Editor`s choice

Part 2
寄稿 ナースから医師へ
こんなリーダーシップをとってほしい
猪川 まゆみ
鵜飼リハビリテーション病院 看護副部長、当協会理事、看護委員長
チームのリーダーとして
回復期リハ病棟で医師がチームのリーダーであ
るのは明白です。医師が素晴らしいリーダーシッ
い場合もあるかと思います。それでも、
「もう歩く
のは無理ですね」とか「回復はあまり期待しない
でください」等の厳しい言葉がけはできるかぎり
しないでいただきたいと思います。
プを発揮しているチームではメンバーがとてもや
医師にすれば「最初に大きな期待をもたせない
りがいを感じ、
「このチーム、このメンバーだから
ようにしないと」と考えるのはよくわかります。
こそできた」と、大きな達成感を味わうことがで
しかし、リハビリは本人・ご家族の気のもちよ
きたり、
「これが回復期リハの醍醐味か」と実感で
うで、それこそ結果に大きな差が生まれることが
きたりします。患者さん・ご家族にとっても、
「こ
少なくないのも確かです。不用意な言葉がけで余
の病院でよかった」
「この先生に診てもらえてよ
計な葛藤やストレス、絶望感を与えてしまうこと
かった」との思いにつながることと思います。
は、その後の入院生活、またスタッフのチームア
医師のひと言は大きな影響力
しかし、リーダーシップについて少し勘違いさ
れている医師もなかにはいらっしゃるようです。
プローチにもよい影響を及ぼさないと思います。
面談の場で心の距離を縮めて
たとえ患者さんが重症でも、ご家族の今の気持
そういう現場ですと、コメディカルのスタッフは
ち、本人にどうなってもらいたいと考えているか、
混乱したり落胆したり、ストレスから「職場を変
その思いにまずは耳を傾けていただきたいです。
わりたい」という気にさせてしまうことさえあり
そしてその上で、
「重い症状ですが、どうしたら
ます。医師の言葉の影響力は大きいのです。
少しでもよくなるか、一緒に考えてやっていきま
以下、回復期リハ病棟の専従医、専任医の皆様
しょう」と、これからの数か月間、チーム全員が
に日頃とっていただきたいリーダーシップについ
本人・ご家族と一緒に歩んでいく姿勢を伝えてい
て、少し提案させていただきます。
ただきたいのです。そうしたリーダーの“宣言”
最初から厳しい言葉がけは避けて
は家族の気持ちを軽くすると思いますし、心理的
な距離感を縮めることにもつながるかと思います。
患者さん・ご家族の多くは回復期リハ病棟に、 その意味で初日の対応は、信頼関係の土台を築く
期待に胸を膨らませて転院してこられます。入院
当日の対応で特に大事だなと思うのは、回復の見
通しについて患者さん・ご家族に主治医が説明を
される場面です。とても重症で回復の見込みが低
36 回復期リハビリテーション◆ 2015.7
絶好のチャンスであることをぜひご理解ください。
入院中の不安やイライラを受け止めて
入院中はほぼ毎月、本人・ご家族と医師面談を
回復期リハ病棟専従医がチームの要になるために
行っていると思いますが、どんな雰囲気で面談さ
たい現実を受け入れる気持ちになれるからです。
れていますか。淡々と改善の現状を伝えて終わり、 程度の差こそあれ、患者さん・ご家族が「こんな
ではちょっと不十分かもしれません。比較的順調
はずじゃなかった」という後悔の念をもっている
に回復されてきている場合でもこの時期、多くの
点を理解してかかわることが重要だと考えます。
患者さんは「自身が障害をもった」という厳然た
る事実に対してなかなか前向きな気持ちになれま
回復の可能性について話し合いたい
せん。面談の場で不安感やイライラがつい出てし
日頃のコミュニケーションを通じ部下との信頼
まうことも自然な感情表出です。担当医としてそ
関係を築くことはリーダーの大切な役割の 1 つで
うした複雑な気持ちをしっかり受け止めていただ
す。
「部下とコミュニケーションをとることはリ
ければと思います。
ーダーの責任」
(ドラッガー)といわれるように、
回復が順調でない方には特に配慮を
待ちの姿勢ではなく率先してコミュニケーション
をとっていただきたいと思います。
回復が順調でない、もしくは後退しているよう
私たちコメディカルは医師とともに「少しでも
な場合には特に配慮が必要です。なぜよくなって
回復するにはどうしたらよいか」を話し合い、可
いないのかを説明し、患者さん・ご家族の辛い心
能性があれば挑戦したいのです。スタッフの意見
情を汲み取りつつ、医療者側としても大変残念に
に常に耳を傾け、可能性をメンバー全員で検討す
