イチジクの抗アレルギー作用に関する研究 誌名 愛知県産業技術研究所研究報告 ISSN 13479296 鳥居, 貴佳 著者 近藤, 徹弥 半谷, 朗 半谷, 朗 三井, 俊 巻/号 10号 掲載ページ p. 82-83 発行年月 2011年12月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所 Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat 愛 知 県 産 業 技 術 研 究 所 研 究 報 告 2011 82 研究ノート イチジクの抗アレルギー作用に関する研究 鳥居貴佳に 1、近藤徹弥':;2、半谷朗"1、 三 井 俊 "3 ResearchonAnti-AllergicE f f e c t so fFig , Ficusc a r i c a TakayoshiTORII*l, TetsuyaKONDO女 人 A kiraHANYA1 andShunMITSUI *3 会 FoodResearchCenter,AITECγ2*3 会 イ チ ジ ク が 有 す る 抗 ア レ ル ギ 一 作 用 を 効 果 的 に 利 用 す る た め 、 培 養 細 胞 を 用 い た 0… ヘ キ ソ サ ミ ニ ダ ー ゼ 遊離阻害率を脱頼粒反応の指標として抗アレルギ一作用を示す成分の特性を検討した。イチジク果汁を HP-20樹脂に添加して、 80見 メ タ ノ ー ル で 溶 出 す る こ と に よ り 抗 ア レ ル ギ 一 成 分 を 粗 精 製 し た 。 こ れ を ポ リ ピニノレボリピロリドンに接触させたところ、 O ヘ キ ソ サ ミ ニ ダ ー ゼ (s HEX) 遊 離 阻 害 率 が 低 下 し た 。 こ の こ と か ら ポ リ フ ェ ノ ー ル が s-HEXの 遊 離 に 関 与 し て い る こ と が 考 え ら れ た 。 ま た 、 沸 騰 水 中 で 加 熱 処理したところ、 s-HEX遊 離 阻 害 ネ が 未 処 理 の 試 験 区 と 比 較 し て 高 く な っ た 。 1.はじめに ( ゅ 3cmX8cm) に回収した上清を添加した。カラムを 現在、国民の 3人に 1人は花粉症などの何らかのアレ ノレギーに 陸患しており、大きな社会問題となっている O 4 アレルギ一治療は、患者に大きな身体的・経済的負担を 強いている O 近年、食品成分に免疫調整機能があること が明らかになり、さらに、果実等から抗アレノレギ一物質 蒸留水で洗浄後、 80%メタノールを 500mL添加し、吸 着物を溶出させた。これをエパボレーターで濃縮した後、 凍結乾燥を行ったものをメタノール抽出物とした。 2.2 ポリピニルポリピロリドン ( P V P P )処 理 2mLの試料溶液に PVPPを 0 . 2 g入れ、一晩室温で、振 が単離されている。日常的に摂取する食品によりアレル 000rpm, 5分)を行い、 とうした。その後、遠心分離(10, ギーの予防や症状を緩和することができれば、そのメリ 上清を回収した。 ッ卜は極めて大きいと考えられる。愛知県のイチジク収 2.3 sへキソサミニダーゼ遊離盟害率の潰J I定 000t、農業産出額は全国シェアの 3割 穫量は年間約 5, を占める 1 1 }。生食用として消費される一方、声規見 格名外とし 肥満細胞のモデルとしてラット好塩基球白血病細胞 (RBL-2H3 細胞)を使用した。ウシ胎児血清、ペニシ て取り s s e n t i a l リン G、 ス ト レ プ ト マ イ シ ン 含 有 Minimum E が求求宇められている。そこで、我々はイチジクの抗アレル MediumE a g l e (シグ、マネ土製)を用いて 95% A i r づ %CO2、 ギ一作用について検討した。イチジクに含まれる抗アレ 37Cで培養を行った。細胞を播種し、ラットモノクロー 0 ルギ一物質を加工食品や素材として活用することにより、 ナル抗 DNP-IgE抗体(IgEモデル)を培養液に加え、感 規格外品の有効利用が推進されると期待される。本研究 作させた。細胞をタイロード緩衝液で洗浄し、試料溶液 ではイチジク抽出物を調製し、脱頼粒抑制の指標として に置換した。 。ーヘキソサミニダーゼ (s-HEX) 遊離阻害率を測定 脱頼粒を惹起させた。氷冷して反応を止めた後、上清を した。さらにイチジク抽出物をボリビニノレポリピロリド 9 6ウェル平底マイクロプレートに移し、 p-ニトロフェニ ン (PVPP) 処理および加熱処理を行い、。 -HEX遊離 ノ レ ーN-アセチル司 阻害作用の変化について検討した。 で l時間反応させた。反応溶液に炭酸緩衝液 ( p H I 0 )を DNP-BSA (抗原モデル)を加え、細胞の s-0ーグルコサミドを加えて混和後 370C 加えて混和し、マイクロプレートリーダーにて吸光度 2. 実験方法 2 . 1 試料の調製 皮を剥いたイチジク(愛知県産、桝井ドーフィン)を 405nm を測定した。以下の式により s-HEX遊離阻害 率(%)を求めた。 s-HEX遊離阻害率(%) ={l- (C-D) /(A-B) } ジューサーでホモジナイズし、遠心分離 (7, 000rpm, 30 分)を行い、上清を回収した。