販売力の強化法(上)

ウ ェ ル フ ェ ア 経 営
基 本 マ ニ ュ ア ル N o . 7
お客様の心をつかむ
販売力の強化法(上)
マーケティイングの基本と販促の効果の出し方
目
次
7-1 マーケティングってこんなにシンプル! 2
7-2 価格政策 8
7-3 販路政策 11
7-4 販促政策
18
1.お客様の購買心理をとらえたアイドマの法則
2.アイドマの法則を利用した販売促進
3.こんな販促企画がヒットした!
19
21
22
4.お客様の感性を動かすキャッチコピー・広告文の創り方
26
1
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
これまで、企業活動のヘッドピンが、「お客様が、さらに自分がお客様であっ
ても、買いたいと思う商品・サービスを提供し続けること」をベースに、
「勝て
る場の創造」と、
「お客様が買いたくなる商品・サービスの開発」について説明
をしてきました。
そして、レポート「お客様の心をつかむ販売力の強化法」では、その商品・サ
ービスを販売する段階に入ります。ところが、ご存知の通り、今は「モノあま
り時代」。世間には似たり寄ったりの商品やサービスがウンザリするほど氾濫し
ています。ですから、モノを売るのが非常に難しい時代になっています。いく
らいい商品をつくっても、簡単にヒット商品は生まれません。他の商品にはな
い特徴ある商品コンセプトを、お客様に明確に伝えるノウハウを持つことが必
要です。そのためにはマーケティングを強化しなければなりません。
では、マーケティングとは何なのでしょうか。ここではまず、マーケティング
の意味や構造からお話しましょう。
7-1 マーケティングってこんなにシンプル!
マーケティングとは、
「生産した物をいかにうまく顧客に販売すること」を考
えることでしょうか? それとも、「どうすれば売上目標を達成できるのか」を
考えることでしょうか?
マーケティングとは何か。皆さんに1000年前のほとんど技術が発展して
いない時代を想像していただいて、マーケティングの構造を考えてもらいます。
社会構造がシンプルな時代を背景とするのは、今の時代を背景にマーケティン
グを考えると、技術や経済構造が複雑になりすぎて、かえって分かりにくくな
るからです。
では話を進めますが、ここでは、
「道端にころがっている“石”を売るために
は、どうすればいいのか」をテーマにします。もちろんこれは架空の話です。
それでは皆さん、一緒に考えてください。
場面は、今から1000年前、インカ帝国が栄える前のアメリカ大陸。群雄
割拠の戦乱が続き、国土は荒廃していました。
現在のペルーの地にマサイという1人の商人がいました。この地では、硬く
てなかなか割れず、長期間風雨にさらされても変色せず、しかも大きさがほぼ
均等な石が多数採掘できました。
マサイは、常々、この石を使って何か商いができないか考えていました。そ
んな思いがマサイの潜在意識を刺激したのでしょう。ある時、ふっとインスピ
レーションが涌きました。
2
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
「そうだ! この石を武器として売ろう。硬くてなかなか割れず、大きさもほぼ
同じで加工の手間隙もかからない。武器としてはうってつけだ。これは大儲け
ができるかもしれないぞ。」
手始めにマサイはアステサ国におもむき、石の販売を始めました。
期待通り、石は飛ぶように売れました。アステサ国では武器に適した良質な
石が採れなかったからです。商いは順調に拡大し、マサイは多くの者を雇うよ
うになりました。
しかし、事業は成功したものの、雇われ人は次々と辞め、人の入れ替わりが
絶え間なくありました。去って行った雇われ人は、口をそろえてこう言ったの
です。
「人の殺りくに手を貸すような商いはしたくない」
マサイ自身も、戦争を煽るような商いには、何かふに落ちないものを感じてい
ました。
〈質問1〉そこで質問です。
マサイがこのような気持ちになるのは、経営の観点から見て、何に問
題があるのでしょうか?
経営には、「自分が何の事業を行いたいのか」、あるいは「社員の心を一つに
まとめるための、事業の大義名分は何なのか」をはっきりすることが重要です。
これが「企業理念」です。マサイは明確な企業理念を持たずに、ただお金がほ
しいという一心で事業を始めたから、心に迷いが生じたのです。
マサイは日ごろから、「何か人の役に立てるような仕事をしたい」、と思って
いました。お金はほしいけれど、戦争はもうイヤだと思っていました。そこで、
思い切って、「武器の販売はもう止めよう!」と決心しました。
しかし、何の仕事をすればいいのか? ふと、まわりを見渡すと、あたりは
荒廃の一面、人々は住む家もなく路頭に迷っています。この光景を見て、マサ
イには一つのインスピレーションが湧き上がりました。
「そうだ! これからは戦争で荒廃した都市を建て直すことが必要だ。人々が
安心して住める住居が必要なのだ。 “人々が安心して住める住居・・・” こ
れはいい! これからはこれを私の事業にしょう。
」
それを契機にマサイは、
『都市の再構築と住宅の建設により、人々に安心と安
らぎを提供する』という企業理念を確立することができました。
しかし、これまで武器の販売しか知らなかったマサイにとって、どのような
方法で企業理念を実現すればいいのか、検討がつきません。
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
〈質問2〉あなたがマサイなら、どのような事業により企業理念を実現します
か?