思っていることをはっきり言葉に表していただけ
る。そんな医師のいるチームで働きたいのです。
ればと思います。それで初めて「これだけ一生懸
リハマインドをもって、一緒に汗をかいてくれる
命やってもらっているんだから」と、受け入れが
医師を私たちは強く望んでいます。
ナースから医師へ
患者を見て声をかけ、話を聞いて
塩地 由美香
藤田保健衛生大学七栗サナトリウム 回復期リハビリテーション病棟看護長、当協会看護委員
患者を見て、患者の声を聞いて
私は一日の患者の管理、チームの管理を専従医
介護福祉士、リハビリスタッフも患者の体調管理
をし、リハビリやケアを行い、訴えを聞いて対応
しているが、やはり何より医師の存在は大きく、
とともに行っていきたいと考えている。そのため
心強い。患者や家族にとっては医師が自分の身体
にも、もう一歩足を進め、患者を見て、患者の声
を見に来てくれる、リハビリしている様子を見に
を聞いてほしいと思う。
来てくれる、話を聞いてくれる……それだけで十
患者を見ていないとか患者の声を聞いていない
分にモチベーションが上向く要因になる。
などと批判しているわけではない。医師はたくさ
患者や家族が廊下や訓練室、ナースステーショ
んの担当患者を抱え、日々忙しく大変であり、時
ンに来て主治医の居場所を尋ねたり、専従医のほ
間に追われていることは理解している。看護師や
うから声をかけたりし、診察や会話をしている姿
回復期リハビリテーション◆ 2015.7
37
Part 2
寄稿 がある。患者や家族の嬉しそうな顔や安堵した表
専従医は直ちにチームメンバーを招集し、身体能
情、訓練にさらに熱が入る様子を見ると、
「よかっ
力・認知面の安全性・リスク等の現状を評価。さ
た……」とホッとする。
らに自宅での衣食住の状況、キーパーソン、家族
看護師やリハビリスタッフにとっても専従医が
の支援状況を把握、居住地域の社会資源に関する
病棟にいることで疾病、障害、リスクの適切な管
情報収集・検討後、必要な対応を職種別に指示し、
理が可能になり、スムーズなリハビリ処方、在宅
患者・家族が在宅に移っても当面、安心・安全に
復帰に向けたアプローチにつながる。
過ごせる状況を早急に整えそちらへ舵を切った。
特に急性期後まだ状態が不安定な患者、合併症
専従医のリーダーシップのもと、メンバー各人も
を併発している患者の疾病・障害管理では、専従
自己の役割を認識し情報・対策を提供して難所を
医から的確な指示がタイムリーに出されることで
乗り越えた。チームの底力が試された時であった。
病態が安定し、急変時にも早期に適切な対応がと
れる。病棟に専従医がいる強みと安心感である。
風通しのよいチームを作り育てたい
患者対応のスピード感は、日頃から職種間でど
チームの底力が試された
れだけ活発に意見交換、情報共有できているか、
目標達成のための情報共有の場としてカンファ
専従医がどれだけリーダーシップを発揮しチーム
レンスの充実がチーム医療では必須と考えている。 を牽引するかによって違ってこよう。チーム内、
メンバー各人が提供する情報をもとに、プランの
病棟・院内のどんな場でも個人の意見や提案が出
修正ほか一連のPDCAサイクルをチームで回す。 しやすい雰囲気があり、仲間と協働し合える風通
そのためには活発にディスカッションできる環境、 しのよいチーム・病棟を作り育て、良好なコミュ
教育の場が必要である。医師が常にいる病棟では
必要時に即座にチームで集まり、意見を交えるこ
ニケーション環境を保つことが大切だと思う。
カンファレンスを通じて個々のメンバーがモチ
とができる。医師のリーダーシップに期待したい。 ベーションの維持・向上を図り、チーム力をいっ
以前、当院で高次脳機能障害の患者が離院され、 そう高められるようなかかわりと教育を専従医と
これ以上入院継続困難と思われる事態が発生した。 ともに今後も行っていきたい。
介護福祉士から医師へ
日常的なケア場面で違う切り口から助言を
磯部 香奈子
船橋市立リハビリテーション病院 教育研修部NSCW部門チーフ
当協会看護介護委員、介護福祉士
いっそう情報共有しやすい環境に
実施後一番の変化は、各病棟でチームアプローチ
の姿勢が強まり、いっそう情報共有しやすい環境に
2014 年の診療報酬改定後、当院では回復期リハ
なった点だ。私たち介護職も医師への介護計画の
病棟専従医の体制強化を目的に、5 病棟の各ユニ
設定変更の相談がしやすくなった。医師と患者と
ットに経験豊富なリハ科専門医を専従配置した。 のコミュニケーション機会が増え、患者・家族の
