工学倫理第5回講義資料

2015/11/1
工学倫理
第5章 技術者のアイデンティティ
第5回
科学者・技術者・技能者の三つを区別するこ
とは、厳密にはできないが、何らかの違いはあ
る。それぞれの役割との関係で、技術者の特徴
をとらえ、科学技術のガバナンスについて考え
る。
5.1 JCO臨界事故の見方
5.2 科学技術とは何か
5.3 科学技術をになう人々
5.4 技術者の位置づけ
5.5 科学技術のガバナンス
5.6 まとめ
教科書:技術者の倫理入門 第四版
杉本泰治 高城重厚 著
杉本泰治、高城重厚
第5章 技術者のアイデンティティ
工学倫理 第5回
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工学倫理 第5回
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大内さんはSQ(スペシャルクルーという作業班)の
副長と同僚(篠原さん)の3人で、高速実験炉「常陽」
用のウラン燃料加工作業にあたった。
ゴム手袋にマスク、3人とも初めての作業だった。副
長の指示に従い、大内さんと同僚は、バケツにウラン粉
末と溶液を入れ、スプーンでかき混ぜた。国の許可を得
ていない会社の「裏マニュアル」に沿った作業だった。
だが、その後、裏マニュアルにもない作業に入ってしま
う。
本来なら、溶液を溶解塔と呼ぶタンクに注入しなけれ
ばならないが、大内さんらは沈殿槽というかくはん機の
ついたタンクに向かった。これも副長の指示だった。
だが、大内さんも、指示を出した副長も、会社から臨
界に対する教育を受けていなかった。臨界の危険性や意
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味さえも知らなかった。工学倫理 第5回
5.1 JCO臨界事故の見方-2
5.1 JCO臨界事故の見方-1
• 事故の発生の状況
(株)JCOの東海事業所(茨城県東海村)
1980年11月に核燃料物質の使用許可
1984年高濃度のウランの液体製品製造の許可
1999年高速増殖炉「常陽」の燃料用
9月29日から硝酸ウラニル溶液の製造を開始
月
硝酸ウラ
溶液 製造を開始
混合均一化作業
正規の手順:1バッチづつ小分けすべき作業
実際:沈殿槽に7バッチ注入
9月30日午前10時35分頃
制限量の約7倍を注入⇒臨界、核分裂反応
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5.1JCO臨界事故の見方-3
5.1JCO臨界事故の見方-4
ステンレ
ス容器
篠原さん40
漏斗
大内さん35
沈殿槽
SC副長
横川さん54
工学倫理 第5回
工学倫理 第5回
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※図はウエブラーニングプラザより引用
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5.1JCO臨界事故の見方-5
5.1JCO臨界事故の見方-6
• 会社から、3人に臨界に関する教育なし。
3人は、臨界の危険性や意味さえ知らない。
本来、使用目的が異なり、また、臨界安全形状に
設計されていない沈殿槽に、臨界質量以上のウラ
ンを含む硝酸ウラニル溶液を注入した。
2000年
4月27日死亡
篠原さん40
失敗知識データベース・失敗百選
JCOウラン加工場での臨界事故(1999年)
http://www.sozogaku.com/fkd/hf/HC0300004.pdf
12月21日死亡
大内さん35
SC副長
横川さん54
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※図はウエブラーニングプラザより引用
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5.1JCO臨界事故の見方-7
• 事故の通報連絡・避難等の対応
10:35頃沈殿槽内の硝酸ウラニル溶液が臨界
警報装置が吹鳴
最初に瞬間的に大量の核分裂反応が発生。その後
、約20時間にわたって、穏やかな核分裂状態が継続
10:43東海村消防本部に「急病人が出た」との報告
(放射線防護の装備なし)(11:49搬送先に出発)
搬
11:19(株)JCO⇒科学技術庁へ⇒12:30首相官邸へ
13:00科学技術庁職員を現地へ派遣
14:00原子力安全委員会へ正式報告
14:30科学技術庁災害対策本部
⇒15:00政府事故対策本部⇒15:30現地対策本部
21:00総理大臣を本部長とする政府対策本部会合が開催
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5.1JCO臨界事故の見方-9