合成吸着剤ダイヤイオン HP 20 (三菱化学(株)製)を充填したガラスカラム 戸 X100 A:陽性対照の吸光度(試料の代わりにタイロード 緩衝液を添加し、抗原刺激したもの) : ' 2食品工業技術センタ一 、l食品工業技術センタ一 応用技術室(現保蔵包装技術室 ' 術室 ) 1食品工業技術センタ一 応用技術室(現発酵ノ tイオ技術室) 応用技術室(現分析加工技 83 B:陰性対照の吸光度(試料と抗原の代わりにタイ に調製したメタノール抽出物を沸騰水中で 20及び 60分 間加熱した。加熱後の試料を RBL-2H3細砲に添加し、 ロード緩衝液を添加したもの) C 検体の吸光度(試料と抗原を添加した 。-HEX遊離陸答率の測定を行ったところ、加熱時間が 長くなるとともに s-HEX遊離阻害率が上昇した(閤 もの) D 検体対照の吸光度(試料を添加し、抗原の代わ 3)。べにふうき緑茶中のメチノレ化カテキンは加熱によ る異性化により、肥満細胞からのヒスタミン放出抑制効 りにタイロード緩衝液を添加したもの) 果が高くなることが報告されている 2 . 4ポリフェノールの測定 4 )。イチジクメタノ 炭酸ナトリウム溶液、蒸留水お フェノーノレ試薬、 10% ール抽出物においても、。… HEXの遊離を限害する物質 よび試料溶液を混合し、暗所で 1時開放置後に 760nm の本体がボリフェノールで、ある可能性が高く、加熱によ における吸光度を測定した。なお、襟準物質としてタン る s-HEX遊離阻答率の上昇の原田のーっとしてポリ フェノールの異性化も考えられる。今後、活性物質本体 ニン(和光純薬(株)製)を用いた。 の同定や加熱による変化などについての検討が必要であ 3. 実験結果 る 。 3 .1P V P P処理による s H E X議離語審率の変化 1 0 0 580 生果 2 . 7 k gのイチジクを HP・20カラムクロマトグラフ 事60 遺 4 0 x ィーにより粗精製を行い、1.7gのメタノーノレ抽出物を得 た。この抽出物を 2mg/mLになるように RBL-2H3細胞 手 20 αミ に添加したところ、無添加の試験区と比較して s-HEX 口 に含まれる s-HEX の遊離を盟筈する成分について検 2 0 未加熱 の遊離が約 80%阻害された。そこで、メタノール抽出物 E 寺院(分) 6 0 盟 3 加熱処理が s-HEX遊離担害率に及ぼす影響 討を行った。 1mg/mLになるように調製したメタノール 4. 結び PvPp(+))について 抽出物を pvppで処理し、その上清 ( 。 -HEX 遊 離 阻 害 率 を 測 定 し た と こ ろ 、 未 処 理 イチジクに含まれる抗アレノレギー物質の特性につい (PvPP(ー))と比較して阻害率は約 1 1 2に低下した(閣 2A)。 てラット好塩基球様白取病細胞を用いた脱頼粒抑制試験 また、ボリフェノール濃度を測定したところ、未処理と を用いて以下の点を明らかにした。 イチジク果汁に含まれる HP-20樹賄吸着画分のメ 1 3に低下した。これらの結果から、ポリフ 比較して約 1 ェノールが s-HEX遊離臨害作用を有していると考え られた(関 2B )。すでに茶葉に含まれるカテキン かんに含まれるへスベリジン 3) 2) タノーノレ抽出物は s-HEXの遊離を阻害した。 やみ 。 HEX の遊離担筈成分にはボリフェノールが含 など、ポリフェノ…ノレに まれている。 は抗アレルギ一作用を手ぎするものがあることが報告され メタノーノレ抽出物を加熱することにより s-HEX ている。今後はイチジクポリフェノールの精製と他の拭 遊離臨害率が上昇した。 アレノレギ一作用を有するポリフェノールと比較を行う。 80 (A) S ~ 文献 1 4 0 h E120 1 ) 三100 H S 劉 主 E 単m 純 警80 20 ¥ 7 h H 8 0 40 w w w . p r e f . a i c h i . j p / c m s f i l e s / c o n t e n t s / 0 0 0 0 0 2 6 / 2 6 3 2 h 2 4 / i c hりi k u . p d f 2 ) M.Maeda-Yamamoto,N .Inagaki,J .K itaura,T . 、長= 20 αミ Chikumoto, H. Kawahara,Y . Kawakami,M. e G G PVPP( 寸 PVPP(+) 愛知県のいちじく生産の概要(愛知県庁) PVPP( 一 ) PVPP(+) 関 2 PVPP処理による s-HEX遊離眼害率 (A) とポリフェノーノレ濃度の変化 (B) Sano,T .Miyase,H .Tachibana,H.NagaiandT . , . l 172,4486(2004) Kawakami:J Immuno 3 ) S .KobayashiandS .Tanabe: J nt.JMo l .J l 1 e d ., 1 7, 511( 2 0 0 6 ) . 3 . 2 メタノ…ル抽出物の加熱時期による s H E X遊離阻 害率の変化 メタノール抽出物の加熱処理が s HEX遊離阻害活 性に与える影響について検討した。 1mg/mLになるよう . Nagai,Y . Suzuki,K . 4 ) M. Maeda-Yamamoto,H Ema,E . Kanda and H. Mitsuda: Food Sc i . Techno l .Res 1 1, 248( 2 0 0 5 ) . 叶
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