38 回復期リハビリテーション◆ 2015.7
回復期リハ病棟専従医がチームの要になるために
ニーズに医師が以前よりタイムリーに対応できて
りとりのできる環境は貴重である。当たり前のよ
いると感じる。
うに行っているケアの一つひとつを新鮮な視点で
医師との距離が縮まった
私は病院に就職する前は医師と直接話す機会の
ない所で仕事をしていた。当院に入り、医師に相
見直せる。得られた気づきや新たな発見が個々の
能力、全体の質をさらに向上させるのではないか。
患者の不安や悩みに耳を傾けて
談したり助言をいただく機会が増えたが、初めは
もう1つはできるだけベッドサイドに足を運
声かけのタイミングがつかめず戸惑った。自然に
んで患者の声に耳を傾け、主として医師でなけれ
話ができるようになるまで一定時間が必要だった。 ば取り除けない不安・悩みを取り除いてほしい。
現在、各病棟の専従医は多くの介護スタッフに
「時間がとれなくて……」といわれるかもしれ
とってかなり身近な存在となっているようだ。 ないが、患者が「医師と話がしたい」と訴えてい
「医師と話すのが苦手だ」と以前こぼしていた同
るときはそれだけ本人の不安も大きい。医師でな
僚からも、
「声をかけやすくなった」とプラスの発
ければ駄目である。一通り話をして気持ちを少し
言が聞かれる。
「 医師から声をかけられることが
でも前向きにしてあげられれば素晴らしいと思う。
増えた」と話す同僚も多い。医師と介護職との距
病状等の説明を医師から直接聞くことで安心で
離が縮まり、チームアプローチがさらに一歩進ん
きるということは多々ある。介護職も患者・家族
だと感じている。
の本音を聞き出したり生活場面で困っていること
日常のケア場面で違う切り口から助言を
で相談を受けたり、患者・家族の身近な場所でか
かわっている。医師も患者にとって身近な存在で
専従医の方々への今後の期待は2つある。
あってほしいと思う。同時にチーム内をまとめ、
1 つは日常的なケア場面を見て、患者の可能性
全員を元気に引っ張っていってもらいたい。
を引き出すケア方法について、私たち介護職とは
違った切り口からアドバイスいただけると嬉しい。
リーダーシップでチームが引き締まる
自立支援・残存機能を活かしたケアを昼夜交替で
医師がリーダーシップを発揮してくれるとチー
24 時間実践している介護職であるが、重介助者
ムは引き締まる。チームが引き締まると患者主体
であるほど少なからず介助に対し不安を感じる。 のケアの実現に近づいていく。
病棟歩行導入に際しても、実施期間・歩行距離を
最短かつ最小限に設定してしまいがちだ。
「リーダーシップ」を言葉にすれば、① 予後予
測をもとにチームの針路を示してくれる、② 困難
以前ある医師に「どれだけ早く歩行を開始でき
に直面しても前向きにチームを引っ張ってくれる
るかがその患者の予後を変える」と、絶妙なタイ
――ということになろうか。これら2 つが揃うと
ミングで助言いただいた。それで回復可能性より
チームに活気がみなぎる。チームが成熟しながら
自身の不安の解消を優先していたことに気づき、 さらに前進できるよう、病棟の専従医にいっそう
思考と行動の見直しができた。医師とこうしたや
のリーダーシップをお願いしたい。
回復期リハビリテーション◆ 2015.7
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Part 2
寄稿 PTから医師へ
医療専門職、診療責任者、見識者として
後藤 伸介
やわたメディカルセンター リハビリテーション技師部部長、当協会理事、理学療法士
多くの専門職を根もとでつなぐ
かなめ
要は、扇子の骨を根もとでつないでいる止め具
です。要がないと、扇子の骨がバラバラになり、
その用を成しません。扇子の骨を多職種チームの
各専門職にたとえると、その要の役割の大きさが
わかります。
医療の専門職として
私は、回復期リハ病棟の医師は 3 つの立場を担
っていると思っています。
まずは「医療専門職」としての立場です。患者
の多くは主傷病に加えて複数の併発症があり、総
的・道義的に問題と思われる医療サービスが行わ
れないように“権力”を正しく使い、私たちを適
正な方向へと導いていただきたいと思います。
見識者として
3つ目は「見識者」としての立場です。道徳性や
包容力があり優れた洞察・判断ができる。これは
医師に限らずすべての専門職に期待したい要素で
すが、チームをまとめていくには特に大切です。
病棟スタッフは専門性、年齢、能力、価値観等
