東北大学 Study Abroad Programme 2015 年 春

東北大学 Study Abroad Programme
2015 年 春
目次
はじめに ..................................................................................................................... 1
研修日程 ..................................................................................................................... 2
参加メンバー一覧 ....................................................................................................... 4
各学生の事後レポート ................................................................................................ 5
大きな一歩(碓井 将也) ...................................................................................... 5
Only One Month(田中 一成) ............................................................................ 8
SAP を通じて学んだことと課題(會田 良介) ................................................... 11
イギリスでの研修を終えて(伊東 直洋) ........................................................... 14
英国滞在の回顧録、そして未来へ向けて(上蓑 義幸) ...................................... 17
異文化に身を置いて学んだこと(太田 沙椰香) ................................................. 20
英国:文化と英語運用(小川 蒼) ...................................................................... 23
2015 年春 SAP を終えて(小日向 寛之) ........................................................... 26
SAP の体験と今後の課題(菅野 友里恵) .......................................................... 29
為せば成る(小松 成)........................................................................................ 32
SAP を通して得たもの(田口 真梨) ................................................................. 35
海外研修を終えて(千葉 里華子) ...................................................................... 38
SAP 短期研修を終えて(中島 一郎) ................................................................. 41
SAP での成長(成田 伊織)................................................................................ 44
Something Learnt in York(古澤 直也) ........................................................... 48
ヨーク大学短期留学(馬場 麻里奈) .................................................................. 51
私のイギリス体験記(大内 裕介) ...................................................................... 54
ヨークでの生活の振り返り(小林 恵子) ........................................................... 57
イギリスで学ぶ英語と文化(手塚 俊樹) ........................................................... 60
この「半年」で得たもの(毛利 涼楓) ............................................................... 63
研修中の写真 ............................................................................................................ 66
はじめに
York イギリス文化体験プログラムは、東北大生のために組まれたプログラムであり、以下を目的
としている。
 基礎から実践的なレベルまで高められるよう、集中して英語を学ぶ。
 プレゼンテーションのスキルやライティングの力を伸ばす。
 授業やホームステイを通じ、
語学だけでなくイギリス文化や Employability についても学ぶ。
 IELTS の受験対策と現地での IELTS 受験により、研修成果を確認するとともに、帰国後の
交換留学につなげる。
授業では大きく分けて 4 つのジャンルについて学習した。
1 つ目はイギリスの文化である。場面に応じた適切な所作や伝統料理、芸術、イギリス英語とい
った多様な側面を座学だけでなく、体験しながら学ぶことができた。2 つ目は Employability であ
る。グループワーク中の自分の役割や、リーダーに必要な素質と自己の比較、Six Thinking Hats
というアイディアが多く生まれるようなディスカッションの方法を学び、将来社会で役立つことを
身につけることができた。3 つ目は、IELTS の受験対策である。IELTS とは海外留学や海外移住の
際、自身の英語能力を判定するテストである。授業では、試験に必要な 4 つの技能(Listening,
Reading, Writing, Speaking)について基本的な情報や傾向を教わり、演習を行った。そして 4 つ目
は Project である。ヨークに関するトピックの中で各自興味のあるものを選び、グループでそのト
ピックの理解が深まるような質問の作成、キャンパスや街頭でのインタビューを実施し、その結果
を集計、分析してプレゼンテーションを行った。以上の 4 つのジャンル以外にも、授業で学んだ町
に実際に訪れるサイドビジットも用意されており、2 つの町(Leeds, Whitby)を訪れた。
授業以外にもイギリスを学ぶ場面は数多くあった。日々の出来事を書くジャーナルは、イギリス
と日本との違いで気付いたことや気になったことを考察する良い機会であった。このジャーナルは
教員の方がコメントを書いて返却してくれたので、イギリスをより深く理解できた。また、現地の
学生やホストファミリーと会話や外出をする機会が多かったので、現地で使われているたくさんの
会話表現やイギリスの文化に触れることができた。さらに、休日にはイギリス各地の町やシティー
センターへ赴き、授業では習わないようなイギリスの姿を目にし、自発的に学ぶことができた。
この充実した研修を通して、どの参加者も自身の成長を実感できたと思う。1 か月という短い期
間ではあったが、イギリスでの貴重な体験は将来への活力になるだろう。
最後にこのプログラム主催していただいた皆様、現地で私たちをサポートしていただいた Centre
for Global Programmes の皆様、私たちを 1 か月間指導していただいた Tudor と Judith、そして
温かく迎え入れてくれたホストファミリーの皆様すべてに感謝して終わりにしたいと思う。
2015 年 4 月 University of York 参加者一同
1
2
研修日程
MARCH
09:30
11:00
11:30
MONDAY 2
Welcome and
Introduction to
Programme/ Intro to IT
(10.45 HL-J)
TUESDAY 3
Language and Skills
Development: Living
with your Host Family
Orientation to York
WEDNESDAY 4
Employability Skills:
Issues in Culture and
Society
Assessment
Orientation to York
Language and Skills
Development: Living
with your Host Family
Visit to York
Issues in Culture and
Society
Tohoku 1 Japanese
class visit
(Tutor: Yumi Nixon)
Presentation event
16:00 – 18:00
13:00
14:15
15:45
Evening
Health and Safety Talk
14.15 - 14.45
/ Tour of Derwent
College (15.00 - 15.30)
Campus Orientation
(15.30 - 16.30) Families
to collect from 16.30
MARCH
MONDAY 9
TUESDAY 10
09:30
Issues in Culture and
Society
Employability Skills:
Communication skills
IELTS
Issues in Culture and
Society
Group Photo 10.50
Issues in Culture and
Society
Employability Skills:
Communication skills
Employability Skills:
Project
11:00
11:30
IELTS
13:00
14:15
Issues in Culture and
Society
Employability Skills:
Project
15:45
Evening
Employability Skills
Presentation event
preparation
WEDNESDAY 11
THURSDAY 5
IELTS
Employability Skills:
Introduction to
Project
Employability Skills:
Introduction to
Project
IELTS
Employability Skills:
Project work
FRIDAY 6
Employability Skills:
IELTS
WEEKEND 7/8
IELTS
Employability Skills:
Tutorials/Self-Study
Tohoku 2 Japanese
class visit
(Tutor: Megumi Bailey)
THURSDAY 12
FRIDAY 13
Whole day visit to Leeds
Depart York 09:30
IELTS
Visit to City Museum/City
Art Gallery
All together with
Sally Jenkins
IELTS
Whole day visit to Leeds
Employability Skills:
All together with
Sally Jenkins
Preparation for visit to
Leeds
All together with
Tudor Parsons
International
Conversation Afternoon
16.00 - 17.30
Visit to City Museum/City
Art Gallery
Whole day visit to Leeds
Visit to City Museum/City
Art Gallery
Depart Leeds 16:30
All together with Tudor
Parsons
Free for Self-Study
/Project Data Collection
WEEKEND 14/15
MARCH
09:30
11:00
11:30
13:00
14:15
MONDAY 16
IELTS
Issues in Culture and
Society
Issues in Culture and
Society
IELTS
TUESDAY 17
IELTS
Issues in Culture and
Society
Issues in Culture and
Society
IELTS
Employability Skills:
Project
Employability Skills:
Project
15:45
Evening
MARCH
09:30
11:00
11:30
WEDNESDAY 18
THURSDAY 19
Whole day visit to Whitby
Depart York 09:30
FRIDAY 20
Employability Skills
IELTS
Employability Skills:
Communication skills
Preparation for trip to
Whitby
Preparation for trip to
Whitby
Employability Skills:
Communication skills
International
Conversation Afternoon
16.00 - 17.30
Whole day visit to Whitby
IELTS
Employability Skills
Whole day visit to Whitby
Free for Self-Study
/ProjectPresentation
Preparation
Depart Whitby 16:30
MONDAY 23
IELTS speaking test
JQ001, JQ002, JQ003,
JQ004, JQ005
(Portakabins at James
College)
IELTS speaking test
JQ001, JQ002, JQ003,
JQ004, JQ005
(Portakabins at James
College)
TUESDAY 24
Language and Skills
Development
Employability Skills:
Project:
Presentation Skills
Employability Skills:
Project:
Presentation Skills
Language and Skills
Development
WEDNESDAY 25
THURSDAY 26
Project
Presentations
V/C/109, V/C/123
FRIDAY 27
Programme evaluation
LFA/015 - PC Room
Project
Presentation:
Preparation and Final
Practice
D/L/003, D/L/049
Project
Presentations
V/C/109, V/C/123
Employability Skills:
Project Presentation Skills
Preparation for Panel
Interview
Panel interviews
D/L/003, D/L/049
Project Feedback
and
Reception Preparation
V/C/109, V/C/123
Reception Yourspace
18:00-20.00
11.30 - 11.50 PG
Opportunities at York Joelle Maurice
11.50 - 12.10 - Visiting
Student Opportunities at
York- Claire Postill
D/L/116
Programme Review
13:00
14:15
15:45
Evening
3
Free for final practice
WEEKEND 21/22
IELTS
Testing
WEEKEND 28/29
参加メンバー一覧
4
氏名
学部
学年
碓井将也
工学部
3年
田中一成
工学部
3年
會田良介
工学部
2年
伊東直洋
理学部
2年
上蓑義幸
工学部
2年
太田沙椰香
文学部
2年
小川蒼
文学部
2年
小日向寛之
理学部
2年
菅野友里恵
文学部
2年
小松成
工学部
2年
田口真梨
理学部
2年
千葉里華子
経済学部
2年
中島一郎
法学部
2年
成田伊織
文学部
2年
古澤直也
工学部
2年
馬場麻里奈
工学部
2年
大内裕介
経済学部
1年
小林恵子
工学部
1年
手塚俊樹
工学部
1年
毛利涼楓
工学部
1年
各学生の事後レポート
本プログラムの参加学生 20 名がそれぞれに執筆した報告書を掲載する。
自己の言語運用力、異文化適応、行動力の 3 テーマについて、
本プログラムを通して達成したこと、及び見えてきた課題を記した。
大きな一歩
碓井 将也
1. 自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して私が SAP を通して達成したこととして一番強く思うのは、今までと
比べてはるかに英語を使って話すことに抵抗感がなくなったということである。中学から英語を習
い始め、高校、大学と英語を続けて勉強してきたが、学習のメインはリーディングとリスニング。
リーディングと少し得意であったライティングは自分でもいくらか練習を重ねていて、その二分野
だけはある程度自信があったが、リスニングは大学に入って留学やインターナショナルのことを意
識するまで学ぶことの大切さを全然わかっていなかったため、最低限しかやっていなく苦手意識が
ずっとあった。しかしここに言葉が出てきていないようにスピーキングに関してはほとんど練習し
てこなかった。そのため基本的なことさえどう言えばいいのか、どういう表現の仕方があるのかわ
からず、ただただ英語での会話に抵抗感だけあり、でもほとんど何も対策をしてこなかった。この
まま逃げてばかりいるのも嫌だったのでおもいきって英語を話さなければならない環境に身を置
いて鍛えようと決め、今回の留学に参加したがヨークのプログラムでは恵まれたことに、ホームス
テイを一家庭日本人一人だけでするので、どうしても自分がホストファミリーと英語を使って話さ
なければならなかった。このおかげで始めは自分からファミリーに話しかける勇気など全くなかっ
たが、4 週間後には自分の部屋から出て進んで話しに行くようになっていた。これは大きな進歩で
あると思う。また授業に関しては、IELTS 受験のために英語の 4 スキルすべての練習をしたが一
番ためになったと感じたのは英語を話す練習の時間だった。隣に友達がいるので授業中でもつい日
本語で相談してしまうが、ことあるごとに先生に「英語使って!」と促され、また数人のグループ
であるトピックについて話し合う機会がたくさんあったため英語を話す時間が自然と増えた。話す
内容がうまく英語にできず困ることもしばしばあったが、これも回数を重ねるごとに少しは英語が
出てくるようになり、慣れてきたという印象が得られた。IELTS のスピーキング対策や面接の簡易
版の Job Interview というものに向けてのペアー若しくは先生と一対一での練習も緊張感さながら
のいい訓練になった。そして一番の山場であったプレゼンテーションについて。現地の人に英語で
のアンケートをお願いすることも貴重な経験にはなったが、何よりプレゼンをどう上手くまとめる
かに力を注いだ。事前研修では原稿を読んでばっかりのつまらない発表になってしまったため、今
回はできる限り原稿に頼らないようにしようと心掛けた。最後の週になると、今までの経験が活き
てきたのかアドリブでもある程度しゃべれるようになってきたため、Job Interview もプレゼンも
話す原稿は準備したものの本番では原稿なしでやりきることができた。
ある程度の進歩は見られたものの、課題は多く見つかった。まず一つ目は一番苦労したホストフ
ァミリーとの会話。大学の先生の話す英語はクリアで理解しやすかったが、ホストファミリーの話
す英語は早くて何と言っているか理解するのに時間がかかり、うまく返事が出来ないこともしばし
ばあった。文語と口語で口語に慣れていないことも問題ではあるが何よりリスニング力のなさを強
く感じた。IELTS のリスニング分野も全然自信がなく、まずは英語を聴く時間を増やして耳を英語
に慣れさせる。そしてスピーキングの分野。事前にある程度準備した内容に関しては、途中でその
内容を忘れてもアドリブで対応できるようになったが日常生活での対話など瞬時にコミュニケー
5
ションをとる時に英語がすぐに出てこない。これは言い回しやオーソドックスな表現も身に付いて
いない証拠。普段日本にいる時でもこの日本語は英語でどういうのかなど意識して少しでも英語を
使う機会を増やすことを心掛ける。ライティングに関しては向こうでしっかり練習して長い文章を
書くことに慣れたので、この力が衰えないように英語の文章を書く練習を継続して行う必要がある。
リーディング分野は TOEIC などの対策も含め文章を早く正確に読む訓練を引き続き行う。
2. 異文化適応
イギリスに行ってみると日本と異なる点が数多くあったが、どれにも上手く馴染めたと自分では
思っている。まず食事に関して。イギリス人は朝食を軽く済ませるという情報は渡航前から得てい
た情報ではあったが、実際に体験してみるとお昼までにお腹が空き過ぎて何か食べたりすることが
多かった。でも不思議とトースト 2 枚の朝食にも慣れて、最後の週あたりには特に気にならなくな
った。そしてイギリスの食事で圧倒的に多い割合で登場するのがポテトである。日本でいう主食は
米であるが、向こうはポテトである。と言ってしまっていいのかはわからないが、それくらいほぼ
毎日ポテトを食した。ポテトの出され方も様々であってが、イギリスで有名な Fish & Chips は我々
の一躍関心の的になった。
続いて生活全般に関して。まずヨークのお店はコンビニやスーパーも含めて遅くて 23 時くらい
には店が閉まる。日本みたく 24 時間営業しているお店は見付からなかった。そして驚くことにバ
スの終バスも行き先によってはかなり早かった。実際私のステイ先もそのうちに該当し、平日です
ら終バスが 20 時ちょっと過ぎと、夕食を街でゆっくりとっているだけでも間に合わなそうな時間
で、4 週間のうち 7 日くらいは夜駅から一人で歩いて帰った。日曜日は特に 18 時にはバスが終わ
りになってしまうため、一週目と二週目の週末ロンドンへ行ったが帰りは駅から徒歩だった。少し
大変であったがいい運動にはなったし、逆にこの早くサービスが終わることがいいことなのかもし
れない。というのも、私のホストファザーは平日朝 7 時くらいに家を出るが、私が学校から帰って
くる 16~17 時頃にはもうすでに帰宅していることが多く、ほぼ毎日家族揃って夕食をとっている。
友達から聞く話にもそういう家庭が多かった。見方を考えれば、イギリス人は家族でいる時間をと
ても大切にしているのではないかと思った。日本人はよく働き過ぎと言われるが、24 時間営業し
ている店舗も多く、残業する人の割合も未だ比較的高いので家族の時間よりも仕事を優先している
人が多いように感じる。店が遅くまで営業していることがとても役に立つこともあるけれど、その
分働いている人が必要になるわけで、日本人ももう少し家族と過ごす時間を増やしてもいいのでは
ないかと思った。また就寝時間に関しても日本と少し異なるように感じる。イギリスの人は夜 10
時には全員寝室に入り就寝の準備をする。だが日本人は比較的遅くまで夜 11 時や 12 時まで起きて
いる人が多い。起きる時間にはさほど差はないので、イギリスの人は睡眠時間も日本人の平均より
ながいのではないだろうか。そしてイギリスではシャワーが一般的であり湯船に浸かることは一度
もなかった。洗濯に関しても私のステイ先は寛容に対処して下さり好きな時に洗濯をして下さった
が、周りの友達の中には一週間に 1~2 回しか選択出来ない人もいた。私はたいへん恵まれた家庭
にホームステイできたが、日本から飛び出して初めてこういう国もあるということを知れたので、
今まで当然と思っていたことに対して視野を広げるいい機会になった。
今後の課題としては、イギリスにはイギリスの文化、日本には日本の文化があるようにまだ行っ
たことのない他の国にもその国特有の文化や特徴があるので、それを体験して視野をどんどん広げ
ていきたい。留学でも旅行でも、海外に行く価値はこういうところにもある。
3. 行動力
今回の留学で一歩を踏み出したこととして最もよかったことは、一週目のある日の放課後にヨー
ク大の日本語サークルのアクティビティに参加したことである。これは特に全員参加でもなかった
ため参加しなくてもよかったものであったが、切羽詰まった用事があるわけでもなく現地の人と交
流するいい機会だと思って参加した。そこで二人の人と仲良くなった。一人は日本人で大学院から
6
ヨーク大に来た人で、もう一人は日本人ではないが日本語が結構上手で高校からヨークにいる人。
この二人と仲良くなれたことでヨークでの生活が一段と楽しいものとなったし、おそらく東北大か
らヨーク大のプログラムに参加した 20 人の中で一番(実際は同じ東北大の 20 人のうちの一人も一
緒でその 4 人グループで行動していた)この留学を満喫できたと言えるくらい充実していた。毎週
毎週ヨーク市街で色んなレストランやパブに連れて行ってもらったし、美味しいお店、有名なお店、
お土産を買うのに適している場所などほんとにたくさんの場所を教えてもらった。店員さんはもち
ろんイギリス人で英語をしゃべるので、自分たちだけでは絶対に入らないだろうお店にも入れた。
全部彼女たちのおかげである。その二人と一緒にいることが多かったのでイギリスに来て疑問に思
っていたことをたくさん聞けてとても貴重な時間でもあった。そして更にいいことに彼女たちに私
たちが IELTS を受験すことを話すとすすんで助けになると言ってきてくれたである。彼女たちは
日本語も英語も両方理解しているのでこちらとしてもとても聞きやすく、たいへんありがたかった。
主にライティングのテストのアドバイスをしてくれたが、誰でも知っているような簡単な単語ばか
りを使っていると点数にならないこと、日本語でこう言いたい時の英語でのフレーズや言い回しな
どたくさん教えてくれた。その大部分は聞いたこともないものだったが、実際試験の時にたくさん
使ってみたしこれを機に自分の知識が深まったと思う。実際留学をしに来ているのだし英語でコミ
ュニケーションをとって仲良くなるのが一番いいことなのかもしれないが、相手が日本語が通じる
からこそあるメリットは多い。特に今回は初めての留学で慣れないことも多かったし、スムーズに
コミュニケーションをとれたことでたくさんのことを経験できた。
担任の先生やましてやホストファミリーとはこういう話をするのはハードルが少し高かった。特
にホストファミリーには、始めは自分が質問をするとその応答が理解できなくて、聞けば聞くだけ
疑問が増えるという矛盾が生じていたため、聞くこと話をすることを避けていた。しかし段々とわ
からなくてもわからないなりにどうにか対処しようと思えるようになり、話があるとホストファミ
リーに聞きに行くようになった。これも先に述べたアドリブでも少しはしゃべれるようになった成