企業理念が確立すると、どのような事業を通してその企業理念を実現するか
が問題となります。つまり、
「事業定義」を明確にしなければなりません。その
ためには、自社を取り巻く内外環境を分析し、自社の“強み”を“伸びる市場”
に適応させなければなりません。さらに、その市場でいかなる戦略でもって戦
うのか“市場戦略”と、誰を顧客とするのか“市場目標”を設定することが必
要です。
マサイは、いろいろなことに思いをめぐらせた末に、次のようなことが脳裏
に浮かびました。
「これまで武器として取り扱っていた石は、じょうぶで、長期間風雨にさらさ
れても変色しない。しかも大きさがほぼ均等だ。それなら、この石を建物の外
壁に利用すればいいのだ! 都市の建物はほとんど修理が必要だし、この石を
必要とする人は大勢存在するはずだ。」
マサイは、良質な石という「強み」を、建物利用という「伸びる市場」に適応
させたのです。そして、自らの事業を“建物建築業”という場に設定したので
ス(事業定義)。
“建物建築業”として事業を営む決心ができたものの、誰に建物を販売すれ
ばいいのか、マサイは迷ってしまいました。人々に安心できる住宅で暮らして
もらいたいと思っても、長い戦乱で疲れ果てた彼らには、住宅を購入する費用
がないからです。マサイには誰に売ればいいのか、市場目標が見出せないので
す。そのことで何日間も思いを巡らせ、いろいろな人に相談もしました。
ある日、ヤシンという人に相談を持ちかけました。すると彼はマサイにこん
なアドバイスをしました。
「国土が荒廃すれば、住民は働くことができません。すると当然国家も税が徴
収できなくなります。国を強くするためには、人々に住居を与え、安定した
職を与えることが必要です。」
マサイはこの言葉にピンときました。
「荒れ果てた国家を建て直すためには、民衆が安心して暮らせる住宅を建設す
ることが必要だ。そうだ!アステサ国の国王には、武器販売のことでこれまで
何回も会っている。国王に国家再建のための住宅建設を進言しよう。」
顧客を国王にすることで、マサイの市場目標の悩みは解決しました。
ここで、市場戦略についてですが、“建物建築業”という事業定義と“国王”
という市場目標を設定しても、他の業者との競争に打ち勝つにはどうすればい
4
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
いかが大きな問題となります。建物建築を営む業者は他に無数にいるからです。
彼らに打ち勝つためには、十分勝算のある事業でなければなりません。つまり、
自社の「勝ちパターン」をイメージできなければなりません。
マサイは、じょうぶで、長期間風雨にさらされても変色しない、しかも大き
さがほぼ均等な石なら、他の業者と戦っても十分勝てるであろうと踏んだので
す。この点を差別化のポイントとする市場戦略を構築したのです。
〈質問3〉マサイは、新事業を推進するにあたって、
「企業理念」
「事業定義」
「市
場戦略」
「市場目標」という難問を解決しました。さて、あなたなら次
に、経営上のどのような課題に取り組みますか。
上にあげた4つの問題をクリアーすれば、ターゲットとなった顧客に対して、
顧客の要望に応じた商品を、いくらで、どのようなルートで、しかもどのよう
な手段を用いて商品をアピールするかを決定しなければなりません。つまり、
「商品政策」
「価格政策」
「販路政策」
「販促政策」を明確にしなければならない
のです。
国王に住宅建設を進言するにしても、国土を荒廃から救うには、早急に住宅を
建設しなければなりません。しかも、国の費用で多くの人に住宅を提供するた
めには、費用は必要最小限に抑える必要があります。
マサイは、
「良質な石でできた堅固な住宅であるが、早く建てられる住宅で、しかも安く
提供できる住宅でなければ、国王に満足していただくことはできない。」
と判断しました。つまりマサイは商品政策として「早く建てられる住宅」、価格
政策として「安く提供できる住宅」を選択したのです。
また、販路政策については、
「国王に対しては、以前、石の武器の販売に関して、何度か謁見している。だ
から、他の人を介する必要はない。直接国王に会って進言しよう!」と考えま
した。つまり他人(代理店)を経由しない直販体制を採ったのです。
さらに、国王にどのようにアピールすればよいのか。マサイは、次のような「販
促政策」を思いつきました。
「国中の大工が集まって造っても、早くて安い家を民衆一人ひとりに供給する
ことは不可能だ。それなら、国中の大工を組織し、彼らの指導のもとに、住宅
の提供を受ける民衆が労働者となって、自らが住む家を造くっていけばいい。
国王に“住宅建設大運動”を推進することを進言し、それによって早くて安い
家を建設していこう!」
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
以上の「商品政策」「価格政策」「販路政策」「販促政策」により、マサイの進
言は国王に受け入れられました。民 衆 は 安 心 し て 暮 ら せ る 住 宅 を 提 供 さ れ 、
一生懸命仕事に励んだため、国家は再び隆盛を取り戻しました。
以上の事例を通して、マーケティングというものの、およそのイメージはつか
んで頂けたでしょうか。マーケティングとは、ただ単に商品を売ることではな
く、顧客が顕在的・潜在的に欲する商品やサービスを開発・生産し、より効率的・
効果的に顧客に商品やサービスを提供することによって、顧客に喜びと満足を
与えるための企業活動なのです。
では、この事例の内容を体系的にまとめましょう。
マーケティングという行為は企業の一部分のものではありません。それは企
業理念を実現するための全体の行為なのです。そしてそれらの活動は体系的に
結びついています。各々の機能が個別に強化されても、それが関連性を持って
有機的に機能しなければ意味をなさないのです。
またマーケティング活動は、企業の環境に沿ったものであると同時に、有形、
無形で存在する自社の経営資源と深く関連しています。
このような考え方で、マーケティング戦略を構築するためには、まず、
企業理念
を確定しなければなりません。次に、
事業定義
市場目標
市場戦略
を確定します。これらを包括して「戦略ドメイン」と呼びます。
さらに、
商品政策
価格政策
販路政策
販促政策
を展開します。これら4つのマーケティング活動を、標的市場に対して最適な
形で組み合わせ、統合化していくことを「マーケティング・ミックス」といい
ます。
そして、これらを実行、管理する体制として、
管理システム
があります。
以上の考え方を整理したものが次頁の概念図です。
6
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
図
マーケティングの体系
念
事
業
定
義
市
場
目
標
市
場
戦
略
商
品
政
策
価
格
政
策
販
路
政
策
販
促
政
策
ス
テ
営
理
営
業
経
経
企
資
境
源
(
(
戦 略 ド メ イ ン
環
内
外
的
要
)
)
ム
成功要因の再検討
PDCAサイクル
シ
因
因
理
要
マーケティング・ミックス
的
管
7
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
本書では、以上述べたマーケティイング理論について、戦略ドメインの「事業
定義」や「市場戦略」は、レポート「勝てる場の創造」の中で検討しています。
ただ、その中では事業定義、市場戦略という言葉を使用していませんが、当然、
勝てる場を創造する上では、それらの要素が検討されています。
また、
「市場目標」とマーケティング・ミックスの中の、
「商品政策」は、レポ
ート「お客様が買いたくなる商品・サービスの創り方」のところで詳しく説明
しています。
従って、以下では「価格政策」、
「販路政策」、
「販促政策」について説明します。
7-2 価格政策
最近のマーケットは、ほとんどが成熟化しており、激しい価格競争が繰り広げ
られています。しかも、インターネットの普及により、流通経路が短縮化する
とともに、競争相手は国内企業のみならず、国外企業も対象になってきました。
このような状況の中では、価格政策が極めて重要になってきます。例えば、世
界中から安い原材料や商品を購入して低価格で販売する戦略を採るのか、ある
いは、自社しかない高付加価値製品やサービスをお客様に高価格で提供する戦
略を採るのか、価格政策は、それぞれの企業が判断すべき戦略の中で、最も重
要な要素の1つになっています
1.価格の決定要因
価格決定は、費用(コスト)、顧客需要、競争状況の3つの視点から検討され
なければなりません。
◆ 費用(コスト)
費用以下の価格設定による販売は採算割れになるため、費用は価格を決定
する際の最低限の目安となります。
◆ 顧客需要
一般的に、価格が高ければ需要は減少し、低ければ需要は拡大します。
ただし、ブランド品などの高級品は、価格を下げると需要が減少すること