が多様です。各人のベクトルを 1 つに合わせ、チ
ームとして結束することは簡単ではありません。
無気力で消極的なスタッフにはコーチングやファ
合的な疾病・リスク管理が必要なことがあります。 シリテーション等の介入が必要です。その意味で
いわゆる“総合診療技術”ですが、他職種が代わ
医師の声かけはスタッフへの影響力大です。適切
ることのできない絶対的役割がそこにはあります。 な声かけは新たな行動のきっかけを創ったり、毎
その上でリハ専門医師としては、他の専門職機能
日仕事をする際の大きな励みになったりします。
を活用した障害診断とリハ戦略計画、他診療科と
また、医師の医学的な問いかけは学術的に考える
の連携等が求められると思います。
機会を与え、自発的な学習を促すでしょう。
診療責任者として
実際の療法場面を観てその方法の妥当性やさら
に工夫できそうな点をスタッフと協議していただ
次に「診療責任者」としての立場です。医師は
く。そうした場を通じてスタッフの視点が広がり、
保険診療の中心者です。基本法規の理解はもとよ
チームとしての協働の意識も高まると思います。
り、スタッフのほとんどの行為が「医師の指示」
一方的な“指導”ではなく、ところどころでスタ
によって行われる以上、対象疾患や標準算定日数
ッフの考えを確認してヒントや助言をいただける
等が複雑に規定されている回復期リハ病棟の制度
と、よりよい関係が作れると考えます。
について一定の知識を備える必要があります。
異質で多様な教育的背景をもつスタッフ同士は
診療責任者であるということは、組織内で権限、 時として感情的な衝突を起こします。そのような
力、
“権力”をもっているということです。倫理
40 回復期リハビリテーション◆ 2015.7
ときには、組織全体の中で最も中立的な存在であ
回復期リハ病棟専従医がチームの要になるために
る医師にコーディネートをお願いしたいと思いま
反面、病棟専従により在宅での生活像を推測す
す。互いの思いを理解しつつ冷静で合理的な判断
る能力が育まれにくい点が目下の課題と思われま
を下せる医師の役割は大きいと思います。
す。すでに専従制となって久しい回復期リハ病棟
担当チームによる退院後訪問リハも手
医師が病棟専従であることの利点は患者の生活
の療法士は、外来や訪問リハの活動が制限されて
おり、退院後の生活の想起が難しくなっている印
象があります。
場面に遭遇する機会が増え、実生活を理解しやす
退院患者に対し、たとえば短期集中の訪問リハ
くなることです。それによりリハ計画の具体性が
を病棟の担当チームで一定期間実施できれば、専
向上します。患者・スタッフとのコミュニケーシ
従医も療法士も入院中の回復期だけでなく、在宅
ョンの機会が増えれば情報共有が進み、計画の適
回復期も継続して関与でき、より質の高い総合的
時修正が可能になります。他職種との仲間意識も
な回復期リハが行えるのではないでしょうか。
高まり、良好な協力・協調関係が構築しやすくな
ると思います。
患者の人生に寄り添ったリハ医療をチームで行
いやすい制度への見直しも必要だと思います。
OT から医師へ
スタッフとともにリハビリを語って
佐藤 浩二
社会医療法人敬和会 法人統括リハビリテーション管理部長(大分東部病院)、当協会理事、作業療法士
リハビリを語ってもらいたい
の中で「優先的に医師に求めたい項目」を 3 つ挙
げるよう回答を求めた。結果は 2 施設ともに 1 位
「医師がチームの要」という今回のテーマは、 が「患者・家族に進んでわかりやすく説明し、十
一般感覚からすれば“言わずもがな”である。す
分な同意に基づく医療に取り組もう」
(計58 名)
。
でに回復期リハ病棟のスタッフは、医師を「要」
2 位、3 位は入れ替わりはあるが「リハビリテーシ
として認識しているはずだ。そのような認識の上
ョンマインドを養い、穏やかな態度で患者さん・
で 1 点、回復期の医師の方々にお願いしたいこと
家族・スタッフに接しよう」
(計 52 名)
、
「より質
がある。それは「リハビリを語ってもらいたい」
の高いリハビリテーションサービスを提供できる
ということである。病棟専従医師は出身の各診療
病棟を創っていこう」
(計41 名)が続いた。
科で培ってきた専門の診療領域には関心を示すが、
これら 3 項目から窺われる現場医師の姿は、う
「患者・家族にリハビリの視
リハ職をはじめとしたスタッフとリハビリを語り、 がった見方をすれば、
チームを育む姿勢が弱いように思えてならない。
疾病を診ることに終始?
