ウソ - 核のごみキャンペーン・中部

中部電力さん、もういいかげんウソをつくのはやめてください
使用済み核燃料の
「97%リサイクル可能」は
ウソ
11 月の「電気ご使用量
のお知らせ」をご覧になり
ましたか?
中部電力は、先月からこ
のお知らせの裏に原発関
係の広告を載せ始めまし
た。
でも、この広告には2つ
のウソがあります。
①「原子力発電で使い終えた燃料の約 97%は、リサイクル可能です。」は
ウソ
下の図の右側に示すように、使用済み核燃料は、3%の核分裂生成物(死の灰)と1%の
プルトニウム、そして 96%回収ウラン(=燃え残りのウラン 235:約 1%+元々の燃えに
くいウラン 238:約 95%の混合物)でできています。
これらを再処理に
よって分離し、中の
1%のプルトニウム
と 96%の回収ウラ
ンを取り出せば、再
び燃料として利用で
きるから、1+96
で「97%リサイク
ル可能」と電力会社
言っているわけです。
(*最近は、高燃焼
度燃料を使用してい
るため、核分裂生成
物の割合が5%程度
と高くなっているも
のもある。その場合、
回収ウランの割合は
94%程度となる)
(中電 HP より↑)
●汚い回収ウラン、再濃縮するのは合理的?
この内、1%のプルトニウムは、コストが高くなろうが MOX 燃料に加工してプルサーマ
ルとして再利用できると言えるかもしれません。しかし、96%の回収ウランは、現在使い道
がないのが実情です。
回収ウランは、天然ウラン(U235 が 0.7%程度)よりも U235 の割合が 0.9%∼1.0%と
高いので、核燃料用の濃縮ウラン(3%∼5%程度)にまで濃縮度を高めるには有利だから、
無駄にしないで再濃縮して使うのだと電力会社は言っています.
しかし、実はこの回収ウランには、再処理で十分に分離できなかった核分裂生成物や超ウラ
ン元素などが不純物として残っています。その中には透過力の強いガンマ線等を出す核種も
あるため、作業をする人の被ばく管理や再濃縮・再転換等を行うプラントの汚染といった問
題が出てきてしまいます。そのため、ほとんど再濃縮されることなく放棄されています。
(*かつて、東海再処理工場で分離した回収ウランを人形峠のウラン濃縮原型プラントで試験的に再濃縮し、
燃料に加工して浜岡や島根、柏崎刈羽等の原発で使用したことはある。人形峠の濃縮プラントはその後 2001
年に廃止。現在、商業プラントで再濃縮する計画はない。中部電力は 2009 年時点で 560tU の回収ウランを保
有しているが、利用計画はない。)
フランスでも、再処理工場で分離された回収
ウランは再利用すると言いながら、実際には廃
棄物としてシベリアのトムスク7に送られて
いるということが、ドキュメンタリー映画「終
わらない悪夢∼放射性廃棄物はどこへ?」
( 2009 年 フ ラ ン ス 、 Arte France /
Bonne・Pioche 制作)の中でも紹介されて
います。https://goo.gl/bXGqw4(8 分 30 秒
ごろ∼)
一方、六ヶ所再処理工場では、核物質防護上プルトニウムを単体で抽出することが許され
ていないため、必ず回収ウランと1:1の割合で混ぜられた状態で取り出されます。
従って、六ヶ所再処理工場と MOX 燃料加工工場がもし稼働すれば、1%のプルトニウム
と1%の回収ウランは、MOX 燃料の原料として使われることになりますが、残りの95%
の回収ウランについてはやはり使い道がありません。
● 再濃縮しても搾りかす(劣化ウラン)はどうしたってゴミ
たとえ再濃縮できたとしても、一方は U235 の濃縮度は高まりますが、一方は通常のウラ
ン濃縮工程で発生するのと同様に U235 の割合が天然ウランよりも低い「劣化ウラン」(ほ
とんどが U238)になります。(回収ウランのうちの8割ぐらいが劣化ウランとなる。)
しかもこれは、天然ウランの搾りかすとは違い、核分裂生成物や超ウラン元素の不純物が
混じった汚い劣化ウ
ランです。