もあります。価格が低下すると、顧客が持つブランドイメージが崩れてし
まうからです。
◆ 競争状況
競争企業の価格設定を考慮して、自社の価格を決定しなければなりません。
マーケットにおける自社と競争企業のポジショニングを理解した上で価格
設定することが、マーケティング上、非常に重要です。
2.価格の決定
価格の決定方式は、費用志向か競争志向か需要志向かの3つの観点から、次の
8
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
ように分類できます。
(1)費用志向の価格決定
◆マージン率によるコストプラス方式
製造原価に一定額または一定率のマージンを加えて販売価格とするもので
す。マージン額やマージン率は過去の実績や業界の慣習などを参考に決定
されます。この価格決定方式はメーカー向きの方式といえます。
◆マークアップ率によるコストプラス方式
マージン率によるコストプラス方式はメーカー向きであるのに対して、流
通業ではマークアップという方式がとられる場合もあります。例えば、製
造原価(仕入原価)80万円の製品(商品)を100万円で販売した場合、
マージン率=(100万円-80万円)÷100万円=20%
になりますが、
マークアップ率=(100万円-80万円)÷80万円=25%
となるわけです。マージン率は販売価格基準、マークアップ率は仕入原価
基準ということができます。
コストプラス方式は、価格設定の手続きが簡単で、安定した利益の確保が可
能となりますが、顧客の需要や競争状況を無視しているという問題点がありま
す。
(2)競争志向の価格決定
◆実勢価格方式
競争企業の価格を意識して、自社の価格をそれに近づけて決定する方式で
す。自社の費用や需要はあまり重視されません。
◆競争価格方式
競争企業よりも低価格を設定し、マーケットシェアの拡大を図ろうとする
価格設定方式です。
(3)需要志向の価格決定
◆知覚価値方式
顧客の商品への知覚価値に基づいた価格決定方式で、「この製品に対して、
顧客はいくらくらいまでなら支払うだろうか」という点から価格を設定し
ます。
◆ターゲットコスト設計システム
これは、まず潜在的な顧客に最もアピールできる製品価格(ターゲット価
格)を決定するところから始まります。そして、ターゲット価格が製品の
ターゲット製造コストを決定し、設計から製作、原材料や部品の調達まで
9
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
を、すべてターゲットコストの範囲内で押さえることを目標に諸活動が遂
行されます。
3.主な価格政策
(1)新製品の価格政策
◆上澄み吸収価格政策
高価格で市場に参入する価格政策です。
高付加価値の商品やサービスを市場に投入する際に、高価格でも購入しよ
うとする顧客から、最大限の利益を獲得しようとする場合に採用する政策
です。市場の上澄部分を吸収しようとすることから、上澄み吸収価格政策
といわれています。
◆市場浸透価格政策
低価格で市場に参入する価格政策です。
新製品を市場に投入する際に、低価格を設定し、早期に市場シェアを獲得
し後発企業に対し優位な位置を確保しようとする政策です。
(2)商品ミックスによる価格政策
◆商品ライン別価格政策
商品の機能や品質をいくつかのゾーンに分け、複数の価格帯を形成するこ
とによって、顧客ニーズに対応しようとする価格政策です。
◆付随商品価格政策
主商品に対する付随品の価格設定に用いられる政策です。
この政策は主に、主商品の価格を低くし付随品の価格を高くする場合に採
用されます。
(3)心理的価格政策
◆名声価格
高級品やブランド品に採用される価格政策です。
これらの商品は顧客の高価格=一流ブランド・高品質という意識を満足さ
せる商品であり、値下げが逆に顧客離れを生じさせる原因ともなります。
◆慣習価格
缶飲料やガムなど、消費者が慣習的に認めている価格にあわせて価格設定
する方法です。
◆ 端数価格
98円、990円、9900円など、大台を割った端数をつけて割安感を
印象付ける価格設定方法です。
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
7-3 販路政策
分業が進んだ現代社会では、生産と消費との間に分離現象が生じ、メーカー
(Maker)と消費者(Consumer)との間には卸売業(Wholesaler)や小売業
などが介在しています。
この生産と消費の隔たりをつなぎ、製造業者が生産した製品を消費者
(Retailer)のもとへ届ける仕組みを「流通」といいます。
価格政策のところでも述べたように、近時はインターネットの普及により流通
に革命が起こりました。消費者が直接メーカーから製品を購入できたり、海外
から様々な物品が調達できるようになりました。
このような大変革の中にあって、時代に乗り遅れた従来通りの流通ルートにし
がみついていては、企業の生き残りははかれません。いかに早く、安くお客様
に商品・サービスを提供できるかが重要なポイントになっています。
以下では、メーカー、卸売業、小売業の流通政策上の課題を取り上げて説明し
ます。
図
流通経路
メーカー
M
卸売
W
CO
消費者
R
小売
1.メーカーの流通政策の課題
市場の成長期には売ることよりも作ることが重視されたため、メーカーが市場
の主導権を握っていました。しかし、市場が成熟化し物あまりの時代になると、
作ることよりも売るためのマーケティングが重要視されるようになりました。
11
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
従って、市場の主導権もメーカーから消費者に最も近い小売業に移行しつつあ
ります。
このような状況の中で、メーカーが抱えている課題には以下のものがあります。
(1)製品開発力の強化
メーカーで最も大事なのはいうまでもなく製品開発力です。ところが、こ
の開発力が低下しています。成熟市場下では、消費者などエンドユーザーの
ニーズを的確につかんで商品開発をしなければ、顧客の満足は得られません。
しかし、販売を卸売業に頼りっきりのメーカーが多く、エンドユーザーの声
を直接に聴く努力を怠っているのです。
卸経由の販売体制をとっている場合でも、卸の営業パーソンとの同行営業
の機会を増やすか直接小売店を訪問し、顧客の生の声を聴くことが極めて重
要です。
ただ、現状ではメーカーとの同行営業や、メーカーの営業パーソンが直接
小売店へ訪問することを好ましく思わない卸売業者も少なくありません。彼
らの販売方針に反する営業活動をメーカーが勝手に行うことや、いわゆる
「中抜き」で卸を飛ばしてメーカーが小売業と直接取引きを行うことを警戒
しているからです。
しかし、メーカーサイドからすれば、卸に遠慮をして顧客のニーズ把握を
怠っていると製品開発力がますます低下し、自らを死に追いやることもあり
ます。メーカー側の事情を卸に理解してもらう努力を続け、彼らとの同行営
業や直接小売店へ訪問する営業活動を行わなければなりません。卸側にして
も、メーカーが積極的に小売店へ営業することは自社の業績向上につながり
ます。ですから、かたくなにメーカーの要望を拒否すべきではありません。
(2)営業力の強化
製品開発力と同様に卸に頼りきった販売では、売上アップは望めません。
メーカーがこの商品を売りたいと思っても、卸はその通りには売ってくれま
せん。卸は卸としての販売政策があるため、特定メーカーの製品のみを販売
することができないからです。
従って、この場合でもやはり、卸との同行営業か小売店への直接訪問を増
やし、積極的にみずからの製品を販売することが重要です。ただし、注意し
なければならないのは、すべての小売店を訪問するのではなく、売り上げの
大きい主要な小売店を訪問し、自社製品のファンになって頂くことです。メ
ーカーは営業効率を考え、主要な小売店での売上アップをはかることによっ
て、卸に対する存在感を高めていくべきです。小規模で売上の少ない小売店
への訪問は効率が悪いため、原則として卸に任せるべきです。
そして、小売店で捉えたニーズをふまえて卸へ製品提案を行ったり、販促
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
提案を行えば、卸との信頼関係が強化され、自社製品を優先的に販売してく
れるようになります。
(3)流通経路の短縮
(1)、(2)では、卸経由で販売する場合のメーカーの流通課題を取り上
げました。しかし、メーカーの製品開発力や営業力の強化は、流通経路を短
縮し小売と直取引を開始するか、あるいはインターネットやDMによるエン
ドユーザーとの通信販売を行うことにより、さらに強化されます。
ただし、その際の問題点として、以下のような諸点をあげることができま
す。
①小売との直取引のための営業人員の補強が必要になり人件費が増加する
②これまで取引をしていた卸が反発する
③通信販売のノウハウがない
これらの問題点を解消し、直取引に円滑に移行するためには,