点から積極的にかかわっておらず、スタッフ任せ。
スタッフとも意思の通ったコミュニケーションが
とれていない」という姿ではないか。リハビリの
2 施設計 103 名のセラピストにアンケートを実
意味や意義をスタッフと語らうこともなく、単に
施し、当協会が策定する「医師 10 カ条」の各項目
疾病を診ることに終始している、あるいはそうし
回復期リハビリテーション◆ 2015.7
41
Part 2
寄稿 た認識で業務を行っている面がなきにしもあらず
れた入院期間でのかかわりが一人ひとりのその
ではないかと思う。
後の人生を大きく左右するとすれば、要の役割の
一般的な回復期リハ病棟の患者像は急性期を過
医師が暇をこいている余裕はないはずだ。残存す
ぎ、内科的に一応安定した方々だと想定すれば、 るであろう障害を正面にとらえ、今どのような支
医師は自分の手を離れてひと安心だ。あとはセラ
援が大事かをスタッフと語らい、チームで試行錯
ピストによるリハビリを行い、看護師・介護士に
誤を重ねてほしいのである。このようなことがで
よるケアを行い、退院に向けた家族とのやりとり
きる病棟でないと回復期リハ病棟の意味はなく、
や環境調整はソーシャルワーカーに任せて……。 他科病棟と何ら変わらなくなってしまうし、リハ
急性期に比べ出番が少なく暇だと考えてはいない
だろうか。それは大きな誤りであると叫びたい。
残存障害を正視し支援策で試行錯誤して
リハビリは障害学であり、障害をおった方の新
ビリを横串にした多職種協働の姿も形成されない。
質の高い病棟創る自覚と責任を
回復期リハ病棟の制度ができて 15 年が経った
が、多職種協働の姿は定まっていないように思う。
たな人生を再構築する作業である。大田仁史氏は、 ケアミックス型の病院であれば回復期リハ病棟以
近著『ハビリスを考える Ⅳ』で「リハビリ思想は、 外の病棟との関係もあり、なおさらである。専従
疾患別、臓器別医療のアンチテーゼとして生まれ
医師であればこそリハビリを語り組織体制を整え、
育ち、その存立の基盤は生活と人生の幸せを考え
質の高い多職種協働の回復期リハ病棟を創ってい
ることである」と述べている。3 か月前後の限ら
く、そうした自覚と責任をお願いしたい。
ソーシャルワーカーから医師へ
各職種の質の管理と医師同士の連携に期待
藤井 由記代
森之宮病院 診療部 医療社会事業課課長、当協会理事、ソーシャルワーカー委員長
各職種を活かしたリハ計画を
専従医への期待を院内と院外の視点に分けて述
べたいと思います。院内では、医師のリーダーシ
『1 人でトイレに行けないなら、施設に入りたい』
と話している」などの①に関する事項はリハ計画
に反映されますが、②や③に関する事項ももっと
反映させていただきたいのです。
ップで各職種の実践効果をさらに高め、患者・家
②に関する事項は患者・家族の隠れたニーズを
族に適した実践となるよう統合してほしいです。
リハ計画に反映させるために有効です。
「夫婦で
リハ計画の立案を例に考えると、各職種が① 患
話していると嬉しそうだ」
(→夫婦で話せる時間
者・家族の言葉を聞く、② リハケア提供場面等で
をもちたい)
、
「患者は妻の腰痛を心配している」
患者・家族を細かに観察する、③ 専門スキルをも
(→妻に負担をかけたくない)
、
「妻は洗濯物を持っ
とに可能性のある複数のプランを検討する──等
てくるのも辛そうだ」
(→妻は辛さを押して頑張
をしていることが前提となります。
「患者・家族が
る傾向がある)
、
「自宅の猫の様子を気にしている」
42 回復期リハビリテーション◆ 2015.7
回復期リハ病棟専従医がチームの要になるために
(→猫に対して患者ならではの役割がある)など、 る現在、医師同士で治療方針の検討が必要な場面
各職種が感性を活かして収集したニーズは、リハ
が増えています。急性期の医師側から「回復期リ
計画の大切な指標です。各職種に積極的な観察や
ハの医師と直接話がしたい」と相談を受ける事例
気配りを求め、細かな気づきも患者・家族のため
も増えています。連携力の向上は患者の安心、医
に共有できるチームづくりをお願いします。
療安全につながりますのでご協力をお願いします。
③に関する事項では各職種に患者・家族が選択
回復期から生活期スタッフへの引き継ぎの際も、
できるプランを複数提示するよう求めていただき
関係機関とのコミュニケーションを通じ、現状に
たいと思います。各職種がスキルを発揮する過程
即した提案を行う機会が増えてきました。入院中
でスタッフの考えるベストなプランが提示される
の医療やリハ・ケアに偏重した生活プランを一方
ことがありますが、ベストなプランを患者・家族
的に回復期側から提示して引き継ぎを促すのでは