果なのかもしれない。全部を理解しようとしていた自分から少し変われたことにより、先生にもホ
ストファミリーにも些細な会話が増えたことは大きな進歩。やっぱりわからなくても勇気を出して
聞いてみることで、少しずつわかるようになると思う。
しかし今回最も残念だったことがホストファミリーの子どもたちとあまり一緒に遊ぶことがで
きなかったことである。自分の知識・語学力が乏しいせいで会話が上手く続かず、話し始めてもす
ぐ会話が途切れてしまう。ホストファミリーと上手くコミュニケーションをとれるようになること
はほんと時間がかかることだと思うが、悔しいと思ったからこそ次の機会にはもう少し成長した自
分でいたいと強く思った。またヨークダンジョンというヨークの歴史を怖く再現したアトラクショ
ンにも行ってみたが、話されている英語が所々しかわからなかったため怖さを十分に味わえなかっ
た。これから伸ばすべきはリスニング力とスピーキング力だと思う。語彙力を高めるのはもちろん
であるが、リスニングも少しずつ聞く英語の速度を速くしてみたり、スピーキング分野も日常会話
で使われる口語を中心に勉強して今回感じた自分の課題をなくしていきたい。
最後になるが、正直な感想を言うと 4 週間だけの留学では語学力を向上させるには短いと強く感
じた。だから意味がなかったかというとその反対で、日本にいるだけでは絶対できないとてもいい
経験ができて満足している。そして今回の経験から半年や一年の留学にも挑戦できるのではないか
という気持ちにもなった。そういった意味で今回の留学は海の外の世界を今までほとんど知らなか
った未熟な自分にとって大きな一歩だったということは間違いない。また機会があれば留学も考え
る。そしてまた TOEIC などでも高得点を目指す。
7
Only One Month
田中 一成
1. 自己の言語運用力
自分が欲している情報の行き来はできたように思う。しかし、会話の中で相手の言うことがしば
しば聞き取れなかったり、自分の言いたいことが言えなかったりともどかしく感じるときは往々に
してあった。
特に、生活に慣れてきたプログラム後半で顕著に感じられた。滞在当初は目紛しく、毎日新しい
ものに触れるので、生活に馴染むことに精一杯でただホストマザーに聞かれた情報や自分のわから
ないことのやり取りを行っていただけであった。次第に現地での生活に慣れてくるとホームステイ
先や友人等とのやりとりに余裕ができて会話する時間が増えた。そのなかで困ったことが先に挙げ
たようなことで、確かに会話は成り立っているのだけれど、ジョークや決まり文句的な言い回しが
理解できずに会話していても日本語で行う会話とは大きく異なり、内容に全く深みが生まれていな
いように感じた。その点がこれからの課題であると考えられた。
この 1 ヶ月を通してまず一番に英語を用いて話すことが必要だと感じた。私のホームステイ先に
いたリビアからの青年は英語がほとんど話せない状態でイギリス滞在を始めたと言っていたが、4
ヶ月の滞在によって、私と同程度かそれ以上に話せていると感じた。私も日本の英語教育のなかで
中学生頃から英語を学び始めたわけだが、その経験以上に彼は 4、5 ヶ月のイギリス生活によって
日常会話を身につけていた。ホストマザーも 3 ヶ月ほど経過した辺りから話せるようになったと言
っていた。彼は、私より全然英単語を知らなかったのだが、それでも会話は成り立っていた。小さ
いころに我々が日本語を習得したように単語などよりもまず会話から英語を学んでいるようで、今
まで英語を学習してきた私としてはイギリス滞在で最も驚いたことだった。
しかし、会話を円滑にする上で必要性を迫られたのは語彙力である。これはスピーキングだけで
なく、リスニングなどでも最も重要なことであるが自分の持っている語彙が圧倒的に不足している
と感じた。滞在中にしばしば日本語と比較して考えたのだが、私たちが英語を話す時にネイティブ
と異なる点は修飾語をいかに使用するかであると思われた。文の基本構造は従来の学校教育である
程度身についており、固有名詞などもわかるので日常生活ではそこそこ会話することもできた。し
かし、長時間の会話やディスカッションをするとなると表現に強弱や変化をつけたくてもそれに匹
敵するだけの英語表現を持っていないことに気づかされた。ネイティブの感覚を身につけることは
難しいが、今回語彙の重要性を痛感させられたので、より多くの表現を様々なメディアや文献を通
して習得したいと思う。
また、ホームステイ先や現地学生などどの人と話したときに滞在期間が 1 ヶ月だけであることを
指摘された。確かにこの 1 ヶ月のイギリス滞在を通して、ネイティブの英語に触れることで私たち
の英語力は格段に上達したかもしれない。しかし、彼らが言っていたように英語で会話できるよう
になるためには最低でも 3〜6 ヶ月の中・長期間留学する必要があると感じた。今後の大学院進学
等の際に今回の経験を足がかりに海外での長期滞在を目標にこれからの学習に励みたい。
2. 異文化適応
私の滞在するホームステイ先には、私の他にリビア・サウジアラビア・中国からの留学生が滞在
していた。彼らは私たちと異なり、もうすでに何ヶ月もヨーク大学に通っている学生であった。現
地に着く以前に私は自分のホームステイ先に他の留学生がいることを知らなかったので、当初は大
変驚き、また彼らとともに生活することに困惑し動揺していた。彼らは私より滞在期間も長くスピ
ーキングでは長けていたが、お互いに慣れるまでは探り探りであまり話せていなかった。しかし、
8
彼らも私と同じように英語を学習中の身であったので、多少伝わらない場面でもお互いに苦心して
伝えようとしたため、非ネイティブ同士、交流を図れたのでないかと思う。
彼らと暮らす中でお互いの文化的価値観の差は頻繁に見受けられた。夕食は皆でとっていたのだ
が、その際毎日異なるトピックで話す時間があった。その時にそれぞれの留学生が自分の国の様子
を話していたのだが、文化的背景や政治的背景が全く異なるので私がいままで知ってきた日本の状
況とかけ離れており衝撃を受け、また大変勉強になった。
授業の一環として、毎週水曜日の放課後ヨーク大学に通う日本に興味を持った学生と交流する機
会が設けられていた。彼らと話をするなかで日本の文化が海外でどのように受け入れられているか
を垣間見ることができ、普段気づくことのない外から見た日本を知るいい機会となった。
滞在中に日本食を食べる機会、またホームステイ先に作る機会があった。イギリスで食べた日本
食は日本にあるものと異なり、味付けが現地の人々の嗜好に合わせて変化しており、また私が作っ
た日本食も若干甘いと言われた。また、イギリス滞在以前の私はジャガイモや紅茶をあまり好んで
いなかった。しかし、それらはイギリスの代表的な食文化であり、抵抗を持ちつつも受け入れなけ
ればならなかった。海外において食文化はそれぞれの文化にあったものに適応していっており、ま
た海外で生活する際に最も重要となる“食”についてはその土地土地で受け入れながら自分を変化
させる必要性を感じた。
イギリスやアメリカなどのように多くの国からの移民が滞在する国家では異文化に順次適応し
ていく必要があると思うが、習慣の違いを受け入れるのには努力が必要であると感じた。各々の持
つ習慣は母国の文化や歴史的背景などと密接に関連しており、たとえ滞在先の国で全く異なる意味
を持っていたり、おかしく思われていたりしても一朝一夕に変えることは困難であると思うからで
ある。他国の文化を尊重することはもちろんだが、自国の良い文化は積極的に海外に発信していけ
ればと思った。
海外で働くことについても考えた。ヨーク大学でインターンを行っている日本人女性のスタッフ
がいたのだが、アジア人のスタッフは彼女しかいないということだった。そのような環境下で働く
彼女の行動力や考え方に非常に感銘を受けた。また、勤務時間や有給休暇については日本とは全く
異なり、残業もほとんどなく旅行などにも頻繁に行っているようだった。そのような面は日本では
まだまだ少なく、家族との時間を大事にしており、夕食は家族でとり、きっちりとオフの日を作る
習慣は非常に羨ましく思った。けれども、海外で働くという選択は難しく思った。確かに日本は就
業面で大きく改善しなければならないと思った。しかし、治安やサービスの良さは世界トップクラ
スであり、生活する環境は非常に良いと感じた。海外を訪れる際にはその土地の文化・習慣に沿う
必要があるが、それ以上に他国の良い習慣を日本の習慣でもアレンジして適応させればより良い生
活になっていくと思った。
3. 行動力
3 年生での SAP 参加は私のプログラムでは私を含め 2 人だった。長期留学をする学生を除くと
三年生の春に 1 ヶ月海外研修を行うものは比較的少なく、今回の SAP に参加したこと自体自身の
行動力を向上させたのではないかと考えられる。そして、一ヶ月という限られた期間のなかで最大
限に経験を得るための行動をしようと思ったのだが、二日以上の休日は二週しかなかった。そこで、
1 週目と二週目の週末を利用してロンドンとエディンバラを訪れた。ロンドンはかねてより行きた
い都市の一つであったので、今回の滞在における目標の一つを果たせた。また、ロンドンでミュー
ジカルを鑑賞することや 6 nations を現地の人々と観戦すること、本場のパブに行くことなど当初
の目標を超える経験を得ることができた。当然 1 ヶ月のホームステイで欧州の生活を経験すること
や講義を通して英語力を高めるといったことも本当に充実した経験だった。平日の放課後には、市
内を観光したり、現地の学生と様々な国の料理を食べに行ったりと現地の暮らしに慣れ親しめるよ
9
う積極的に行動した。
しかし、現地の学生や人々と交流する場面では、まだまだ努力の必要があると感じた。自分自身
で観光地を訪れたり、演劇を鑑賞したりするような“能動的”な行動力は元々あったと思われ、今
回の滞在でも生かすことができた。しかし、交流などのような他人が絡む“受動的”な行動につい
ては言語の壁やコミュニケーション能力不足を感じた。そうしたなかでも、プレゼンテーション課
題のために行ったアンケート調査では、比較的大学内や街なかの人々に話しかけ、アンケートを行
えた。そこで今後の目標としては、英語での言語運用力を向上させることを前提として、アンケー
トなどの目的のないときでも様々な国の様々な背景・価値観を持つ人々と積極的に話すことが重要
だと思った。
SAP 期間中は滞在を 1 日でも無駄にしないようにと毎日の放課後や休日を最大限に使って勉学
に励み、観光し、ホームステイ先と過ごし目紛しくも大変有意義な時間を過ごすことができた。と
ころが、日頃の大学生活を見つめ直すと必ずしもそのように行動的に過ごせておらず、時間を浪費
してしまっているのではないかと感じた。旅先や留学先で積極的に行動するのは当たり前なので、
日本での日頃の生活でも自分のすべきことや英語力をあげる、海外に長期滞在するなどといった目
標を見失わないように日々の生活を有意義に送りたい。また、近い将来として卒業研究や大学院進
学に向けてこの 1 ヶ月間の行動力や集中力を生かして研究、勉学に励んでいきたい。遠くない未来
として就職を考える際にも、学部時代に 1 ヶ月間海外に滞在した経験はこれから海外に行く際に大
きな経験となり得ると思うので、今回の SAP を生かしていきたい。
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SAP を通じて学んだことと課題
會田 良介
1.自己の言語運用能力
自己の言語運用能力に関して、私が SAP を通じて達成できたこととして相手の言っている内容
を理解し、生まれたコミュニケーションを楽しむことが出来たことが挙げられる。また、最低限自
分の意思や情報を伝えることも出来た。具体的にはホストマザーとの会話において自己の成長をも
っとも感じた。ホストマザーは私に多くのことを教えてくれた。料理の説明、イギリスで起きた事
件、コメディードラマの説明、ヨークの町の魅力などである。ホストマザーの英語に慣れるまで時
間はかかったが私が理解できなかったときは何度でも説明してくれ、それにより料理やテレビを楽
しむことが出来た。この経験を通じてリスニングとしての英語の理解はもちろん、ジェスチャーや
相手の表情を見ながら相手の意図、意思を理解する力が身についたように感じる。この力は日本に
いる時より海外に実際に行ってこそ大きく伸ばせる力だと思うので、SAP は私にとって本当にいい
経験になった。さらに、ホストマザーとの会話において最低限のことは伝えられたと思う。例えば
週末の予定や自分の好き嫌いなどである。週末の旅行から帰ってきたときも自分が見てきたものや
訪れた場所、経験してきたことを話し、会話のキャッチボールを楽しめた。
また、ホストマザーや現地の学生との会話以外にも授業で行った就職の模擬面接やプレゼンテー
ションを通じて、会話とは違った角度で聴き手を意識した英語にも触れることが出来た。会話に使
われる英語とよりオフィシャルな場で使われる英語は日本語と同様に大きく差があり、それらをど
ちらも学べたことは言語運用能力として成長できたことである。
しかし、自己の言語運用能力において多くの課題も見つかった。リーディング、リスニング、ラ
イティング、スピーキングなどすべてに課題はあるが、特にスピーキングがもっとも今後克服すべ
きものであると感じている。なぜなら思い返してみると会話において自分は聴き手になって相手の
発言に相槌をうつことが多かったが、これでは会話を広げることは難しいと感じたからである。例
えばホストマザーがテレビの内容を説明してくれたときも聞く一方で、より深い内容を質問したり、
感想を言ったりすることが出来ずとてももどかしく感じた。相手の発言に対して自分の意見や感想
を言えるだけで会話の質が大きく変わったであろう。
この経験をふまえて、今後はリーディングやリスニングなどの英語力全般はもちろんのこと、特
にスピーキングを伸ばしていきたいと考えている。なぜなら長期留学や将来の海外での就職に興味
があるからである。長期留学や就職では人とのつながりは必要不可欠なものであり、その基本とし
て会話がある。より良い人間関係を築くためにスピーキングの上達の必要性を感じたのである。ス
ピーキングをはじめとする英語力を伸ばしていくために SLA などの東北大学が提供するサービス
を積極的に利用していきたい。また、英語の読み物や映画などに多く触れ、英語に対する抵抗や違
和感を減らしていくとともに、使えそうな表現や単語を自分なりに集め、豊かな会話へとつなげて
いきたい。
SAP を通じて自己の言語運用能力に関しては課題が多く、
「もっと準備していたら」
「この表現覚
えてくればよかった」など後悔する場面も多くあった。しかし、自分の英語力上達への動機づけに
なったことが一番の収穫であることは間違いない。このモチベーションを高く保ち、次の海外での
経験に備えたい。
2.自己の異文化適応
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異文化適応に関して、SAP を通じて多くのことを経験し、それに伴い日本とは異なる文化に対し
てうまく適応できたと感じている。特に他人に対しての態度、食事の文化の違いについて取り上げ
たい。まず他人に対しての態度として SAP に参加する前から持っていた海外の人のイメージに近
かった。初めて会う者同士でもすぐに打ち解けていたし、さらに男性は他人のためにドアを開け、
自分よりも先に行かせていたりした。初めこの光景を見たときは文化の違いに驚きながらもかっこ
よさを感じた。それからは自分もバスに乗る時などはなるべく待っていた人に先に乗ってもらうよ
うに心がけたり、お年寄りや子連れの方には席を譲るようにしたりした。この際、英語が出てこな
かったときはジェスチャーを使い伝えることが出来たので、そういう意味で言葉の壁はありながら
も異文化に適応できたのではないかと考えている。次に初めはもっともカルチャーショックが大き
かった食事に関して書きたい。イギリスの料理はおいしくないと日本ではよく聞くが、実際はそう
いう訳ではないように思う。しかし、料理のバリエーションが少なく、味付けをしていないものが
多かった。また調理法もシンプルで、ただ何かを焼いただけというものがほとんどであった。たま
にフィッシュアンドチップスやヨークシャープディングなどを食べる機会もあったが、生活してい
くうちにこれらの味の薄い料理にも慣れていった。料理はその土地の文化の違いの大きな表れでも
あると思うので、日本との違いを感じられて良かった。
しかし、すべてのことをイギリスの文化として受け入れた訳ではない。イギリスではバスや電車
で通話したり、ゴミを残していったりする人が多かった。日本の文化で尊重すべき部分は海外でも
行うように心がけた。また、異文化適応に関しての課題としてもっと積極的にイギリスの文化を見
つける努力をすべきであった。自分が適応してきた文化は自分の前に与えられた受動的なものが多
かった。なので、もっと積極的に町に出かけたり、現地の人と話したりすることで能動的に日本と
は違った文化を見つけて楽しめたらより充実した生活がおくれたと考える。
この経験を通じて、自分の母国である日本とイギリスとでは数多くの文化の違いがあることを身
をもって感じ、今後も日本と他の国の文化の違いを体験してみたいと感じた。また、その際は今回
の反省を活かし、自分からその土地の文化を探していきたい。このときには言語運用能力も必要で
あるので先で触れた英語力上達にも努めていきたい。
日本とイギリスには多くの文化の違いがあったが、それぞれに良い部分と悪い部分があった。普
段とは違う文化に触れることで自分の国の文化を見直すことが出来たのである。この経験は多くの
海外での経験を通じて様々な文化の良い部分を吸収していきたいと考えるきっかけとなった。
3.自己の行動力
行動力に関しては SAP で一番成長させることが出来た力だと思う。行動力の成長を実感した体
験がいくつかある。まず、ロンドンで地下鉄に乗る時、チケットを改札に通してもゲートが開かな
かったときに駅の係員に相談してチケットを新しくしてもらえたこと。二つ目は店で探している商
品が見つからなかったとき、店員にその場所を聞くことが出来たこと。最後に放課後などに現地の
学生と中華料理のレストランに行ったり、友達とパブに行ったりと日本にいるときにはあまりしな
いようなことにも、せっかくの機会だからと積極的に行ったことである。日本にいる時であればめ
んどくさがって諦めてしまっていたことばかりではあるが、イギリスに行って自分の殻が破けたよ
うに感じる。
しかし、この SAP を通じて見つけた課題ももちろんある。私はもともと一人旅が好きで行動力
はあるほうだと思っていたが、見ず知らずの他人と関わることは苦手であった。この SAP では、
駅の係員や店員との会話で自分の欲しい情報を得ることが出来たが、それだけでは不十分であるよ
うに感じる。もっと知らない人との会話を楽しむということが自分にとっての残された課題である。
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この課題に対してどのように克服すべきか考えたとき、やはり自分から行動するしかないと考え
た。具体的には日本にいるときから知らない人とでも積極的に会話できるように努力するとともに、
自分の欲しい情報だけをただ求めるのではなく会話や経験の中から何か自分にとって役立つもの
を見つけられるようにしたい。この際、一人旅などもともとあった行動力を活かしていきたい。
4.まとめ
SAP を通じて伸びなかった力はないと感じている。もちろん私の力が足りず、もどかしい思いを
することは多くあった。しかし、そのもどかしさがあったからこそ自分自身が次のステップへ進む
きっかけとなったのである。
このプログラムで多くの人と関わり、多くのことを学んだ。そして、海外での経験はやはり日本
にいるときには味わえないものがたくさんあることを改めて感じることが出来た。次の機会には今
回見つかった課題をより多くクリアした状態で今回以上に多くのことを学べるように準備したい。
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イギリスでの研修を終えて
伊東 直洋
1.
自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、イギリスのヨークにある歴
史的建造物を見て回り、日本の文化や伝統との比較を交えて現地の人に伝えることができたこと
である。ヨークはローマ時代から続く古い町であった。シティーセンターの北部では、ローマ時
代の城壁の一部や装飾、風呂場の跡が残されていたし、南部のコパーゲートの辺りでは、バイキ
ング時代の建物や暖炉の跡を見ることもできた。中世に築かれた城門や建物の幾つかはそのまま
残っていた。ヨーク大学内でも、キングスマナーは 16 世紀にはすでに存在していたし、ウェス
トキャンパスにあるヘスリントンホールもまた 16 世紀に建てられた貴族の邸宅だったそうであ
る。午後の授業のない日や週末を利用して、ヨークでそのような遺跡を巡った。ロンドンやエデ
ィンバラへ行った学生も多く、すべての休日をヨークで過ごしたのは私一人だけであった。その
ため、ホストファザーやイギリス人の学生に前もって相談しながら自力で英語を使って乗り物の
券を買い、目的地に行って見学をした。こうしたことは、思っていたよりも大変なことではなか
った。行く先々では、ガイドブックを購入してさらに調べ、週末の課題であるジャーナルの材料
にした。このジャーナルはただの感想文にならないように必ず日本の歴史や文化の紹介を加えた。
例えば、ウィットビーでフィッシュアンドチップスを食べた後には遠野の民間伝承における魚の
話を書き、バイキング時代から存在するコパーゲートやヨークミンスターの石を運んだというヨ
ークストーンの敷かれたストーンゲート、出版社員がコーヒーを飲んで話し合ったというコーヒ
ーヤードといった地名の由来を知った日には、仙台や実家の周辺にある、似たような地名につい
て紹介した。トレジャラーズハウスやキャッスルハワードのような庭園も建築物も美しい場所を
訪問した後には、日本式の庭園や建物についてのジャーナルを書いた。何度か担当の教官からジ
ャーナルがとても面白いと言われた時には、英語で書いた内容が伝わったのだと分かり、達成感
を得た。教官からもらったコメントはまた、ヨークの街をさらによく知るのに役立った。プログ
ラム最後の課題は、プレゼンテーションであった。一週目の授業でヨークのシティーセンターに
行った際、担当の教官が伝統的様式で建てられた幾つかの建物の紹介し、ヨークの人々がウーズ
川沿いに建つ近代的なホテルを嫌っていることを教えてくれたこともあって、私のグループでは
ヨークにある古い建物と伝統的様式で建てられた新しい建物について調査をし、大学や街中でア
ンケートも行った。その原稿を書く際にも、奈良や京都の状況との比較を行った。大学の教官は
文章の構成の仕方や、プレゼンテーションにおける独特の英語の使い回しに至る細かいところま
で指導してくれた。このことは、英文の原稿をどうやって書くべきかを知る非常に良い機会とな
った。
この経験をふまえて、今後は更なる語学力の向上を図りたい。現地では、言語的な隔たりのた
めにうまく表現できないことも多くあった。特に困難であったことは、博物館の案内係とのコミ
ュニケーションである。親切に教えてくれる係りの人達も多かったが、厭われているように感じ
て気まずくなることもしばしばあった。ヨークダンジョンのお化け屋敷のような若者の多く集ま
る場所では、英語が砕けているように聞こえて、何を言っているのか理解できないこともあった。
簡単な英語を話すということが非常に難しいことに気が付いた。IELTS のスピーキングテスト対
策の授業は、このような訓練をする良い機会を与えてくれた。日本でも、東北大学には毎年多く
の留学生が訪れるので、そのような学生たちと英語を使っていく機会を探していきたい。また、
アメリカとイギリスの英語の違いについてももっとよく知りたいと思った。イギリスでは、ホス
トファミリーの話す英語や配布プリント中の文字に違和感を覚えることがあった。例えば、ホス
トファザーが、石鹸は chemist で安く買えるといったとき、その単語がイギリスでは薬局を意味
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しているとは知らなかった。ヨーク大学の授業でも、このような違いについて多少は習ったが、
まだまだ多くの違いがあるそうなので、様々な地域の英語の文献を見てみたり、留学生と交流し
たりなどして学んでいきたいと思う。
2.
異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、イギリスの食生活に対応し、また
彼らの考え方の一部を学んだことである。イギリスの食事では、じゃが芋を使った料理やフィッ
シュアンドチップスやパイのような油で揚げる料理が多かった。カルチャーアンドソサイエティ
ーの授業を通して、ジャケットポテトやヨークシャープディング、マッシュアンドソーセージと
いった現地の料理を知り、ホストファミリーの家やパブでの食事を楽しむことができた。しかし
ながら毎朝朝食がシリアルであるのはつらかった。イギリスでは夕食に重点が置かれていること
を知った。それでも一か月間食事に関して何事もなく過ごすことができ、日本食でなくてもなん
とかやっていけることが分かった。大学で用意されたエンプロイアビリティスキルの授業はイギ
リス人たちの考え方を理解する非常に良い機会となった。例えば、リーダーシップの授業では、
リーダーに必要とされる要素にはどのようなものがあるのかということやリーダーとマネージ
ャーの違いについて学んだ。シックスシンキングハットの授業では、発言者の性格を 6 つの帽子
をかぶっているように見立てて、それぞれの帽子における創造、感情、情報提供といった性格の
違いを学んだ。これらのことはイギリスでは幼いうちから習うそうである。学んだ後には実際に
応用するような、各人がリーダーとなって行う課題や 6 つの帽子を用いたディベートを行い、教
官からのコメントを受けたり反省したりする時間が設けられた。中には日本人の気質に合わない
ように感じるものもあったが、目新ものも多かった。特に、全員が同じ帽子すなわち同じ方向性
でディベートを行うというシックスシンキングハット考え方は画期的であった。
この経験をふまえて、今後はイギリスのほかの地域の文化や他の国々の文化についても学んで
いきたいと思う。ヨークには古い街並みが広がっていたが、ロンドンの郊外にあるスウィンドン
やレディングには新興住宅地が広がっているという。そういった地域ではまた状況は異なってい
るだろう。実際、大学の遠足で訪問したウィットビーは多くの漁船や漁網が並ぶ港町であったし、
リーズはショッピングの街であって、白人系イギリス人以外の多くの人々を見かけた。地域ごと
の英語の発音も異なっていると聞いた。ほかの国の文化としては、例えばフランスではパンを直
接齧ってはいけないとか、韓国では皿をもって食べてはいけないと聞く。誤解が生じないために
も異文化の理解は必要不可欠である。これらについては、今回の短期語学研修のような機会を通
して少しずつ学んでいきたい。また異文化に適応するためには、日本特有の文化についても知っ
ておくことが大切だと感じた。イギリス人達は、日本人が風邪を引いた時にマスクをすることや
写真を撮るときにピースをすることでさえも不思議に感じているようである。だからといって、
自分たちの文化を否定する必要はないように感じる。謙遜であるのかもしれないが、日本の学生
たちの言葉で、あまり好ましく思われないように感じるものもあった。海外にいると、気遣いな
どといった日本の良さを感じることも多い。時間についても同じようなことが言える。日本では
約束の時間より早めに行動することが常識となっているが、イギリス人達は言われたその時間に
着くようにする習慣がある。前もってホストファザーに、IELTS の試験の日は 5 分早くしてほし
いといったときにもひどく怪訝な顔をされた。幸い一緒に暮らしていた韓国人の学生が、自分達
の国ではそういう習慣があるのだと言って助けてくれたが、その時に父の学会のオプションツア
ーでドイツの観光をした時のことを思い出した。海外の観光客達の中には毎回何十分も遅れてく
る人が多く、一時間程遅れて着いたノイシュバンシュタイン城では、城へと続く坂道を走ったの
である。むしろ日本の文化の良さを伝えていけたらいいと思う。
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3.