a.一挙に直取引に移行するのではなく、エリアを限定して直取引を開始す
る(例えば、近隣エリアだけ直取引に移行し、その他のエリアは卸経由
にする)。
b.従来の卸取引を継続しながら、補強的に通信販売等を行う。
c.卸と対立関係になるのではなく、製品開発のための顧客情報の収集手段
として、アンテナショップを開設する。
等の方法があります。
2.卸売業の流通政策の課題
(1)卸売業の役割
近年はIT革命をはじめとする環境の激変により、卸売業者がおかれている
立場は厳しいものとなっています。しかし、取引における卸売業者の機能は、
以下の2つの観点から、なくてはならないものです。
①不確実性プールの原理
卸売業の需給調整機能を説明する原理です。小売業者は、消費者の需要量だ
けを在庫とすることが望ましいのですが、実際には、消費者がどの小売業で、
どの時期にどれだけの数量を購入するかを予測するのは不可能です。このよう
な場合、個別の小売業ごとに消費者の需要量の変動を見越した在庫を持つので
はなく、卸売業が中間在庫を持つことができれば、地域間の変動や時間的な変
動に対応できます。不確実性プールの原理によって、需要の不確実性の影響を
軽減でき、小売業の在庫コストや輸送コストの節約が可能になります。
13
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
図
不確実性プールの原則
消費者
消費者
消費者
小売業
小売業
小売業
(過剰在庫)
(過剰在庫)
(過剰在庫)
消費者
消費者
消費者
小売業
小売業
小売業
(最小在庫)
(最小在庫)
(最小在庫)
卸売業
(最適在庫)
②取引数量最小化の原理
メーカーの企業数がM、小売業の企業数がRあった場合、メーカーと小売業
が直接取引きをすれば取引の数量はM×Rになります。しかし、卸売業が仲介
することにより、取引の数量はM+Rと最小化できます。
例えば、メーカーが2社、小売業が5社の場合、卸売業が存在しないと取引
の数量は、2×5=10回になります。しかし、卸売業の仲介があれば2+5
=7回と少なくなります。
このように、取引数量を少なくすることで、輸送経路の減少による物流コス
トの軽減が可能になります。
14
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
図
R1
取引数量最小化の原理
R2
R3
M1
R4
R5
M2
取引数量10回
R1
R2
R3
R4
R5
W
M1
M2
取引数量7回
(2)卸の流通政策の課題
このように、卸売業は取引の簡素化にとってなくてはならない存在なのです
が、卸が介在することにより流通コストが高騰するため、メーカーや小売業に
は、卸を介した流通政策では昨今の厳しい価格競争に勝ち残れなくなるという
危惧感があります。そのために、卸売業無用論などの議論も出ています。しか
も昨今は、メーカーのマーケティング力はいっそう高まり、小売業のバイイン
グパワーも圧倒的に強くなっています。卸売業はその板ばさみになっている状
態です。
このような環境の中で、卸売業が生き残っていくためには、新たな存在意義
を見出さなければなりません。その主要な選択肢は次の7つにまとめることが
できます。
①物流代行に特化
大手メーカーもしくは大手小売業の物流機能を代行する。
これまでの物流は、卸売業者が商品を顧客の店別にピッキングして配送する
「店別納品」が主流でした。このため、各店舗では店員が、受け取った商品の
15
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
検品作業を行い、さらに商品を棚に補充するため、店内を移動しながら商品を
1アイテムずつ棚入れしていくという、非常に時間の要する作業を行っていま
した。
しかし、ITの進歩のおかげで、手間ひまのかかる補充作業を大幅に短縮す
ることが可能になりました。つまり、小売業各社の物流センターで商品を店舗
の棚単位でひとまとめにし、なおかつ、完全に商品個数を確認して、出荷情報
を店舗に事前に送り込んだ上で「棚別納品」することが可能となったからです。
この物流センターへは、卸は注文を受けた商品を全店分まとめて納品する「一
括物流」ですみます。店別の仕分けは必要ありません。センターで「総量納品」
された商品を、店別かつ「棚別」にピッキングすればいいのです。
しかし、この「一括物流」システムは、卸売業者に極めて重大な影響を及ぼ
すことになります。一括物流センターへの納品は全店の注文分をまとめて納品
する「総量納品」なので、メーカーによる納品も可能となるからです。
従って、大手小売業では、自社の物流センターへの納品は全店の注文分をま
とめた「総量納品」が可能となり、今後はメーカーによる直接納品が進んでい
くことが考えられます。
このような環境下で卸売業が生き残っていくためには、大手小売業に代わっ
て、その物流機能を代行するサードパーティー・ロジスティクスとしての選択
肢が考えられます。
②中小小売業に特化
自社で物流センターを保有できない中小小売業では、物流センターで各店舗
向けに棚別納品を行うことができません。中小小売業が大手小売業に打ち勝つ
ためには、棚別納品を可能にして手間隙のかかる棚への補充作業を効率化しな
ければなりません。その機能を代行すれば、卸売業の存在価値は高まります。
そのためには物流の効率上、中小小売業に対してフルラインで一括して商品を
受注することが必要です。
このように、中小企業に特化して生き残りをはかるという選択肢が存在しま
す。
③リテールサポート
小売業者の商品管理・顧客管理などを支援したり、売れ筋商品の情報提供や
棚割提案、さらにPOPなど販促物の提供やキャンペーンなど販促企画の提案
16
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
などを行って、小売業者の業績向上をサポートすることです。顧客にとってな
くてはならない存在になることによって、取引の継続が可能となります。
④専門特化
大手業者が参入できないすき間市場に特化し、他社にない商品アイテムの充
実をはかることによって専門性を高める戦略です。
例えば、靴下、カーテン、ねじなどの商品に専門特化して独自の存在価値を
維持している卸売業者があります。
⑤メーカー機能の保有
商品開発機能を強化し、自社のオリジナル商品を投入することで他社との差
別化をはかる戦略です。
生産は自社で行わず、他社あるいは海外で行うこともできます。
⑥消費者直結の販売体制の構築
卸売業者自ら小売業またはネット通販などによって消費者と直結したビジ
ネスに参入するケースです。
ただし、既存の得意先との摩擦が生じ売上げが急減する危険性を回避するこ
とが必要です。
⑦大手の系列化に入る
大手卸売業者を核とした業界の再編が進む中、大手の系列化に入ることで、
生き残りをはかる戦略です。
3.小売業の流通政策の課題
市場に物があふれ容易に売れない時代には、消費者に一番近く、彼らのニーズ
を直接把握できる小売業が流通の中で力を増します。市場で優位に立つために
は、物をつくる力よりも売る力が重要になってきました。
しかし、小売業は消費者に最も近いということで、次のような課題をかかえて
います。
(1)移ろいやすい消費者ニーズを絶えず把握しなければならない
成熟化した社会では、必需品はほぼ消費者に行き渡っているため、生活に潤
いを与える娯楽品やサービスが消費の主流になってきました。それに伴い消費
者のニーズもめまぐるしく変化し、今日売れた商品・サービスが明日売れなく
なる時代になりました。
小売業は、このように移ろいやすい消費者ニーズをいち早く捉え、さらにそ
の変化に素早く対応できなければなりません。これからは消費者ニーズを読み
17
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
取る感性が何よりも必要です。そしてそれに応じて、タイムリーに商品構成を
組みなおし、レイアウトや陳列方法に変化をつけることで、消費者の飽きを防
がなければなりません。消費者ニーズを読み取る感性が弱ければ、
売上の減少→デッドストックの増加→資金繰り難→廃業
という結果を招くことになります。
(2)仕入ルートの開拓
決まった仕入先から商品を購入しているだけでは消費者のニーズにかなっ
た商品を供給し続けることができません。絶えず新たな仕入先を開拓し、魅力
ある商品を消費者に供給しなければなりません。そのためには、国内だけでな
く海外から商品を調達したり、インターネットを利用してスピーディーに欲し
い商品を見つけ出すなど、あらゆる手段を講じることが必要です。
移ろいやすい消費者のニーズに応え続けるためには、仕入開拓が、消費者ニ
ーズを読み取る感性とともに、非常に重要になります。
(3)メーカー機能の保有
卸売業と同様に、メーカー機能を有することによって、自社の独自性を発揮
することができます。とりわけ、消費者ニーズをいち早く察知できる小売業の