事故の観点:科学技術、法、倫理
科学技術の観点
⇒「硝酸ウラニル溶液」の製造操作や臨界に達したこと
法の観点
⇒核燃料物質の使用許可、作業手順書をも無視して
•倫理への取り組み
倫理 の取り組み 倫理の観点(対人関係の規範)
⇒だれが、だれにという事実に着目する必要がある。
⇒政府機関の報告には、具体的な氏名がない。
⇒裁判等に影響すると考えたのか。
司法はそれほどひよわではない。
公衆の安全確保、あるいは、将来の事故の抑止に役立
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工学倫理 第5回
つような事故分析が望まれる。
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5.1JCO臨界事故の見方-8
原子力安全委員会
15:30緊急技術助言組織の招集決定⇒18:00会合
地方自治体
15:00東海村による350m圏の住民避難要請
22:30茨城県による10km圏内の屋内退避の勧告
10月1日
02:30頃沈殿槽外周のジャケットを流れる冷却水の
抜き取り作業開始
06:15頃臨界状態は停止
その後、ホウ酸水注入
08:50頃臨界の終息が最終的に確認された。
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5.1JCO臨界事故の見方-10
• 事故モデルを組み立てる
事例研究
⇒提示される情報が十分であることが必要である。
学習する人
⇒得られた情報からモデルを組み立てて理解する。
新聞記事
教科書では、事故の情報源として多用している。
⇒新聞記者の目で選別されているが、
⇒記者が目を光らせて観察し、
⇒発生順に逐次報告、
⇒逐次情報なので、
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利用者が全体を一貫して通してとらえる努力が必要
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5.1JCO臨界事故の見方-11
事故直後の新聞に登場するJCOの6人
社長、事業所長、総務部長、技術部課長、
製造部計画グループ長、副長
:管理職
2000年10月 業務上過失致死で逮捕
事業所長、製造部計画グループ長、副長、
製造部長 計画グループ主任
製造部長、計画グル
プ主任、職場長(副長の上司)
職場長(副長の上司)
2003年3月(水戸地裁)
JCO:罰金100万円(原子炉等規制法、労働安全衛生法)
事業所長:禁固3年執行猶予5年罰金50万円
製造部長・製造グループ長、計画グループ長、職場長
計画グループ主任(核燃料取扱主任有資格者)、スペシ
ャルクルー副長:禁固3~2年、執行猶予4~3年
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5.1JCO臨界事故の見方-12
• 倫理の観点からの事故像
高濃度のウラン溶液を一定量以上蓄える
⇒臨界が起きる=原子力技術者には通常の知識
JCOには、大卒技術者20名、核燃料取扱主任7名
これらの技術者は何をしていたのか?
作業員=危険性をよく理解していない公衆
技術者が公衆の安全を確保する注意を怠った
事故の発生⇒管理職の責任をただす
⇒社長などの幹部が責任を取って辞任
管理者の辞任が事故の防止には役立たない。
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5.1JCO臨界事故の見方-13
事故の防止
専門的能力があって、意識が曇っていない技術
者なら、管理職であろうと、卒業したての若い人
であろうと、危害を探知し抑止することができた
。
その意味で、 人の技術者にできることは大き
その意味で、一人の技術者にできることは大き
い。
新聞記事に登場するのが管理職ばかりなのは、
一人の技術者にそれができることを記者たちは知
らないのだ。
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JCO臨界事故の科学技術ガバナンスの教訓
ガバナンスの問題点
事故の事実からは、JCOに原子力の科学技
術を利用する事業を営む資格があったかどうか疑
わしい。全体としてみると、取引先の日本原子力
研究開発機構や、規制行政にあたる行政庁が、ど
のようなチェックをしていたか。取引上、規制上
の緊張関係が欠けていた、といえるのではないだ
ろうか。
工学倫理 第5回
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科学技術のガバナンス
科学技術の安全確保という目的には、それに
応じたガバナンスが必要である。
•
科学技術の安全確保には、法律、規制行政、
企業組織、品質管理、生産管理、安全管理、リ