行動力
行動力に関して、私が SAP を通して達成したことは、道に迷っているフランス人の女性を彼
女の家の前の通りまで案内したことである。初め地図を見せられた時、少々遠い場所であったが、
何度か通ったことのある通りであるとわかった。つたない英語であったが、案内する旨を伝え彼
女を連れて行った。目的地まではある程度の距離があったので、無言のまま歩いていくのがつら
くて、昨年の夏にフランスに行ったことなどを話してみた。話しかけてみると、彼女がフランス
の郊外出身の語学教師であり、イギリスに来たばかりでバス停からの道のりがわからなかったと
いうことがわかった。反対方向に歩いていた。私自身、研修の初めには何度も道に迷った。何処
まで行っても大きな煙突のある赤煉瓦の家が続き、どこを歩いているのかわからなくなったこと
があった。ヘワースグリーン、ヘワースロード、ヘワースビレッジという類似した通りが密集し
ていることや道の途中から通りの名前が変わることもよくあり、帰宅するのに 2 時間近く歩き続
けたこともあった。そんな時、日本人の長期留学生に助けられたこともあったが、道端でタバコ
を吸っていた若者までもが話しかけてきて地図上での場所を教えてくれた。夕方暗くなった頃、
どの方向に行ってよいかわからなくなった時には、反対側の通りを歩いていた年配の男性が声を
かけてきて、そのままホームステイ先の家までの長い道のりを送ってくれたこともあった。道に
迷って遅くにホームステイ先に着いた日には、同じ家に暮らしていた韓国人の学生がグーグルア
ースで、これからはどの道を歩いたらいいのかということと目印となる建物や地形を教えてくれ
た。イギリス滞在時には、言語や文化を超えて様々な人々に助けられた。このようなことがあっ
て、フランス人の教師に声をかけられた時も、すでに辺りは暗くなっていたが、連れて行ってあ
げたいという気持ちになった。
この経験をふまえて、今後は日本にいても困っている日本人のみならず、外国人達もの助けに
なりたいと思う。今度は、イギリスで会った人達のように積極的にである。国際社会となった今
日、円安の影響もあって、多くの外国人が日本を訪れている。ヨークへの出発前後に泊まった東
京のホテルにも、多くの中国人観光客が滞在していた。マスコミは、日本と中国や韓国の関係が
悪いことを強調しているようにも感じるが、決して国民同士の関係が悪化しているわけではない
ように思う。現に SAP で一緒にイギリスに行ったメンバーの中には、ヨーク大学に所属する中
国人学生達が同じアジア系の民族として親切にしてくれたと言っている人もいたし、私自身そう
感じることもあった。私は幼いころドイツに住んでいて、現地の幼稚園に通っていたが、そこで
も韓国人に助けられることが多かった。留学生会館のそばに住んでいたこともあって、日本に帰
ってきてからも韓国人達との縁が深く、親切にしてもらった。ヨーロッパの人々も同じである。
東日本大震災の後、福島第一原発でトラブルが発生した際には、ドイツ人の幼馴染の親達から交
互に自宅へ電話が来て、住む場所の用意ができたからすぐにドイツに来るようにと言ってくれた。
幸い日本から出ずに済んだが、親切にしようという気持ちは、万国共通であるのだということを
痛感した。言語や文化を超えて、助け合えるような社会が築けるように、私自身も努力していき
たいと思う。
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英国滞在の回顧録、そして未来へ向けて
上蓑 義幸
1.自己の言語運用力
私は今回の SAP を通じて、言語運用力について 3 つの成果を得た。まず、英語を聴くことに
慣れた、あるいは抵抗がなくなったことである。一番よく聞いていた英語は 2 人の tutor の授業
であろうが、週を経るごとに早口になっても聞き取れるようになった。感覚的には、初めの頃は
英語の音を聞いてそこから単語を分析し、和訳してから理解していたが、徐々に英語の音が直接
頭の中で意味を構成するようになったかのようであった。残念ながら 1 か月ではこの感覚を確か
なものにすることは出来ず、やはり音を聞いてから意味を理解するまで時間がかかることが多か
ったが、新たな感覚を少しでも体験出来たことで目標とする道が開けた様に思う。
次に、英語でも見知らぬ人に声を掛けられる様になったことだ。ヨーク大学でのプログラム中、
Cycling in York というテーマでプロジェクトを行った。2 人一組でアンケートを作成し、ヨーク
で自転車に乗ることに関する安全性を、客観的な統計データと主観的なアンケート結果を基に考
察し、プレゼンテーションを行った。そのアンケートは大学内で 30 人に対して行ったが、無論
対象者は現地学生や一般市民であり、初対面の人間である。初めは声を掛けることにも躊躇して
いたが、アンケートの枚数が進むにつれ、声を掛ける言葉、アンケートの内容を端的に伝える文
脈、そして断られた時の適切な対応などをつかみ、スムーズに実施できるようになった。このプ
ロジェクトで他人に声をかけることに慣れたおかげで、その後はレストランで店員を呼び止める
ことも、街で人に道を聞くことも難なく出来るようになった。
上記 2 つの技術的進歩に加え、1 つの重要な発見を得た。簡単な英語でも気持ちを伝えること
は可能であり、自分のパーソナリティを表すことすら出来るということである。私がお世話にな
ったホストファミリーには二人の子ども(16 歳の御子女と 11 歳の御子息)がいたが、ある日の
夕方ホストマザーがご子息の帰りが遅いと心配していた。どうやらご子息は友達と出掛ける約束
をマザーに伝えずに行ってしまったようで、その日の晩に無事戻って来たが、マザーに叱られて
いた。明朝マザーと話をすると、昨晩は息子のせいで気が立っていてごめんなさいねと謝罪され
た。私は自分の子ども時代を思い出し、私も 11 歳の頃は親の言うことを聞かずに心配をかけた
ことがあった、その頃は親の有難さが分からなかったが今になって分かる、きっとご子息もその
内分かるだろうと話すと、どこの家族も同じね、ありがとうとマザーは笑った。この時私が使っ
た英語は中学程度の簡単なものだったと思うが、それでも十分マザーは私の考えを汲み取ってく
れたようで、この出来事の後から随分話しやすくなった。それまでは会話をしても事務的なこと
ばかりで、私が何を考えているか、どのような人間か分からなかったせいだろう。つまり簡単な
英語でも自分の気持ちや考えを伝えることが可能であり、それによって良い人間関係を築くこと
が出来ると私は学んだ。
これらの経験を踏まえ、私が目標とすることは 2 つある。1 つは、英語を使う機会を作り続け
ることである。英語が言語である以上、それは人に何かを伝え、新しい情報を入手するためにあ
る。英語が話せれば、日本語だけを使う場合と比べて断然多くの人とコミュニケーションをとる
ことが出来、世界中から情報を入手することや発信することが可能だ。これは英語を学ぶことの
唯一にして最大の動機であると今回の SAP で感じた。たとえ他愛もない日常会話だとしても、
英語で自分の気持ちをうまく伝えられないもどかしさを感じたときが、最も強く英語を勉強した
いと思った瞬間だったからだ。残念ながらもう帰国してしまったから周囲は日本人ばかりで日常
的に英語を使うことはない。しかし意識的に目を向ければ東北大の中には留学生が多く、私の友
達にも少なからず含まれている。彼らは日本語が上手く普段は日本語で会話しているが、英語で
話しかければ快く英語で返してくれる。もちろん人と人の関係だから相手が英会話を嫌がったら
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避けるべきだが、せっかく留学生の友達が居るのだから、彼らに英語の練習に付き合ってもらわ
ない手はないだろう。
もう 1 つの目標は語彙の増強だ。この 1 か月で痛感したが、自分の知らない単語は自分で使え
ないだけでなく、聞き取ることも出来ない。あるいは繰り返し言ってもらって音はしっかり認識
出来ても、意味がさっぱり分からない。相手の言ったことが分からなければ何を応えていいかも
分からず会話がストップ、こうなるともはや話題を変えるしかなくなり、おしゃべりの楽しさは
崩壊してしまう。また自分の知っている単語の数が増えれば、より複雑な内容でも端的に表現す
ることが可能で、会話の幅を広げることが出来る。聞く時も話すときも、語彙力があるに越した
ことはないのだ。読み書きに対しても全く同じことが言えるだろう。語彙を増やすための具体的
な方策としては、目新しくはないが、単語帳を使った地道な勉強が一番いいと考える。会話の中
で相手に教えてもらうことも出来るが、これには限界がある。あまり単語を聞くことばかりして
いると話の腰を折ることになり、会話が続かないからだ。とは言え受験生の様に単語帳を勉強す
るだけでは退屈だから、会話中や本を読んでいる中で出てきた知らない単語・表現を調べ、書き
留めて自分のものにするという方法も学習効果は高いと考える。
2.異文化適応
今回の SAP 以前にアメリカへ行ったことがあったが、その時は滞在期間が 1 週間だけだった
ため、異文化を感じながらも適応には至らずに帰国してしまった。それに対して今回の英国訪問
では 1 か月の間に生活に関するいくつかの異文化に適応できたと感じている。
国が違えば人々の生活様式や法律が違い、街や家のつくりもそれに応じて異なってくる。イギ
リスでは自転車が歩道を走ることが許されていないため、車道の自転車レーン整備が進み、歩行
者は安心して歩道を歩くことが出来る。家のつくりで最も不便に感じたのはバスルームである。
トイレと洗面台、シャワーを含めたバスタブが家に 1 か所しかないために、家族の誰かがシャワ
ーを浴びている間はトイレを使うことが出来ない。逆に自分がシャワーを使っているときには、
誰かを待たせているのではないかと考えながら手短に済ませねばならない。現地の tutor さんと
話したところ、やはり不便に感じてはいが慣れてしまったから大丈夫だと言っていた。半信半疑
であったが、確かに滞在の終盤では家族の行動時間も大体分かって来て、それほど不便さなく使
うことが出来た。
また小さな問題かも知れないが、バスの乗り方というのも異文化を感じた。まず、イギリスで
は手を挙げないとバスが停まってくれない。日本ではバス停に人が居れば必ず停車するが、イギ
リスでは乗車の意思を示さない限り通過されてしまう。そして乗車の際に行き先と片道か往復か
を運転手に告げ運賃を支払い、切符を受け取る。ここまでは一度乗れば把握できたが、最大の難
関は下車だった。イギリスのバスでは社内アナウンスや電光掲示が無い。乗客は車窓の景色から
目的地の接近を判断し、stop ボタンを押さなければならないのだ。そのため沿線の景色を覚える
までは相当に緊張したが、これに関しても日数が経つにつれ慣れ、イギリス式が当たり前の様に
振る舞える様になった。
今回はヨーロッパの一角であるところのイギリスを経験したが、今後は更に多くの国の文化を
体験してみたいと思う。エスカレーターの乗り方に関東と関西で違いがあるように、同じヨーロ
ッパ圏でも他の国に行けばまた違った異文化が存在しているに違いない。加えて、欧州や米国な
どの先進国では想像もできないような異文化が世界中にはまだまだあるはずだ。
異文化というものはガイドブックで学んでも適応することは出来ず、慣れるためには現地で生
活することが一番である。短くない期間海外に居れば、最初は不便・不快に感じたことでも気付
いた頃には慣れてしまっている。ある程度慣れた上で母国の文化と比較してみると、双方の良い
点や悪い点が様々見えてくる。この発見は実に面白い。一方で多くの国にそれぞれ長く滞在する
というのはなかなか難しいことでもあるから、それが出来ない場合には web で調べたり留学生の
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友達に聞いたりすることも悪くない方法であろう。いずれにしても、ある異文化についてそれを
よく学ぶことも体験することもなく否定するようなことは絶対にしてはならないし、したくはな
い。今回思ったことだが、それぞれ違った文化を持ってはいても、大きな視点で見れば結局全て
人間の生活文化なのであり、慣れてしなえば何とかなるものである。少々乱暴な論理だが、壁の
ない国際理解のためには有効な視点だと考える。
3.行動力
今回の SAP でリーダーとしての行動力について学ぶことが出来た。ヨーク大学でのプログラ
ム中、Employability という授業があり、その一環でリーダーシップについて学んだ。その中で
特に私が感銘を受けたことは、リーダーは時に作業をしてはならないということである。リーダ
ーの仕事は常に周りのメンバーを観察し的確な指示を出すことにあり、観察するためには自分が
作業に集中していてはならない。そのために必要に応じて作業は人に任せつつ、自分は手を止め
て一歩引いた視点から観察に徹するべきだということである。この授業を受けて自分を振り返っ
てみると、私は何か思いついた時には自分の手でやってしまいたいと思う傾向があり、また人に
依頼するだけで自分は仕事をしないという状況に抵抗があるためについ自分で作業をしてしま
い、指示を出すというリーダー本来の仕事が疎かになってしまったことが幾度かあった。今まで
大小の差はあれ何度もリーダー的役職になったことはあったが、この授業を受けるまでリーダー
シップについてよく考えたことはなかったために、この授業は私にとって目から鱗が落ちた様な
経験だった。ただし、学んだとは言え実践できるようになったわけではない。これからもリーダ
ーになることはあろうから、その都度今回の経験を思い出し、より良いリーダーシップを発揮で
きる様に努力していきたい。
また今回の SAP を通して、活発に行動することの重要性を痛感した。SAP に参加すると決め
たことを含め、
私は今回の SAP に関して少なからず積極的に行動できたのではないかと感じる。
行動的になれたときには、自分でも意外なほど成果を得られた。ホストファミリーと話をすれば
会話の時間の分だけ英語の実戦経験を積むことが出来、しかもお互いを理解することによってよ
り居心地の良い空間を作ることが出来た。現地の大学生と交流すれば海外の友達を増やすことが
でき、積極的に街へ出れば日本では見られない文化や家、建物、人々などを見ることが出来た。
週末に旅行したロンドンやエディンバラでは、ヨークでは見られないイギリスの違った側面を知
ることが出来た。これら全ての経験の中で、やって悪かったと思った物は一つもなく、経験した
ことは全てプラスに感じられた。それに対して、やらなかったことはやはり心残りになった。今
になって思えば、これほど様々な良い経験が出来ると分かっていたのなら、もっと始めの段階か
ら積極的に行動すれば良かったと感じるほどである。こうして見返して、普段日本に居る時の私
は極端に積極性が不足していることに気が付いた。人の発言を待って話を聞いてから自分の意見
を言ったり、人が挙手しないと自分はためらったりすることがある。人が動き出す前に自分が先
駆けることを恐れ、あるいは自分には出来ないと決めつけてしまう傾向があるのだ。今回の経験
から言えることは、がむしゃらに前に進むことも重要だということだ。その時は必要ないとか、
自分には無理だなどと思っても、やってみなければ分からない。やれば意外と出来ることもあっ
て、出来なくても相応の経験値を得られることは間違いない。立ち止まっていては何も得られず、
やるしかないのだ。イギリスでは普段の自分よりも少しは積極的に行動できたと思うが、更に上
を目指さなければならない。もっと積極的に、皆が動き出す前に、あるいは皆がやらないことで
も、やりたいことはやらなくてはならない。例えば会議において、人の話を上品に聞くばかりで
はなく、自我を押し通す姿勢も持たなければならない。聞くばかりでは自分のアイディアは採用
されず、自分の存在意義を示すことが出来ない。そして自分にも提案できなかった後悔が残る。
大学生活もまだ何年かあるが、同時にもうあと何年かしかない。出来ることは全て実行する、そ
ういう積極性を日々意識して過ごしていきたい。
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異文化に身を置いて学んだこと
太田 沙椰香
1.
自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、自分が伝えたいことを相手
に英語で伝えられるようになったことだと思います。私は、このプログラムに参加する前はあま
り英語を話す機会がありませんでした。というのも、日本での英語の授業は読み書きがメインだ
ったため、英語で会話をするという経験があまりなかったからです。また、私は若干消極的なと
ころがあるので自分から英語を話す機会を得ることもしてきませんでした。なので、英語で会話
をすることに苦手意識と不安を抱いていました。SAP においては、授業やホームステイ先、休日
の旅行などを通してほぼずっと英語に触れている生活でした。その中でも一番自己の言語運用力
が試されたのは、ホームステイ先での生活だったと思います。授業においても、休日の旅行にお
いても他の東北大の学生が一緒で、一人ということはありませんでしたので、わからないことが
あっても友達に助けてもらうことができました。しかし、ホームステイ先では日本人は自分一人
だけです。その生活の中で、私は自分の語彙力の乏しさを実感しました。言いたいことがあって
も、英語での言い回しがわからず、最初の頃は辞書が手放せませんでした。ホストファミリーと
の会話においても、最初の頃はあらかじめ話す内容のメモをつくってから話すということをして
いました。イギリスの英語はアメリカの英語と違うところがあるので度々意味が通じなくて、苦
労しました。しかし、なるべく会話するように努めました。ホストファミリーの人たちも私のつ
たない英語を理解しようと丁寧に聞いてくれたので、それも救いでした。次第に慣れてきて、言
いかえもできるようになってきました。また、あらかじめ言うことを考えなくても、ある程度ア
ドリブで会話できるようになりました。以前よりもスムーズに話せるようになったと思います。
ホストファミリーに、”Your English is very good.”と言ってもらえた時はうれしかったです。実
際に英語圏で生活することによってネイティブ特有の言い回しなどにも気づくことができて、学
ぶことが多かったです。SAP を通して、英語を学ぶということももちろんですが、英語を使うと
いうことに関して貴重な経験ができたと思います。
この経験をふまえて、今後は日本でも英語を話す機会を積極的に活用して、SAP で得たコミュ
ニケーションスキルをさらに磨いていきたいです。言語は使わないとどんどん忘れて行ってしま
うので、学んだことを無駄にしないようにこれからも練習を積んでいきたいと思います。私の英
語力はまだまだ未熟だと思うので、英語の学習を続けて能力を向上させたいです。TOEFL や
TOEIC のテストを個人的に受けたり、機会があればまた IELTS のテストも受けて、以前よりも
良いスコアを獲りたいと思います。また、ホストファミリーの人々とはなるべく会話するように
努めてきたつもりでしたが、今思い返してみるともっといろいろな話を聞けばよかったと思うの
も事実です。その反省を生かしつつ、勉強を続けて再びイギリスへ行きたいと思います。その時
にはもっと流暢な英語が話せるようになっていたらいいと思います。大学では 3 年生から必修の
英語の授業がなくなってしまうので、自主学習や TGL のプログラムを活用しつつ英語力の向上
に努めていきたいですと思います。
2.
異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、臨機応変な対応です。私は、以前
からイギリスやイギリスの文化に興味を持っていたので、イギリス文化についてある程度のこと
20
は知っているつもりでいました。しかし、実際に行ってみるとやはり知らなかったことや誤解し
ていたことが多々あったということに気づきました。例えば、朝食です。イギリスの代表的な料
理としてイングリッシュブレックファストというものがあります。一つの皿にトースト・目玉焼
き・ベーコン・ソーセージ・ビーンズなどが盛り付けられたもので、豪華な朝食です。私は以前、
本でそのことを知ってイギリスの家庭では日常的にそれを朝食として食べていると思っていま
した。しかし、家庭によって差はあると思いますが、私のホストファミリーはシリアルのみのご
く簡単な朝食しか食べませんでした。私は日本では朝食をしっかり食べていたので最初は少し物
足りなく感じ、慣れませんでした。しかし、イギリスではそれが普通なのだなと思い、認識を改
めて合わせることができました。イギリスの生活の実態が垣間見えたような気がしました。異文
化について知ることによって、視野が広がったように思います。また、適応ということに関して、
私はシリアルがあまりすきではなかったので、ホストファミリーの家に常備してあるトーストを
毎朝いただいていました。このように、異文化の中で生活していても自分なりに工夫して自分に
とってあまり無理のないようにうまく適応することができたのではないかと思います。その反面
で、対人面に関しては課題が残る結果となりました。イギリスのショップに入ると、日本と同じ
ように店員が客へ挨拶をしてきます。日本においては客は何も言いませんが、イギリスではそれ
に応えるのが一般的なようでした。私は最初それを知らずに無視してしまい、後から知って後悔
しました。買い物のマナーや切符の買い方などに関しては事前に調べることもできる事柄でした
が、私はあまりしていきませんでした。休日の旅行の切符の予約や旅先での交通手段に関しては
他の人に頼りっぱなしだったので、このことに関しては事前の準備が不十分だったと反省してい
ます。
この経験をふまえて、今後は慣れない環境でも自分なりに工夫して快適に過ごす力を磨きたい
です。イギリスだけでなく、もっとさまざまな文化を持つ国々へも行ってみたいと思います。イ
ギリスは先進国であり、様々な設備が充実していて日本とあまり変わらなかったので不便な思い
をすることはありませんでした。しかし、世界的にみるとそのような国はごく少数であり、多く
の国では日本やイギリスとおなじような環境が整えられているわけではありません。そのような
全く異なる環境の国々へ行ったとき、きちんと適応できるかはわかりません。これからはそのよ
うな国へ行っても適応できるような能力を身に着けたいです。また、事前の下調べも行く前に確
認できる範囲のことについては怠ることなくしたいと思いました。
3.
行動力
行動力に関して、私が SAP を通して達成したことは、積極性の向上です。私は少し消極的な
ところがあるので、SAP を通してそれを少しでも改善できればいいと思っていました。SAP の
プログラムの一環における講義には、主に Culture・Language・Project・IELTS・Employability
skill に関するものがありました。その中でも、Employability skill の講義では様々なアクティビ
ティを通してリーダーシップについて学びました。普段日本で受けている講義は座って話を聞く
というものがほとんどだったので、そのようなアクティブな講義形態はとても新鮮に感じました。
しかし、ただ話を聞いている授業よりも難しいと感じました。この講義では自分の意見を発言す
ることや行動することが必要とされていましたが、私は最初の頃はあまり思うように発言するこ
とができませんでした。また、集団の中で自分がどのような役割の人間であるかを考えるという
ことも行いました。プリントには 9 つの役割が書かれていましたが、正直なところを言うと私は
自分がその中のどれに当てはまるのかわかりませんでした。今でもわかりません。その理由はき
っと、私は集団の中においたただ所属しているだけで、自分から率先して発言したり、行動した
21
りすることが無かったからではないかと思いました。改めてそれではいけないと思い、講義内で
も最初よりも発言するように努めました。今では以前よりも自分の考えを発言することに対して
ためらいがなくなったのではないかと思います。この講義で学んだことは将来就職したときにも
役に立つと思いました。さらに、授業外の活動においては現地の学生と会話する機会もあり、そ
こでも積極的にコミュニケーションが取れたのではないかと思います。逆に、Project や IELTS
ではやや悔いが残る結果となりました。Project においては二人一組でテーマを決めてプレゼン
テーションを行いました。このプレゼンテーションで、私は練習不足だったなと反省しました。
家に帰ってから原稿を覚えたりする時間は十分あったと思いますが、先延ばしにして結局あまり
練習していなかったと思います。もう少し練習すればよかったと反省するとともに、行動力が不
足していたと実感しました。IELTS に関しても、もっと対策をしっかりすべきだったかと思いま
す。私は学年が上がるにつれてだんだん様々なことに手を抜いているような気がしています。妥
協することがすべてにおいて悪いとは言いませんが、それですべてにおいて妥協してしまっては
元も子もありません。プレゼンテーションや IELTS は妥協すべきものではなかったのですが、
私は努力が些か足りなかったと感じています。
この経験をふまえて、今後はより積極的に物事に向き合っていきたいです。これからの私の専
修の授業では、自分で報告したり議論したりする機会が多くなっていくので、SAP でのプレゼン
テーションや授業で得たことが生かせるのではないかと思います。議論においては以前よりも進
んで発言できるようになっているのではないかと思います。また、そのように心がけていきたい
と思います。また、課題などに対しても手を抜くことなく、怠けずに取り組んでいきたいと思い
ます。やはり何事にも努力が大切だと思うので、これからの学習に対しても努力を惜しまずにや
っていきたいです。難しい問題や大変な役割にも臆すことなく挑戦していければ、SAP において
学んだことが生きてくるのではないかと思います。今後は、SAP で得た行動力を一つの足掛かり
にしつつ積極的に様々なことに挑戦していきたいです。そして、挑戦しただけで満足することな
く、納得のいく結果を得られるように努力し、達成することを目標としていきたいと思います。
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英国:文化と英語運用
小川 蒼
1. 自己の言語運用能力
言語運用力とは何であろうか。チョムスキーは言語能力と言語運用とは明確に区別し、前
者を言語の文法的理解能力、後者を実際的場面において発現する様々な行動と定義づけた。
これに対してハイムズはチョムスキーの区別をせずに、言語使用と社会的相互関係及び文脈
的理解力の 3 点をまとめて「言語運用能力」と呼んだ。今回の SAP(英国で学ぶ英語と文化)
では、IELTS 対策として読解、英作文、リスニング、そしてスピーキング能力の向上に努め
た。それだけでなくヨーク大の学生や留学生との交流の機会も持たれたことを考慮すると、
この SAP を通じで涵養された(るべき)能力はハイムズの言うところの「言語運用能力」が
適当であると考える。
今回の SAP の一つの大きな目的は IELTS であった。この試験のために、大学での講義内
において過去問題等をほぼ毎日解いていた。ここで自分の英語能力の長所と短所とを再確認
することが出来た。比較的得意であったのはライティングである。IELTS のライティングは
2 つのセクションから成り、第一セクションでは、所与の図表資料の情報を要約し表現する
という客観性に重きを置く課題である。一方で、第二セクションでは所与の問題文が何らか
の社会的問題提起であり、それについて自己の意見を論述するという主観性の強い課題であ
った。それぞれの課題について日本語で文章を考えるのは容易であり簡単な英語構文や単語
を用いて英訳するのはそれほど困難を感じなかった。しかし、それを適切な英語やアカデミ
ックな表現を用いて文書化しようとすると自身の言語能力では困難さがあった。ここに自分
の弱点があると知ることが出来た。ヨークでもこの点を改善するために類義語や一般的な論
文表現等を調べ、語彙量と表現の幅を広げるように努力し、その結果一定の成果を得られた
ことと思う。しかし、この点については依然として改善の余地がある。その手立てとしては、
アカデミックな英語文献、すなわち英語論文にもっと触れていくことがあげられる。典型的
な英語での言い回しに積極的に触れ、それらを集積していくことによって英語での表現力を
豊かにしていきたい。それに加えて、論文のみならず、小説や新聞等幅広いジャンルの読み
物と関わることでより豊かな語彙力を身に着けていきたい。
2.
異文化適応
住めば都と言うことわざがある。言うまでもないだろうが、意味合いとしてはどんな場所
でも住み馴れてしまえばそこが居心地よく感ぜられてくるという意味である。海外で生活を
始める場合に限らず、日本国内でも新しい土地に住み始める場合でも同様であるが、ここで
問題はどのようにして住み馴れるかである。インターネット以前のテレビ・ラジオといった
情報伝達網が整備されるまでは、人間にとって身のまわりの世界が全てであり、仮に遠く離
れた地域や異国に移り住んだ場合にはかなりのカルチャーショックを受け、異文化への適応
に相当な努力と労力が必要である事は想像に難くない。翻って、現代である。インターネッ
トという近年で最大の発明により我々は何百、何千キロ離れた遠い異国の政治体制、経済、
風俗、果てには宰相の名前と顔まで分かる世界である。今回も英国の習俗・文化・価値観等
は事前に各媒体で調査し、ある程度は知識として知っており、イメージもできていたので異
文化適応という点に関してはさして苦労や困難は感じなかった。
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しかし、神は細部に宿ると言ったのはドイツ人の建築家であるが、生活の端々において微
妙な齟齬、差異、相違を感じることはたくさんあった。そして、その相違のレベルが微妙な
ものであるが故に無意識的に行われていることが多く、また、自分をそれにすり合わせてい
くのに困難を感じた。
そんな中、私にとって最も困難であったのは食である。英国の主食はジャガイモであり、
基本的に毎晩、夕食には芋が供される。そのスタイルは基本的に拍子木切りされた芋を素揚
げにした、所謂「チップス」か、あるいは茹でたジャガイモを潰しペースト状にした「マッ
シュドポテト」である。そして大体の場合、茹でた人参かなかなか大量のグリーンピースと
共に供され、その上には茶色のグレイビーソースがかかっている。時々ヨークシャプディン
グがそれにプラスされる。勿論こんなことは渡英前に重々承知していた。しかし、知識は力
であるが、万能ではない。当初は全く日本と異なる食文化に舞い上がっていた部分もあった
ため、それらを喜んで食べていた。しかし、如何せん単調に過ぎた。日本では、一般的な家
庭でも毎晩同じようなメニューが連続するということは少ないだろう。大体、和食、中華、
洋食がそれなりに代わる代わる食卓に上ると思われる。要は、味と料理の外見のバリエーシ
ョンの問題である。正直なところ、一週間程度で、英国の代わり映えのしない、彩度の低い
夕食には飽きてしまったのである。2 週目から 3 週目のはじめにかけてなかなか夕食は苦行
であった。ホストファミリーはみんな普通の顔をして普通に食べており、ホストマザーか
ら”nice?”と問われれば、まさか”is not nice”などと言えるはずはなく、”very nice”と親指を立
てて返答する日々であった。
変化を自覚したのは 3 週目も半ばを過ぎてからであった。何となく「美味しく」感じるよ
うになったのだ。これは偏に慣れの問題であろう。しかし、この体験はこの SAP の中で最も
強く「異文化適応」感を感じた瞬間であった。やはり、一生物として生きていくうえで、気
候や習慣、食物といった事柄については適応するためには一定の時間がどうしても必要であ
ると痛感したのである。ホストファミリーはこれまで何十年とこの食事に慣れ親しんできた
のであるから、普通にずっと食べ続けるのも苦ではない。先ほど日本の家庭は食事のバリエ
ーションが豊富であると書いたが、仮に一週間ずっと白米が夕食に供されても、一般的には
何の苦も無く食べられることだろう。遅すぎる感もあるが、これは当たり前なのだと気が付
いた。今回の経験から、異文化の生活に適応するために、事前の下調べも重要であるが、そ
れだけでは不十分で異国の地を自分の「都」とするためには一定程度の馴化期間が必要なの
だと理解することが出来た。
3.