利点を商品開発に活かせれば、流通の主導権を握ることが可能になります。最
近の小売業のプライベート・ブランド化(PB化)は、この観点から捉えるこ
とができます。
(4)インターネットの利用
インターネットの普及率が高まる中、インターネットを通じた商品購入が日
常化し、その市場規模は年々拡大しています。小売業者も消費者の購買ルート
の変化に対応できるように、絶えずインターネット購買の状況に注目していな
ければなりません。自らインターネットを利用した商品販売を行い、店舗販売
とのシナジーを発揮できるマーケティングノウハウを確立することも必要で
す。
4.販促政策
商品・サービス開発を行い、効果的な販路を構築できたとしても、それだけで
販売は完結しません。商品の存在や効用をお客様に伝え、購買意欲を高めるこ
とによって、商品を購入して頂いて初めて販売が完結します。このように、お
客様に受け入れられるために自社商品・サービスをアピールする活動を販売促
進(販促)といいます。販促はお客様との間のコニュニケーション活動だとい
えます。
販促におけるコニュニケーション活動としては、次の4つの方法があります。
18
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
◆広告
◆パブリシティ注1
◆人的販売
◆狭義の販売促進注2
注1:パブリシティとは、商品を供給する企業ではなく、第三者のマスコミ等
が商品の特徴などをニュースとして取り上げ報道することや、報道内容
そのもののことをいいます。第三者が取り上げてくれるため、商品に対
するお客様の信用は高まります。
注2:狭義の販売促進とは、広告・パブリシティ・人的販売以外の販促をいい
ます。対社内の販促として、セールス・マニュアルの作成、社内コンテ
ストなど、対顧客の販促として、棚割りやフロアレイアウト、インスト
ア・プロモーションなどのリテールサポート、サンプリング、景品付販
売などがあります。
販促はプル戦略とプッシュ戦略に大別できます。プルとは「引く」という意
味で、プル戦略は、マスコミ宣伝などにより直接お客様に働きかけ、強い自社
商品指向を作り出すことによって、お客様に指名買いを促す戦略です。広告や
パブリシティが代表例です。
一方、プッシュとは「押す」という意味で、プッシュ戦略は、人的販売等によ
りお客様に商品の利点を説明して購買を促す戦略です。
マーケティング・ミックスを選択する上で、商品政策、価格政策、販路政策は
マーケティングの骨格を形成するもので、戦略的要素が強く反映されます。一
方、販促政策は構築されたマーケティング戦略の骨組みの中で、いかに日々、
商品・サービスを販売していけばいいのかを決定するもので、戦術的色彩が強
いものといえます。従って、日常のマーケティング活動では販促活動のウェイ
トが高くなり、営業パーソンは、どうすれば自社商品・サービスが売れるのか、
日々の販促活動に頭を悩ませることになります。
1.お客様の購買心理をとらえたアイドマの法則
販促を企画するにあたって、顧客心理を理解することが非常に重要です。お客
様の心を捉えられない販促では、いくら数を打っても成功することはできない
でしょう。
お客様の購買心理を分析したものとしてアイドマ(AIDMA)の法則があり
ます。AIDMAとは下記の単語の頭文字をとったものです。
A:Attention(注意)
I:Interest (興味)
D:Disire
(欲求)
19
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
M:Memory
A:Action
(記憶)
(行動)
お客様が商品やサービスを購入する時、
注意→興味→欲求→記憶→行動
という心理過程を経て購入するという考え方です。
一例をあげますと、JR西日本の新大阪駅の改札口前に豚まん屋さんがあるの
ですが、私はそれが大好きでよく買って帰ります。そのお店はいつも人が行列
をつくっています。
初めて買った頃のことを思い出してみると、最初は、
「このお店はたくさんの人が並んでいるなあ」
と注目して見ていました(注意)。
何回かお店の前を通っても、いつも人が並んでいます。
「このお店には何が売っているのだろう。」
と思い、立ち止まってお店をのぞくと豚まんが売っていました(興味)。
さらに、お店に近づくと、豚まんのほんわかとした香りが漂ってきます。
「美味しそうな豚まんだなあ。一つ買ってみようかな。でも、もうすぐ電車が
来る。あ~仕方がない、今日はあきらめよう。」
後ろ髪を引かれる思いで電車に乗ります(欲求)。
家に帰っても、お店の前で並ぶ人の光景や、ほんわかとした香りが忘れられま
せん。
「本当にいつも人が並んでいるなあ。そんなに美味しいのかなあ。」
と思い出してしまいます(記憶)。
数日後、またお店の前を通りました。
「今日こそは、絶対に買って帰るぞ。何個買おうかな。一個だけでは恥ずかし
いし。よし!家族の分まで買って、皆で豚まんをたべよう。」
やっとの思いで決心し、豚まんを買うことができました(行動)。
このように、アイドマの法則はお客様の購買心理の過程をよく分析しています。
販促を実行するにあたっては、この法則を知っていると大変便利です。
なお、この法則の他に、AIDMAモデルから「記憶」を省いたAIDAモデ
ルや、AIDAモデルの「欲求」と「行動」の間に「確信」を入れたAIDC
Aモデル、さらに「行動」の後に「満足」を加えたAIDASモデルなどもあ
ります。
20
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
2.アイドマの法則を利用した販売促進
アイドマの法則から、お客様には、まだ商品を買っていないが商品を知ってい
る潜在顧客と、実際に商品を買って頂いた顕在顧客がいることがわかります。
商品を買ったことがあるかないかに基づいて、お客様を次のように分類するこ
とができます。
認知客
記憶客
試用客
使用客
愛用客
(Awareness)
(Memory)
(Trial use)
(Usage)
(Loyal use)
お客様には、まず商品・サービスの存在を知った認知客と、その存在を忘れな
いで記憶している記憶客がいます。これらのお客様はまだ商品・サービスを購
入したことのない潜在顧客です。そして商品・サービスを購入したことのある
お客様として、試しに購入した試用客、リピート客としての使用客、さらにそ
の商品・サービスを愛用する愛用客がおられます。これらのお客様を、それぞ
れの頭文字をとって、アムツール(AMTUL)と憶えておけばいいでしょう。
ターゲット顧客を絞り込み、その顧客に対して販促を行う時、ターゲットとす
るお客様が認知客なのか使用客なのか顧客分類ができれば、販促活動を効果的
に実施することができます。
例えば、自社商品の存在を広く潜在顧客に知ってもらいたい時や、潜在顧客に
対してインパクトのあるキャッチコピーや製品デザインをアピールして、その
商品を憶えてもらいたい時、つまり認知客や記憶客を増やしたい場合は広告宣
伝などのプル戦略が効果的です
一方、一度買ってもらったお客様に対してリピート購買を促すためには、さら
にお客様を深く知り、そのニーズや困り事を解決できる商品やサービスを提案
することが必要です。従って、試用客、使用客、愛用客のリピート購買を促進
するためには、人的販売などのプッシュ戦略が有効になります。
大企業では、プル戦略とプッシュ戦略をターゲット顧客ごとにうまく使い分け
ています。しかし、中小企業では、人的販売に頼り過ぎるきらいがあります。
しかし、認知客や記憶客を増やしたい時に、営業パーソンが潜在顧客1件1件
を訪問して自社商品を紹介することは非常に非効率です。DMやチラシ、広告
をうまく利用して、自社商品を紹介した方がはるかに効率的です。
費用面で考えても、人件費は一番高くつく固定費です。例えば、営業パーソン
一人分で年間数百万円の広告宣伝費を使うことが可能です。今後は、中小企業
21
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
といえども人的販売ばかりに頼るのではなく、広告宣伝などプル戦略をもっと
多用すべきだと思います。
これからは、プル戦略とプッシュ戦略をうまく組み合わせる営業が必要です。
そうなると当然、販促企画力が重要になります。従って、お客様のいいなりに
なる御用聞き営業や、値段を下げてしか商品を売れない営業パーソンは、これ
からは必要なくなるでしょう。必要なのは、お客様のニーズを感性よく汲み取
り、タイミングよくお客様の欲しいものを提案できる企画力のある営業パーソ
ンです。一人の優秀な販促企画者がいれば、広告宣伝やDMと人的販売をうま
く絡み合わせた営業活動が可能になります。成熟市場の中で効果的な販促活動
を行っていくためには、他社より一味違った企画を継続して提案し続けなけれ
ばなりません。これからは10人の御用聞き営業パーソンより、一人の販促企
画者が必要です。
3.こんな販促企画がヒットした!
