KT120クロスシャントプッシュプルアンプ ARITO@伊吹南麓 本機は、多極管マッキントッシュタイプの クロスシャントプッシュプル(CSPP)アン プの集大成のつもりで製作したアンプで す。 2008年にバイファイラー巻き出力ト ランスの試作依頼を受けて以来、CSPP アンプに取り組み続け、回路理解、OPT 試作、回路試作評価と進めて、徐々にCS PPについて理解してゆくうちに、真空管ア ンプの回路方式の中では最高峰と云うこ とができるのではないかと思えるようにな りました。 真空管アンプの出力回路には大きく分 けて、シングルとプッシュプルの2通りが あります。シングルは回路の都合によりO PTにコアギャップを設けなくてはならない ため低域の再生に不利で、プッシュプル は両出力管の信号合成がOPTの一次側 巻線の電磁結合に依存するので、滲んだ (ボケた)音になると云われています。 820 KT120 400V 0.47μ トリファイラ巻OPT UI18-70 1k 33k 3 10kΩ 100 (B) 18k 100V 100μ 2W 4.3k*2 20(B) 2SC2240 E-272 100V 100μ 10 10 4.7k 100k 2SC2240 2SA1240 2SC1815 1W 15k 1W 22k 6S4A 2W 390k 875Ω 1k 500V 220μ 400V 0.47μ 820 OUTPUT 8Ω 4.7k 33k 1500p 2W 390k 4.7k 4.7k 100k 2SC2240 150 100 2連VR 4.7k E-102 1 875Ω 2SC2240 2SA1240 UI13-24 AFチョーク 2SK 332 18k 2 1W 22k 2SC1815 150 100 INPUT 100k 6S4A 1W 12 0.12μ 1500p KT120 +375.6V +261.1V アンプ部 回路図 +41.8V バイアス 基準電圧 -54.0V 電源トランス UI-23(積厚70mm) EI54-25チョーク 2SK1170 6.3V 2A(橙) (紫) 同一出力管のカソードへ接続 KT120ヒーター 450V 150μ 6.3V 2A(黄) Lch +375.6V Rch +375.6V Lch +261.1V 2W 33k Rch +261.1V 470 350V 10μ 400V 0.1μ 6.3V 2A(赤) 同一出力管のカソードへ接続 KT120ヒーター EI54-25チョーク 280V 0.8A 同一出力管のカソードへ接続 KT120ヒーター D10XB60 (紫) 6.3V 2A(茶) 2W 270k 1N5380B+1N5381B KT120ヒーター 電源部 回路図 同一出力管のカソードへ接続 5 AC100V 50/60Hz 6 6.3V 2A T1.6A 7 0(緑) 8 AC120V 60Hz AC220/240V 50Hz 100V(青) 9 120V(白) 10 T1.6A 10 100V 240V 120V 220V 6.3V 2A (青) 0(灰) (緑) 1N4007 In Out 10V 4700μ 68 Adj 6S4A ヒーター*4 1N4007 317L 100(B) 電圧セレクター (緑) 680 120V(紫) 47 バイアス 基準電圧 Lch (0.6V) Rch (0.6V) (灰) 1N4007 41V 0.1A 63V 390μ 63V 390μ Rch +41.8V 63V 390μ 63V 390μ 330 Lch -54.0V (灰) 1N4007 3k Lch +41.8V Rch -54.0V 一般的に、シングルは音 にシャープな輪郭があるが 力強さに欠け、プッシュプ ルは迫力はあるがピントの 甘い音になると云われてお り、どちらが好みか?とい う論争が昔から尽きないの ですが、CSPPは、回路の 性質上OPTのコアギャップ が不要で、かつプッシュプ ルの信号合成を電磁結合 に依存しませんので、プッ シュプルでありながらシン グルと同様の滲みのない スッキリとした音質と、ロー エンドの迫力、力強くワイド な音質を合わせ持つという 特長があります。 その他、 出力インピーダンスが低く ダンピングファクターが大 きなことや、特性の良いO PTが作り易いという特徴 があります。 本機の回路は、実は昨年末の 醍醐交流会館大ホールでのLPコ ンサートで発表した25E5アンプ と殆ど同じです。 25E5アンプは 染谷ASTR-08の製作例として 製作しましたので、染谷電子で量 産できるトランスのみで製作しま したが、本機のトランスは全て、こ の一台だけのために設計、手作 りしたもので、他のパーツ類も自 分のメイン用のアンプとして、全 て見直しをかけています。 本機はCSPPアンプに取り組む中で これまでに得た成果を盛り込んだアン プです。具体的には、音の輪郭を際立 たせる効果を持つ、カソード電位に対 するスクリーングリッドの定電圧化、そ して再生音に躍動感を与えるドライブ 段のチョークコイル負荷です。 本機は、KT120という新型管を使っ ていますが、バイアス自動調整回路を 設けていますので、ピン配置が同様の 出力管(KT88、6550、6L6GC等) を無調整で差し替えることが可能です。 加えて出力管毎にヒーター巻線を用 意してありますから、6GB8やEL34 等のヒーター・カソード間の耐圧が低く て(±100V)CSPPアンプには使い 難い球も同様に差し替えて、音質の違 いを楽しむことができます。 残留雑音 10~300kHz Lch 460.3μV Rch 708.2μV IEC-A 80.80μV 204.3μV ダンピングファクター (1kHz、8Ω) Lch 15.37 Rch 15.49 2015.11.1 前川有人(滋賀県米原市)
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