行動力
行動力というものを、未知の場所や人に対して(強制的・自発的問わず)能動的に働きか
ける能力と定義するのであれば、私がこの SAP の内で最も行動力を発揮した場面は、プロジ
ェクトの一環として質問を様々な人に対して聞いて回る場面であった。私の拙い英語で外国
人(英国では私が『外国人』であったので、外国人という括りは殆んど意味を為さないので
あるが便宜的にそう呼称する)の人々に調査協力を仰ぐのは、プロジェクトの一環としての
大義名分があるとはいえ、なかなか緊張することで、私にとっては多大に勇気を必要とする
行動であった。当初は自信など微塵もなく、おどおどとしていたが、私が調査協力をお願い
した人々の親切さと優しさのお蔭で何とかなっていた。自信という物は不思議なもので、段々
と場数を踏み、成功体験を積んでくるにつれて、堂々とした態度をとれるようになってきて、
物怖じしないようになってきた。英語能力としては殆んど変わらないのに、である。調査が
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終わるころには、英語で見知らぬ人に話しかける抵抗というものは、調査前に比べずいぶん
と減ったように思われた。ここでも結局は行動や態度の変容は慣れの問題であり、一端慣れ
てしまえば問題ないように思われた。
各個人のある一定程度一貫した行動様式は一般に性格と呼ばれ、外向的な人もいれば内向
的な性格の人も確かに存在する。過度な一般化のきらいはあるが、前者は往々にして活発な
人、あるいは、行動力のある人として認知されることが多く、後者は奥手な人、あるいは非
行動的な人であることが多いように思われる。今回の SAP にしても前者後者どちらの人も居
たように思われる。どちらの人にしても、SAP に来ている以上はある程度の行動する意思は
あると思われる。つまり、ある程度みんな行動力はあると言っていいだろう。そこで、更な
る「行動力」について述べるのであれば、完全に自発的な活動を行う能力としての「行動力」
に言及する必要があるだろう。
私の場合、この自発的な活動として最も印象的なのが、パブに行った経験である。アルコ
ールを提供する場所と言うのは、仙台で国分町がそうであるように、どちらかといえば、不
健全で風紀が乱れている、端的に言えば危ない場所であるように思える。英国のパブに対し
ても大変行ってみたい好奇心と、
危なそうという自制心、あるいは臆病さとの葛藤であった。
結局は行ったのであるが、それまでにはそれなりの勇気が必要であった。いつ行ったかと言
うと 3 月 2 週目の週末、エディンバラに行った時である。その際ちょうど six nations のス
コットランド対イングランドの試合があり、半野外のパブでパブリックビューイングが行わ
れることをつかんだ。折角の好機であり、この好機を逃しては勿体ないと思う一方で、先に
も述べたが、恐怖心もあった。逡巡の末に足を向けた。大変有意義で愉快な体験であった。
今から振り返ると、この時ある意味、最も私の「行動力」が発揮されたと思う。未知の事
柄には必ず新規恐怖が伴うのは仕方がないが、この恐怖に打ち勝ち勇気を奮ってこその行動
力であると今更ながら感じている。英国でのこの体験によって私の「行動力」は増し、これ
からはより挑戦的に、積極的に行動できると確信している。
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2015 年春 SAP を終えて
小日向 寛之
1. 自己の言語適用能力
自己の言語適応能力に関して、今回の SAP では新たな自分を発見できたと思います。大学
に入り高校よりも英語で会話する機会が増えました。将来留学したいので自分から会話を持て
る機会には出向いていました。そこで、英語の話しているときの自分は日本語の時よりも積極
的でジェスチャーや表情の変化も多くなり明るくなっているようだと感じることが多くありま
した。日本では感じる程度でしたが今回イギリスに実際に行き、それはより確かなものになり
ました。あちらの人々はよく顔を動かし、手を動かし、感情豊かに話します。それに僕もつら
れていましたが、とても楽しかったと感じています。日本語は high context 文化であり多くの
ことは語らず話し相手もその行間を読みます。それによりあまり多くの情報を表に出さない分
閉ざされた感じになるのだと思います。その点、英語では真逆であり最初のうちは恥ずかしい
ものの慣れると日本語と違う自分と出会え、とても楽しかったです。日本では絶対にしないよ
うなオーバー気味な仕草で友達と話せたのは良い思い出です。
しかし、適応できたことばかりではありませんでした。やはりどうしても難しい言い方や単
語、文法を自分から使っていくことができませんでした。読んだり聞いたりする際には問題の
ないことも、いざ自分が言おうとすると不安になり使うことができなかったです。そこに自己
の未熟さを感じました。そして、今回は自分の中の英語を大きく拡大することができなかった
と感じています。具体的には、自分が知っている単語、慣れ親しんでいる文法、言い回しを多
用することでそれらの頭の中での合成スピードや瞬発力は鍛えられたものの、その先、つまり
自分が知らない、慣れ親しんでいない部分にあまり挑戦することができなかったということで
す。一ヶ月という短い間では他に適応することがたくさんあり、そこまでできないのは仕方な
かったのかもしれませんがこのイギリス滞在での悔やまれることの一つです。
今回のイギリスでの一ヶ月では英語だけの環境にただいるだけでは飛躍的な英語力の向上は
できないということを知りました。もちろんかなり上達はします。一ヶ月前の自分とは比べ物
にならないほど成長しているとは思いますが、現地でしっかりとアンテナを伸ばし、日々勉強
していかないとネイティブのような英語力には到底追いつけないと感じました。これからの学
習では今回感じた自分の不足点、常用単語以外のまれな単語や文法、独特な言い回し、などに
もスポットを当てて継続的に英語力を鍛えていきたいと思います。
2. 自己の異文化適用能力
自己の異文化適応能力について、
自分はよく適応できたと思います。イギリスへ着く前は少々
不安でしたが、着いてみると割合すんなりと適応することができました。イギリスは日本と共
通することが多くあると聞きますが、それも影響したのかもしれません。郷にいては郷に従え
という言葉があるように、日本と違う習慣も決して毛嫌いすることなくなんでも挑戦し吸収し
ました。しかし、やはり他国の文化ということで戸惑う場面は多々ありました。それには食文
化、習慣などが含まれます。まず、基本的な食生活が違いました。主食は芋であり、仲間のホ
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ストファミリーでは野菜をほとんど食べないというような話も聞きました。そしてナイフとホ
ークで食べます。おそらく今回一番成長したことの一つはこのナイフとホークの使い方です。
最初の頃は白いご飯が恋しくてたまりませんでしたが、後半は芋の生活も悪くはないなと順応
しました。その証拠に帰国してすぐにイギリスで食べた芋料理を作ったほどです。芋料理も悪
くないなと思いました。
また、日々の生活も全く違いました。中でも僕たちが今回特に驚いたのは赤信号でも車がす
ぐに来なければ道路をすぐに渡り始めるイギリスの人々でした。彼ら全く待ちません。時には
クラクションを鳴らされるほどです。これも異文化適応だということで、僕らもあまり信号は
待ちませんでした。今では日本でも信号で待てない体質です。これは直したほうがいいのかも
しれません。
今回イギリスという地球の反対側の国に行き、日本でどんなに映像や文献で学んだとしても
獲得できない経験をすることができました。そしてそれに十分に適応することができたと思い
ます。しかし一つ学んだことは、適応した習慣を日本でそのまま使うことが必ずしも全て良い
わけではないということです。異文化適応とは海外に行くにあたって必須の能力であり、獲得
したことを自国に戻った際に有効に利用するのは実際に行った人々の特権だと思います。しか
し、上記の信号の例のように自国の方が素晴らしいと思う習慣もあります。もちろん外国を見
習わなくてはいけない部分もあります(学生の勉強時間や態度など)
。適応し、獲得したことを
活かし、自国や自己と照らし合わせその良い部分を活用していくことが大切だと感じました。
今僕の中には、日本、イギリス、そして少しのアメリカの文化が流れています。これからはこ
の文化の数を増やし幅ひろい考えを持つ人間になっていきたいと思います。きっと今回伸ばす
ことができた異文化適応能力が活躍すると思います。
3. 自己の行動力
自分は行動力にはある程度の自信がありました。昔から思い立ったが吉日、思いついたこと
はすぐに実行する性格です。特に英語の場合、自分の性格が日本語を使用している時よりも少
しオープンになる気がしています。それが今回の SAP でもよく出せたと思います。日本人は
自身の英語力に自信が持てず、全然話さないとよく言われます。僕はそういったイメージの日
本人が嫌いです。普段の大学の英語の授業でもほとんど話そうとしない空気が嫌いです。なの
で、イギリスでは自分から積極的に行動しました。家の中ではホストマザーにわからないこと
は質問し、大学で日本文化コミュニティとの交流があった際には自分から話題に入っていくな
ど精力的に活動できたと思います。しかしそれでもやはり外国語、聞き取れず伝わらないこと
が増えるにつれ少しずつ僕の自信、行動力は減少していきました。月の中旬は少し消極的にな
ってしまっていたと思います。しかし、そんな自分ですが York 大学での授業で積極性と行動
力を維持することができました。授業の内容は employability についてでした。実際に企業に
入り何かのプロジェクトをやるにあたって個人の適性と役割を考えるといった内容です。僕は
リーダーやマネージャーといったみんなをまとめ、計画を進めることに向いていると言われま
した。これはおそらく、上記に挙げたような行動力や実践力が活きたからだと思います。現地
でのプログラムが終了する際にホストファミリーやチューターの方々とのレセプションが開催
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され、そこで employability 担当だったチューターの先生と話しました。
「君はいいリーダーだ
った。みんなをよくまとめていた。その積極性を持ち続けてくれ、きっといい仕事ができる。
期待している。
」と、言ってもらった時はとても嬉しかったです。行動力、積極性が自分の一つ
の武器だと思うことができました。良い思い出です。大変感謝しています。
この経験を踏まえて、今後は積極的に実験や計画を実行する際にはリーダーポジションに着
いていこうと思います。もちろんそれには周りの人の信頼や協力が不可欠ですが、持ち前の行
動力で良い関係を築いていけたらなと思います。今回の SAP のプログラムではその方法やリ
ーダーのやり方等も学ぶことができたので、自分の夢のためにこれらの能力を活かしていきた
いです。これからの残りの学生生活、いや人生において行動力というものは必ず活きてくるこ
とでしょう。そして、今のゆとり世代と呼ばれる僕たちに一番足りていない部分であるとも思
います。ですので、僕はこの力を武器に今後活躍していきたいと思います。今回の SAP には
参加して本当に良かったと思っています。
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SAP の体験と今後の課題
菅野 友里恵
1.自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、スピーキングにおいて簡単
な文を組み立てるスピードが上がったことに加え、プレゼンテーションや基本的なレポートに使
われる言い回しを学び実際に使うことができたということだ。渡航する前には、充分な英会話の
練習をしておらずスピーキングに対して最も不安を抱えていた。リスニングも得意な方ではなか
った。単語は日常会話で使われる程度のものは大体わかるものの専門的な単語・熟語には自信が
なく、ライティングでは自信をもって使用できる単語・熟語の数が少なく語彙力・表現力の低さ
が問題であると感じていた。
私が参加した「イギリスで学ぶ英語と文化」の York プログラムでは、IELTS テスト対策、リ
ーダーシップスキルの向上や、最終週のプレゼンテーションに向けた授業に加え、イギリスの観
光地を訪ねたり現地の学生とコミュニケ―ションをとったりする機会が設けられていた。
IELTS テスト対策ではテスト内容に添い、リーディング、ライティング、そして苦手意識を抱
いていたリスニング、スピーキングと全てのパートを学んだが、この授業は私にとって言語運用
力を向上させる大きな助けになったと感じる。特にプログラムの仲間やチューターとスピーキン
グの練習を重ねることにより、英語を話し、間違えることに対する抵抗感がなくなったことは大
きい。しかし、時間制限がある環境で、自身の伝えたい内容を思い浮かべ自然な流れの文章構成
にしつつ、文と文の間をあけないように次々と英語を話さなければならないという経験は初めて
のことで、単語・熟語を試行錯誤してはいたがなかなか納得がいく内容・話し方が習得できてい
ないと感じたまま IELTS 本番を迎えてしまった。このような状況だったが、スピーキング本番
はとにかく落ち着いて実力を出すことを心掛けリラックスし、文法は誤りが多かったものの、長
旅に関しての質問に対してイギリスに着くまでの飛行機の中での印象的な出来事をできるかぎ
り細かく話すことができた。驚いたことに文と文の繋ぎに使う言い回しが自然と出てきて沈黙に
なることもなかった。練習で試行錯誤し繋ぎに使えそうな単語・熟語を意識して生活していたこ
とは無駄ではなかったと感じた。むしろスピーキングより自身のあったライティングでは文字数
が足りず悔しい思いをしたが、この経験によって今まで不安や気恥ずかしさが勝っていた英語で
会話することに対し楽しさ、喜びを感じることができるようになった。この経験を通して自分で
考えた問題点は、咄嗟に回答するライティング、スピーキングでは一文が同じような長さであり、
使用する単語や熟語も同じようなレベルであることである。このことにより、私はスピーキング
では文の構造が非常に平易か複雑かの極端になりわかりやすく伝えることができず、ライティン
グでは辞書なしには使い慣れている単語しか使えない。ライティングで使いこなせない言葉は会
話にも使えず、言い慣れていない言葉は書く時にも咄嗟に思い浮かばないということである。
会話面に関してやはり問題は多く、大学の人々の英語は聞き取りやすかったがホストファミリ
ーの英語を聞き取るのに苦労し、非常にあたたかいホストファミリーであったにも関わらず返答
が理解できないことや伝わらないことを恐れて二週間半ほど自分から話しかけることがなかな
かできなかったことが心残りである。また、IELTS のように自分の考えたものを組み立てて話す
のではなく、普通の会話においてテンポよく会話を進めることはさらに難しく、相槌を打つので
精一杯の場面が多かった。
この経験をふまえて、今後は話す場面を意識して語彙を増やしていきたい。これは、いかに日
常会話においての言い回しが定着していないかを痛感したことや、ライティングの能力を上げる
ことにも繋がると感じることが理由である。会話で相槌だけではなく自分の伝えたいことを短く
ても良いから伝えたいと常に悔しい思いをしていたが、それまで筆記試験向きの英語の学習しか
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ほとんどしてこなかったためそれでは会話になると歯が立たないのだと実感する良い機会であ
った。日本ではネイティブスピーカーと会話する機会をあまり持てないが、自分一人でもすぐに
実践できるやり方として英語でドラマを見るだけでもこの能力は向上するのではないかと感じ
る。イギリスでドラマを見たときに内容は詳しく掴めないが自然な返答の仕方や聞き取れる言い
回しが印象に残り調べて実際に使ってみたことがあった。この繰り返しが会話を自然に進められ
るようにするためのひとつの練習方法だと感じた。
2.異文化適応
自己の異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、現地の人々の生活の多様性
を理解し合わせようと努力し、日本とは文化も言語も全く違う人々との交流への抵抗感を取り払
ったことだ。この SAP は私にとって初めての海外であったこともあり、渡航前にはよくイギリ
スの特に家庭での生活や食事について調べていたが、自分が滞在する家庭の生活についての詳細
は行ってみないとわからないので緊張しつつも郷に入っては郷に従えだとシンプルに考えてい
た。
イギリスでの生活で衝撃的だったことは多々あるが、やはり入浴や食事には文化の違いを強く
感じ、プログラムメンバーとの話題にもよくのぼった。シャワーは毎日浴びるとは限らないし、
家庭によってはお湯と水の調節が難しかったりシャワーがなかったりし、洗濯も一週間に一度で
あった。このことは、日本にいるときにはそこまで感じることのなかった水は貴重だという意識
を毎日思い起こさせてくれた。食事は 1 つの皿に三種類ほどの料理がのっており、豆やパイ、ポ
テトの頻度の高さや基本的に味付けがない料理が多いことに驚いた。他のメンバーの家庭ではめ
ったに家族で食事をとることはなく食べるものも異なっており、こどもが食べ物で遊ぶことが日
常であったようで、入浴や食事に対する意識の違いを感じた。日本ではリラックス・団らんの場
として考えられているが、イギリスでは必要最低限やらなければいけないことととらえているよ
うな印象を受けた。しかし私のホストファミリーは毎日食後にリビングに全員集まりテレビを見
たり話したりしており、こどもたちは地域のクラブ活動に参加していて家族そろって様々なコミ
ュニティの人々との交流を楽しんでいるようだった。また、York ではほとんどの店が午後 4 時こ
ろに閉まり、日曜には営業時間がさらに短くなるので日曜は仕事をせず家族と過ごす時間なのか
もしれない。最初は生活しづらいと感じたが、このようにその地の人々にはその地の人々の活力
の得方・リラックスの仕方があることに気付いたためあたたかい気持ちで生活することができた。
できるだけ節水しようと、シャワーは日に日に効率的に浴びることができるようになり、食事も
周りを見て真似をし様々な食べ方・味付けで楽しんだ。
レッドノーズデイも印象的だった。コメディアンが始めたチャリティーイベントで、レッドノ
ーズデイの前後にはスーパーに関連グッズの売り場が展開され、売り上げが義援金になるシステ
ムのようで、当日こどもたちはレッドノーズデイの T シャツなどを身に着けて学校に行っていた。
レッドノーズデイのテレビ番組も日本のようにあからさまに同情を煽る内容ではなく、コメディ
アンたちが笑いを誘ったり出演者が特技を披露して場を沸かせたりする楽しませる時間の合間
に恵まれないこどもたちの映像をさりげなく流しており、笑いで世界を平和にしようというよう
な印象を受けた。イギリスは日本に比べチャリティーへの関心が非常に高く当然のことのように
参加していると感じたが、このような方法の違いが影響しているのかもしれないと考える機会で
あった。
異文化適応に関しての問題点は、行く店によってのルールや、現地のユーモアがわからない場
面があったことである。入り口と出口が分かれている店が多く、最初の頃は店の入り方からわか
らなかったこともあった。ユーモアに関しては語彙力にも通じることがあり、冗談を理解し適切
に返すレベルには至っておらず、それに関して尋ねる積極性が足りないと感じた。
この経験をふまえて、今後も他者の文化を理解しようと努め、わからないことにぶつかった際
30
にはきちんと聞き返すことを徹底することが必要だと感じた。また、今回大きな問題は抱えなか
ったが、努力しても自分とは合わないと感じる文化、様式があった際にはそのことを周囲に伝え
る必要もあると感じた。重大な問題ではなかったため言うまでには至らなかったが、私は週末に
泊りがけで遠出していたので週末 1 回だけの洗濯では少し不便で、洗濯がせめて週に 2 回あれば
着るものに余裕があったのにと感じていたからである。このようなことはしっかり自分で伝えな
いと相手にはわからず、伝えれば改善されたかもしれないことだ。異文化適応には自分の努力は
当然不可欠だが全て我慢しなければならないということではなく、いかに周囲の人々と共に快適
に過ごせる道を探るかということであると感じた。
3.行動力
自己の行動力に関して、私が SAP を通して達成したことは、見知らぬ地で様々な年代の人々
に対して臆せず話せるようになったこと、基本的なことだが計画性を持って物事を進められるよ
うになったことである。
私にとって英語でのプレゼンテーションは初めての経験であった。プレゼンテーションのため
に 2 人 1 組でアンケートを実施したが、大学内だけでなく住宅地に出向き全く知らない様々な年
齢層の現地の人々に話しかける経験を通して、「異文化の人々」、「英語で」、「自分とは違った年
代」といった抵抗感が取り払われ、最後は楽しくもあった。日本では外国人に話しかけられるこ
とが特別に感じ身構えてしまうが、York の人々はそのようなことはなく真摯に答えてくれた。そ
のアンケートの結果をまとめた 15 分ほどのプレゼンテーション本番では、流れを意識した言い
回し、繋ぎの言葉を使いはっきりと伝えられたと感じる。他の組のプレゼンテーションではスラ
イドまで工夫されていたり言うことをほぼ暗記し堂々と観客とアイコンタクトをとりつつ進め
ていたりと、学ぶことが多かった。プログラムの後半に IELTS やプレゼンテーションが詰め込
まれていたためハードだったが、同じ組のメンバーとスケジュールややるべきことを相談して分
担し、他の組を見れば改善できる点が見つかったものの納得できるものを作り上げることができ
た。改善できる点とは主に計画性の甘さからきたものであり、アンケートの集計、グラフの作成、
原稿の作成を 1 日ずつでも早めに終わらせていれば流暢さや間まで考えたプレゼンテーションが
できたのではないかと考えた。この経験から得た達成感や、計画性の大切さを実感したことは、
今後の学業や就職活動にも良い影響を与えるはずである。
また、買い物の際に英語で店員に疑問点を質問したり違う色を持ってきてもらえないかなどの
頼み事をしたりし、現地では納得した買い物をすることができた。言語が違う地であっても行動
を起こせば相手は理解しようとしてくれ、何とか実現できるものだと感じることができ、勇気付
けられる出来事だった。
行動力に関する問題点としては、遠出した際、電車のチケットは自力で買う機会があったもの
の、観光ルート・現地での道案内は同じグループのメンバーがほとんどしてくれたため、楽しい
ポイントだけ経験してしまったことである。様々な知らない土地でルートを考えることは時に失
敗するが行動力に関する経験値は大きく上がる。そのような貴重な経験を York 以外の地でほと
んど経験しなかったことは悔やむべきことではないかと感じた。
この経験をふまえて、今後は様々なことに臆せず行動する、またはまずは行動する意思がある
ことを示すことが大切だと実感した。SAP の一ヶ月間は人生でまたとない貴重な時間だと意識し
て一分一秒無駄にしたくないと考えて生活していたが、日本での大学生活、卒業してからの何十
年も同じようにまたとない貴重な時間だという意識で、計画性を持って興味のあることは積極的
に取り組んでいきたい。文学部の私にとって今年度は本格的に将来にむけて動き出す学年であり、
その直前の SAP での経験は非常に価値あるものであった。
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為せば成る
小松 成
1.
自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、間違いを恐れずに英語を
話すことである。留学前の目標は、日常会話を滞りなく進められる程度の英会話力を身に着
けることだった。実際行ってみると、留学当初は、ホストファミリーが言っていることも分
からず、どう返せばいいのかも分からないといった状況が多々あった。しかし、日が経ち、
耳が慣れるにつれて英語もそれなりに聞こえるようになり、それに伴って自分からも話しか
けられるようになった。完璧な文章で話さなくても相手は自分の言わんとすることを汲んで
くれると感じるようになってから徐々に会話をすることに抵抗がなくなり、間違いを恐れず
に話しかけられるようになった。日本人はしばしば外国語を話すときに完璧主義になりがち
だが、その必要はないのだと実感した。また留学を通して私自身が一番成長を実感したのは
リスニングである。初めは何を言っているかを全く理解できず、何度も聞き返すこともあっ
た。そのとき痛感したのが、当たり前ながら知らない単語は聞き取れないということである。
私たちが使う日本語が日々形を変えていくように、ネイティブスピーカーが使う日常語は受
験用英単語帳なんかには載っていない。学校のチューターの方々は何度も留学生を受け入れ
ているからその点を考慮して平易な単語を使ってゆっくり話してくださったので彼らが言っ
ていることを理解するのはそれほど難しいことではなかったが、普通の学生にとってはどの
単語が私たちにとって難しいのかなどは分からないため、聞き取るのに苦労した。しかし知
っている単語さえ聞き取ることが出来れば会話を成立させることは難しくなかったように思
う。
この経験をふまえて、今後は日々の中で一日少しでもいいから毎日英語に触れる時間を作
ろうと考えている。東北大学にも各国から留学生の方が来ているため、行動さえ起こせば、
ネイティブスピーカーと対話する機会は日本にいながらでも持つことが可能である。今回イ
ギリスに行って分かった通り、英語力を伸ばすうえで一番の近道は会話の実践である。一日
数十分でも会話するだけで随分変わるであろうし、なにより、多国籍の人と知り合うことが
できる。普通に生活していれば日本人が聞き取りやすいリスニング教材のような話し方しか
耳にしないかもしれないが、実際は日本人がジャパニーズイングリッシュを話すように、様々
な訛りや語彙が存在する。イギリス訛りに初め戸惑いを感じたことがあったことを考えると、
様々な形態に触れることはとても有益であると思う。そういった新しい発見などもしつつ、
会話自体をやらなければならないという意識から習慣に変えていきたい。
2.異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、特に食事面である。正直、渡英
前は異文化適応に関して、漠然となんとかなるだろうと考えていたが、実際はとても大変だ
った。まず日本との一番大きな違いは食事の量である。日本では朝食をとても重要視するた
め、朝食の量は比較的多めであるが、イギリスでは、毎日シリアルとトーストのみだけであ
った。他のホストファミリーも大体がそうであったようだが、日本に比べると圧倒的に栄養
が偏っているだけでなく、量も少ない。したがっていつも二限の途中には空腹状態に陥るよ
うな状況だった。だが、朝食もさることながら特筆すべきは夕食の量である。私のホストフ
ァミリーの夕食はしばしばすさまじい量のグリーンピースや温野菜が添えられていた。もは
や添えられているというレベルではない。私自身、運動部に所属していることもあり、食べ
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られる量に関してはある程度許容できると考えていたが、それでもなかなか難しく、時には
食べ終わるのに一時間かかるときもあった。そんな私を後目にほぼ同じ量をもう 60 歳もなろ
うかというホストマザーが私よりもはるかに早く食べ終わるのを見ては上には上がいること
を痛感した。また、前述したようにイギリスの食事にはグリーンピース(英名: pea)がつき
ものであるが、実は私はグリーンピースが本当に嫌いだった。初め、中華料理屋の半チャー
ハンくらいはあるのではないかという量のグリーンピースが夕食に出たときは、あまりの衝
撃に、思わず日本語で「マジか。」と叫んでしまったことを今でも覚えている。大量のオレン
ジジュースで流し込み、涙目になりながらホストマザーに”Thank you for dinner, it was
delicious”と言ったあの日を私はずっと忘れないだろう。その後も、変わらぬ量で常に私を苦
しめてくれたグリーンピースであるが、2,3 週目になると驚くべきことにグリーンピースを
食べることにそれほど抵抗感を抱かなくなった。私はそのときこれこそが異文化適応かと身
を以て体感した。
この経験をふまえて、今後は食べられなかったものや今まで食べてこなかったものに対
して果敢に挑戦していくようにしたいと考えている。日本にいるときは、丼ものの上に添え
られた些細なグリーンピースでさえ避けて、もはや食わず嫌いであったが、今回食べざるを
得ない状況でかつ大量のグリーンピースと相対峙し、なんとか苦手を克服できた。そう考え
るともはや自分に食べられないものはないのではないかという気がしてきた。異文化の食事
に触れるとき、今までは若干の抵抗感を抱き、知っている名前のものだけを食べるといった
保守的な姿勢を取ってきたがそれはとてももったいないことだったのかもしれない。もしか
したら、自分に合うものが見つかるかもしれないし、初めは抵抗があっても何回か食べるう
ちに好きになることもあるかもしれない。これは食事の面に限ったことではない。異文化に
飛び込むときには少なからず違和が生じるものであるが、それを恐れたり、嫌がったりして
はいつまでも異文化に適応することはできない。異文化を知ることは、逆に自国の文化を再
確認することにも繋がる。今回イギリス料理を食べて、今まで自分たちが慣れ親しんだ日本
食がいかに素晴らしいかを痛感させられた。当たり前のことは得てして失われてから気づく
ものだが、今後、異文化に触れることで、他国への理解を深める一方、自国への愛着もさら
に深めていけたらと思う。
3.行動力
行動力に関して私が SAP を通して達成したことは、自ら行動を起こす積極性である。私は
とても消極的で受け身な人間だったので、外国の方の積極性に触れて、少しでも改善できれば
よいとは留学前から思っていたが、実際に行ってみて、ある程度克服できたという手ごたえは
感じている。今回の留学のプログラムの中で一番、寄与したのが大学構内や街へ出ての聞き込
み調査である。見知らぬ人にインタビューするのは、日本語ですら抵抗がいるものであるが、
今回それを異国の地で実践し、人に話しかける場面で、もうこれ以上勇気がいるシチュエーシ
ョンはないと思えるほどの体験が出来た。またそのほかでも、道を尋ねるときなど、人に質問
する場面でも最終的にはあまりためらわずに聞くことが出来るようになった。さらに、大学か
ら始めたラクロスを通して、積極性を磨くことが出来た。英語力 1 つでは、ネイティブスピー
カーのコミュニティに飛び込むことは難しくても、スポーツを交えてならどうにかなるという
思いから、自らコンタクトを取って、部活動に参加しようと試みた。連絡を取る中でいろいろ
と日本と英国でのラクロスの違いなどを知ることはできたが、残念ながらちょうどシーズンが
終わってしまった頃で、部活に参加することはできなかった。しかし、ラクロスをやっていな
ければこういった積極性を出すことはなかったと思うし、とてもいい経験になった。
この経験をふまえて、今後は自ら人に話しかけることやその中で対話をコントロールするよ
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うな姿勢をさらに深めていきたいと考えている。今回の留学で自ら行動を起こすようになって
感じたことは、要は慣れだということである。私たちにとって異常にも思える外国人の積極性
は、彼らにとってはスタンダードであり、特別なことをしているという意識は持っていないと
思う。国民性と言ってしまえば、それまでだが、だからといって私たちが出来ないかと言えば
そうではないはずだ。初めは自分から人に話しかけることは抵抗感があるものだが、いざやっ
てみると思いのほか相手が親切で拍子抜けすることもあるかもしれない。やらないことによる
後悔よりも、やって後悔するほうが自分の中で納得できるものであるし、行動を起こすことに
より生ずるあらゆるメリットは、起こさないことで回避できるリスクをはるかに凌駕すること
はもはや自明だ。この行動力は自分次第でどうにでもなるものだと今回の留学で強く感じた。
だから、日本に帰ってきた今、培った積極性を学業における知的好奇心の探求や、部活動にお
ける創意工夫、向上心に繋げていけたらと思う。
34
SAP を通して得たもの
田口 真梨
1.