それでは、実際にヒットした販促企画を紹介しましょう。
(1)認知客→記憶客→試用客へステップアップする販促企画
販促を実施するためには、ターゲット顧客はどんなお客様で、そのお客様をど
のレベルにステップアップさせたいのかを明確にしなければなりません。
自社商品を知らない潜在顧客に対して、一度その商品を購入していただくため
には、論理的にはまず商品を知ってもらい(認知客)、そしてそれを忘れないよ
うに記憶してもらう(記憶客)、最後に試しに一度買って頂くという購買プロセ
スをたどります。例えばテレビCMの場合、テレビで紹介することで商品を知
ってもらい、さらに何度もCMを流すことでその商品を記憶してもらう、そし
てお店に入ったときにその商品があれば試しに一度買って頂きます。
ただ、このようなステップを一歩一歩踏んでいくことは、かなりの時間と費用
がかかります。そこで、時間と費用を有効に使うために、認知客から試用客へ
と一挙にステップアップする方法もあります。次にその事例を紹介します。
*大切な人への贈り物キャンペーン
佃煮を製造する元気食品(仮称)は、地元の特産品を佃煮に加工し、それを
通信販売で売る事業を始めました。発売当初は売上が順調に伸び、固定客もか
なりつきました。ところが、発売後2年を経過する頃から売上げが伸び悩み、
固定客の数も横ばいの状況が続いたのです。
元気食品では、いきなり固定客を増やすのではなく、その前段階として、ま
ず自社商品を試食していただく試用客を多数つくることが必要であると判断
しました。
22
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
そこで、社内の販促関係者を集め、数回にわたって討議を重ねました。その
結果、採用されたアイデアが「大切な人への贈り物キャンペーン」だったので
す。キャンペーンで贈り物をする場合、普通は応募者本人に贈ります。それで
はありふれていて、インパクトがありません。そこで本人ではなく、大切だと
思う人に贈り物を送ろうというアイデアが出てきたのです。
この企画はさっそく実施され、これまで2回以上購入頂いたお客様に、DM
を発送しました。DMの内容は次ページのようなものです。
キャンペーンの結果はかなり好評で、DMをお送りしたお客様の4割から応
募がありました。キャンペーンを数回実施することで、元気食品はかなりの試
用客を獲得することに成功しました。
*10万本達成記念「お試しキャンペーン」
自社商品を認知から記憶、そして一挙に試用へともっていく企画として「お試
しキャンペーン」が有効です。この方法ですと購買の敷居が低くなるので、お
客様に安価な価格で気軽に購入していただけます。また、このキャンペーンは
通常期間限定ですので、継続して安売りする必要がありません。
ただし、最近はこの手の企画が多発しているので、ただ単なる「お試しキャン
ペーン」ではお客様に注目して頂けません。プラスアルファのインパクトが必
要です。
園芸用品を製造販売するリッチガーデン(仮称)は、家庭園芸用の虫除け液を
開発し販売しました。売れ行きは好調で、予想よりかなり速いペースで目標販
売数の10万本を達成しました。
リッチガーデンは、ここで波に乗って、一挙に販売拡大を行うことが必要だと
考えました。
そこで、担当者の間でいく通りも企画が練られました。何回か討議を重ねた結
果、
「お試しキャンペーン」により顧客層を拡大することが、最も有効であると
の意見で一致しました。しかし、なぜ「お試し」なのか、大義名分がなければ
お客様はキャンペーンに乗って頂けません。
この大義名分をめぐって再び議論が繰り広げられました。お客様を引き付ける
インパクトは何かということに議論が集中した結果、発売後10万本達成を記
念して、キャンペーンを実施してはどうかとの意見が出ました。10万本とい
う数字はインパクトがあり、しかも、10万本売れる商品はどんな商品だろう
と、お客様も興味を持って頂けそうです。さっそくこのアイデアが採用され、
通常より小さなサイズをお試しサイズとして、お一人様3本以内の限定で割安
な価格で販売することにしました。
「10万本達成記念キャンペーン」のキャッチコピーをつけたPOPを作成し、
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
あなたの大切な人へ
あなたの大切な人をお一人選んで下さい。その人にもれなく
メッセージを添えて元気食品の○○○セットをプレゼントします
◆大切な人へのメッセージ
*どれかひとつお選びください
□お変わりございませんか? 私の地元名産品を一度お召し上がりく
ださい。
□ いつもお世話になりありがとうございます。旬の味をご賞味くださ
い。
□ お元気ですか? ○○が美味しい季節になりました。ご家族でお召
し上がりください。
□上記以外のメッセージを希望される場合は、こちらにご記入ください
◆大切な人
フリガナ
氏名
電話番号(
)
-
電話番号(
)
-
フリガナ
住所 (〒
-
)
◆あなた様
フリガナ
氏名
フリガナ
住所 (〒
-
)
24
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
得意先小売店にキャンペーンを提案したところ、非常に多くのお店で採用して
頂きました。キャンペーンは大成功し、お試しサイズは予定より早く完売でき
ました。その結果、その後も順調にその商品の販売拡大が続いたのです。
(2)試用客→使用客→愛用客へステップアップする販促企画
試用客を使用客、さらに愛用客へステップアップするには、人的販売が有効で
す。もちろん広告宣伝やパブリシティなどのプル戦略によってもステップアッ
プは可能ですが、人と人との関係を通じて本当の信頼関係を築くことが大切で
す。
人的販売により信頼関係を築くためには、お客様の売上アップに貢献できる提
案を行うことや、お客様が困っていることを解決したり、お客様に喜んでいた
だけることを行うなど、お客様のかゆいところに手の届く気配りが必要です。
つまり、人的販売では営業パーソンのサービス力が、他社との差別化をはかる
付加価値ポイントになります。もちろん、信頼関係の前提としては、商品の品
質、納期のスピードなど、人的販売以外の基本的要素がしっかりしていなけれ
ばなりません。
ここで、事例を一つ紹介しましょう。
*得意先小売店の売り場をまるごと任され売上アップが実現!