に押し付けることがリハのゴールではありません。 なく、地域の関係諸機関の意向を組み入れた退院
各職種が専門性を活かし、患者・家族のニーズを
プランを検討できているか等、連携の質の管理も
汲んだ、折衷案を含む、可能性のある複数のプラ
大切です。また、地域で開催される会議やカンフ
ンを提示できているかどうか、プランの質を管理
ァレンスへの積極的な参加を通じ、地域との連携
していただきたいと思います。
体制の構築にも尽力いただきたく思います。
①∼③に共通する事項は、患者・家族中心、各
スタッフのスキルの統合です。医師のリハマイン
ドを活かし、チームリーダーとして各職種の質、
チームの質を管理いただけると有難く思います。
医師同士の連携強化、地域参画を
院外の連携について述べます。まず急性期との
医師による意図的な承認・支持
患者も家族も院内・院外のスタッフも、医師に
よる承認・支持を得るとモチベーションが大きく
アップします。相手は言葉だけでなく声色や表
情・態度を細かに観察しています。患者・家族や
院内・院外スタッフとのコミュニケーションの際、
連携では、医師同士の連携力の向上に期待します。 この点にご留意いただき、場面によっては意図的
重度な方が増え、より早期の連携が求められてい
な承認・支持の姿勢を打ち出すと効果的です。
医師から医師へ
先達から学んできたリハ医師像
菅原 英和
初台リハビリテーション病院 診療部長、当協会理事
日本リハビリテーション医学会指導責任者、認定臨床医、専門医
リハ科医師として行うべきこと
気管切開や経管栄養のチューブがあるからとい
って受け入れを断らないでください。回復期リハ
私がこれまで出会った先達から学んできたこと
病棟入院時の気管切開の 60 %、経管栄養の 50 %
をもとに、回復期リハ病棟専従医がチームの要に
はその後の回復で離脱可能です。不要なチューブ
なるために求められることを述べたいと思います。 から患者を解放することもリハの大切な仕事です。
回復期リハビリテーション◆ 2015.7
43
Part 2
寄稿 誤嚥性肺炎や尿路感染症等の合併症が起きた場
ライドが高く切れやすい医師には誰も情報を上げ
合には迅速な対処がなによりですが、合併症が起
なくなり、他職種の協力が得られず最終的には孤
きてしまうとリハが中断してしまいます。できれ
立していってしまいます。
ば早期の嚥下機能評価や残尿測定等で合併症を起
こさない予防策を充実させましょう。
生活や家族背景も含めて考える
片麻痺、対麻痺、高次脳機能障害、失語、摂食
医師はついつい医学的側面からだけで物事を考
嚥下障害等の機能障害の適切な評価、予後予測に
えてしまいますが、患者の生活や家族背景なども
基づいたリハゴール設定、リハ処方や装具処方、 含めて考えられるのがリハ医です。
嚥下造影・嚥下内視鏡検査や痙縮、疼痛の治療等、
たとえば、内科的には 1 日 3 ∼ 4 回投与が推奨
リハ科医師として行うべきことを勉強しましょう。 されるインスリン注射を、介助量が多くデイケア
上司や同僚にリハ専門医がいれば仕事ぶりを見習
に行かないと生活が成り立たない障害者に当ては
うといいでしょう。
めてよいか考えてください。
「リハの常識は他科
2004 年の古い調査ではありますが、回復期リハ
の非常識」
「他科の常識はリハの非常識」であるこ
病棟でリハ専門医が関与した患者はそうでない場
とが多々あります。今までの常識にとらわれず、
合に比べADLの改善率が大きかったと報告され
研修医になったつもりで頑張りましょう。
ています。現実的には回復期リハ病棟の約 6 割は
院内にリハ専門医が 1 人もいない状態ですので目
指すべき医師像をつかみにくいかもしれませんが、
障害の程度、回復の見込みの説明は大切
患者・家族との面談のときは病気の説明だけで
学会や研修会に積極的に参加し先達から学ぶ努力
終わるのではなく、障害の程度や回復の見込みに
をしましょう。できればリハ専門医を目指し後輩
ついてわかりやすい説明を心がけましょう。患者
の良き見本となってください。
のやる気を引き出しつつ障害受容をも促すような
リハスタッフや看護師も良き教師
リハスタッフや看護師も良き教師です。新人の
療法士ですら学生時代に 3 ∼ 4 年間リハを学んで
きています。院内でリハのことを一番知らないの
は他科から来たての新任医師かもしれません。わ
絶妙な説明ができればいうことはありません。福
祉・行政等を含めた幅広い知識をもとに、退院後
の生活像についても説明すると本人も家族も安心
して退院を迎えられると思います。
退院後の生活の可能性を追求
からないことをスタッフに聞くことは決して恥ず
回復期リハ病棟退院時のゴールが患者のゴール
かしいことではなくリハ医であれば誰もが経験す