自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、自分を発信する力の上達で
ある。私は、日ごろから消極的で自分の意見を主張したり、考えを人前で述べたりするのが苦手
であった。その自分の性格を積極的にしたいとずっと思っていた。それが SAP に臨むときの目
標でもあった。実際にイギリスのヨークに着いて、まずホストファミリーとの生活が始まった。
ホストファミリーは心優しく、温かく私を迎え入れてくれた。最初、ホストファミリーに遠慮し
てしまうのと、自分の消極的な性格から、自分から話しかけるのができなかったり、ホストファ
ミリーの言っていることに対して Yes しか言えなかったり、何度かこのままではだめだなと落ち
込むことがあった。また、ホストファミリーだけでなく、ヨーク大学の学生との会話でも、せっ
かく話しかけてくれたのに、うまい返事ができなかったり、相手にばかり話させてしまったりと、
苦い思いを何度かした。そういうことがある度、自分の発信力の無さを思い知った。しかし、こ
の一か月の間に、間違っても良いから、簡単でも良いから、トライしてみようと思って、何とか
行動にしてみた。例えば、ホストファミリーに家族のこと、彼らの文化のこと、生活のこと、ス
ポーツのこと、音楽のこと、趣味のことなどなんでも質問してみた。彼らはいつも温かく答えて
くれ、私が聞き取れないと繰り返し話してくれた。それは聞き取り能力の向上にもつながったし、
何より、自分から会話を投げかけられるのがうれしかった。そんな時はいつも、相手のことを聞
いたら、自分のことも話すように心がけた。自分の家族、日本のこと、日本での生活のことなど
自分について伝えた。また、ヨーク大学の学生との交流の際も、相手の国のこと、趣味、学校生
活について尋ねて、お互いを知り合うことができた。それから、ホストファミリーやヨークの学
生とのリアルな日常の英会話に触れることで、今まで知らなかった、間違って知っていた表現や
言い方を学ぶことができた。これは同じプログラムに参加していた東北大生にも同じことが言え
て、彼らから刺激を受け、新しく学ぶことも何度かあった。お互いに刺激し合えたことは、とて
もいいことだったと思った。
この経験をふまえて今後は、SAP を通して得た、自分を発信する力を衰退させず、維持してい
きたい。海外の人と英語を使ってコミュニケーションするときは、自分を引っ込めず、積極的に
会話していきたい。そのために必要な、失敗を恐れない、トライする精神は、SAP を通して何度
も鍛えられたと思う。日常生活でも、その精神を忘れず、くじけずに行動にしていきたい。この
一か月で行動しないで後悔したことはあったが、行動して後悔したことはほとんどなかった。そ
のことを忘れないで日本でも頑張っていこうと思った。
2.
異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、自分の国と異なる文化を受け入れ
ることである。帰国後、自分の視野が広くなっていることに気が付いた。ヨークではいろんな国
の人々に出会った。一番異文化経験をさせてくれたのは、ホストファミリーである。私のホスト
ファミリーはインド人であった。知ってのとおり、彼らはカレーを食べるのが日常で、週の半分
はカレーがディナーに出てきた。私は辛いものが得意でなく、その香辛料の辛さや香りの強さか
ら、はじめはなかなか慣れることができなかった。しかし、そのうちその良さに気付きはじめ、
今ではインドカレーが好きになった。ホストマザーはとても料理が上手で、帰国するころには彼
女の手料理がもう食べられなくなるのかと思うと、とても悲しくなった。そして最後の夜にはそ
のレシピをマザーは教えてくれた。必要なスパイスや調理方法を丁寧に教えてくれた。帰国して
間もなく、私はそのレシピ通りにマザーのカレーを再現した。マザーほど上手くはできなかった
35
が、それは強くインドを思い出させるものであり、懐かしく思った。また、彼らの宗教、ヒンデ
ィー教では、牛を食べることは絶対にしない。なぜかを尋ねてみると、ヒンディー教において、
牛は神の使いであり、神聖な動物であるからと教えてくれた。また、日本の仏壇や、神棚のよう
に、家の真ん中にヒンディー教の神、ガネーシャの像がひっそりと飾られていた。ホストファミ
リーはそれを自分たちの家族だと教えてくれた。私もそのガネーシャを彼らと同じように家族と
みなし、大切にした。ヒンディー教はほかにも決まりがあり、洗濯をしてはいけない曜日、肉を
食べてはいけない曜日などがあった。彼らの生活に合わせて私も生活した。まさか、イギリスに
来てインドの文化に触れるとは思ってもみなかったが、日本にいては決して経験することはでき
ない貴重な経験であった。
これらの彼らとの生活を通して、異文化に触れることの興味深さを知り、異なる価値観を理解
し受け止めることを学んだ。彼らとの生活はとても楽しかったし、彼らが自分たちの文化につい
て教えてくれるのが嬉しく、また興味深かった。彼らの文化を理解し、共有して受け入れること
で彼らとの距離も縮まる気がした。このような経験は非常に貴重なものだと実感している。
この経験をふまえて、今後は異文化に対して寛容な心持ちで、接することができると思う。本
当に物事を考える視野が広がり、新しい価値観も手に入れることができた。これから、もっと多
くのさまざまな国の文化に触れてみたいとも思うし、逆に外国の人に日本の文化に触れて良さを
感じてほしいとも思う。お互いの文化を理解しあい、受け入れることで人との距離はとても縮ま
ることを実感した。実際に、異なる文化をもつホストファミリーと良い関係を気づくことができ
たことは、異文化適応に関しての自信を私に与えてくれたと思う。
3.
行動力
行動力に関して、私が SAP を通して達成したことは、何事にも積極的に向かっていく姿勢を
持つことである。海外研修に行く前に立てた目標に、積極性を養うことがあった。実際に、ヨー
クで自分の積極性を試される場面は何度もあった。たとえば、授業中に意見を要求されたり、少
人数のアクティビティで自分から発言、行動をしていったりすることが求められた。私は、初め、
授業のときはなかなか発言したりできなかったが、少人数のアクティビティのほうで積極的に発
言、行動することになれ、徐々に授業のほうでも積極性を出していくことができた。授業の一環
で、プロジェクトを行ったのだが、私の班は Student Housing をテーマに、仮説を立ててその
検証を行った。実際にヨークの学生や、学校の周りの地域の方にアンケートをしたり、その結果
を分析したり、レポートの作成、プレゼンテーションの発表などを行った。その過程においても、
行動力は常に求められ、特にアンケートを取っているときは、人に声をかけること、またその会
話の中でも、積極性がとても鍛えられたと感じた。授業外では、ヨークの学生との交流会におい
て、自分からほかの学生に話しかけに言ったり、遊びに誘ったりすることも大切だった。ヨーク
の学生が話しかけてくれることもたくさんあり、とても助かったが、それではいけないと、自分
から輪に入ったり、シティーセンターに遊びに誘ったりもした。ヨークの学生は皆温かくて、い
つも歓迎してくれるので、行動してよかったと思えた。また、東北大学の学生との間でも、積極
性は養えた。グループでの活動では、プレゼンテーションの発表、準備、イギリスでの班での旅
行など、自分の行動がとても重要なときが多々あった。
これらの経験をしている中で、私がいつも持っていた意識は、絶対にこのチャンスを逃しては
いけないということだった。SAP にのぞむ前から考えていたことだが、この海外研修には、たく
さんの自分の能力を上げるチャンスがあり、それは日本での日常生活ではなかなか得られないも
のである。その貴重な機会を決して無駄にしてはいけないという意識があった。実際に、行動力
や積極性を養えるチャンスは何度もあった。前に述べたことのほかにもこの 1 か月間は常に自分
の行動力を試されているように感じていた。その度、今しかできないことだということを思い出
し、積極的に行動することを心掛けた。バスの運転手に英語であいさつをするといった小さなこ
36
とでも、行動に移すことの重要性を感じていた。小さなことでも、何度も積み重なると、行動力
を上げるための大切な訓練であるような気がしていた。どんな小さなチャンスでも、逃さないよ
うに、積極的でいる姿勢を身に沁みこませることができたと思う。
これらの経験をふまえて、この 1 か月で訓練した姿勢をこれからも維持していくことが一番重
要なことだと思う。こんなに貴重な経験をして、せっかく得た力なので、絶対に風化させたくな
いと思う。そのために、イギリスでの日常と、日本での日常を重ね合わせて、イギリスでたくさ
んチャンスを見つけたように、今の日常でもたくさん探し出したい。その意識を持っていること
が、積極的に行動するためのポイントであると学んだ。つまりは、向上心である。その気持ちを
忘れずに、これからの学校生活をより良いものにしていきたい。
4.
終わりに
この 1 か月間は、非常にめまぐるしくて、貴重で、素晴らしいものであった。まだイギリスに
着いて一週間の頃は、生活になれず、これから 1 か月もどのように暮らしていくのか、やってい
けるのか、非常に不安だった。しかし、たくさんの人に温かく支えてもらい、充実した中身の濃
い 1 か月にすることができた。この研修から得たものは本当にたくさんある。まずは、語学力の
発達。日本にいては学ぶことが難しいリアルな日常会話を体験し、聞く力、自分を発信する力を
養うことができた。次に文化交流の大切さ、面白さに気づけたこと。こんなにも濃く異文化を体
験できたことは人生において非常に貴重なことだったと思う。そして、積極的な姿勢。これから
の将来に、本当に必要なことを得られたと思う。しかし、それだけではない。この 1 か月の研修
を通して私は、自分の将来の舞台を世界にまで広げて考えるようになった。研修前までは、海外
に興味はあった。けれども、長期の留学や、海外での仕事に就くことなどはほとんど考えたこと
がなかった。ヨークで世界中からイギリスに留学に来ている学生や、ヨーク大学で修士課程をと
っている日本の学生と接し、イギリスの移民の多さを目の当たりにして、海外で自分の志を叶え
るということに魅力を感じ、以前より身近に感じられるようになった。自分の将来設計にも新し
い見方を与えてくれた研修であった。
世界で学ぶということは、本当に自分の可能性を見出だしてくれると感じる。先進国であるイ
ギリス、そして世界的な中心都市であるロンドンで見た世界の現状に、強く衝撃をうけ、自分が
日本だけでなく、世界の一員であることを実感することもできた。この海外研修でたくさんの刺
激を受けたこと、自分の力を伸ばしたこと、たくさんの人と出会い交流したことは、これからの
私の将来に必ず良い影響を与えてくれたと思う。このことを活かして、これからの大学生活をよ
り充実させ、将来に繋げたい。
37
海外研修を終えて
千葉 里華子
1.
自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、リスニング力の向上で
ある。私は受験英語の勉強においてはリスニングが最も苦手であった。勉強の仕方がわから
ず、成果もわかりづらい分野であるからだ。またイギリス英語は発音が独特であり、改めて
勉強し直す必要を感じていた。そこで研修前にはイギリス映画をまずは字幕付きで見て、そ
の後字幕無しで見るという作業をした。その成果があったのかどうか定かではないが、現地
ではチューターやホストファミリーの話は理解できた。しかし同年代の学生たちとの会話で
は、聞き取れないということがよくあった。日常会話など、少しくだけた表現に触れる機会
が今まで少なかったからであると思う。一方自己の課題であると感じたのはスピーキングで
ある。大学のスタッフと初めて会い挨拶をする時に“Hello”と言われて“Thank you”と返事を
してしまうという頓珍漢な失態をした。普段日本語で挨拶をするときには半ば反射的に言葉
が出てくるのが、英語になると頭の中で言われたことを理解し、その後言いたいことを英訳
してから口に出すという順序をたどるがためにこのような失敗をしたと考えている。また、
現地に着いてから数日は単語でしか会話が出来なかった。この状況を打開するために、とり
あえず“I”と言ってから文を考えるようにすると段々と文章で話せるようになった。現地で受
けた IELTS のスピーキングや panel interview という就職面接のような授業に苦手意識を持
っていた。質問内容は決して難しくないのだが、答えを考えるのに非常に時間が掛かった。
このことは英語力云々の前に、頭の回転が遅く、コミュニケーションが上手く図れないこと
が影響していると考える。普段日本語では、言いたいことを簡潔にまとめて結論を最後に話
すことが求められるが、英語では結論を始めに言い、なおかつある程度の量で理由を述べな
くてはならなかった。その点も苦労した。
この経験をふまえて、今後は「英会話」のための英語の勉強をしたいと考えている。今回
の SAP での経験は、自分自身の英語力について思い知らされる良い機会となった。ホスト
ファミリーの親戚の 2 歳児と遊ぶことがあったのだが、彼の英語の方が私よりずっと高度な
ものに感じた。中学生の時からかれこれ 8 年は勉強していても、現地の 2 歳児と同レベルも
しくはそれ以下だと思うととても悔しかったし笑えてしまう。3 年生になると大学では英語
の授業が無くなるので、自学習の時間を確保する。まずリスニングに関しては、映画を見る
ということを続けようと思う。その他 TED や向こうで見ていたニュース番組など、インタ
ーネットを通して視聴出来るものを利用する。スピーキングを上達するには、言いたいこと
を英訳するという作業を無くすことが必要なのではないかと考えている。そのためよくある
場面において使う英語は反射的に口に出るように訓練しようと思う。具体的には、大学で行
われている英会話カフェなどのイベントへ参加したり、日常の何気ない瞬間でも「英語でど
う表現するのだろう?」と意識する。またコミュニケーションに関しては場数を踏むしかな
いと思う。普段は気の合う友達や家族としかほとんど会話をしないが、ヨーク大学で知り合
った学生やホストファミリーとは今後も連絡を取ったり、あらゆる年代の人と交流する機会
を作って克服する。先日 IELTS の結果が発表されたが、予想通りスピーキングが足を引っ
張り、目標のスコアを達成することが出来なかった。勉強し直してもう一度受験する機会を
作ろうと思う。来年からは就職活動が始まり、TOEIC のスコアなども武器となってくるた
め、高得点を取れるように毎日少しずつ準備をする。しかし高スコアで満足することなく、
「使える英語」を意識して勉強をする。
38
2.
異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、客観的に日本を見ること、食
べ物によってグローバル社会を感じること、イギリスの実生活を体験することである。今回
が初めての海外渡航だった私にとって、現地で目に入るものすべてが目新しく、日本と比較
する対象となった。中でも最も顕著であったのは高齢者が少ないということである。日本が
あまりにも高齢社会であるのだろうが、現地で 1 日に見かける高齢者を数えてみると両手で
収まるほどの数であったりした。たまに高齢者がバスに乗ってくると、多くの人が無言で素
早く席を譲っていた。イギリスのバスではアナウンスが流れておらず、また、日本のように
高齢者に席を譲ってくれと運転手が促すことがなくとも自主的に行動できるのが素晴らし
いと思った。また、通学時間にスーツを着たサラリーマンをあまり見かけなかった。その代
わりに通勤する人の格好はトレーナーやシャツにジーンズというラフな格好であった。日本
では最近になって、クールビズなどにより制服を崩すという考えが浸透してきたがまだまだ
外見を気にする傾向が強いと思う。その他、レストランやホテルでのサービスも日本は過剰
なくらいに親切であると感じた。海外と日本の比較でよく言われることであるが、日本人は
好きなだけ水を使えることを当たり前だと思っている。向こうでは使えるお湯の量が制限さ
れていたり、ペットボトルの水は他のドリンクよりも値段が高く、ほとんどのレストランで
有料であった。サービスに関しては、店員の接客マナーの面やアメニティの充実度などで大
きく違っていた。イギリスにおいて水に関する制限があることやホテルのアメニティが少な
いことは、エコロジーの観点から来ていると思われる。日本とイギリスのどちらが良いか悪
いかということではなく、国によって重視する点が違う、つまり文化の違いとして興味深か
った。週末や授業では、ヨーク以外にもロンドンやエディンバラ、リーズ、ウィットビーを
訪れる機会があったのだが、どの町に行っても日本食レストランを見かけた。イギリス料理
は評判が悪く、数年前から食に関して改革していると言われており、その一端であると思わ
れる。日本食と言ってもイギリス人の口に合うようにアレンジされており、例えばパプリカ
の寿司など、日本人としては驚くようなものもあった。私が実際に食べて衝撃的だったのは、
ブラックプディングと呼ばれる豚の血を固形状にしたものである。イギリスでは日本ほど内
臓つまりホルモンを食べるイメージは無く豚肉もさほど食べていないように思ったが、ブラ
ックプディングは人気の食べ物のようだ。味は何とも形容しがたく、私の口には合わなかっ
たがとても良い経験となった。イギリスの実生活というのはホームステイにより体験するこ
とが出来た。私はずっと実家暮らしのため、1 ヶ月も家族と離れるのは初めてだった。研修
が始まるまではホームステイのことを考えるだけで胃が痛くなったが、ファミリーの人柄の
おかげで楽しい時間を過ごすことが出来た。私のファミリーはイギリス出身とスペイン出身
の女性 2 人で、同性婚をしている。イギリスでは同性婚が認められており、彼らが養子を受
け入れることもあり、日本よりもオープンな関係でいられる。また、イギリスでは様々な人
種の人を快く受け入れているように感じた。ヨーク大学には中国人の留学生が多く、私たち
と同時期には、他に 2 つの日本の大学の生徒が短期研修に来ていた。大学の食堂の職員さん
も慣れた様子で対応してくれた。日本ではいわゆるオネエ系のタレントやハーフのタレント
がテレビを賑わしているが、彼らが活躍しているのは、彼らを特殊な人たちとみなしている
視聴者や制作側の意図が少なからずあるからだと思った。そういう意味で日本ではまだまだ
セクシュアルマイノリティや人種に関して偏見があるのだと思う。話がずれてしまうが、中
国人留学生が多いということにより、中国は大国なのだと思い知らされた。中国の成長ぶり
は著しく、学生の英語教育にも力を入れているのだろう。大学には中国のニュースだけを載
せた新聞があったり、お店には中国語の案内もちらほらあった。日本は先進国だ、というの
はもはや過去のことで最近は世界各国に遅れを取っているのではないかと感じさせられた。
39
また、建物や交通ルールもイギリスと日本とでは大きく異なっていた。イギリスの住宅はア
パートのように他の家庭と建物が繋がっている。駐車場はなく、路上駐車が当たり前に行わ
れている。玄関のドアは外から入るときも中に入ってからも鍵を使って施錠もしくは開錠す
る。チューターから聞いた話では、イギリス人は駐車場のスペースを確保するくらいであれ
ば、そのスペースを庭にする、らしい。
この経験をふまえて、今後は日本の良い点悪い点を客観的な視点で見るように心がける。
普段の自分の視野や考えがどれだけ狭くちっぽけなものかを実感した。それは今日まで私が
過ごしてきた環境によって影響を受けていて、その環境は日本という国の伝統や風土に影響
を受けている。限られた視野だけで物事を判断するのをやめようと思う。例えばセクシュア
ルマイノリティについて、私はイギリスにいる間は、彼らを特別視するようなことは無かっ
た。それは向こうの多くの人が彼らを受け入れているからである。郷に入っては郷に従うよ
うな感覚であったのだと思う。しかし日本でも同じように接することが出来るかといえば少
し自信がない。それは日本では偏見を持っている人がまだ多いからである。多数派の意見に
流されてしまうという点で、私の意思や信念は危ういものである。それを克服し、自分の中
であらゆる物事に対して基軸を持つとともに視野を狭めないようにする。まずは世界情勢に
関して知識が足りないので、読書から始めようと思う。
3.
行動力
行動力に関して、私が SAP を通して達成したことは現地の人に積極的に声をかけること
である。日本でさえ知らない人に声をかけるのは憚られるが、現地で英語で声をかけるとい
うのはとてもハードルが高かった。しかし現地に着いてから数日の間は迷子になることがあ
り、助けを求めざるを得なくなった。散歩をしている人や店員に声をかけてなんとか目的地
までたどり着くことが出来た。結果としてよい英会話の練習にも度胸試しにもなった。また、
授業でプレゼンテーションがあり、そのためにアンケートを取る必要があった。私のグルー
プではヨークの建物を伝統様式と現代の様式のどちらで建てるべきか、というテーマの調査
を行なった。幅広い年代の人のデータを集める必要があったので、大学内のみならず町へ出
てスーパーマーケットの前で買い物客に声をかけた。ほとんどの人が快く回答を承諾してく
れ、つたない英語に耳を傾けてくれた。毎週末にはグループのメンバーと小旅行に出かけ、
その時に訪れた、イギリスの中でも首都であるロンドン、スコットランドの首都エディンバ
ラでは町の雰囲気が全く違っていた。日本に住んでいれば北海道と沖縄では雰囲気が全く異
なると知っているのと同じように、イギリスの中での町の違いは実際に訪れないとわからな
いものだと思う。
この経験をふまえて、今後は食わず嫌いせずに様々なことに挑戦しようと思った。私は入
学当初は留学に全く関心が無かったが、学部の方針で勧められたのと、何度も海外に行って
いる友人の影響で SAP への参加を決めた。留学での体験が価値観を変えるなど胡散臭いと
考えていたが今回の経験で確実に何かが変わった気がした。大学生活は残り 2 年となって来
年からは就職活動が始まるが、その前に今しか出来ないことをしようと思う。極端に言えば
卒業できるかどうかということは大した問題ではなく、社会に出る前に自分を鍛錬しゆくゆ
くは国際社会で活躍する人材になれるように準備する時間を作ろうと思う。まずは今年中に
もう一度海外に行く機会を作ろうと考えている。
40
SAP 短期研修を終えて
中島 一郎
1.
自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通じて達成したことと、今後の目標は、以下に上げ
たとおりである。
一つ目は、ペーパーテストの学力向上である。今年から、SAP の York programme に「IELTS
対策」が導入された。IELTS のスコアはイギリス留学を考える人にとって重要であるが、たとえ
イギリス留学をしない場合でも、TOEIC や TOEFL といった他の試験にも生かせると思われる。
IELTS 対策の授業が展開されたことにより、Reading, Writing, listening , speaking の各分野を
バランスよく勉強することが出来た。そして、イギリス現地の先生に直接英語の指導を受けるの
で、特に writing や speaking の向上は著しいものであった。確かに、IELTS 対策として先生が
出す宿題の分量は多くて大変だったが、その先生のご厚意により、IELTS のスコアは著しく伸ば
すことができたので、結果として先生方に大いに感謝している。
この短期研修を機に長期留学に対する意欲が掻き立てられることになった。ただ、その長期留
学を実現するためには英語のスコアが求められる。よって、IELTS や TOEFL 等の試験対策を続
けていきたい。なお、ヨーク大学大学院留学の場合は IELTS 7.0 点以上というかなり厳しいスコ
アが求められる。よって、今の成績のままでは留学が不可能なので、留学に必要とされるこのス
コアをとれるようにかなり勉強しなければならない。たとえ、長期留学が実現しなかったとして
も、仕事の場において言語運用力の高さは強みとなるだろう。では、言語運用力の向上を図るた
めの今後の具体的な勉強方法として以下のものを挙げておく。それは TOEFL・ITP の勉強をす
ることである。確かに、イギリス留学の場合、IELTS 受験が必須なうえ、TOEFL・ITP は就職
活動でも利用することはできないことが多い。ただ、IELTS や TOEFL・IBT は受験料が高すぎ
て何回も受験することが困難なのに対して TOEFL・ITP は東北大学で非常に安価に受験できる。
そのうえ、550 点以上をとれば、グローバルリーダー資格の一要件を満たすことになる。よって、
ひとまず今年は TOEFL・ITP で 550 点以上を取り、さらに学部卒業までに 600 点をとることを
目標としたい。この目標実現のために、TOEFL・ITP 対策の本を毎週解き、ラジオ講座(攻略
英語リスニング)を継続して聴くつもりである。TOEFL・ITP で一定程度のスコアが取れるよ
うになったら、IELTS のテストも受験してみようと思う。
二つ目は、communication skill の向上である。今回の研修のために英会話学校に通って
communication skill の向上に努めてきたが、やはり日本語中心の生活では英語で話す機会が少
なく、skill 向上には限界があったと感じる。イギリスに 1 か月間滞在して英語しか通用しない地
で生活することにより、
「英語を使う」ということが可能だったので、英語による communication
skill も向上していった。最初は話しかけることに躊躇していたが、このままだと生きていけない
と感じて、失敗を恐れずとにかく積極的に話しかけることを心掛けた。失敗することは自分の心
身に多少のダメージを与える結果となる。しかし、失敗からは多くのことを学ぶことができる。
その失敗と修正を繰り返すうちに他者とのコミュニケーションの幅が広がっていった。なお、英
語力の不足はジェスチャーや他者への質問で補った。私の大げさなジェスチャーと、頻繁になさ
れる質問に対しては、クラスメイトからの失笑とからかいを受ける羽目になったが、私は動じる
ことなく続けた。その結果、私は多くの人とコミュニケーションを行うことができたのである。
また、コミュニケーション手段は、言葉に限られるものではない。音楽もコミュニケーション手
41
段の一つとなったのである。私は、東北大学学友会能楽部に所属しているので、ヨーク大学の学
生と教員に対して能を披露した。すると、その能をきっかけとして話題が広がったのである。能
が私の英語力の不足を補ってくれたのである。さらに、私は友人の誘いによりラテンダンスのパ
ーティーに参加した。ラテン系訛りの英語やスペイン語は理解に苦しいものであったが、ともの
手を繋いでダンスをすることで交流の輪を広げたのである。
この経験をふまえて、今後は東北大学に戻っても留学生との交流をさらに増やして、英語によ
るコミュニケーションを図っていきたい。これまではほとんど留学生と接してこなかったので、
英語を使う機会がなかった。さらに、留学生と話そうとする積極性がなかった。これからは、SAP
で身に着けた持ち前の積極性を生かして、どんどん英語を使う機会を増やしていきたいと思う。
具体的には、SLA や coffee hour 等々の東北大学内の英会話講座に参加し、かつ留学生の society
に参加してみようと思う。
2.