スク管理、などさまざまなことが関係する。
•
それらの知見が専門別にばらばらの状態では
、実務の役にたたない。
•
科学技術の安全確保を目的とするガバナンス
では、関係者の指標となるように、統合された
ものとなる。
•
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JCO臨界事故の科学技術ガバナンスの教訓
ガバナンスの問題点
• JCO組織全体としてコンプライアンスの意識が希薄
正規マニュアル:溶解塔で溶解し、貯槽へ移す。
裏マニュアル:ステンレス容器で溶解し、貯槽へ移す。
当日の作業:ステンレス容器で溶解し、制限1 ッチ以
当日の作業:ステンレス容器で溶解し、制限1バッチ以
下の沈殿槽に7バッチ注入した。
JCOは、所管行政庁の認可を受けた手順を変更する
について変更の認可申請をせず、裏マニュアルとするこ
とに違和感がなく、それが違法であることを多くの人が
知っていた。そのうえ、副長ら作業員は、裏マニュアル
さえも無視した。
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JCO臨界事故の科学技術ガバナンスの教訓
ガバナンスの問題点
• 業務に関する基礎知識など企業内教育の不足
硝酸ウラン工程の作業は、同社にとって2年
ぶりで、副長の経験が浅く、他の2人は未経験
で、臨界を含む核物質の取扱注意に関して、社
内教育を受けていなかった。もし臨界について
基礎知識があれば、この事故は起きなかった。
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5.2 科学技術とは何か-1
・核燃料取扱主任者と作業改善変更システムの問題
JCOは作業手順書や指示書の作成、または改善変
更にあたり、主任者の承認手続きをはじめ、技術管理
上の手続きを定めていなかったようだ。技術管理上の
続
設定 変更
、
者 承認 権限を
手続きの設定や変更について、主任者に承認の権限を
与えるなど承認手続きを明確化したシステムがなく、
主任者もまた責任感が十分でなかった疑いがある。
危機管理対策の検討と実施をJCO幹部がリーダー
シップを発揮するとともに、主任者に技術的管理の上
の権限を与えることである。この種の事故を防止する
最後の砦は主任者への問合せであり、それがあれば、
事故は防止された。 工学倫理 第5回
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5.2 科学技術とは何か-2
• 「科学技術」か「科学・技術」か
1995年 科学技術基本法が制定
1996年 第1期5年の科学技術基本計画が実施
サイエンス・アンド・テクノロジー=科学・技術
法の領域⇒テクニカル・プロブレム=技術的問題
美容領域⇒シャンプー・カットの専門技術、先端技術
これらの技術も⇒英語ではテクニック=技術
自然科学の領域で使われる技術とは異なる。
(自然)科学的技術は、科学技術と呼ぶようになった。
日本語の科学技術=「科学アンド技術」
または「(自然)科学的技術」の2つの意味。
工学倫理 第5回
JCO臨界事故の科学技術ガバナンスの教訓
ガバナンスの問題点
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• 日本人の「科学技術」像
日本では、エンジニア=技術者
エンジニアリング=技術としている。
英語:テクニック、テクノロジー、エンジニアリング
は 異なる意味である
は、異なる意味である。
日本語:すべて「技術」で3語の区別ができていない。
日本人は、サイエンスからテクニックまでをひっ
くるめて「科学技術」の1語で表現している。
↓
しかし、英語(=国際的に)は異なることに注意
する必要がある。 工学倫理 第5回
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5.3 科学技術をになう人々-1
5.2 科学技術とは何か-3
テクニック、テクノロジー、エンジニアリング
の3語は科学技術について語るキーワードであり
、区別する必要がある。
• 技術者と公衆の関係
技術者=一般市民と同じ平面で市民生活を営む
=同時に科学技術の専門家としての業務に従事
技術者=公衆+科学技術の専門的な知識・経験・能力
技術者-科学技術の専門的な知識・経験・能力=公衆
公衆+科学技術の専門的な知識・経験・能力=技術者
技術者
⇒公衆の楽しみや苦しみや願望を知覚し理解すること
ができる
⇒公衆の願望を叶える物品やサービスの設計が可能
工学倫理 第5回
工学倫理 第5回
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工学倫理 第5回
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5.3 科学技術をになう人々-3
