「国際バカロレアの趣旨を踏まえた教育の推進についての調査研究

「国際バカロレアの趣旨を踏まえた教育の推進についての調査研究」についての経緯
服部
1 はじめに
俊之
位;2年生)、公民(倫理2単位;2年生)にお
「国際バカロレア」については、現在でこそ教育に
いて、2クラスで実施した。学習指導要領に沿っ
携わる多くの人に認知されているが、本調査研究への
た従来の授業も行う必要もあったので、実施でき
公募申請前の段階では、校内における国際バカロレア
たTOKの授業時間数は、年間合計で 80 時間程
(以下、IB)の認知度は極めて低いものであった。
度であった。また、2年生の数学の授業において、
調査研究担当者においても、カリキュラムの構成や内
グラフ電卓の研究も行った。さらにIBを全校職
容、教授法、評価法、進路への影響などに関する知識
員・生徒に普及啓発するための講演会・講座を実
は断片的であり、全体像を知るものは皆無であった。
施した(「クリティカルシンキングに関する
そこで研究計画を立案するにあたり、まずIBと
講演とWS」「マインドマップ講座」など)。
は何であるかを知るために関連書籍やIBOのホ
IB認定校訪問として、立命館宇治高等学校に
ームページにより必要な情報収集を行った。収集
出かけ、授業参観、情報収集を行った。この年か
した情報をもとに、日本の学習指導要領にIBの
ら国内における日本語DPの研究会が多数開催さ
趣旨を取り入れ、授業改善に有効なカリキュラム
がTheory of Knowledge(以下、TOK)であるとと
らえ、本研究の調査対象を「TOKの趣旨を踏まえた
カリキュラムの研究開発」であると設定した。あわせ
て、公立高校が国際バカロレア認定校を目指す際の課
題の整理も行うこととした。
れはじめ、本校も「第1回国際バカロレア広島
フォーラム」(H25.5.25、広島)、「2013 国
際バカロレア7月フォーラム」(H25.7、東
京)などに参加し、日本語DPに関する情報
収集やIB認定校を目指す際の課題の整理に
努めた。
年度末には「平成25年度成果報告会」を
2 調査研究の経緯
実施し、矢野裕俊教授(武庫川女子大学文学
(1)平成 24 年度
部)より平成25年度の成果報告に対する評
平成 24 年度の研究指定直後にIBO主催の研修
価・指導と、次年度に向けての課題について
(H24.11.30 ~ 12.2、玉川学園高等部、対象:管
指 導 及 び 助言を受けた。
理者、TOK担当者、日本語担当者)に5名が参
(3)平成 26 年度
加し、IBOの担当者から直接話を聞くとともに、
平成 25 年度に引き続き「TOKの趣旨を踏ま
認定校の担当者と情報交換することを通して、今
えた」授業実践を行ったが、公民担当の教員の異
後の研究に必要な情報を収集した。また、IBO
動により計画変更を余儀なくされた。総合的な学
が発行する文献をオンライン・カリキュラムセン
習の時間(1単位;2年生)では、IBの講習を
ターから収集するとともに、教科書を購入し、関
受講した教員が、他の教員に校内研修を行うこと
心のある教員が自由に閲覧できるよう整備した。
でより多くのクラス(5クラス)で授業を実施す
数学においては、IBの授業で必要不可欠なグラ
ることができた。また国語では、3年生において、
フ電卓を購入し、数学科で研修の機会を設けた。
2年生より継続してTOKの趣旨を踏まえた授業
さらに、国内におけるIB認定校の一つである
加藤学園暁秀高等学校を訪問し、TOKをはじめ
を受講している生徒の追跡調査を実施した。
さらに、海外においてD P の 取 得 を 目 指 す
IBの授業を参観した。また、公立高校がIB認
日本人生徒が比較的多く在籍するシンガポー
定校を目指す際の課題を探る機会ともなった。
ルの IB校(UWC、 Tanglin Trust HS)
以上の成果をもとに平成 25・26 年度における授
を訪問することにより、TOKの本質をより
業実践の進め方を決定した。
深く理解し、本 校 の 目 指 す T O K の趣旨を踏
(2)平成 25 年度
まえたカリキュラムが教育のグローバル化に
「TOKの趣旨を踏まえた」授業を総合的な学
習の時間(1単位;2年生)、国語(現代文2単
適応できるか否かについて検証した。