異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、異文化適応力の重要性を実感した
とともに、異文化適応力を進歩させることができたということである。その異文化適応力の重要
性と進歩を感じる一例は、
「食事」である。食事は我々人間が生きていくうえで欠かせない営み
である。が、その食習慣はなかなか変えられるものではない。よって、いかに現地の食文化に慣
れていくかは大変重要である。私は、日本で米を主食としていたため、パンとジャガイモを主食
となる生活は少々不安であった。しかし、
「郷に入っては郷に従え」ということわざを胸に刻み、
現地で食べられるものをちゃんと食べることを心掛けた。すると、意外と慣れてくるものである。
この時、変化や差異に順応できることの重要性を身に染みて感じた。異文化適応のもう一つの例
は公共交通機関である。ヨークのバスには、停留所を示すアナウンスも掲示板も何もない。その
ため、景色を見て自分で判断して降りなければならない。これに対して、「不親切だ」と不満を
こぼしたとしても仕方がない。この習慣を事実として認識して受け入れていく必要がある。その
うえで、その文化・習慣を評価していくことになる。この時、感じたのは異文化適応力とは、異
文化を事実として受け入れていく力であり、異文化に無批判であれというわけではないというこ
とである。異文化に適応していく上では、きちんと自国の文化と相対化して、異文化の評価すべ
き点は評価し、改善すべき点は改善していけるように努力していく必要がある。
この経験をふまえて、今後も異文化適応力を養い、異文化をきちんと受容、評価、批判ができ
るような人になっていきたいと考えている。具体的には、日ごろから海外に関心を向けて自国文
化に固執しないようにしたい。そのために、海外に関する本やニュースに関心を向け、留学生ら
との会話に挑戦したいと思う。
3.行動力
今回の短期研修では、言語運用力とイギリスに行くのは初めてで慣れない地だったので、とに
かく現地の人に質問した。その結果、積極的に話すという行動力が身についた。また、多くの人
と知り合うためには、自ら様々なイベントに足を運ぶ必要があり、積極的に多くのイベントに参
加することで行動力が上がったのである。この行動力の向上は、同時に自分でチャンスをつかん
でいくことの重要性をも私に知らしめた。日本にいればそれほど自発的に行動しなくても何とか
生活できる。日本では”dependent”が通用しており、友人や親といった知り合いに依存して生き
ていける面もある。しかし、海外では”independent”が必須である。海外では何のツテもないた
42
め、自立性・自発性が求められる。自発的行動はかなり労力を要して大変に思われるが、逆にい
えばこれは自ら積極的に行動すれば可能性が無限に広がるというプラスの意味も有するのであ
る。私の場合も、自ら現地の学生に積極的に話しかけることで多くの国の学生と話すことができ
た。その結果、多くの知識を習得することができたのである。
この経験を活かして、今後も積極的に行動をしてチャンスをものにしていく努力をしていきた
い。特に、英語力の持続的な向上を目指すには、積極的に留学生と交流して英語を使うことが最
善策だと言うことを、ヨーク大学の友人から教えてもらった。留学生と話すことは大変勇気が必
要だが、持ち前の行動力を武器にして挑戦していきたい。なお、現在は facebook を使ってヨー
ク大学の友人と定期的に文通をしている。もちろん英語である。この文通を持続していけるよう
に頑張っていきたい。
4.総括(まとめ)
今回の短期研修はたったの一か月のものだったので、グローバル人材として世界で活躍できる
ようなスキルを完全に習得できたとは言い難い。むしろ、自身の能力の不十分さを自覚したこと
のほうが大きい。英語力をもっと身につけ、もっと積極的に学んでいって自己陶冶していく必要
がある。課題をきちんと発見し、その課題克服のためのプランを立て、そのプランを実行して課
題を克服していくという三つのプロセスを踏んでいかなければならない。その具体的な内容は、
先述の通り TOEFL 対策、ラジオ講座、東北大学内での英会話講座、そして自己の専門科目(法
律)の勉強である。英語等の外国語を使える法律の専門家として、海外で活躍できるように大学
生活を全うしていきたいと考えている。
43
SAP での成長
成田 伊織
1.
自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、英語を使うことに抵抗がな
くなったということだ。たとえば SAP 以前、日本にいたときに外国の方と話す機会があっても、
英語を喋るということがなんだか気恥ずかしかった。文法が間違っているんじゃないか、適切な
発音ではないのではないか、などと心配しだしたらきりがないが、とにかく自分の英語に自信を
持てず、進んで話すことができなかった。しかし、ステイ先でファミリーと会話するとき、バス
でチケットを買いたいとき、店員さんに尋ねたいことがあるとき、イギリスに行ったら英語を話
さないでいるというわけにはいかない。日本語を分かってくれる人はいないし、自らの英語力で
解決しなければならない。班の人たちやプログラムのメンバーと一緒のときならば協力もできる
かもしれないが、一人でそのような場面に遭遇したとき、自分の英語に自信がないから、恥ずか
しいからなどと言っている場合ではない。一度言ってみて伝わらなくとも、単語を変えて、言い
方を変えて、自分の言いたいことが伝わるように、相手に理解してもらえるように、何度も何度
も挑戦することを繰り返していくうちに、自然に恥じらいなどの感情はなくなっていた。たとえ
自分で適切な語が思いつかず言いよどんでいるときでも、聞いてくれる人たちが諦めずに理解し
ようとしてくれたので、なんのことについて言おうとしているのか察してくれて、意思疎通を図
ることができた。プログラムのなかで、ヨーク大学での日本語の授業を訪れ、現地の学生と日本
語で会話をするという機会があった。二人一組での会話だったが、相手は日本語が決してペラペ
ラというわけではなかったし、以前の私と同じように、自分の日本語に自信がなく、しゃべり始
めても途中でやめたり、ということが多かった。以前の私は自分の下手な英語で相手をイラつか
せていないか、あきられないかなどと不安でいっぱいだったけれども、実際に自分が逆の立場に
なってみてわかったこともたくさんあった。とぎれとぎれで、伝わりやすくはないかもしれない
が、こちらも相手の言わんとしていることを必死に理解しようとして話を聞いていたので、普段
の自分もこういう感じなのだと実感できたと同時に、そのときの相手の気持ちもわかり非常にい
い機会だった。外国語として一生懸命日本語を勉強してくれている人たちを見ていたら、とても
応援したい気持ちになったし、日本に興味を持ってくれているということで嬉しかった。この機
会のおかげで、英語を話す際の躊躇が薄れ、もっと積極的にしゃべろうという気持ちになった。
ファミリーとおしゃべりして笑いあえたり、業務連絡的なやりとり以上のことでコミュニケーシ
ョンをとれるのは嬉しかった。ある日、一人でカフェで勉強していると、私の隣にイギリス人の
方が座ってきた。そして話しかけられて、日本について尋ねられたり、たわいのない会話をして
楽しんだ。しかし、そのときに実感したことは、準備して言おうとしたことはすらすら喋れるけ
れども、そのときに即座に言いたいことを言おうとしても時間がかかるということだった。たと
えば店員さんになにか尋ねたいことがあるとき、私は頭の中でどんな単語、どんな文を使って尋
ねるか一字一句考えてから臨む。そのため尋ねる際はすらすら聞けるのだが、相手が答えてくれ
て、それに対してさらに聞きたいことがあるとき、その質問文を用意していないので最初の質問
よりもしゃべるのにつっかかってしまう。そのようなもどかしい思いをしたことが SAP 中多く
あった。頭の中で瞬時に文を構築することができないのだ。きちんとした文で答えられなくとも、
相手が単語で意味をくみ取ってくれることもあるので、乗り越えられてきたけれども、はがゆい
気持ちでいっぱいだった。
この経験をふまえて、今後は聞いてくれる人のためにもより分かりやすく伝えられるように、
さらに英語力を向上させる必要があると思った。単語帳を見たり参考書を読んだりすること以上
のことをしなければそれは改善されない。もっと生の英語に触れる必要があると思うので、東北
44
大に来ている留学生と交流できる場などに参加して、英語を話す機会を自分から積極的に探して
いきたい。SAP に参加して終わりではなく、使わなければ英語力は低下してしまうと思うので、
英語を話すことを習慣づけたいと思う。
2.
異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、日本とは異なる様々なイギリスの
生活様式に対しての順応である。渡航前から耳にしていたこと以上に、イギリスに渡った初日か
ら多くの相違点と遭遇することとなった。まず、住居に関してである。私のステイ先は二軒続き
の物件で、一見一つの家のように見えるが、それは二つの別々の家に分かれていて、もちろん別々
に生活している。私はこれまでこのような様式の住居をみたことがなかったけれども、そのステ
イ先のある地域はもちろん、そのほかの地域でもこのような物件は多く見られた。壁を挟んです
ぐ隣に見知らぬ人が住んでいるので、大きな音を立てないように心掛けていたが、この点に関し
ては現在の一人暮らしのアパートでの生活と類似していた。次に、風呂場に関してである。私の
ステイ先では、洗面台、トイレ、バスタブが一つの空間にあって、バスタブにシャワーが設置さ
れているというタイプだった。しかし、そこにシャワーカーテンなどというものはなく、また、
壁は家の中のほかの部屋と同じ壁紙、さらに床は廊下となんの段差もなく続いており、その廊下
には絨毯がしかれている、というものだった。日本でもトイレと風呂が同一空間にあるユニット
バスというものはあるが、それとも異なる空間様式だった。おまけに風呂場の床には排水溝の類
が見当たらなかったため、バスタブの外にシャワーのお湯を飛び散らしてはいけないし、壁紙を
濡らしてもいけないので、バスタブのなかで体を極力縮こませ、初日の入浴には大変苦労した。
また、トイレや洗面所も一緒だということで、ファミリーが歯を磨くために利用することもある
ので、なるべく早く入浴をすませねばならなかった。日本人は普段浴槽にお湯を張ってゆっくり
湯につかり時間をかけて入浴し、それによって一日の疲れを癒すので、その生活様式の違いは大
きかった。けれども、初めは苦労していたことにも日が経つと慣れていくもので、初日はお湯を
飛び散らして入浴後に拭いたりしていたのも、徐々にイギリス人のように短時間でシャワーを済
ませることができるようになっていた。そして、食事に関して、とりわけ朝食について。日本人
であるということに加えて私は白米が非常に好きで、朝はもちろん夜食などにも常に米を食べて
いる。しかし、イギリスで食べられている米は日本のものとは大きく異なるうえに、食卓にあが
る機会も少ない。朝はたいていシリアルで、休日にはイングリッシュブレックファストである。
私は普段シリアルを食べないし、これまでに食べたこともほとんどなかった。始めのうちはシリ
アルにミルクをいれて食べるということにも抵抗があって、米が恋しくてしかたなかった。しか
し、日数をくらせば人は慣れてゆくもので、次第にシリアルの朝食にも慣れ、テーブルのうえに
シリアルの箱が数種類おかれているのだが、どれがよりおいしいシリアルなのかもわかるまでに
なった。シリアルは調理が必要ないので、ごく短時間での準備が可能だ。私のステイ先には子ど
もが 3 人いて、そのうち 2 人は小さい子たちだったので、手がかかるうえ、幼稚園にも送ってい
かなければならない。そのため、マザーは朝その準備に追われているし、ファザーも朝早くから
仕事だったので、ゆっくりと朝食をつくっている時間などないのだ。だから、準備に手間のかか
らず手軽なシリアルというのは納得できる。休日は仕事もなく子どもたちも学校がないので、食
事の準備に時間をかけて、家族みんなでゆっくりと楽しむ、という効率的な食事の仕方なのだと
気付いた。また、お店の営業時間について。日本ではいたるところにコンビニがあって、私たち
は 24 時間いつでも自分の訪れたいときに利用できる。スーパーだって 24 時間営業の店舗が多く、
その他の店もたいてい夜 9 時頃まで営業している。しかし、イギリスではそうではない。コンビ
ニのようなものは見かけなかったし、多くの店は夕方 5 時 6 時頃には閉店し、日曜日は営業時間
が短くなるばかりか営業していない店もあり、ましてや 24 時間営業の店などめったに見かける
ことはなかった。私は普段バイト後に夜にスーパーに行って夜食を買ったり、深夜までレポート
45
を作成してコンビニで印刷したり、と周囲のお店に頼りきった生活をしている。はじめは、イギ
リスでのこの状況が非常に不便なことだと感じていた。一度、日曜日の夜にスーパーへ行こうと
したことがあり、そのスーパーは普段夜 11 時までの営業なのだが、日曜日は午後 4 時で閉店だ
ったのだ。そうとは知らず夜食を買いに行った私は、午後 4 時閉店という事実に面喰ってしまっ
たのだ。日本であれば考えられないことである。ふつう日本では日曜日が最も稼ぎ時であると考
えられるので、その日曜日に短時間の営業というのはなかなか信じがたい。しかし、これにはち
ゃんとした理由があるのだと後日知った。イギリスではキリスト教が盛んで、そのキリスト教で
は日曜日は休息の日だとされている。そのため、人々は日曜日には働かないというのがならわし
だったのだ。しかし、近年では日曜日も店を営業させるようになってきた。けれども、平日と同
様の営業時間ではなく、いつもよりも時間を短くして営業しているということだった。そのこと
を考慮すると昔よりは便利になったのかもしれない。
この経験をふまえて、今後は深夜に出歩いたりするのはなるべく避けようと思った。もちろん
危ないということもあるが、日中にでかけるほうが規則正しい生活を送れるし、健康的だと身を
もって実感したからだ。実際イギリス滞在のはじめはこの点に関して非常に不便だと感じていた。
放課後に街中へ行ってもお店はすぐに閉店してしまうし、深夜にコンビニにお菓子を買いに行く
こともできない。そのため、すぐにステイ先へ帰宅し、ファミリーとおしゃべりして、遅くなら
ないうちに寝る、という生活スタイルだった。しかし事実、非常に規則正しい生活を送れていた。
9 時に寝ると自然と 7 時に目を覚ますし、十分に睡眠をとっているおかげで授業にも集中して臨
むことができる。仙台の自宅周辺には 24 時間営業のお店がたくさんあるので、どの時間に起き
ていても困ることはないため、ついつい不規則な生活を送りがちだった。けれども、イギリスに
いるあいだにとても健康的な生活になり、充実した生活を送れていた。外国に行ったことで日本
は非常に便利な国であると実感したけれども、便利過ぎるゆえにかえってよくない状態になって
しまったので、見直すよい機会になった。
3.
行動力
行動力に関して、私が SAP を通して達成したことは、異国の地にも臆することなくでかけて
いけるということだ。私は田舎育ちで、東京にもあまり行ったことがないし、仙台ぐらいの都会
で精いっぱいなのだが、週末にはロンドンへ旅行へ行った。ロンドンでは地下鉄が発達していて
頻繁に移動に利用したし、例の 2 階建てバスにも乗った。私は東京へ行った際には一人では切符
を買うのもホームにたどり着くのも改札を抜けることすらままならないが、ロンドンでは言語も
違うなかで利用しなければならなかった。日本の Suica のようなものを購入したのでその都度切
符を買う必要もなく、目的地まで行くにはどの駅を使い、どの路線に乗るのかはガイドマップを
広げて調べ、壁の案内板を注意して見ながらホームを探し、電車に乗ることができた。始めは畏
縮していたけれども、徐々に慣れて乗りこなしていると、まるで自分がロンドンに長く住んでい
ていつも電車を利用しているかのように思われてくる。しかし、地上に出た際に目的地まで辿り
着く過程で迷ってしまうことがあった。ロンドンの路上には非常に多くの地図が立っていて、そ
れはとても分かりやすく周囲の建物などを表してくれているのだが、私に方向感覚がないせいか、
それがあってもなかなか辿り着けないこともしばしばあった。さらに、異国の地で迷子になって
しまっているという焦りもあってか、冷静な考えることができず、見知らぬ地で自信を持った行
動ができなかった。
この経験をふまえて、今後はいかなる状況でも正しい判断ができるように心掛けたい。迷った
とき、焦りが焦りをよんでそのためにさらに到着を遅くしてしまった。たとえば東京の駅で迷っ
たとき、人が多いのもあいまって私は心の余裕がなくなってしまい、ただ焦って、またどうする
べきなのかわからなくなってただその場に立ち尽くしてしまう。それで時間を無益に浪費してし
まう。その呆然としている時間を使ってどう対処すべきか考える時間に充てたいと思う。余裕の
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ない場合でも、落ち着いて考えることで適切な判断を導きたい。
47
Something Learnt in York
古澤 直也
1. 自己の言語運用能力
この一か月の短期留学を通して語学力は加速度的に向上したといえる。最初の一週間では
ホストファミリーとの会話もままならず、先生方の聞き取りやすい英語ですら聞き取るのに
精いっぱいだった。しかし、日々の生活を英語主体で送り、文字通り「体」を使って覚えて
いくうちに徐々に英語が使えるようになった。最終週にはホストファミリーと冗談交じりの
会話ができるようになった。ただ、依然として意思疎通には時間がかかるし、的外れな受け
答えは多い。以下はこの期間に感じたことである。
まずはリスニング力について。一番向上した能力であると思う。言葉がそれぞれ単語とし
て聞こえるようになった。どこが単語と単語の間なのか理解できるようになったのでそれだ
け
意味解釈がしやすい。また、キーワードが聞き取れるので完全には聞き取れなくとも、相手
の言おうとしていることはわかるようになった。特に英語には必要不可欠な主語と動詞には
集中して聞き取るようにした。ただ、実際の会話になるとなまりや省略、代名詞の解釈が難
しい。また先生の話を聞き取る際にはどの言葉も聞き逃すことができない。日本でのリスニ
ングテスト形式では、音声は二回流れるし、単語さえ聞き取れれば問題は解ける。こんなに
親切なことは実用上ありえない。IELTS では一度しか言われないし、同じ意味の言葉を言い
換えないと回答は見つからない。より実践的なテストであると感じた。
次にリーディング力。解釈力といってもいい。単語として聞こえてきた言葉の意味を文と
して理解するとき、言おうと思ったことを適当な表現で瞬時に英語としてアウトプットする
ときに必要となる。英文を読むとき、それぞれこれ以上は速く読めないという限界があると
思う。このスピードよりも速く相手に話されると意味の解釈が追い付かない。ネイティブの
話すスピードにはまだまだ追い付けそうにないのが現状である。
最後はスピーキング力。いざ話すとなると基本的な単語や文法事項が出てこない。いちい
ち主語、動詞の選択にもたついてしまう。この問題は期間中、先生方やクラスメイト、ホス
トファミリーの話す英語を真似するようにすることで少しずつ解消された。しかし最適な構
文、単語を選べないため文が冗長になりがちだと指摘された。また疑問文を組み立てるのが
苦手だったように思う。一番驚いたのは、日本ではほとんど気にしていなかった発音やアク
セントが現地の人を困らせたということだ。ジャパニーズイングリッシュの中で生きてきた
自分のフラットな言葉と雑な発音は聞き取りづらいようだ。会話では言われたことを理解し
たうえで、即座に答えなければならない。冗談を言われても気の利いた返事ができないのが
残念で悔しい。
これらを踏まえて今後の目標を以下のように定める。毎日生きた英語を聞き、可能な限り
会話したい。それと並行して語彙と文法を確かなものにしたい。大学生のうちの目標は、オ
ペラを聞けるようになること、洋書を読めるようになること、ネイティブスピーカーと冗談
交じりの会話で盛り上がることの三点にしたい。これらは今回のイギリス生活で強く思った
ものである。将来的にはビジネスの場で使えるようになりたい。そのために利用できるもの
は何でも利用する。TED を始めとした動画や洋画、洋楽を教材として使う、TOEIC 用の単
語帳を毎日使う、大学から与えられる留学生との交流機会を積極的に使うなどが考えられる。
また日々の生活においても、日本語で言ったことを英語で表現するとどうなるか考える癖を
つけたい。この経験が無駄にならないように継続的な練習をしていきたいと思う。
48
2. 異文化適応
毎日何か発見があったといっても過言ではない。パンが主食と思っていたがそれは少し違
っていた。もちろんパンも朝食ではよく食べるし、昼はサンドイッチを食べることが多かっ
た。しかし、メインの食事である夕食では主にポテトが主食として登場した。米もインディ
カ米であるがよく食卓に登場した。バスでは乗車口で行先を告げ料金を前払いする。ボタン
を押して降りる意思を示すシステムは日本と同じだが、次のバス停の名前は教えてくれない。
初めて乗った人は困ると思う。ロンドン行の電車の切符をインターネットで購入した。しか
し、駅の窓口で買った他の班はそのあとにも関わらずより安い価格で購入できた。日本では
早割、手数料を考えるとこんなことはあり得ない。その次の週、窓口でエディンバラ行の切
符を買おうとすると、その価格は事前にインターネットで確認していたものより高かった。
どんな仕組みで価格が変動するのだろうか。これらは異文化に気付かされた例である。日本
人からしたら信じられないことが次々起こった。これらに対してより効率的に対処するため
のベストな方法は、現地の人に質問することだと私は考えた。この結論に至ってからは積極
的にチューターやホストファミリーに質問するようにした。異文化に手間取っていた私は、
驚きながらもその違いを楽しめるようになった。大きな進歩だと思う。質問することで知識
や価値観を知ることができるので、ただ困っているよりもはるかに得るものが大きい。さら
に質問することで相手とコミュニケーションを取ることができる。より親密になったことで、
聞いたこと以外にもいろいろ教えてくれるようになった。
今後も海外に行くことはあるだろうから、わからないことは積極的に質問して親密になる
機会を得るように心がけたい。語学力を鍛えるチャンスにもなる。現地の人と仲良くなるこ
とが相互理解の近道であることは間違いないと思う。またこれは海外に限ったことではない。
これから社会で生きていく上でわからないこと、うまくいかないことはたくさん生じるだろ
う。それをほったらかしにするのではなく、質問することで理解しようと勤めている意思表
示をしたい。結局、異文化適用とは、理解したいという気持ちを質問という行動に移し、相
互理解していくプロセスなのだと思う。
3. 行動力
ヨークでの一か月間毎日が刺激的だった。一か月という決して長くはない期間を充実させ、
質を上げていくためには綿密な計画と下調べが必要だった。ガイドブックやインターネット
を利用したり、ホストファミリーや現地の生徒から聞いた話も頼りにしたりした。その結果
一か月以内ではやりきれるかどうか分からないほどのイベントを知ることができた。私がこ
の留学先にイギリスを選んだ理由の一つにスカッシュがある。今スカッシュというスポーツ
は日本ではマイナーであるが、イギリスをはじめとしたヨーロッパではとても人気がある。
私は東北大学のスカッシュサークルに所属しているので本場のスカッシュに参加してみたか
った。ヨーク大学につくとすぐにチューターにその意思を伝え、日本人のインターン生を介
して紹介してもらった。早速日本から持ってきたラケットとシューズを持って参加してきた。
現地学生の中に混ざって一緒にプレイした。始めはお互いに気まずさがあったが、ラリーを
続けていくうちに徐々に打ち解け、最後は皆で盛り上がることができた。忘れられない思い
出になった。また、三週目の週末には一人で世界遺産ダラム大聖堂に行って来た。この日は
IELTS のテストの合間であり、プレゼンの発表も控えているので本来なら行くべきではない
ということはわかっていた。しかし、日程的にこの日しか行けるがなかったため、その週は
他の人よりも課題を早く進めたり、電車の中で課題を進めたりして時間を生み出した。その
おかげで他の人に遅れを取ることなく週末を終えることができた。一人で行動するのにはち
ょっとした勇気が必要だったが、難なくこなすことができた。また、現地の学生との交流を
積極的に行うよう心掛けた。ジャパニーズソサエティという、日本に興味のある現地学生が
49
集まるコミュニティに参加した。将棋やトランプなどのゲームを通して親密になれたと思う。
現地学生は日本語を、私たちは英語を学べ、どちらにとってもプラスになるよい機会だった。
ある時は日本語を授業で学んでいる生徒たちの会話の練習相手にもなった。東北大学の生活
ではほとんど英語でコミュニケーションを取る機会がない分、刺激的だったし、様々な人と
交流することができた。学校帰りにはよくシティーセンターに出かけた。イギリスの庶民的
な生活を垣間見たいという気持ちもあり、時間を作っては友達と歩き回った。夕方 5 時には
多くのお店が閉店するので、授業が終わるとすぐに出かけるように準備していた。その結果、
市街地の道を全て覚えるほどに行くができた。チューターやホストファミリーのおすすめの
お店に行くことができたので満足した。夕暮れのイギリスの川辺でビールを飲むなんてもう
できないかもしれない。また、英語でストーリーを聞き取るということにも挑戦した。ロン
ドンではオペラを鑑賞し、ヨークではゴーストツアーというガイドツアーに参加した。オペ
ラはテンポが速いうえに、歌が多くアクセントがはっきりと聞こえないので苦戦した。当然
ネイティブスピードなのでほぼ理解出来なかったが、迫真の演技と舞台装置の本格さには圧
倒された。本場のオペラをこの目で見ることができた貴重な体験だった。前述したとおり、
機会があればもう一度見にいって、ストーリーをはっきり聞き取りたいと思う。ゴーストツ
アーは町中を歩きながら心霊スポットで怪談を聞くというイベントだ。毎晩実施されている
が、私たちが参加した日も 30 人ほど参加していたので人気があるのだろう。怪談といって
もほとんどはジョークで終始笑っていた。ただやはり正確に聞き取るには難しく、たまに他
のお客さんと同じタイミングで笑えたものの、ほとんど聞き逃してしまった。怪談なので日
常会話では使わないような単語もあったと思う。表情やジェスチャーでなんとなく理解して
いたので楽しめたが、もう少し英語力があればと考えずにはいられなかった。オペラもゴー
ストツアーもレベルが高く過ぎて楽しみ尽くすことはできなかったが、この悔しさをばねに
して英語勉強に役立てたいと思う。この挑戦はけっして無駄ではなかったと断言できる。
行動力は十分に発揮できたと思う。充実した日々を送るために計画したおかげだと思う。
せっかくイギリスに滞在するのだから積極的にいろいろなことに挑戦しようという考え方が
功を奏したと思う。このタイムスケジューリング能力を発揮して今後の毎日をより豊かなも
のにしていきたい。しかし、せっかく行動に移せても実力が不十分ならば、100%充実したも
のにはならないということを、今回は痛感した。それ相応の実力があると判断する力も高め
ていきたいと思う。ただ、あと 5 年間くらいは何も悩まずに行動に移していきたいと思って
いる。失敗をしても恥にならない年齢のうちに失敗を恐れずに様々な方面でチャレンジして
いきたい。
50
ヨーク大学短期留学
馬場 麻里奈
1. 自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、イギリス人と会話をすると
きに自分の思っていることが伝わりにくいからといってすぐに諦めずに、どうにかして伝えよう
とする姿勢を崩さないということです。
現地に着いて、ホストファミリーや先生との会話を通じて、自分の話したいことが全然英語で
出てこないということをすぐに感じました。はじめのうちは英語に囲まれた環境に慣れていない
せいか、ジェスチャーも上手に出来ず、単語も出てこず、ホストファミリーとコミュニケーショ
ンを取るのを難しく感じていました。そんななか、私の言語運用力を向上させるきっかけとなっ
たのは、ヨーク大学の学生や住民の方との交流でした。ヨーク大学の学生とは和やかな雰囲気の
もとで何気ない会話をすることで、英語でコミュニケーションをとっても伝えたいことが伝わっ
て楽しい、という喜びを感じることができました。
住民の方との交流は、私が学校から帰宅するときに間違ったバスに乗ってしまったときに行わ
れました。道を眺めながら、いつも通っているところと違うことに気づいた私は、近くにいた男
性に助けを求めたのですが、その方が非常に親切だったおかげで、私はなんとか家に帰ることが
できました。夜が遅いこともあって、私はとても焦っていたのですが、どうにかして自分の状況
やホストファミリーの住んでいる家の場所を伝えなければならなかったので諦めるわけにもい
かず、地図を見せたりしながら頭をフル回転させてコミュニケーションをとり続けました。その
