委員会視察報告書

視察報告書
委員会名
視察日時
環境福祉委員会
委員名
加
茂 みきお
平成27年7月21日(火)午後1時00分~午後2時30分
兵庫県尼崎市
人口:約45万3千人
面積:50.72k㎡
視察先・概要 財政力指数は0.82。自主財源比率は50.78%。
市域の3分の2以上が海抜3m以下。
平成21年、中核市に移行。平成28年に市制100周年を迎える。
視察内容
「高齢者等の見守りの取組み」について
尼崎市においては平成21年度から尼崎市社会福祉協議会と連携して、高
齢者見守り体制の構築に取り組んでいる。地域住民を中心に、地域包括支援
選定理由
センターなどの専門機関と連携しながら、高齢者の見守り活動を行ってい
る。ボランティアや事業者、各関係機関との連携について積極的であり、高
齢者等の見守り取組の事例として参考になると判断した。
豊田市の
現状と課題
本市においては、高齢者見守りネットワークとして、高齢者の見守りシス
テムは構築されているが、実際にその機能が有効に働いているのかの目安と
なる実例が多くはない状況である。
平均年齢は 79.3 才。65 才以上の高齢者の人口比は 26.1%と全国平
均とほぼ同じだが、単身高齢者が 40,628 人と多く人口比は 8.7%と高
い。
そこで高齢者を見守る仕組みとして見守り安心事業をスタートさせ
た。地域でのつながりづくりを活動の留意点とし、実施圏域ごとに見
守り安心委員会を結成し、65才以上のみの世帯で見守りを希望する
人を対象に、町会役員、民生委員を中心とした地域住民が活動主体と
なり、2週間に1度声かけや、1週間に1度住居の外観からの確認に
視察概要
よる見守りを行なっている。また尼崎市社会福祉協議会に事業を委託
している。
平成21年度にモデル事業として始め、22年度から事業化した。
平成27年度、事業費は 1,143 万 2 千円。社会福祉協議会は 74 あり、
単位福祉協会(自治会)は 618 あるが、平成27年2月現在の事業実
績は、実施地域 35 社会福祉連絡協議会、活動者数 1,618 人、登録者数
は 3,985 人となっている。(活動者1人あたり対象者1~2人を担当)
今後の事業展開として、対象地域の拡大、事業内容の拡大、災害時
要援護者対策への発展、地域福祉会議への発展が課題だ。またそれを
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達成するために、地域福祉活動専門員(CSW=コミュニティーソー
シャルワーカー)を社会福祉協議会に配置していく。
▲説明員の尼崎市健康福祉局福祉部福祉課の義永千穂係長
尼崎市においては、単身高齢者が 40,628 人と多く、人口比は 8.7%
と高いことから喫緊の課題として見守り安心事業を進めている。
評価と
その理由
尼崎市は、当初は孤独死の抑制を留意点としていたが、今後は直接
的な孤独死の防止手段ではなく、高齢者の孤立を防ぎ、地域のつなが
りをつくる手段として、孤独死の防止より孤独生の防止としたい、と
いう考え方が素晴らしい。
尼崎市では、社会福祉協議会とは、福祉協会=町内会を意味し、社
協の地域活動は町内会=自治会活動が中心となっていた。現在 618 あ
る町会=自治会が地縁組織として見守り活動を担っている。平成17
年の介護保険法改正により、地域住民の保健・福祉・医療の向上、虐
待防止、介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関として地域包
本市に反映
できること
括支援センターが整備されてきたが、本市として、地域包括支援セン
ターが自治区や老人クラブ、女性会、民生委員とさらに連携して活動
できる見守り事業の体制を構築することを検討すべき。
配達中に異変に気づいたら市へ連絡してもらうため、新聞、牛乳、
個別宅配などの事業者や、水道メーターやガスメーターをチェックす
る事業者と見守り協定を結ぶ体制を構築すべき。
また、豊田市において、跡継ぎはいるが同居していない家庭が増加
しており、近く超高齢化時代を迎える豊田市として参考とすべき。
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視察報告書
委員会名
視察日時
環境福祉委員会
委員名
加
茂 みきお
平成27年7月22日(水)午後1時30分~午後3時00分
広島県呉市
人口:約23万9千人
面積:352.8k㎡
呉湾は東洋一の軍港として栄えた。第二次大戦で戦艦大和を建造した
視察先・概要
呉海軍工廠があった。戦後は造船、鉄鋼業を中心に発展。
平成15年に下蒲刈町を、16年に川尻町を、平成17年に音戸町、
倉橋町、蒲刈町、安浦町、豊浜町、豊町の8町を編入合併した。