焼酎を製造販売する南海酒造(仮称)は、メーカーでありながら、自社製品の
品質向上・おいしさの追及だけにこだわりを持っている会社ではなく、製品の
販売にもかなり注力しています。同社の営業パーソンは営業スキルが高く、得
意先から厚い信頼を得ています。
もともとは、品質や味など製品のこだわりだけを追求している会社でした。と
ころが得意先小売店のバイヤーが焼酎の本当のよさを理解していなかったり、
それを正しく消費者へ伝える売り方をしていないケースがよくあります。これ
ではいくらいい製品をつくっても、そのよさが消費者に伝わりません。
そこで、「焼酎のよさを本当に理解しているのは、われわれ焼酎メーカーであ
る」との自負のもと、
「焼酎のことなら何でもわが社にお任せください。商品説
明から売り場づくり、販促企画まで何でもご支援いたします。」とのキャッチフ
レーズで顧客支援に乗り出しました。同社の直接のお客様は酒類卸ですが、小
売店段階で商品が回転しなければ、いくら卸売段階で販売攻勢をかけてパイフ
を太くしても、その先で目詰まりを起こしてしまいます。従って、小売店の販
売支援に積極的に乗り出したのです。もちろん、卸業者との信頼関係を損なう
ことはできませんから、彼らの理解を得た上で実施されたのです。
当初はノウハウがなく試行錯誤を重ねましたが、販促企画担当として思い切っ
25
No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
て若手を登用し、商品説明のためのPOP、季節感ある売り場づくり、焼酎を
美味しく飲むための各種景品付き販促キャンペーンなどを次々と提案していき
ました。
このような提案を継続して行うに従い、小売店との信頼関係が深まってきたの
です。小売店にとって、商品の売り場づくりや販促企画を考えることは、頭の
痛い問題です。焼酎に関する知識も焼酎メーカーほど詳しくはありません。メ
ーカーがタイムリーで適切な売り場づくりやPOP、販促キャンペーンなどを
提案してくれれば、これ以上心強い味方はないわけです。
このようにして、焼酎の売り場を南海酒造に任せる小売店が増加してきました。
このような段階にくると、他社との価格競争に巻き込まれることはありません。
しかも自社製品をいい場所に置くことができるため、売上も増加します。
南海酒造は、小売店の売り場づくりの支援を継続的かつタイムリーに行ってい
くことによって、安定した収益を上げるようになったのです。
4.お客様の感性を動かすキャッチコピー・広告文の創り方
(1)お客様の感性に訴える!
販売促進を実行するためには、インパクトのある訴えをお客様にしていかなけ
ればなりません。
ところで、我々が行動を起こす場合には、何故その行動をとるのか、必ず理由
があります。もし、理由もなしに行動を起こせば夢遊病者です。
お客様が何か商品を「買う」という行動を起こされる場合はどうでしょう。
この場合も、何故その商品を買うのか、必ず理由があるはずです。これが購買
動機です。
では、購買動機はお客様の心の中から、自然発生的に生まれるのでしょうか。
マーケティング・スキルが発達した今日では、多くの場合、売る側がお客様に
購買動機を与えています。
その時の動機の与え方ですが、例えば、日本酒をお客様に購入して頂きたいと
します。今日では ビールやワイン、さらに焼酎に押され、日本酒は年々売上
量を減らしています。その結果、
「日本酒は売れない!」と決めつけてしまいま
す。
はたして、本当にそうなのでしょうか。日本酒が売れないのは、お客様に商品
を買う理由を与えていないからではないでしょうか。
例えば、こんな売り方をすれば、お客様は日本酒を購入されるでしょうか。
「日本酒は、米を発酵させて作る醸造酒で、日本の伝統的な酒の一つです。
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
日本酒の主な原料は、米と水と麹(米麹)ですが、それ以外にも酵母、乳酸菌な
ど多くのものに支えられて日本酒が醸造されています。
日本酒は原料を発酵させてアルコールを得ます。しかし、日本酒はワインと違い、
原料に糖分を含まないため、糖化と発酵を並行して行う工程があることが大きな特
徴です。並行複発酵と呼ばれるこの日本酒独特の醸造方法が、他の醸造酒に比べて
高いアルコール度数を得ることができる要因になっています。
皆さん、日本人なら日本酒を飲みましょう!」
こんな理屈っぽい、押しつけの説明では、誰も買わないでしょう。
人間は理性よりも感情で動く動物です。いくら理性で理解できても、感情で納
得できなければ、絶対に行動に移しません。
従って、お客様に商品を買って頂くためには、お客様に感情移入して、そのニ
ーズを明らかにし、お客様の感性に訴えなければなりません。そのアピールポ
イントがお客様の琴線に響けば、
「買おう!」という購買動機が、お客様の心に
生まれるのです。
私の知っている酒屋さんで、日本酒を非常によく売るお店があります。このお
店にはこんなポップがあります。
曇った窓ガラスに
ぐつぐつ煮える鍋料理
熱燗の日本酒をぐいっと一口飲めば
心やすまる温もりが
ひとすじ体を癒します
こんな感性豊かなコピーを読めば、思わず日本酒が飲みたくなります。
お客様が買ってくれない場合、「商品が悪いから」と決めつけるのは短絡的で
す。まず、
「どうして思った通りの行動をとってくれないのだろう?」と問うべ
きです。
そのためには、お客様にどういうステップを経て、「買う」という行動までた
どり着いてもらうのか、そこに至るまでのお客様の1つひとつの行動を考えて、
実際にそう行動してもらえるように働きかけていくことです。
そして、お客様が思ったような行動をとらなかった場合、どこに問題があった
のか、具体的には、AIDMAのうち、A(注意)かI(興味)かD(欲求)
かM(記憶)かA(購買)のどこに問題があるのかを明確にし、当初予定した
行動をとって頂くように、お客様の感性に訴えるのです。
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
(2)キャッチコピーの創り方
言葉には「強い言葉」と「弱い言葉」があります。
「強い言葉」とは、
●インパクトのある言葉:アサヒスーパードライ
●イメージしやすい言葉:ウォークマン
●響き・語呂がよい言葉:アラフォー(アラウンド フォー)
で、お客様に商品を買わせる力がある言葉を意味します。反対に「弱い言葉」
は伝達力が弱く、ありきたりな表現で、商品価値が相手に伝わりづらい言葉の
ことです。
例えば、「強い言葉」と「弱い言葉」を比較すると、以下のようになります。
弱
い
言
葉
強
い
言
葉
安い
激安
キレイ
チョー美人
痩せる
1週間で10kg
豊富
なんと100種類
人気がある
人気投票No.1
おすすめ
社長イチオシ
では、どのようにしてインパクトのある「強い言葉」を創ればいいのでしょう
か、ここでは、具体的な事例をあげて説明をします。
私が以前コンサルティングをしていた会社におせちのメーカーがありました。
この会社は冷凍技術に独自のノウハウを持っており、通常、冷凍食品を解凍す
ると食品に水がまわり、べたべたとした食感になりますが、同社は、解凍して
も食品がべたべたしない冷凍技術を開発しました。
当時は、お正月に食べる「おせち」のマーケットが拡大していました。世帯の
少人数化と、おせちを作る手間隙から開放されたいという消費者ニーズに、合
致したことがヒットの要因だったのです。
ところが、おせちを作るメーカー側の事情からいえば、商品を年末の30日か
ら31日に消費者の所へ届けなければなりません。おせちは食品なので、当然
作りだめは出来ません。商品の品質劣化を防ぐためには、短期間で大量の商品
を作らなければなりませんでした。しかし、そうすると商品を作る量に限界が