ときは大変困りましたし怖い思いをしましたが、今となっては貴重な体験をしたと思っています。
実際、この日を境に自分の中で意識が変わって、それ以降はホストファミリーや他の人々に対し
て積極的に英語を話せるようになったと思います。また、授業の一環でおおよそ 30 人の学生に
声をかけてアンケートに答えてもらわなければならないときがあったのですが、そのときもバス
の件で多少の自信がついたおかげか、緊張することもなく楽しく活動することが出来ました。
この経験をふまえて、今後は、今回の短期留学で得た英語でのコミュニケーションの感覚を忘
れずに、外国の方と交流していきたいと思います。1 か月間英語に囲まれて生活していたところ
から日本に帰ってくると、当然周りには英語で話している人がほとんどいないため、イギリスで
掴んだ感覚を忘れてしまうと思うので、一番身近なところだと同じ研究室の外国の方に積極的に
英語で話しかけていこうと思っています。大学院に進学したら、1 年間北欧に留学したいと考え
ているので、そのときにまた一から感覚を掴み直すというような事態に陥らないために、このよ
うに日ごろから少しでも英語でのコミュニケーションに触れていこうと思います。また、私が運
よく親切な人に出会って助けられたように、私も日本で外国人が困っていたら助けなければいけ
ないと強く思いました。今までだったら見て見ぬ振りをしてしまいがちでしたが、これからは積
極的に声をかけようと思います。
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2. 異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、イギリス特有の文化や習慣を積極
的に経験してみるということです。
実際のところ、特別に驚くような文化や習慣があったわけではありませんでしたが、食べ物で
言うとフィッシュアンドチップス、イングリッシュブレックファスト(ブラックプディング)、
アフタヌーンティーなどをいただきました。ブラックプディングとは、血液を材料として加えた
ソーセージのことで、その存在を知ったときから興味があって食べるのを楽しみにしていました。
しかし、実際に食べてみるととても癖のある味であったことと、血液が材料として入っていると
いう先入観によって全て食べることはできませんでした。
ホストファミリーとの生活に関しては、玄関で靴を脱ぐようになっていたり、夜にお風呂に入
っていたり、日本の生活と大きな違いはなくて、特にカルチャーショックを受けるようなことも
なかったので、割とすんなりとイギリスでの生活に馴染むことが出来ました。ただ、毎晩夕食後
に紅茶を飲むのはイギリスならではだと思い、私もホストファミリーと一緒に、毎晩ビスケット
を食べながら紅茶を飲んでいました。
家ではなく、外の生活でひとつだけ驚いたことは、歩行者が道を横切るときに信号をほとんど
無視することです。ヨークでも、交通量の多いロンドンでも、エディンバラでも歩行者は横断歩
道も信号もほとんど使っていませんでした。このことに関しては SAP の他のメンバーもみんな
驚いていましたが、現地の方々がスタスタ歩き進めるところを私たちだけ真面目に信号待ちする
のは時間がもったいないので、滞在中は私たちも信号を使わずに目視で道路を横切っていました。
はじめは少し怖かったのですが、最終的には慣れていきました。私の勝手なイメージでは、ヨー
ロッパに住んでいる人たちはゆったりとしていてあまり急がないと思っていたので少し驚きま
した。
この経験をふまえて、今後は日本の文化や食べ物、習慣についてもっと勉強する必要があると
感じました。私はホストファミリーと一緒に夕ご飯を食べているときに、食べ物に関する習慣や
伝統的な食べ物について多くの質問をしましたが、もし私が同じようなことを外国の方に聞かれ
てもスラスラとは答えられないと思いました。もし私がお寿司やすき焼きなどの日本の伝統的な
料理の作り方を習得していたら、現地で振舞うことが出来たし、イギリスの食について少しでも
勉強していたら、ホストファミリーにささいな質問をせずにすんだかもしれないと反省していま
す。食べ物に限らなくても、富士山やスカイツリーなどの日本の有名な観光地、茶道や剣道、能
などの日本の伝統的な活動、日本の歴史などについてある程度の知識を持っていれば、日本につ
いての深い話もできたのではないかと思うし、今後日本で、外国の方と交流するときに役立つと
思います。また、ロンドンやエディンバラへ旅行に行ったときに、博物館やお城などの歴史に関
する場所を訪れる機会が多かったのですが、イギリスに関する情報やイギリスの歴史をしっかり
と勉強して来なかったために楽しみが半減してしまったと思うので、今後海外に行くときにはそ
の国の歴史までしっかり学んでから行くようにしようと思いました。
3. 行動力
行動力に関して、私が SAP を通して達成したことは、少しでも興味を持ってやってみたい、
行ってみたいと思ったものには挑戦するということです。
私は普段の日本の生活で、何かに興味を持ってもすぐに面倒くさいと思ってしまって行動に移
す機会が少なかったので、そんな私が少しでも前向きに、積極的になれるようにと思ったのが今
回の SAP に参加した理由の一つでもありました。イギリスでの研修が始まると、東北大学の他
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のメンバーは自分の思っていることをハキハキと、積極的に先生に英語で話しかけていて、それ
は私にとって大きな刺激になりました。意識の高い人たちを目の当たりにした結果、イギリスに
いる時間を少しでも無駄にしないように、少しでも多くのことを学べるようにという強い思いを
持って一ヶ月間過ごすことが出来ました。
具体的には、ジャパニーズソサエティの活動やダンスのレッスンに参加しました。ジャパニー
ズソサエティの活動では、日本に関心のあるヨーク大学の学生や私たちと同じようにヨーク大学
へ短期留学をしている日本の他大学の学生と交流しました。日本語を上手に話している人が多か
ったので感心すると同時に、私たちと同じように外国語を一生懸命勉強して、その結果流暢な日
本語を話す彼らを見て、私も日本に帰ってからもしっかりと英語の勉強を続け、いつか絶対にネ
イティブの方とスラスラと会話をできるようになろう、と刺激を受けました。一方、ダンスのレ
ッスンに一人で行くのはとても緊張したし、他に参加している生徒たちとはあまり話をすること
が出来なかったのですが、先生とコミュニケーションをとりながら、イギリスの大学生がどのよ
うに放課後の時間を過ごしているのかを直に感じることが出来たので、こちらも良い経験になっ
たと思っています。
この経験をふまえて、今後は普段の生活でも何かの行事に対しても、気になることや興味のあ
るものがあったら積極的に参加しようと思います。今回の SAP でそれを実践した結果、緊張す
るなど少しのマイナス面はあっても、それ以上にやってよかった、良い経験をしたという思いの
方が強かったので、常に積極的な姿勢でいようと思います。
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私のイギリス体験記
大内 裕介
1.
自己言語運用力
私は今回のプログラムでなんとか相手の言っていることを理解し、そして自分が伝えたいと思
っていることを、身振り手振りで相手に伝えることができるようになった。私はもともと英語が
得意ではなく、特にリスニングが苦手であった。そのためホストファミリーの家についたその日
は、マザーの言っていることが全然理解できず、
「自分はここで一か月本当にやっていけるのか」
とその時一瞬絶望した。しかし「ここで家のルールを理解できなければ、ファミリーに迷惑をか
けてしまう」と思い、何度も何度もマザーに聞き返した。私の暮らしていたファミリーの家には
3 歳と 6 か月の子供が 2 人もおり、守らなければならないルールが多かった。一文に聞き取れな
かった単語がどれくらいあったかわからない。まず自分の聞き取れた単語をつなぎ合わせ、とり
あえず理解する。そこで曖昧な場合には確認した。「マザーが言いたいことはこういうことだよ
ね?」なんとかこれを言葉にしたかった。「そうだ、mean を使えばいいのか。」人間追い込まれ
ると脳がフル回転するのを肌で感じた。マザーが言ったことを自分の言葉で言い換え、それでも
通じない時には、指でそのものをさし、身振り手振りを用いてなんとか乗り切ることができた。
その後はとてつもない疲労感に襲われたが、それと同時にちょっとした達成感を得た。
しかしながらなんとか相手の言っていることを理解し、自分の言いたいことを伝えるだけでは
会話にはならない。相手もそのような会話をしていても楽しくないということに気づいた。現に
深い会話はあまりできていないのである。やはり会話はキャッチボールである。リズムよく続け
ていかなければならない。自分の番になるとそれを止めてしまって、会話がなかなか続かなかっ
た。しかし会話が続かない中から、自分の英語力の変化や、母国語の力を感じることができたの
は大きな収穫でもあった。
私はホストファミリーと話す機会がほとんどなかった。彼らには前述したとおり 3 才と 6 か月
の子供、さらに私と年代の近い 21 歳と 19 歳の子供がいた。食事や洗濯、お風呂掃除などホスト
ファミリーには仕事が山積しており、忙しかったのだろう。夕食だけが机においてあり、それを
好きな時間に温めて食べるだが私の家にはもう一人留学性がおり彼とご飯を食べる機会は何度
かあった。当然イギリスについた当初は彼が何をいっているのか理解ができず、会話がうまくで
きなかった。時には沈黙もあり、食事が辛かったのを今でも覚えている。しかし帰国が近づいて
きたとき、久しぶりに夕食で彼と一緒になった。その時、彼の言っていることが大体理解できた
のだ。1 か月学校で英語の授業を受け続けてきた成果だと思った。その時の夕食はとても楽しか
った。
また学校では授業だけでなく ICA と呼ばれている York 大学の学生との交流会が毎週開催され
ていた。彼らの多くは日本に興味を持っており、少し日本語をしゃべることができた。私が仲良
くなった学生は今年の夏に日本に留学しにくるそうだ。彼らとの会話はよく弾んだ。英語で基本
はしゃべりながらも時より日本語を混ぜることで、自分の会話が安定していたからであろう。ま
た日本について話すことが多かったので自分も自信を持って言いたいことを言えていたのだと
思う。
これらの経験から私は母国語の偉大さ、そしてある程度は上達できたかもしれないがまだまだ
英語に話すことに関して不安を感じていることに気が付いた。やはり英語は会話ができてからこ
そ楽しいものである。ですからとにかく日本にいながらも英語を使って会話を続けていきたいと
思う。そして自分は英語がしゃべることができるという自信をつけたい。それこそ母国語の日本
語にあって私の英語に足りないものである。
具体的にはまず 1 週間に 1 枚から 2 枚英語で自分の身近なものについて書きたい。そしてそれ
54
を暗唱するのである。これによって自分のことに関して話せる話題が増えていく。これらは様々
な英文を頭に入れていくことになるので応用も効くようになると思う。また映画や海外のドラマ
を見る場合には英語で見ようと思う。そして自分の英語を月に一度実践していきたい。私は国際
交流サークル@home の一員である。ですからイベントの運営や手伝いをしている。そこで、友
達を作っていきながら自分の英語がどのように変化しているのかを確認していきたい。
2.
異文化適応
私はイギリスの生活で日本と多くの違いに気づくことができた。それはヨーク大学から課せら
れた宿題でもある journal のおかげであった。journal とは一週間の生活で気づいたイギリスと日
本の違いについて書くものであった。ただ日記のように書いてはならない。それがどうしてイギ
リスと日本で異なるのか、それの背景についても自分で推測をして書かなければならない。これ
の課題のおかげで私の視点は大きく変わった。とにかく生活の中でイギリスと日本の違いを見つ
けようとしたからである。私は journal に食事や洗濯の頻度、そしてトイレについて書いた。
まず食事についてである。私はイギリスにいる 30 日ほぼ同じ朝食を食べ続けた。シリアルと
食パンである。また夕食は必ず 1 プレートで出てくるため、日本と比べれば品目では必ず少なく
なってしまうだろう。そして実際あまりおいしくはない。イギリス人は食に対する関心があまり
高くないように感じた。私はそれが気候の影響だと考えた。イギリスはご存知の通り日照時間が
あまり長くない。私が 30 日滞在していて晴れていると感じたのは数日くらいだろう。逆に本降
りの雨が降った日もなく、私が傘をさしたのは 30 日の中でたった 5 分だけであった。日々天気
は曇りなのである。晴れが少なければ植物がおいしく育たない。食材は料理においてとても重要
な要素のため、食への探求心がやや足りないのではないかと考えた。これが正しいか、間違って
いるかはわからないが自分なりに理解すると、イギリスの食事を受け入れることができたのであ
る。
続いて洗濯の頻度である。日本ではほぼ毎日洗濯を行っているが、私が暮らしていた家では一
週間に一回だけであった。これも気候が影響で、毎日少しずつ洗濯すると水を無駄遣いしてしま
うので、一気にたくさんの量を洗濯し、乾かすのが効率の良い方法ではないかと考えた。これは
食事と同様に受け入れることができたのである。
最後にトイレについてである。イギリスのトイレはすべて便座が冷たく、ウォシュレットはつ
いていなかった。つまり温水洗浄便座はまったくなかったのである。これはヨーロッパ全土で言
えることかもしれないが、イギリスでは硬水が主流である。硬水には様々な成分が含まれており、
ウォシュレットなどの精密機械には使用できないのである。つまり私は水そのものが影響してい
るのではないかと考えた。しかしながら、イギリスと日本のトイレについての違いは理解ができ
たが、これに順応することは正直のところできなかった。イギリスに行ったことで、さらにウォ
シュレットの必要性を感じた。
私はこれらイギリスと日本の様々な違いを発見することで、自分にとっての異文化適応とはど
ういうものなのかが理解できたと思う。それこそが自分にとって一番の財産である。
異文化適応とは文化の違いを発見する。そしてそれの根底にある背景について調べたり、考え
たりする。最後にそれを直接自分の肌で感じ、受け入れられるかを調べる。このように理解した。
時には理解できないものも当然ある。それは自分なりに補っていくのである。私で言えば上述し
たトイレについてである。日本でずっと慣れ親しんだために、体が異国の習慣を受け入れてくれ
ない。これは無理に合わせる必要はなく、携帯用のウォシュレットを日本から持っていけばよい
のである。
私がさらに異文化に適応していくためには、調査そして実践が必要となる。事前にどのような
文化や慣習があるのかを調べ、そして長期休みを使って様々な国を訪れたいと思う。今回はヨー
ロッパを訪れたので、次は日本の近くであるアジアを訪れることで、異文化に出会い、そして新
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たに適応できるようになりたいと思う。
3.
行動力
私はイギリス滞在最後の週末に訪れる場所、そしてそこまでの移動手段などすべてを自分で決
めたことが行動力を大きく成長させたと思う。私は観光で 1 週目にロンドン、2 週目にダラムと
エディンバラを訪れた。私は 4 班のメンバーでその 2 週間を回っていた。自分の意見として具体
的に行きたい場所は伝えたが、鉄道のチケットを取ることや当日のバス、徒歩移動は先輩に頼り
きりであった。なんでもかんでも頼ってしまっている自分を変えたいと思い、自分ですべて調べ、
計画を立てようと思った。またせっかくなら地球の歩き方には載っていないような隠れた名所を
訪れたいと思った。調査を開始するとキャッスルハワードというヨークからバスで 30 分の観光
地を発見した。
しかし、移動手段に問題があった。それはキャッスルハワードへの直通バスをネットでは見つ
けられなかったことだ。自分が見つけられなかっただけだと思った。そのため一緒に訪れる予定
であった 3 班の成さんと共に直接バス停や駅の情報センターに行って調べることにした。まずバ
ス停の名前はわかっていたが、それがどこにあるかは調べきれてなかったので、シティーセンタ
ーの人に道を尋ねた。プレゼンのデータを集めるために町で聞き取り調査をしたり、私の iPhone
が壊れた際にアップルストアの場所を尋ねたりしていたので、町の人々に道を尋ねることはその
時まったく抵抗がなくなっていた。無事バス停についたのだが、やはり日曜日に直通のバスは運
行していなかった。きっとほかに行く方法はあると考え、私たちは駅へ移動した。駅の情報セン
ターで「明日どうしてもキャッスルハワードへ行きたい」ということを伝えた。しかし駅のスタ
ッフから「イギリスは日曜日交通があまり動いていない。だからバスで直接行くことはできない
からキャッスルハワードへ行くことはお勧めしない」と言われてしまった。だが私はどうしても
諦めることができなかった。初めて自分ですべてを決めていく旅行。なんとしても成功させたか
ったのだ。家に帰り再び調査を行った。3 時間ネットで調べ続けた結果、バスで 40 分、その後徒
歩で 1 時間のルートを発見した。
「これで行くしかない」と思い、すぐに成さんへ連絡した。
当日はバスの運転手に降りるバス停を確認してもらい、無事降りる予定であったバス停で下車
できた。その後の徒歩はとにかく田舎道。車もたまに通るだけで、通行人には誰一人会いません
でした。そして約一時間かけ無事に目的地到着することができた。キャッスルハワードはとても
綺麗で、私が訪れた一番の思い出の場所となっている。
自分の行動力を大きく変えることができた留学だが、課題はある。それはグループ活動におい
ても行動力を出していくことだ。一人や二人行動の際に自分でほとんどを決めるのは当然だが、
グループにおいて強い行動力、リーダーシップを取っていくためには私生活からもリーダーとし
て活動していく必要があるだろう。学生生活ではサークルや、バイト、ほかにも数々のグループ
活動が存在する。そこでまとめ役を担っていくことで、さらに行動力を伸ばしていけると思う。
私はまず授業のグループ活動で、話をする中心になっていきたいと思う。
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ヨークでの生活の振り返り
小林 恵子
1. 自己の言語運用能力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、4 つある。
1 つ目は、初対面の人と情報をやり取りできたことである。具体的には、プレゼンテーション
の授業の一環としてアンケートをキャンパスやシティーセンターで行ったことが挙げられる。初
対面の人に英語で話しかけることに緊張し、アンケートを依頼する際に話すことをあらかじめ決
めていたが、回数を重ねていくにつれて、状況に合わせて柔軟に話す内容を変えることができた。
アンケートの回答については基本的に口頭で答えてもらったのを聞き取っていたので、相手の答
えを正しく理解できているか確認しながら調査することができたと思う。また、シティーセンタ
ーで道に迷ったときに、街の人に尋ねて、目的地にたどり着くことができた。さらに、ヨーク市
内の地理を理解できるようになってから、逆に道を尋ねられたことがあり、相手が納得いくよう
な説明ができたと思う。
2 つ目は、場面に適した英語表現を使えるようになったことである。具体的には、Can I ~ ?
と May I ~ ?の使い分けである。基本的に自分が何かをしたいとき、あるいは相手に何かをして
ほしいときに Can I ~ ?を使うのが一般的だが、特にホストファミリーに頼みごとをするときは
May I ~ ?が適切であることをホストファミリーとの会話を通して学んだ。また、この知識を生
かして、実際にお店で注文するときに商品の名前だけを伝えるのではなく、現地の人が使うよう
な表現 Can I have ~ ?などを用いて注文できるようになった。さらに、食事を終えた際に、イ
ギリスでは「ごちそうさま」と言う習慣がないため、はじめは無言で席を立っていたが、イギリ
スの文化についての授業を通して、”I’m full. That was lovely, thanks.”とホストファミリーに伝
えるようにし、食事が本当においしかったことを伝えることができた。
3 つ目は、テンポの速い会話に自分が合わせられるようになったことである。特にホストファ
ミリーや学生の会話はテンポが速く、最初は何を話しているのかほとんど理解できなかった。し
かし、ホストファミリーと、テレビドラマを題材にどんな内容を話しているのか、なぜ主人公は
そのような発言をしたのかなどといった会話を重ねたことで、何を話しているのか徐々に聞き取
れるようになった。さらに、どのように返事をし、会話をつなげていけばよいのかも学び、でき
る限り実践したのでテンポよく会話に合わせられるようになった。
そして 4 つ目は、限られた時間内でスピーキングとライティングの構成を組み立てられるよう
になったことである。これは IELTS の対策を通して練習を行った。具体的には、スピーキング
ではあるテーマについて 2 分程度話す内容を 1 分間で準備する練習をし、ライティングではひと
つのテーマについて 40 分で 250 語以上の小論文を書く練習をした。これらの練習のおかげで短
時間でより多くのトピックを思い浮かべ、構成を考えられるようになった。
この経験をふまえて、今後はリスニング力と説明力、伝達力そしてプレゼン力を向上させたい
と思う。具体的には 3 つの課題に取り組みたいと考えている。
1 つ目は、春 SAP に行く前から引き続き、語彙力を強化することである。今までは幅広い分野
の単語を扱ってきたが、今後は同義語の動詞や形容詞、副詞に焦点を絞って単語の知識を増やし
ていきたい。また、覚えた単語をアウトプットする手段として、IELTS のライティングの練習も、
授業で学んだことを生かしながら行っていきたい。この課題を挙げた理由は、会話をしていると
きに自分の伝えたいことを的確に表現する単語を思いつけなくて悔しい思いをしたからである。
また、グラフなどで提示されたデータを文章で表現するときに同じ現象についてひとつの単語の
繰り返しではなく同義語を活用する必要性を痛感した。
2 つ目は、ネイティブスピーカーの話すスピードで情報を聞き取ることである。前述のように
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テンポの速い会話に追いつけるようになったとはいえ、聞き取る力はまだ不十分である。だから、
語彙力を増やすとともにリスニングの教材やドラマ、映画を活用して日常的にリスニングの練習
をしていきたい。
3 つ目は、プレゼンテーションに慣れることである。発表に限らず、スライドづくりなどプレ
ゼンテーションにかかわるすべてのことにまだ慣れていないので、自身が参加しているゼミでプ
レゼンテーションを積極的に行い、完成度を高めていきたいと考えている。
2. 異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、5 つある。
1 つ目は、イギリスの公共交通機関を活用したことである。鉄道や地下鉄は日本と似ていると
ころが多くの点であったので、異文化だと感じる点は特に見つからなかった。しかし、バスは日
本と多くの点で違いがあった。例えば、2 階建てのバスが頻繁に通っていることや、行き先を運
転手に伝えて先に支払いを済ませること、そしてアナウンスがないことである。特にアナウンス
がないことに私は最初戸惑ったが、下車する場所の周辺を覚えることで解決できた。
2 つ目は、ヨークの交通ルールに従ってサイクリングをしたことである。私はホストファミリ
ーから借りた自転車を利用して大学に通った。ヨークは自転車が通る道を整備しており、歩道を
走ると厳しい罰則を与えられることをホストファミリーから教えてもらったので、私はそのルー
ルに従って毎日大学に通うことができた。
3 つ目は、お礼を言葉や行動で示せたことである。バスを下車する際に、ほとんどの人が”Thank
you.”や”Cheers!”と運転手に声をかけていた。日本ではめったに見かけない姿であったが、とて
も素敵なことだと思い、私もそれにならってお礼を伝えた。また、レストランやタクシーを利用
したときにチップを渡すことに最初慣れなかったが、1 か月の生活を通じて慣れた。
4 つ目は、イギリスの子供の流行を知ることができたことである。私のホストファミリーには
8 歳の男子児童がいた。最初はどのように接すればよいのか分からず、リビングに一緒にいるの
に無言でいることが多かったが、折り紙で作った手裏剣をあげたことがきっかけで仲良くなった。
イギリスでは忍者が広く知られていることや、子供の中で人気なスポーツはフットボールである
こと、また人気なおもちゃは Electronic Cars であることなどイギリスの子供の間で流行してい
ることを、実際に一緒に遊びながら知ることができた。
そして 5 つ目は、日本食を紹介し、ふるまったことである。ホストファミリーはお寿司が好き
なことを事前に教えてくれたので、日本からお寿司を作れるようなキットを持ってきて一緒に作
った。イギリスでは衛生面で生魚はめったに口にしないことやネタの種類は非常に限られている
ことを学んだ。また、照り焼きチキンや焼きそばの作り方を尋ねられたので、作り方を紙に書い
て説明した。説明する際に、調理方法の表現(フライ、グリルなど)がカタカナ英語と英語では
違うことに気付いた。
この経験をふまえて、今後は日本の歴史や文化などの知識をより多く身につけ、具体的に自国
のことを紹介できるようになりたいと思った。なぜなら、折り紙や日本食を説明するときに、自
分自身がそれをよく知らないことに気付いたからである。また、ホストマザーがブラジル出身で
日系人や日系企業などについて知っていることを話してくれたが、私がそれについて詳しい知識
を持っていなかったので話が発展せず悔しい思いをした。だから、本やテレビなどで知識を得た
り、実際に体験したりして日本についてより詳しくなりたいと考えている。また、得た知識を留
学生に紹介できる場に積極的に参加していきたいと思う。
3. 行動力
行動力に関して、私が SAP を通して達成したことは、2 つある。
1 つ目は言語運用能力で述べたことと重複してしまうが、アンケートを実施したことである。は
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じめは緊張して、最初の人に話しかけるのに時間がかかってしまった。しかし、一度アンケート
を取るのに成功してから、慣れてきて積極的に初対面の人にアンケートの依頼をできるようにな
った。
2 つ目はホストファミリーやチューターに相談をしたことである。週末の観光に行くのに集合場
所までどのように行けばよいのか、観光地でおすすめの場所があるかなど生活面についての相談
を主にホストファミリーにした。1 週目の観光で帰りの電車が大幅に遅れたのが原因でホストフ
ァミリーとの連絡がうまくいかず、失敗した点があったが、2 週目の観光で前回の失敗を生かし
た解決策をホストファミリーに提案できた。授業に関しては主にチューターに相談した。プレゼ
ンテーションの進行の仕方や IELTS の添削など自分の問題点を明確にしてから相談することが
できた。
しかし、1 か月の間にいくつかの失敗をしてしまった。それは、ホストファミリーの予定を自ら
聞かなかったことである。ホストファミリーのどの日の予定を知らなかったので大学から戻って
きても夜遅くまで一人で過ごすことが時々あった。また親戚の人が泊りに来ることを知らず、あ
まり交流を深めることができなかった。
3 つ目は、適切な情報を選択し活用したことである。アンケートの実施後、集計を行ったのだが、
目的に合わせてどのようなデータがあると役に立つのかを考え、それに合わせてアンケートの分
析を行った。また、インターネットも用いてプレゼンテーションのテーマに適した情報をいくつ
か選択し活用した。
この経験をふまえて、今後は積極性、柔軟性、情報収集力の向上をさせたいと思う。
まず、留学生などの外国人と交流する機会がある時は日本人同士でかたまらず、自ら積極的に
声をかけていきたい。なぜなら、今回のような失敗が起きた原因は、大学にいる間、日本人同士
でいることに安心して、積極的に英語を用いて情報を集めようとしなかったことにあると考えた
からである。
また、困難な状況にある時に、自ら誰かに相談する習慣をつけていきたい。特に自分がやらな
ければならないことを多く抱え込んでいるときに誰かに頼ることが苦手なので、仕事を振り分け
るなどといった解決策を誰かに相談するように努めていきたい。
さらに、今回のプレゼンテーションはアンケートが主な情報源になったため、情報の選択は容
易であったが、一から本やインターネットを使って情報を取捨選択するのは苦手なので、今後の
レポート課題などを通して自分にあった情報の選び方を見つけていきたい。
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イギリスで学ぶ英語と文化
手塚 俊樹
1.