財政力指数は0.60、自主財源比率は44.23%。
視察内容
「減塩による健康増進の取組み」について
呉市においては、健康寿命の延伸にむけ、高血圧の原因でもある塩の過剰
摂取に着目した本取組を推進している。減塩への意識づけや実践につなげる
選定理由
環境づくりだけでなく、地域医療や飲食店の減塩メニューなど様々な分野と
の連携も行っており、本市における、今後の健康増進の取り組みを考えるに
あたり、良い視察事例であると判断した。
豊田市においては健康への関心を高め、健康づくりを持続し、健康づくり
豊田市の
の輪を広げるための様々な取組を実施している。中でも重要なテーマとして
現状と課題
地域ぐるみの健康づくりの取組を進めているが、より効果的な施策が必要と
されている状況である。
塩分摂取量の多い東日本に比べ、西日本は少ないが、呉市は10g
前後だった。また呉市の高齢化率は33%となった。
(同規模の都市で
は高齢化が1位)
また生活習慣病のがん、心疾患、脳血管疾患について、呉市、広島
県、全国との比較をしたところ、どれも呉市が高率だと分かった。
そこで平成24年、日本の減塩を本気で考えるというテーマで県民、
市民、医療関係者、栄養士、食品業界、行政が一体となった取組み「減
視察概要
塩サミットin呉」を世界初で開催した。
次に健康増進計画・食育推進計画「第2次健康くれ21」を作成し、
基本目標に「健康寿命の延伸」をうたい、
「減塩」をテーマとした健康
生活推進事業をスタートさせた。
食塩摂取量をまずは1日8g未満を目指そうとキャンペーンを張
り、ウォーキング大会や一般健康教室の開催、イベントへの出展、テ
レビ広報を進め、啓発グッズの配布を行なっている。食育の日の毎月
19日と毎週金曜日に健康増進課職員が統一カラーの青色(減塩ブル
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ー)Tシャツ・ポロシャツを着用してアピールしている。
「減塩でおいしい食育」と題して、保健所、保育所・幼稚園、学校
が食育の1つとして減塩に関する連携のため減塩連絡会を設置し、子
どものころから食塩摂取量を減らそうとしている。また減塩リーフレ
ットや減塩レシピを作成し活用している。
特定健診を6千人が受診しているが、健診の結果「減塩プログラム」
として、高血圧かつ食塩摂取量8g以上の人には塩ヘルス(減るす)
教室やフォローアップ教室を開催し、市民に実体験をしてもらってい
る。また調理のコツ講座を開き調理実習を行なったり、登録レストラ
ンがヘルシーランチを提供している。
減塩プログラム教室が終了した人の6ヶ月後の意識調査では、漬物
にしょう油をかけなくなった人、刺身につけるしょう油が少しになっ
た人、うどんの汁を半分以上残す人が20~30%増加した。また減
塩プログラム参加者の推定食塩摂取量の調査結果は、男性は9.6g
から9.2gへ、女性は10gから8.4gへ、総計では9.9gか
ら8.6gに減少した。
減塩施策の計画期間は当初10年計画だったが、5年で中間報告す
るくらいならと、5年計画とした。
今後は医療機関との連携による推定食塩摂取量検査をはじめ、地域、
学校、企業と一緒に、子どもから大人まで、より幅広く食の健康づく
りに取組むとのこと。
▲説明員の呉市保健所健康増進課の下田真由美主幹
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まず、人づくりの施策の中に健康づくりを入れている。
そして、基本目標に「健康寿命の延伸」をうたい、健康づくりにつ
いて市民に分かりやすい「減塩」をテーマとしている。
評価と
その理由
また、
「第2次健康くれ21」は、厚労省の「健康日本21」より先
に策定しており、先進事例だ。
さらに、特定健診に尿検査による推定食塩摂取量検査を追加実施し、
施策推進の追跡調査を行なっている。これは呉市独自の施策であり、
評価できる。
本市に反映
できること
「評価とその理由」参照
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視察報告書
委員会名
視察日時
環境福祉委員会
加
茂 みきお
平成27年7月23日(木)午前10時00分~午後11時30分
大阪府大阪市
視察先・概要
委員名
人口:約266万5千人
面積:225.21k㎡
大化の改新後「難波宮」が建設されてから1300年余の日本最古の
都市。町の原型は16世紀に豊臣秀吉によってつくられた。
財政力指数は0.90、自主財源比率は59.87%。
視察内容
「PCBの適正管理の取組み」について
大阪市は全国5か所にある高濃度PCB処理を管理する自治体の一つで
選定理由