ではありません。退院後どのような生活を送るこ
ることです。
「聞くは一時の恥、聞かぬは……」と
とになるのか、家事や屋外の活動には参加できる
いう諺がありますが、他職種にたくさん質問でき
のか、復学・復職の可能性はあるのかについても
る謙虚な医師ほど早く成長している印象がありま
考えましょう。屋外歩行が見守りの状態で退院し
す。高すぎるプライドは百害あって一利なし。プ
た患者さんが数か月後には歩いて通院できるよう
44 回復期リハビリテーション◆ 2015.7
回復期リハ病棟専従医がチームの要になるために
になることは決して珍しくありません。家事や復
認められたのは大変ありがたいことです。しかし、
職についても同様のことがいえます。
医師研修を 2 日間だけ受け、週 5 日病棟にいれば
私が担当した患者さんで重度の失語と右片麻痺
算定可能というのは敷居が低すぎると思います。
が残り、復職は絶対に無理だと思われたものの、 「リハの経験が 3 年以上」も定義が曖昧です。切磋
退院後に更生訓練や職業訓練を経て発症 4 年後に
琢磨のない 3 年では意味がありません。
「週末に
フルタイムで復職された方がいます。
「一番の教
2 日間リハの講義を受けてきたので今日から割増
師は患者さん」
。先達は一様にそういいます。むや
の入院料をいただきます」といって患者・家族が
みにゴールの上限を設けずに可能性が少しでもあ
納得するでしょうか? 「こんなに幅広い知識や
れば追求していきましょう。
技能を兼ね備えた医師が担当してくれるんだから、
入院費が多少割高でも納得できる」
。そう誰もが
幅広い知識・技能の獲得を
思える制度への改定が望まれますし、皆様にもぜ
体制強化加算で医師の関与にインセンティブが
ひそのような医師を目指していただきたいです。
医師から医師へ
スタッフとの日頃のコミュニケーションが大切
藤田 正明
伊予病院 院長、当協会理事
日本リハビリテーション医学会専門医・指導医
病棟で働くリハ医すべてが専従医
当院は回復期リハ病棟を 4 病棟 218 床有し、各
病棟には 1 名の専従医と複数名の専任医を配置し
ている。主専従医が不在の場合は他の専任医が専
症やリスク管理が不良だとリハプログラムが進ま
なくなる。正確な診断、適切な体調管理ができな
いと医師としての信頼が損なわれる。
医学の進歩とともに新しい医学的知識・技術の
習得も必要であろう。
従医の役割を果たしている。その意味では回復期
リハ医は障害を評価する。機能的目標(どこま
リハ病棟で働くリハ科の医師(以下、リハ医)の
で良くなるか)
、社会的目標(どこで暮らすかな
すべてを「専従医」と呼んで差し支えないだろう。 ど)を定め、リハ訓練を指示・処方する。医学的
ここでは専従医という言葉にとらわれず、回復期
な判断のもと、治療目標と方針、訓練内容、実施
リハ病棟に参画する多職種チームの「要」として
する際の注意、禁忌事項等をチームスタッフに明
リハ医の役割・あるべき姿について思いを述べる。
確に伝えることが大切だと思う。
改めてリハ医とは
患者・家族のニーズを把握し、病状と機能の状
態、機能予後、社会的予後を説明し、同意を得な
改めてリハ医の役割・あるべき姿とは何だろう。 がらリハプログラムを進めていく必要もある。
疾患の診断、合併症管理・治療やリスク管理等。
リハ治療では多職種チームで患者・家族にかか
これらは医師として最小限の役割だ。診断が異な
わっていく。リハ医はチーム全体の牽引役、リー
れば機能予後が変わってくる場合があるし、合併
ダーの役割を果たす必要があるだろう。各スタッ
回復期リハビリテーション◆ 2015.7
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Part 2
寄稿 フの集めた患者情報を整理し、チーム内での情報
社会的視点をもって患者・家族とかかわり、チー
共有推進の旗を振る。目標に向かってPDCAサイ
ムリーダーとして病棟全体の管理も担う。このこ
クルを常に回しながらリハプログラムの進捗状況
とは回復期リハ病棟協会が提唱する「医師 10 カ
を俯瞰し、適宜修正を呼びかけることもする。
条宣言」の実践そのものであろう。
スタッフを前向きな気にさせる役割も
「医師10カ条」の実践を
リハ医はチーム各人にそれぞれが担っている役
「病棟内に医師がいる時間が短い」
「病棟内で
割の大きさ、重要性を伝え意識を高める。掲げた
(他職種から見て)医師が何をしているかわかり
目標は達成可能であると前向きな気持ちをチーム
にくい」という話を耳にする。病棟やチームへの
内で醸成することもリーダーの資質の1つである。 リハ医のかかわりの薄さが危惧される。リハ医は
多忙を言い訳にせず、スタッフとの日頃のコミュ
