マウス舌幹細胞の解析および舌がんモデル 中村尚広、上野博夫 代謝機能制御系 消化器内科学専攻 第3学年 目的 舌上皮の糸状乳頭を構成する角化細胞は,哺乳類の生体においてターンオーバーのもっとも 速い細胞のひとつであり舌扁平上皮がんの起源と考えられている。これまで我々は舌上皮角 化細胞における幹細胞のマーカーとして Bmi1 を報告してきた。Bmi1 陽性幹細胞は舌の上皮 組 織 の 維持 およ び 再生 に き わめ て重 要 であ る 。 ここ で、 マ ウス に 4-nitroquinoline l-oxide(4NQO)を摂取させると舌がんが生じることが知られている。舌がんにおけるがん幹 細胞を同定することで、新しく舌がんの分子標的治療薬を見出せる可能性がある。 材料と方法 C57BL/6 マウスに 4-nitroquinoline l-oxide(4NQO)を摂取させ、舌がんを発生させる。 4-nitroquinoline l-oxide(4-NQO)を 16 週間経口摂取させ, 投与中止後 8 週間の期間を開け て 24 週での解析を行う。 ここで Rosa26rbw/+マウスは Cre リコンビナーゼによる DNA 組換えが起こると,緑色(GFP) を発現していた細胞が青色(mCerulean),オレンジ色(mOrange),赤色(mCherry)にラ ンダムに変化する.Rosa26rbw/+マウスに加え、Cre リコンビナーゼ遺伝子を Bmi1 遺伝子にノ ッ ク イ ン し た マ ウ ス と Rosa26rbw/+ マ ウ ス を か け 合 わ せ た マ ウ ス に 4-nitroquinoline l-oxide(4NQO)を摂取させ、舌がんを発生させ、Bmi1 陽性細胞の動向、解析を行う。 結果 4-nitroquinoline l-oxide(4-NQO)を投与すると, 作成マウスの約 6 割に腫瘍の形成を認め た。正常の舌上皮において Keratin14、Kertin5 は基底細胞にのみ発現をしているが、腫瘍 を形成すると過形成した上皮にも発現を認めた。 【今後の展望】 Rosa26rbw/+マウスおよび Cre リコンビナーゼ遺伝子を Bmi1 遺伝子にノックインしたマウスと Rosa26rbw/+マウスをかけ合わせたマウスに 4-nitroquinoline l-oxide(4NQO)を摂取させ、舌 がんを発生させる。その後タモキシフェンを投与して、腫瘍内の Bmi1 由来の細胞が腫瘍内 でどのような領域を形成するか検討予定である。 正常上皮においても早い細胞周期で上皮維持を主に担う細胞群の存在が示唆されており,今 後そのマーカーを指標に抗腫瘍効果の検討を行いたいと考えている。
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