劣化ウランは、使途
がなく持て余すほどあ
るゴミなので、「劣化ウ
ラン弾」としてイラク
やコソボの戦闘で大量
に使われ、今も住民の
健康や環境に甚大な被
害をもたらしています。
結局、使用済み核燃
料のうち 96%X8 割
=約75%は、
原理的、物理的に
再利用は不可能なの
です。
それなのに「97%
がリサイクル可能」と
言う宣伝の誤りを電力
会社は認めようとしません。
(「原子力市民年鑑 2006」より↑)
★ 燃えない U238 の割合が天
然ウランよりも多い劣化ウ
ラン(減損ウラン)は、高速
増殖炉の炉心の外側に配置
するブランケット燃料とし
て中性子を照射すれば、核分
裂する Pu239 に変換するの
で、核燃料として使うことも
原理的には可能です。
しかし、高速増殖炉計画は、
原型炉「もんじゅ」の頓挫で
完全に破綻しました。諸外国
でも増殖炉開発は成功して
いません。
また、劣化ウランは、高速増殖炉の炉心燃料や軽水炉用 MOX 燃料の加工の際、Pu との
混合酸化物燃料として利用することも可能ですが、供給量に対し需要はわずか。
そもそも大量に存在する天然ウラン由来の劣化ウランより、不純物の多い回収劣化ウラ
ンを優先して使用する合理性は全くありません。)
②高レベル放射性廃棄物の地層処分
「その安全性は科学的にも確立されています」も
ウソ
高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料及びガラス固化体)を実際に地層処分した国はま
だどこにもありません。フィンランドのオンカロと言われる場所も、処分場建設地として許
可が出ただけで、実際に最初の高レベル放射性廃棄物の埋設が始まるのは 2020 年以降です。
高レベル放射性廃棄物は、少なくとも10万年は人間環境から隔離しなければならないよ
うな危険な廃棄物ですが、10万年間事故や放射能汚染が起きないことを実際に証明するこ
とは不可能です。実証もできない未経験の技術であるにも関わらず、
「科学的にも確立されて
いる」と言えるはずがありません。
もし確立されているのなら、北海道や東濃にある日本原子力研究開発機構(JAEA)の研
究所では何を研究しているのでしょうか。
地層処分の研究開発を担って来た旧核燃料サイクル機構(現 JAEA)が 1999 年 11 月に
「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性−地層処分 研究開発第2
次取りまとめ−」
(2000 年レポート)と題する技術報告書を公表し、それに基づき「特定放
射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定され、地層処分実施主体の NUMO を設立、費
用の徴収も始まりました。しかし、ここで得られた結論は、
「日本においても地層処分に
適した場所が広く存在し、 現実的な工学技術により合理的に処分施設を構築で
きること等の見通しが得られた」ということにすぎません。
「見通しが得られた」が、いつの間にか「科学的に確立しています」にすり替わっていま
す。
また、
「日本においても地層処分に適した場所が広く存在」するとしても、過去 10 万年安
定していた地点を探すことはできても、この先10万年安定した地層を現時点で知ることは
人智を超えています。
日本での地層処分での最も大きなリスクは、高レベル放射性廃棄物に地下水が接触して環
境に放射性物質が拡散するリスクです。地下水の流れも、過去の挙動は調べられても、この
先 10 万年を予測することなど不可能です。
自らの営利活動で発生させたゴミ(高レベル放射性廃棄物)ですから、ちゃんと処分でき
るか「やってみなければ分からない」というのは、聞こえが悪いのでしょうか。
そうだとしても、こんな自分に都合のいいウソを消費者に宣伝する中部電力は、企業倫理
に欠けています。
ウソは、直ちに訂正されなければなりません。
(文責:核のごみキャンペーン・中部:安楽知子)