Poster1 地方都市における静脈系インフラの集約と連携のシナリオ構築 A8-8 -和歌山市を対象として- 中尾彰文(和歌山大学),山本祐吾(和歌山大学),吉田登(和歌山大学) 1.はじめに 下水道インフラの多くは21世紀前半から中盤にかけて更新時期を迎える. 人口減少や逼迫する地方財政状況の中で,既設施設の更新にどのように対応するかが課題. 下水道インフラの中でも,特に汚泥処理施設は従来の汚泥焼却に替えてバイオガス化,固形燃料化 などの技術導入が期待されている. 予算制約上すべての施設でこうした技術導入することは困難であり,施設の統廃合による集約処理 や他インフラとの連携も視野に入れた施設整備計画を検討すべき. 汚泥処理の集約化や燃料転換,清掃工場でのごみ・汚泥混焼技術の導入によるGHG削減効果を比較 するとともに,汚泥処理の将来像を描くことを目的とする. 2.分析方法 ケーススタディ対象地:和歌山市 推計方法 整備シナリオの概要 下水処理場 将来量の推計 下水汚泥 ごみ 清掃工場 下水 下水 下水 ごみ 水処理 水処理 水処理 収集・運搬 濃縮 濃縮 濃縮 脱水 脱水 脱水 下水処理場3箇所 処理プロセスの把握 下水処理場 清掃工場 輸送 静脈系インフラの基礎情報整理 清掃工場2箇所 エネルギー・物量投入量の推計 汚泥処理施設2箇所 整備シナリオの設定 汚泥処理(個別/集約) インフラ連携(有/無) 導入技術(焼却/燃料化/混焼) 下水道普及率の状況 和歌山市 (37万人) 34.4% 同規模都市 (30~50万人) 環境負荷量を比較評価 82.1% GHG削減効果 輸送 シ ス テ ム 境 界 Case0 Case1-4 Case5 受入 Case5 乾燥 汚泥焼却 (技術選択) 汚泥焼却 Case0-1:高温焼却/Case2:造粒乾燥 Case3:炭化 /Case4:オイル化 Case5:清掃工場へ輸送 受入 Case0-5 Case0-4 焼却・発電 (技術選択) 焼却・発電 電力供給 電力供給 Case0-4:ごみ焼却 Case5:ごみ・汚泥混焼 3.結果と考察 将来の下水汚泥・ごみ発生量 4,000 300 3,000 200 2,000 100 1,000 ごみ発生量 160 23.9% down 300 140 120 100 200 80 60 100 40 2040 2038 2036 2034 2032 2030 2028 2026 2024 2022 2020 2018 2016 2014 20 2012 0 2010 12,000 Case0 高温 焼却 Case1 高温 焼却 Case2 造粒 乾燥 Case3 Case4 個別 Case5 ごみ・汚泥 60% 炭化 オイル化 混焼 8,000 40% 24.9% 26.0% 24.2% 4,000 2040 2038 2036 2034 2032 2030 2028 2026 2024 2022 2020 行政人口 集約化・連携 集約化 0 集約化・連携 Case2 造粒 乾燥 Case3 炭化 Case4 Case5 ごみ・汚泥80% オイル化 混焼 600 60% 40.3% 36.3% 200 0% 40% 3.4% 27.2% 0 15.1% 20% 0% 0.0% (4,000) (12,000) Case1 高温 焼却 20% 0.0% (8,000) 800 Case0 高温 焼却 400 10.4% 4.3% ごみ発生量[千t/y] 行政人口[千人] 2018 2016 2014 0 2012 0 400 集約化 GHG排出量の算定結果(2010-2040)[千t-CO2] 5,000 69.9% up 下水汚泥発生量 2010 行政人口・下水道利用人口[千人] 400 個別 下水道利用人口 下水汚泥発生量[t-DS/y] 行政人口 エネルギー消費量の算定結果(2010-2040)[TJ] 転換技術の導入が有効 汚泥処理(焼却・転換) 代替輸送 ごみ処理 薬品 -20% (200) -20% (400) -40% -40% 有効利用 次いで混焼も効果的 汚泥搬送 余剰電力(売電) 汚泥乾燥 (600) -60% 転換技術の導入が有効 汚泥処理(焼却・転換) 代替輸送 N2O(汚泥焼却) 余剰電力(売電) 次いで混焼 有効利用 も効果的 -60% 汚泥搬送 ごみ処理 薬品 4.まとめ 静脈系インフラのGHG排出抑制を図るとき,汚泥処理施設の集 約化に加え,集約拠点への燃料転換技術の導入が有効. 燃料転換技術の導入が困難な状況の場合,清掃工場でごみ・ 汚泥混焼を検討する価値がある. 将来も下水道整備が進展する地方都市においては,静脈系イン フラの連携も含めた中長期の視点に立った整備計画の立案 が重要. 今後の課題 本研究では,将来の下水汚泥・ごみ発生原単位は一定と仮定して いる.しかし,下水道整備計画の変更,廃棄物処理政策の見直し などにより原単位が変化する.特に,ごみに関しては,地方自治 体が取り組んでいるごみ政策が近年,減量効果を上げている.こ うした変化を考慮した推計となっていないことから,想定しうる 範囲での将来変化を原単位に組み込むことについては,今後の課 題としたい. 本研究は,環境省・環境研究総合推進費3K143006(研究代表:吉田登)の支援を受けて実施された.
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