergency situations.
6. Report
Corresponding reports on contingency plans that were carried out shall be rendered to the CECC by the LECC.Each report shall
include the following.
6.1 Situation in the area under PPA Jurisdiction,
6.2 Status of port operation/activities, port personnel and facilities,
6.3 Nature,extent and estimated cost of loss or damages if there are any,
6.4 Alert conditions 2 and 3 when set,
6.5 Resumption of “Alert Condition 1”.
7. Effectivity
This Memorandum Circular takes effect immediately upon approval.
ROGELIO A. DAYAN
General Manager
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国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
Philippine Port Authority
Port Layout Plan
Port of Lipata
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
付録E 事前に実施した高潮推算結果
台風 1330 号の高潮推算結果(速報)
: http://www.pari.go.jp/unit/kaisy/files/5073/1154432227.pdf
台風 1330 号の高潮推算結果(第 2 報) : http://www.pari.go.jp/unit/kaisy/files/5083/71627059.pdf
(なお,担当者の異動により,両資料に記載されている問い合わせ先のメールアドレスは現在使用されていない.)
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国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
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国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
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国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
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台風 1330 号にともなう高潮等によるフィリピンの港湾およびその周辺地域における被害調査報告
河合弘泰・有川太郎・淺井 正・本多和彦・藤木 峻・関 克己
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国総研資料 No.816 / 港空研資料 No.1301
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国土技術政策総合研究所資料
TECHNICAL NOTE of N I L I M
No. 816
編集・発行
March 2015
国土技術政策総合研究所
本資料の転載・複写のお問い合わせは
〒239-0826 神奈川県横須賀市長瀬 3-1-1
管理調整部企画調整課
電話:046-844-5018
港湾空港技術研究所資料 No.1301
2015.3
編集兼発行人 独立行政法人港湾空港技術研究所
発
行
所 独立行政法人港湾空港技術研究所
横 須 賀 市 長 瀬 3丁 目 1番 1号
TEL. 046(844)5040 URL. http://www.pari.go.jp/
印
刷
所
株 式 会 社 シ ー ケ ン
C (2015)by PARI
Copyright ○
All rights reserved. No part of this book must be reproduced by any means without the written
permission of the President of PARI
この資料は、港湾空港技術研究所理事長の承認を得て刊行したものである。したがって、本報告書の全部
または一部の転載、複写は港湾空港技術研究所理事長の文書による承認を得ずしてこれを行ってはならない。
E
A