生じ、年末の大量注文に応じきれなくなります。
このようなマーケットの状況に注目した同社は、自社の冷凍技術を利用すれば、
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
このマーケットに参入しても十分勝ち目があると判断しました。おせちを冷凍
して作りだめをしておけば、大量注文に応じても必ず納期には間に合わせるこ
とができます。同社は、
「解凍後べたべたしない冷凍技術による、おせちの大量
安定供給」というコンセプトで同市場に参入したのです。
市場参入後、売上は急拡大しました。同社の技術は、直接消費者からおせちの
注文を受ける百貨店、大手スーパーなど流通業者にとって非常に好都合だった
からです。短期間に大量のおせちを、安定した品質で供給できるメーカーを流
通業者は待ち望んでいたのです。
今回は、この会社の事例を基にして、キャッチコピーの創り方を説明します。
ポイントは以下の5点です。
①伝えたい言葉を全部書き出し、訴求ポイントを整理する
②ターゲット顧客を明確にする
③ターゲット顧客のニーズ、お困りことを明確にする
④キャッチコピーとなるキーワードを列挙する
⑤キャッチコピーを創る
①伝えたい言葉を全部書き出し、訴求ポイントを整理する
まずは、売る側の事情です。売る側が訴えたい言葉を全部書き出し、訴求ポイ
ントを整理します。
事例としてあげた「おせち料理」では、次のような訴求ポイントを抽出するこ
とができます。
●大量注文に対応できる
●解凍後ベタつかない
●解凍後も鮮度が劣化しない
●配送時に商品が劣化する心配がない
●確実に年内にお届けできる
●おいしい
●大量生産ができるので、安い
●ご要望に応じ、数種類のおせちができる
●長期的な計画生産により、ミスのない商品が供給できる
②ターゲット顧客を明確にする
さて、どの点を重点的に訴えると効果的でしょうか。言い換えると、よく売れ
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
るでしょうか。そこで考えるべきは、どんな相手に訴えるのか、そしてその相
手はどんな状況にあるのか、ということです。
例えば、男性と女性ではニーズも異なるし、訴え方も変えなければなりません。
また、年齢では10代と50代では、趣味やライフスタイルも全く異なります。
このように、ターゲット顧客を明確にすることは極めて大切なのですが、実際
には、ターゲットが曖昧なまま、キャッチコピーを作られる方が実に多いので
す。
今回のおせちのターゲットとしては、おせちを実際に食べられる末端消費者と
いうことも考えられます。その場合のニーズは、おいしい、安い、たくさんあ
る、などが優先順位の高いニーズになるでしょう。
しかし、ターゲットとして捉えるべきお客様は、商品を直接消費者に販売する
お客様です。
従って、おせちのメーカーが直接販売するターゲット顧客となれば、百貨店、
スーパー、通信販売業者などです。
③ターゲット顧客のニーズ、お困りことを明確にする
お客様を明確にしニーズを抽出すれば、「こんなニーズがあるでしょ」と、お
客様に感性で訴えなければなりません。お客様の頭の中で考えている言葉が、
キャッチコピーによって改めてインプットされると、お客様は敏感に反応しま
す。
おせちを販売する百貨店、スーパー、通信販売業者にはこんなお困り事やニー
ズがあるでしょう。
●大量注文に対応できるメーカーがない
●生ものなど、商品が腐る心配がある
●輸送中に商品が破損・劣化する心配がある
●年末に消費者へ確実にお届けできる
●年末に一気に商品を作ってもらわなければならないので、きめの細かい注文
を出すことができない
●おいしい商品を安く買いたい
④キャッチコピーとなるキーワードを列挙する
売る側の訴求ポイントと、買う側のニーズ・お困り事が明確になれば、両者を
結びつけるキーワードを列挙します。このことによって、お客様の感性に響く、
インパクトの強いキャッチコピーが生まれるのです。
今回の事例では、次のような言葉がキーワードとしてあげられるでしょう。
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
● 大量注文
● 腐らない
● 冷凍ではベタつく
● おいしい
● 年末に確実にお届けできる
⑤キャッチコピーを創る
いよいよキャッチコピーに仕上げる時がきました。さきほど書き出したキーワ
ードを足したり掛け合わせたり、引いたり割ったり、いろいろなレトリックを
駆使してみましょう。
最初は「弱い言葉」で結構です。そこから、どんどん「強い言葉」に書き換え
てみましょう。その時、キーワードからいろいろな言葉を連想し、言葉遊びを
楽しむことが大切です。
●おせち販売の大革命!
大量生産・解凍後品質劣化なし
●新冷凍技術登場!年内お届け100%
●不可能を可能にした新冷凍技術
大量注文OK! 解凍後品質劣化なし!
●大量注文できない 品質劣化が心配
こんな不安はもう不要!
●解凍してもベタつかない新冷凍技術
鮮度抜群の「おせち」大量生産“可”
以上のように、型苦しく考えないで、思ったことをどんどんキャッチコピーに
して下さい。その中からキラッと光るものが生まれるはずです。
参考までに次ページに、表「キャッチコピーの創り方」を掲載しましたので、
表の手順に従ってキャッチコピーを作成してみて下さい。
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
(3)滑り台効果の秘密
読者はキャッチコピーに興味を持つと、心地よさや共感を覚えています。ここ
で登場するのが「滑り台効果」と呼ばれる重要なパートです。
すべての要素に説得力があるので、読者はいつの間にか滑り台を滑り落ち、最後まで止ま
ることができない。
購 買 決 定
コピー
リード
キャッチコピー
読者が広告にうまい具合に足をかけてくれれば、滑り台効果の創出はさほど難
しくありません。
実際、広告文の4分の1以上を読めば、最後まで読む確率が高いというデータ
があります。ですから、広告の最初に素晴らしい環境を整えて読者をつかまえ、
魅力的な第1センテンスを読ませることができれば、彼らは滑り台を滑り始め
たも同然です。そして、読者はあたかも滑り台を滑り落ちるように、コピーを
最初から最後まで読んでくれるようになるのです。
(4)自然に「購入への納得感」へと導く
これまで、キャッチコピーを書き、リードを書くように説明しました。
それから第1センテンス、第2センテンスというふうにして広告文を完成させ
ます。
広告文は紙のうえで流れるように文字にしなければなりません。いったん紙面
に書きつけたら、編集作業がきわめて重要になります。
この作業では、コピーの論理的な流れや必ず出そうな質問をブロック図で表し
てみることです。あらかじめ、お客様の質問を予期し、このキャッチコピーを
読めば、お客様はこんな質問をされるであろう、さらにその質問の答えに続い
て、こんなことを知りたいと思われるであろういった具合に、事前にお客様の
反応を予想し、あたかも面と向かっているかのように、それに答えなければな
りません。
そして最終的には、滑り台効果でもって、こちらがお客様に期待する行動、例
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
えば注文や資料請求、問い合わせなどをしていただくことが、ゴールとして設
定されることになります。
興味とワクワク感
ドラマ
なぜ違うか
使用法
購入への納得感
アフターサービス
注
文
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No.7 お客様の心をつかむ販売力の強化法(上)
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