5.3 科学技術をになう人々-2
• 科学者・技術者・技能者・作業員の区別
アメリカ:企業などで職能の区別がある。
科学者、技術者、技能者、職長、作業員
日本:アメリカほど明確ではないが、
職能の区別はある。
• 科学者
科学者:科学的研究をする人
科学的研究⇒自然現象の法則性の知識が得られる
科学:研究方法と知識の体系
科学者の研究の成果+技術者の介在
⇒人間生活に利用 工学倫理 第5回
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5.3 科学技術をになう人々-4
A
B
C
5.3 科学技術をになう人々-5
表5.2 技術と製造物の「欠陥」
技術の段階
製造物の欠陥
設計
設計上の欠陥
製造
製造上の欠陥
使用(運用) 表示(指示・警告)上の欠陥
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• 技能者
人間はみずからの福利のために、技能を身につけた。
技能は、個々の技能ごとに定型化され、分業化する。
熟練によって高度なレベルに達し、さらなる改良。
技能を体系化して利用する方法=テクノロジー
職人として自立または技術業の技能者として活躍。
• 作業員
技術や技能を持たず、また、専門家といえるほどの技
能をもたない。技術者が設計し、技能者が行う業務にお
いて、指図を受けて作業に従事。
科学技術が関与する営みの多くは、作業員を必要とす
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工学倫理 第5回
る。
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• 事例 1本の巨樹を見たら、その周りもよく見ること
リビー:卒業数カ月、町のアシスタント・エンジニア
新設の下水道管の現場検査員
バッド:経験を積んだ現場監督、配下に何人かの作業員
下水道工事の現場に、樹齢300年の樫の木
リビー ⇒ (自分自身の独断に驚きつつも)
リビ
バッドに伐採の中止を命令。
バッド ⇒ 公共事業部長に報告し、その指示で伐採。
「これが正しいやり方なんだ。このこと
に同意できないなら、工事についてもっと
勉強しなければいかんよ。」
リビーの選択肢は何だろうか。
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あなただったらどうするか。
工学倫理 第5回
欠陥を抑止し安全を図る「設計」は技術者にのみ
可能なことである。
「製造」における欠陥の抑止には、技術者だけで
なく、製造に従事する技能者や作業員も関わる。
「使用」における安全性は、消費者にさえ期待で
きるところがある。
工学倫理 第5回
• 技術者
産業革命⇒大量生産・大量消費に対応する技術が発生
それを業とする技術者(engineer)が専門職とし
て認知される。
日本:工学(engineering science)をになう人
=工学者
アメリカ:工学者もエンジニア
技術者
=自然現象の原理、科学的・工学的研究の成果を
あるいは科学技術を人間生活に利用する。
技術者の特徴となる業務=設計
人間生活に役立てる意図の表現=設計
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工学倫理 第5回
製造物=設計⇒製造⇒使用(運用)の3段階
5.4 技術者の位置づけ-2
5.4 技術者の位置づけ-1
•
アメリカの事情
技術者が技術業の実務を指揮する権限を持つ。
指揮官⇒軍曹⇒兵 という組織、命令系統
歴戦の軍曹も指揮官の命令に従う。
あのような構成がアメリカ社会を支えている。
技術業の実務でも、同様である。
工学倫理 第5回
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5.4 技術者の位置づけ-3
•日本の事情
契約の自由:技術者は企業と対等な立場で交渉し、
自由な雇用契約を結ぶことが可能=民法の雇用契約
労働基準法:労働者を弱者として、雇用契約の自由を
制限(強行法規として民法に優先)
労働組合法 労働組合を組織 、団結を擁護する。
労働組合法:労働組合を組織し、団結を擁護する。
組合民主主義が普及し、労働者の差別を禁止
技術者、技能者、作業員の区別を禁句とする風土
5.4 技術者の位置づけ-4
高度成長期が終わって以来、雇用思想の変化
ブルーカラー:
工場の生産ラインに沿って流れ作業で一斉に働
く。
ホワイトカラー:
個人の裁量にもとづく、効率的な働き方が必要
とされる。
日本では、高度成長期に、技能者の経験と技量を十
分に尊重しないと、一流のモノ作りが困難
⇒技術者が技能者を対等視する「風潮」が生まれた。