忙しい。
「10 カ条宣言」を実践していれば暇でい
ニケーションにも心を砕き、一歩ずつ地道に良好
られるはずがない。同宣言が出された時に当院で
な関係を築いてほしい。
も全医師に伝えて以降は各人の自主性に任せてい
リハ医は医学的視点だけでなく、機能的視点、 たのでこの機会に再度周知し実践を促したい。
医師から医師へ
将来の設計図を描き、治療方針を明示する役割
杉山 瑶
東京湾岸リハビリテーション病院 リハビリテーション科(病棟専従医)
日本リハビリテーション医学会専門医
働して再構築する心構えをいう。疾患や障害の医
真の生活は病院を出たあとに始まる
リハ医学はPhysical Medicine and Rehabilitation
と称されるように、人間の身体の動物的機能を治
療する医学の立場と、患者の生活を再建するリハ
の立場の両者で成り立っている。
学的管理に加え、患者の将来の設計図を描き、そ
れを治療方針として患者・家族や多職種からなる
チームに明確に示すことこそが、リハ科を専門と
する医師の役割であると考えられる。
私は平成 26 年 4 月から回復期リハ病棟の専従
医として勤務している。当院は 3 病棟 160 床から
救急医療が病院の入口とすれば、リハ医療は病
なる回復期リハの専門病院で、常勤医師 9 名中 7
院の出口にあたると私は考えているが、障害をも
名がリハ医療に関する 3 年以上の経験を有し、専
った人の真の生活は病院を出たあとに始まる。リ
従医要件に係る研修を修了している。私を含めた
ハ医療の成否が明らかになるのは大げさにいえば
6 名が日本リハ医学会認定のリハ科専門医である。
患者の人生が終焉を迎えたときである。
リハ・マインドとは、単に目の前の患者の疾患
1病棟に集中できるメリット
や症状に対処するのではなく、障害をもった人の
専従医制の最大のメリットは、1 人の医師が 1
人生を全体として見通し、将来にわたる生活を協
つの病棟に集中し、より効率よく働けるようにな
46 回復期リハビリテーション◆ 2015.7
回復期リハ病棟専従医がチームの要になるために
ったことである。他の医師の担当患者の病状やリ
も、院長回診、栄養・褥瘡回診、症例検討会等の
ハの進捗状況も把握しやすくなり、バイタルサイ
機会に他病棟を訪れることはあるが、やはり得ら
ンや安静度、食事内容や病室移動等を含め、こま
れる情報は限定的である。
めに担当者と話し合える。病棟カンファレンスで
第 3 は、第 1・第 2 の点にもかかわるが自己研鑽
は看護師、療法士、社会福祉士に専従医が加わり、 という意味で不安がある。どれほど院内システム
病棟全体として患者の活動性を向上させるための
の均一化に努めても多少は病棟ごとの特色がある
方策を話し合ったり、勉強会を行ったりしている。
ものだ。他の医師の症例から学べることは無限に
回復期リハ病棟の入院患者は 1 日 3 時間の個別
ある。せっかく医師 9 名が勤める病院でありなが
リハに自主トレーニング等を加えても1 日 20 時間
ら専従医制により病棟を訪れる医師が限られ病棟
程度を病棟で過ごす。病棟をリハに適した環境に
全体として診療内容に偏りが生じる可能性がある。
するために専従医が病棟全体を見渡す目をもって
マネジメントに携わる意義は大きい。
外来・訪問行えず他病棟みる機会も減る
専従医制にはデメリットもある。
第 1 は、外来診療や家屋訪問が行えないことで
チームの機動力をリハの効果として還元
回復期リハ病棟の専従医制は、医療職にとって
はコミュニケーションをとりやすく、チーム一丸
となって働きやすい環境を作り出した。
一方、患者・家族にとっては、専従医が主治医
ある。本来リハは病院内で完結するものではなく、 であれば常に病棟にいて頻繁に診てもらえる満足
入院中から退院後の生活再建までの一連の流れを
感・安心感はあるだろうが、必ずしもそれは身体
一人の主治医が受け持つことが望ましいと考える
能力の向上や介助量の軽減に直結しない。
が、現行制度では他の医師に退院後の診療を依頼
専従医制のメリットであるチームとしての機動
せざるを得ない。外来や退院後訪問を通じて担当
力をいかに患者・家族にリハの効果として還元す
患者の退院後の生活を直接伺う機会がなければ、 るか、それが今後の課題である。そのためにも、
入院中の診療を反省し今後に活かすことも難しい。 医師を含むチームのメンバーが各自の専門領域の
第 2 は、直接担当していない他の病棟を訪れる
機会が減ったことである。当直中や急変時以外に
いっそうの研鑽に努め、チームとしての力を高め
ることが求められていると感じている。
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