あり、処理の進捗や安全管理の状況を鑑み、本市のこれからの取組の参考と
なると判断した。
平成26年度に国はPCB処理基本計画を変更し、全国のPCB廃棄物処
豊田市の
理事業所の相互活用と事業完了期間の10年延長をした。そのため、これま
現状と課題
で以上にPCB処理の安全操業を監視・指導するとともにPCB廃棄物の早
期処理に向けた取組を推進する必要がある。
平成18年度から操業を開始したが、始めは稼働率を低くし、初年
度の18年度は30%までしか動かさなかった。豊田や東京の稼動状
況を参考にして、徐々に稼働率を高めていった。また他のプラントの
事故を十分検証して処理に当たっている。
平成18年度から2年間は、大阪市内のものを処理してきた。それ
以降は6府県のものを処理している。しかし変電施設3t もの油が入
る大型トランスなど、大阪市内のものがかなり残っている。
平成13年の特措法(PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特
別措置法)により事業者から年に1度届出義務があり、1,600の
視察概要
届出事業者に提出させている。届出がなければ督促している。
PCB廃棄物は、廃棄物になって初めて対称となり、現在使用して
いるものは廃棄物とはならない。ただし今後廃棄されると処理機関に
間に合わない可能性があり、法律上現在使用しているものは義務付け
がないため、使用している事業者に効力がないことが問題だ。
そもそもジェスコ大阪の地元の方の声は「早く処理を終えてほしい」
だが、国の要請に地元は「できるだけ期間内に終わってくれ」と言っ
ていた。住民にはプラント施設が近いことから、緊張感がある。平成
28年7月までとされていた処理が10年延長されたことでさらに住
民に緊張感が増している。一日でも早く終わるように進めなければな
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らないと考えている。
これまでボヤが発生しているが、操業を止めたことはない。運営会
社に任せており、トラブルの報告がちょこちょこあるので、報告の遅
延を問題視している。
従業員について、人がかわると新しく入った人が完全防護服を着て
プラントの中の作業は特に暑く感じるので、室温を2=3度下げる努
力をしており、これによって従業員の定着率が上がった。
おおむね順調に操業を行なっており、平成27年3月末現在、PC
B処理の進捗率は、トランス、コンデンサともに68%となっている。
▲説明員の大阪市環境局環境管理部産業廃棄物規制担当課の有門貴
課長(右)と同課の谷野寛課長代理
これまで大阪市の安全監視委員会だったが、2年前に解散し、新た
にPCB監視部会をつくった。近畿2府4県(14の政令市を含む合
評価と
その理由
計20自治体)で部会を構成している。
処理期間がさらに10年延長され平成39年までに安全かつ完全に
処分を終了させなければならない中で、排出している近畿2府4県の
20自治体で構成するPCB監視部会がその役割を担っていけるよう
に組織化して処分を監視していく体制をつくったことが評価できる。
大阪市では、処分対象の廃棄物を、スクラップ屋に流してしまうと
本市に反映
か、解体工事のときになくなってしまうことが想定されるので、留意
できること
して対応しているとのことだが、豊田市でも同様に違反案件への対策
が必要だ。
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大阪市は、ジェスコ大阪の安全な操業、緊張感ある作業、期限内に
確実に終わらせるといったことを常にジェスコの社長に言っていると
のことだが、ジェスコ豊田に対しても同様に豊田市が働きかけていく
べきだ。
処理期間を10年間延長したことに伴い、10年前に設計・施工し
たときの処理プラントの施設や設備などの技術レベルが、10年延長
することで果たして耐えうるのか?
有門課長は、
「国の説明ではプラントの耐用年数は40年となってお
り、配管などは必要に応じてその都度取り替えるなどして修繕してい
るが、環境省が責任を持って安全が確保できるよう、豊田、北九州と
共に要望していく」と述べた。
これに合わせて、全国5つの処理施設を持つ自治体が1つになって
国の事業を完了させるために必要な要望活動を行なうこと。
国が低濃度のものを民間が処分できるように認定したことで、民間
その他
の処理施設として23の事業者ができてきたことは、早期処分の促進
(意見・課題 が期待できる。
など)
届出事業者にとって、1キロ3万円の処理費用がかかることが負担
となっている。
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