工学倫理 第5回
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技能には自立性があるので、この報告(図5.4)
の傾向は理解できる。その一方で、新しい製品は、
技術者による「設計」なしでは生みだされない。そ
の観点から、技術と技能の関係について考えよう。
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5.5 科学技術のガバナンス-2
工学倫理 第5回
•小渕首相の言葉(2000年当時)
「科学の進歩の速さには驚異的なものがあります。科
学が進歩し続ければし続けるほど、科学をしっかりとコ
ントロールできるような確かな心が必要になります。」
科学技術全体をどう統治(ガバナンス)するか、
国のレベル、地方自治体のレベル、あるいは
ベ
地方自治体
ベ
ある
企業のレベルで、科学技術のガバナンスがある。
・第1話 技能者を育てて技術と結合(デンソー)
・第2話 技術系出身のトップ(富士ゼロックス)
・第3話 初の事務系CEO(マイクロソフト)
技術系、事務系にはそれぞれの素養があり、その
ことが、科学技術に関わる意思決定に影響を及ぼす。
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工学倫理 第5回
5.5 科学技術のガバナンス-3
第1話 技能者を育てて技術と結合(デンソー)
バブル経済崩壊後に社内での技能者養成をやめ
た企業が多いが、当社はずっと続けてきた。社内
の研究所には技術者とほぼ同数の技能者を配置し
、専用機械や金型を作る部門にもメダリストをは
じめとする熟練技能者がいる。社内で技能者が果
たしている役割はものすごく大きい。
工学倫理 第5回
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5.5 科学技術のガバナンス-1
討論1
工学倫理 第5回
工学倫理 第5回
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第2話 技術系出身のトップ(富士ゼロックス)
会社設立以来、7代目にして初の技術系出身のト
ップ。複写機の代名詞でもある米ゼロックス社製品
の輸入販売会社だった当時の68年に入社した。内部
に開発・生産部門をもつメーカーへと転換すべきだ
という戦略のもと、開発要員として採用された1期
生だ。
開発から生産に至るモノづくりの中心部門に常に
関わってきた。日本の顧客に対応できるよう乗り出
した純国産品の開発も成功に導いた。「39年間で、
開発・生産部門がゼロの状態から、逆に米ゼロック
ス社に輸出するまでになった」と自負する根っから
の技術屋だ。メーカーとしてさらなる成長には技術
者としての視点が必要だと期待されてかじ取りを任
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工学倫理 第5回
された。
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5.5 科学技術のガバナンス-4
第3話 初の事務系CEO(マイクロソフト)
半導体最大手、米インテルのトップに就いたのは2005
年5月。1968年設立のシリコンバレーの名門企業で5代
目となる最高経営責任者(CEO)は同社初の事務系だ
。技術偏重ともいわれる経営を顧客重視に転換する新戦
略を目指す。
前任のクレイグ・バレット氏(現会長)からCEOを
引き継ぐと 企業マ クや製品ロゴの刷新 新ブランド
引き継ぐと、企業マークや製品ロゴの刷新、新ブランド
の立ち上げなどを連発。「いい技術さえ開発すれば売れ
る」との社風を戒め、顧客の要望に耳を傾け市場の変化
に目を凝らす。
ここ数年、主力のMPUで競合するアドバンスト・マ
イクロ・デバイス(AMD)の攻勢にあい、インテルも
余裕の横綱相撲とばかりにはいかなくなってきた。人員
削減や不採算事業からの撤退など「守り」の手腕を試さ
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工学倫理 第5回
れる場面も増えてきた。
工学倫理 第5回
5.6 まとめ
倫理は、人間関係に目を向ける。
JCO臨界事故は、倫理の観点からは、技術者
が公衆の安全を確保する注意を怠り、公衆に相当
する作業員が犠牲になった。
•
ついで、科学技術が何であるかを明らかにし、
科学者、技術者、技能者、作業員それぞれの役割
をとらえた。
•
科学技術を人間生活に利用する技術者の立場に
は、アメリカあるいは日本の労働事情もからむ。
•
これは大きくは、科学技術のガバナンスに関わ
る。
•
•
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