自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、今まで勉強してきた英語を
自分のものにし、使えるようにするということです。私は小学四年生の頃から大学受験まで、さ
らに大学の一年間で英語を少しずつ勉強してきましたが、自分の英語が実際にどれほど通用する
のかわかりませんでした。今回の SAP を除き、自分自身で英語を現地で話したのは高校二年生
の時に一週間オーストラリアに研修旅行という形でホームステイしたときくらいで、まだ大学受
験も見えていなく英語の基礎的な力が不足していました。簡単な英語で会話し、通じることを実
感するも、勉強不足で思うように話せなかったり聞きとれなかったりして、後悔の気持ちがあり
ました。私はこの経験を反省し、同じようなことにならないためにも具体的な目標をたてて今回
の SAP に参加しました。現地ではどのような文法、表現、略し方、単語がよく使われているの
か、今の私のリスニング力で聞き取れるのか、などを確かめること、そして英語で聞き、日本語
に訳して返事を考えるのではなくそのまま英語を英語で自然と返せるようになる、といったこと
が目標でした。英語を日本語にして理解し、返答を日本語で考えそれを英訳するというのはあま
りにもロスがあり、良くないことだと思っていたからです。
私のホストファミリーは多忙というほどではなく、食事の時間はもちろん食後も数時間話す、
というのが日常でした。この時間が最も私の英語力を向上させたと考えています。最初の一週間
ほどは、なかなか聞き取ることができず、自分の学んできた英語が通じないこともあり、つらい
期間もありました。しかし徐々にどのようなフレーズ、文法が頻繁に使われるのか、どんな発音
なら通じるのかを理解していき、どんどん話せるようになっていたことを実感しました。日本に
いる間は気にしたこともなかったような発音や強弱の違いがいかに重要であるかも学び、私自身
の発音や話し方を多少なりともネイティブに近づけることができたかな、と思います。また、私
のバディーは香港出身であり、母国語ではないからか彼の英語はネイティブのそれよりも聞き取
りやすく、様々なことを教えてもらいました。たとえば、Have a nice day!! と言われたら何と返
すのがベストなのか、または一般的な料理の注文の仕方、など海外で生活するために必要な英会
話を学びました。おかげで、一ヶ月という短い期間で英会話力の向上に関しては、ベストを尽く
すことができたと思います。
この経験をふまえて、今後はさらに英語の学習を重ね、積極的に留学生と話しつつ、長期海外
留学を目指していきたいと思います。今回私が得たのは主に生活に必要な英会話力であり、雑談
や世間話などについては全然できず、ゆっくり話してもらわなければ理解できないという状態で
す。これを克服するには十分な学習と経験が必要であり、日本にいる間は留学生などネイティブ
の方々と話すのが上達へとつながると考えています。また、私は将来日本だけでなく世界中で活
躍できる人材になりたいと思っているので、そのための前段階として大学院で一年以上の長期留
学を考えているので、それまでにできることは学部生のうちに行い、留学中にさらに多くの英語
を自分のものにしていきたいと思います。留学しても英語が上達するというわけではなく、自分
次第であるということを今回学んだので、しっかりと目標を据えて向上心を持って勉強していき
たい、と感じました。たった一ヶ月でしたが、多くのことを学ぶことができて本当によかったで
す。
2.
異文化適応
異文化適応に関して、私はイギリスと日本の様々な文化の違いを学んできました。洗濯機が台
所にあったり、ほとんどの歩行者が信号無視をしたり、またはじゃがいもの多い食文化や物価の
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高さなど驚くべきことがたくさんありました。
その中でも私は店の閉店時間に違いに特に注目していました。そんな中、授業の一つに project
という日本とイギリスの文化の違いを一つ選び、それについて調査するというものがあったので、
詳しく調べることができました。調査方法としては、インターネットで調べつつ、中心街にきて
いる人々やヨーク大学の学生にいろいろな項目のアンケートを行い、分析、考察するという方法
をとりました。ほとんどの店が夕方 17 時~18 時頃という日本人からしたらとても早い時間にし
まってしまい、また日曜はさらに早い時間に閉まり、開くのも 10 時半などと遅い時間であり、
現地の人は不便じゃないのか、といったことが調査内容でした。店の閉まる時間が早いとは感じ
ないのか?日曜の朝開くのが遅いということは、土曜の夜に何かすることがあるのか?日曜はど
うして早く閉まるのか?などがアンケート内容で、30 人に質問しました。最初、英語でアンケー
トを取るということはとても難しいことだと思っていましたが、皆快くアンケートに応じてくれ、
その優しさや心の広さに日本人との違いを実感しました。結果、やはり閉まるのが早いと感じて
いる人はたくさんいましたが、別に今のままでも構わないという回答が多くみられ、驚きを隠せ
ませんでした。これは慣れというものの重要さを示していて、私たちが海外に住むことになると
したら、徐々にこのような異文化に順応していくことが大切だと感じました。土曜の夜に関して
は、大人の男性はほとんどお酒を飲みに出かけていることが判明しました。イギリスでは、金曜
日と土曜日の夜はみんなでパブやバーなどに行くのが基本だとよく聞きますが、このことは人と
のコミュニケーションを大切にしているという点で、良い習慣だなと思います。日曜早く閉まる
理由については、キリスト教が関係しているようで、宗教面でも無宗教の多い日本と大きな違い
がありました。
店の開店、閉店時間についてはほんの一例にすぎず、イギリスには他にもスキンシップの違い
や日本と異なるバスのシステムなど多くの異文化があり、慣れていかなければならないのはとて
も大変でしたが、事前にある程度調べておいたこともあり、適応することができていたと思いま
す。イギリスの特徴や文化を理解することはできましたが、目標であった日本の文化を現地の
人々に伝えるということが達成できませんでした。例えば、日本の建物はイギリスとどのような
点がどう違うのかと聞かれ、説明できなかったことなどが心残りであり、同じような体験はした
くないと思いました。
この経験をふまえて、今後は日本の良いところや悪いところをもっと知り、それを他国に伝え
ることができるようになりたいと考えています。日本独自のものに関しては簡単な英語では表せ
ないことが多いので、しっかり事前に勉強してから海外留学に臨むべきだという反省を基に調べ
ていこうと思います。また、世界にはイギリスだけでなく多種多様な文化が散在していることを
認識し、それらについて実際に足を運んだり調べたりして学んでいき、様々な国の人と良い関係
で話せるようになることを目標にしたいです。
3.
行動力
行動力に関して、私は SAP を終えて以前の自分に比べてより積極的になれたと思います。留
学前までは、少しでも面倒くさいと感じたことや大変なことは極力避けるような性格だったので
すが、英語力を向上させたいという思いと自分がどこまでやれるのかという挑戦から、何事にも
積極的に挑戦していきました。例えば、初めて会った人に自分から声をかける、列車の切符予約
や料理の注文を人任せにせずやってみる、一人で遠い土地へ一泊二日で観光に行ってみる、など
といったことです。
日本にいるときは、もし道に迷ってしまっても人に聞いたりはせず自力で携帯などを使って調
べていましたが、今回の SAP では周りの人々に道を聞く、また聞かれたら親切に教えるという
ことを実行したり、できる限りホストファミリーやバディーと交流する時間を作って英会話の練
習もかねて話をたくさんすることで、コミュニケーション力がつきました。
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加えて、このプログラムは先輩の数が多く一年生が少ないので、控えめにならないようグルー
プの中でも積極的に列車の切符予約などをしてきました。最初、システムをあまり理解していな
いまま切符を買おうとするもとても高額な値段を見せられ、失敗してしまいました。自分の英語
力に不安を抱きながらも同じ過ちをしないように調べて練習し、二回目以降はちゃんと最安の値
段で買うことができました。この失敗がなく、なんとなく買っていたらいずれ大きなミスを起こ
すだろうということもあり、失敗の大切さを学ぶことができた本当によかったです。
イギリスでの最後の週末は、IELTS という試験を土曜日の午前中に受けることになっていて、
その土日は基本的に皆どこにも出かけず、ヨーク市内で日本の友達と過ごす予定でした。しかし、
私は一人で遠い所へ観光しにいくことは自分のためにもなり将来の役に立つだろうと思い、ヨー
クからとても離れているけれど、ずっと行きたいと感じていた湖水地方へ一泊二日で行きました。
列車の切符やホテルの予約、携帯が使えない中わからないことやほしい情報などを周りの人に聞
く、といったことをすべて自分一人でやらねばならずとても大変でしたが、三週間学んできたこ
との復習だと思い観光を楽しみつつ頑張りました。思い返せば、ほとんどの場面でスムーズに話
すことができていて、SAP が始まったばかりの頃の何も話せなかった自分が信じられないくらい
成長していることを実感しました。旅行中も積極的に観光客と話したりしているうちに、人によ
っては一緒に回るほどの仲になり、出身国の話をしたり最寄り駅まで見送ったりと、新鮮で貴重
な体験をすることができてとても楽しかったです。
この経験をふまえて、今後は人のためになることも、自分のためになることも積極的に取り組
んでいこうと思います。また、今回鍛えた行動力やコミュニケーション力を使って、様々な国へ
行きたくさんの人と触れ合いながら文化を学び、そして英語を上達させたいと考えています。
今回の SAP は、実りある一ヶ月間になり、とても楽しく英語を学ぶことができて本当によか
ったと思います。
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この「半年」で得たもの
毛利 涼楓
1.
自己の言語運用力
自己の言語運用力に関して、私が SAP を通して達成したことは、語学力自体の向上と運用態度
の変化の 2 点に分けられ、
これらにおける成長により現地での生活は格段に有意義なものとなった。
私が参加したヨーク大学の研修は 2 月 28 日から 3 月 28 日にわたるものだったが、私は本プロ
グラムを一か月の短期留学としてではなく半年間の学習として捉えていた。なぜならば、私は現地
での一か月の生活に向けて、半年間を通じて様々な準備を重ねてきたからである。半年前の私の言
語運用力の状況は酷いものであった。夏休みに参加した工学部国際交流室主催のフランス研修で語
学力不足を痛感した私は、2 セメスターで英語学習に力を入れようと決意し、セメスター開始早々
に英語カウンセリングに赴いて方針を定め、英語を学ぶ展開ゼミを受講したり SLA 英会話を頻繁
に利用したり、ロシアからの留学生との書道プログラムに参加したりして、語学力、特に英語を用
いての会話力の向上に努めた。その結果、半年前は全く聞き取れなかったネイティブの方の説明が
なんとなく理解できるようになったのを感じたり、2 月に行われたカウンセリング室主催のスピー
キング・トレーニングでのディベートでその日一番の功労者としていただいたり、というような、
リスニング力及びスピーキング力の向上を実感できる経験を得た。SAP 出発前の日本で、それらの
経験により英語への苦手意識が少し払拭されたため、現地で物怖じせずに話すことができ、ホスト
ファミリーや現地の学生と良好な関係を築くことができた。私は英語力だけで見ればプログラムメ
ンバーの中で上位というわけではなく、スムーズに会話を進められないことも多かったが、ホスト
ファミリーと日付が変わるまで語り合ったり、イベントでできたヨーク大学の友達と一緒にご飯や
旅行に行ったりと、英語で話していた時間は誰よりも長かったであろうという自負がある。これは
出国前に学習を重ねていたおかげであり、このようにたくさん会話の時間を持てたことは言語運用
力向上において大きな意味を持っていたと思う。会話で必要となるリスニング力・スピーキング力
は、日本での通常の学習ではなかなか鍛えるのが難しい要素であるため、現地の人々との会話は大
変勉強になるものであった。ホストファミリーと見る BBC のニュースの分かる部分が増えたとい
うことで自分でも成長を感じ、加えて、滞在の最終週に行われた就職面接を模したスピーキングの
テストで最優秀賞をもらうことができた。また、初めは言いたいことを日本語でイメージしてそれ
を脳内で英語に翻訳しながら話していたが、会話を重ねていくうちに、ふと英語をそのまま英語と
して理解し、自然に英文を口に出している自分に気づく瞬間があった。これらはそれぞれ「語学力
自体の向上」と「運用態度の変化」として位置付けられるだろう。
一方、言語運用力に関して見えてきた課題としては、語彙力の不足を挙げたい。会話の最中に、
物の名前が分からず絵やジェスチャーを使わざるをえなかったり、うまい副詞が思い浮かばず意図
していたより極端な発言になってしまったりすることが多々あった。そのような際に後で調べてみ
ると、必要としていた言葉は中学校で勉強するような簡単なものばかりであり、今まで試験や受験
のためにしてきた単語の詰め込みがいかに定着していなかったかに愕然とさせられた。もちろん、
語彙力不足というのは、スピーキングだけではなくリスニング・リーディング・ライティングにも
大きく関わる深刻な問題であり、何度も相手に言葉を繰り返させてしまった時や IELTS の試験で
思うような点数を取れなかった時には申し訳なさ、悔しさを味わった。
この経験をふまえて、今後は語彙力の増強に力を入れていきたいと考えている。具体的には、基
本的な意思疎通が不便なくできるようになるよう、中学校で使っていた辞書の語句と高校で使って
いた構文集の英文を完璧に覚え、使いたいときに頭の引き出しからパッと出せるようなところまで
高めていきたい。同時に、私は現在協定校への半年から一年の留学を視野に入れているので、先に
述べた日常会話用の語彙力増強に加え、TOEFL の受験、そして現地での授業に向け、専門的な英
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語の文章を読む習慣をつけ、そこで登場したアカデミックな語句を覚えていこうと思う。加えて、
SAP を通じて向上した言語運用力を維持するため、大学のイベントや授業等を活用し、定期的に英
語を話すような機会を持つよう努めるつもりである。
2.
異文化適応
異文化適応に関して、私が SAP を通して達成したことは、ホストファミリーや現地の学生と帰
国後も続く関係を築くことができたということである。これは、私が SAP に応募した際に掲げた
目標でもあった。
先にも述べたように、
私は一か月間の現地研修に向けて 2 セメスターを使って準備をしていたが、
この準備には英語運用の練習だけではなく、イギリスについての下調べも含まれていた。もともと
憧れの国であったこともあり、私はイギリスについていろいろと調べ、様々な予備知識を持った状
態で渡航した。食事のマナーやタブーとされている行動等を知っていることが日常生活に役立った
のはもちろん、現地の人と関係を構築する中で、イギリスについてまたは日本とイギリスの関わり
についての知識は非常に有効であった。例えば、イギリスの様々な街を知っているとヨーク大学の
学生と出身地についての話で盛り上がることができたり、イギリスの王室や料理、有名人を知って
いると非常に喜ばれたりしたし、東日本大震災においてイギリスの寄付はヨーロッパ 1 であったこ
とや日本の人気料理である肉じゃがはイギリス料理がもとになっていること、日本の道路はイギリ
スに習って左側通行であること等の話はとても興味深く聞いてもらった。夏休みにフランスの大学
で学生交流をしたときは、家族や専攻といった基本の情報から話を膨らませられず、もどかしい思
いをしたが、本プログラムに当たってはこのような予備知識のおかげで会話が自然と弾み、本当に
楽しかった。現地の学生と出会う機会としては、毎週水曜日の放課後に日本に興味を持つヨーク大
学の学生たちが来てくれる International Conversation Afternoon という時間があったのだが、私
はここで毎回 2、3 人と仲良くなることができ、その中には翌日の昼休みにわざわざ会いにきてく
れた人や、一緒に Whitby を観光した人、家に招待してご飯を作ってくれた人もいて、とても仲良
くなることができた。彼らとは帰国後も連絡を取っている。そして、何よりも大切な交流として、
ホストファミリーと過ごす時間が挙げられる。私のホストファミリーは親切でユーモラスな老夫婦
だったのだが、彼らは身体上の理由からあまり良い体調でなかったのにも関わらず、私の拙い英語
に嫌な顔をせずに付き合ってくれ、夜遅くまで話してくれた。彼らとの話はその日の出来事やお互
いの家族について等のとりとめのないものも多かったが、いつも丁寧に話を聞いてくれるので、私
は毎日この時間を楽しみにしていた。特に面白かった話題として、多くの留学生と暮らしてきた彼
らのホストファミリーとしての経験に基づく「外から見た日本人の印象」や「それぞれの国の人々
の特徴」の話を覚えている。ステレオタイプではなく、エピソードと実感が伴ったこの話は、異文
化を知ることのできる興味深いものだったし、また多文化の中での自分のアイデンティティーを考
えるきっかけとなった。
異文化適応に関して、見えてきた課題としては、アイデンティティーの弱さである。上に述べた
ように、様々な文化を背景とする人々が入り混じる中で、自分のアピールポイントは何か、という
ことについて考えた時、浮かんでこないことに気づいたのである。本プログラムにおいて、グルー
プメンバーの中に“能”ができる方がおり、彼は現地プレゼンテーションとホストファミリーとの
夕食会の際にそれを披露してくれた。どちらの際にも受けはとてもよく、そのような誰にでも楽し
んでもらえる特技を持っているのはすごいと感心すると同時に、うらやましく思った。私にはこれ
といった趣味や強みがない。本プログラムで交流したのはもともと日本に興味を持つ学生だったの
で、日本の話をしていれば盛り上がることができた上にたどたどしい英語も根気強く聞いてくれた
が、もちろん世界中のすべての人がこのようであるわけがない。将来、長期で留学をしたとして、
日本人というだけで興味を持ってくれる人は少数であろうし、私自身に何らかの魅力がなければ見
向きもされないだろう。
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これをふまえて、今後は様々なことに積極的に挑戦し、その中で出会う物事について深く考えな
がら過ごしていこうと思う。私には、先に述べたフランス研修において知り合った尊敬する先輩が
いるのだが、彼らはこれまでに多種多様なことを経験してきたが故に、話がとても面白く、また、
広く深く、かつ他の人には真似できないユニークな考え方をそれぞれ持っている。私は今、ただの
一大学生だが、失敗を恐れずにいろいろなところに飛び込んでいき、多くの人やものに触れながら、
自分や周りを深く見つめなおして、その先輩方のように私だけの考え方や視点を作り上げていきた
い。
3.
行動力
行動力に関して、私が SAP を通して達成したことは、人任せにせず、自分から動くということ
である。現地研修の一か月において、私は勉強・遊びの両方に関して、あらゆることに能動的に取
り組んだ。
勉強に関しては、授業中は積極的に発言するよう心がけ、分からないことがあったら進んで先生
に質問した。その結果、チームで物事に取り組むノウハウについて学んだ Employ Ability の授業
では、私は創造的に大量のアイディアを出す「緑の帽子」の役割として褒めていただけることが多
かった。また、最後の授業の日にはホストファミリーを招いての夕食会があったのだが、そこで私
たちプログラムメンバーが余興をすることになっており、私はその余興のリーダーをさせていただ
いた。日本とイギリスの文化やプログラムメンバーに関するクイズをしよう、というアイディア出
しから、クイズの内容の取り纏め、その時に使うスライド作りまで、テストと日程が重なっていた
こともありなかなかの大仕事だったが、終わった後にホストファミリーに褒めてもらった時の達成
感はひとしおだった。
遊びに関しては、本プログラムにおいて授業以外の時間は自由時間であったため、放課後にヨー
クの街を巡ったり、休日にロンドンやエディンバラを訪れたりといったことができた。引率の先生
等がいるわけではなく、言葉の不自由な環境ですべてを学生のみでやらなければならないというこ
とに初めは戸惑いを覚えたが、自分たちだけで行きたいところや交通手段を調べ、電車やホテルの
予約をするというのはよい経験になったと思う。グループのメンバーに呼びかけて English
Breakfast を食べに行ったり、ghost tour に出かけたりと全力で滞在を楽しみ、無駄な時間は全く
なかったと自信をもって言える。
行動力に関して見えてきた課題としては、何かやりたいことがあると、できるかどうかをきちん
と検討することなくやってしまう傾向があるということである。上で述べたように、私はできる限
りのことに積極的に取り組んできたが、勉強も手を抜かず、ホストファミリーと話したり友達と遊
んだりといった楽しみの時間も取る、という生活をしていると睡眠時間が十分に取れず、2 回ほど
風邪をひいて心配をかけてしまった。
この経験をふまえて、今後は自分のキャパシティを理解し、どんなにやりたいことがあろうとそ
の範囲内に収めるよう努力する、または、きちんと自分の中でやるべきこと、やりたいことの優先
順位をつけ、上のものから順にやる習慣をつけるようにしようと考えている。前だけを見て行動す
るのではなく、時折自分の状況を俯瞰して、無理がないか、そのまま進んで大丈夫かを確認するよ
う意識していきたい。
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研修中の写真
York の街
York の街はローマ時代から続いている。これは、シティーセ
ンターの一角に残るローマ時代の城壁の一部、Multangular
Tower である。
York Minster(大聖堂)は York の象徴ともいうべき存在であ
る。左側に写っているのは Minster の地下から発掘された
Roman Column。
シティーセンター、Stonegate の様子。Minster の石を運んだ
とされるこの通りには、かつての書店の標識が多く残る。こ
の写真にもフクロウと書物を持つ知恵の神、ミネルバの標識
が写っている。
York 大学
ヨーク大学設立の許可が下りたのは 1960 年のことであるが、
その建物の歴史は 4、5 世紀ほど遡る。写真は、もともとと 15
世紀の修道院長の屋敷であった Kings Manner。
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Heslington West は広大な芝生と湖に囲まれたキャンパスである。ここでは、国際交流やプレゼン
テーション等の活動が行われた。
Heslington East の Law and Management Building は 2 年ほ
ど前に建てられたばかりである。日々の授業はこの建物で行わ
れた。
授業
プログラム最初のプレゼンテーションの様子。以後この教室で
は ICA(International Conversation Afternoon)等の国際交
流活動も行われた。
オリエンテーションの様子。説明をしているのはコーディネー
ターの Andrew。
最後の授業での写真。右奥の 2 人が手にしているのはプログラ
ムの修了証である。
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遠足及び小旅行
遠足や小旅行はプログラムの一環として行われた。写真は一週
目に訪れた York のシティーセンター、Newgate Market の付
近である。
二週目にはショッピングの街 Leeds を訪れた。写っているのは、
Leeds のアートギャラリー入り口。
三週目に訪問した、ドラキュラと Captain Cook で知られる
Whitby。高台からは Abbey と Whitby の町全体が見渡せる。
Whitby にある Magpie Cafe のフィッシュアンドチップスはイ
ギリス人なら誰でも知っているほど有名。食文化を学ぶことも
研修目的の一つである。
その他の活動
学生の多くは、週末を利用して London や Edinburgh へ行っ
た。この写真は、London で撮影されたものである。
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