薬剤師半日駐在の システムと導入方法

新連載
医薬品管理と
コスト漏れ対応
の実際
薬剤師半日駐在の効果
薬剤師半日駐在の
システムと導入方法
当院手術室のこれまでの課題
百武さん
倉持さん
大島さん
石川さん
独立行政法人国立病院機構 埼玉病院
薬剤部 手術室担当 倉持純子
2012年度より薬剤師による手術室内のすべての医薬品管理を開始。
看護師と医師の業務負担軽減・業務改善に携わってきた。今後も,
さらなる手術室の業務改善・医療安全への貢献を目指している。
調剤主任
手術部長
薬剤師
百武宏志 大島 孝 石川聖子
酔トレイが10個,局所麻酔トレイが5個,心
当院は,埼玉県南西部にある病床数350床
臓血管外科トレイが2個だけであった。輸液
の地域の中核病院である。6室の手術室があ
や処置薬品,消毒薬はすべて違う場所に保管
り,手術室看護師30人,常勤麻酔科医18人
されており(写真1)
,毎日業務終了後に遅出
で年間5,000件近くの手術を行っている。当
看護師が数の確認・請求を行っていたため,
院の手術件数は,2011年度3,846件,2012
業務負担でもあり,コスト漏れも起こっていた。
年度4,264件,2013年度4,875件,2014年度
薬品カートの導入後は,消毒薬以外のすべ
5,099件と年々上昇してきているが,看護師
ての医薬品をカートで保管することとし,処置
の人数は減少してきており,手術室看護師の
薬品,消毒薬の管理も薬剤師が行うことにした。
業務量が増加してきていた。
手術時には,麻薬,毒薬,劇薬,向精神薬
●薬品トレイ内の薬剤の配置場所と
新たなトレイの作成
だけでなく,ハイリスク薬,高額医薬品など多
薬品カートを導入する際,手術室看護師と
種多様な薬剤が使用されている。手術件数の
麻酔科医師,薬剤師とで薬品カート内に保管
増加や手術時に取り扱う薬剤の多様化に伴い,
する薬剤と定数を協議し決定した。また,薬
医薬品の管理・運用が煩雑化し,手術室看護
品トレイ内の薬剤の配置場所の検討・見直し
師の業務負担となり,コスト漏れも増えていた。
と整理整頓を行い視認性の向上を図った(写
そのため,手術室より看護師の業務負担軽減,
真2)
。また,看護師たちが手術に合わせて
手術室業務の円滑な運用と事故防止・医療安
薬品を取りそろえる手間が省けるように,使
全,コスト漏れ削減の観点から薬剤師による手
用頻度が高く,薬品トレイ内の薬剤以外にも
術室内の医薬品管理への関与が求められた。
別途使用する薬剤が多い科の手術(心臓血管
手術室担当薬剤師導入に伴う
作業環境の改善
外科,泌尿器科,形成外科,眼科)には,そ
手術室内での医薬品管理に薬剤師が介入す
さらに,さらなる医療安全の向上を考え,
るに当たり,まず手術室看護師と協力し現状
薬品の取り間違えやコスト漏れの削減を目的
の把握および作業環境の改善を行うことと
とし,使用実績データを基に薬品トレイ内の
し,薬品カートの導入を行い医薬品の保管・
薬品の配置場所と手術時必要な薬剤の見直し
管理方法を見直した。
を行い,使用頻度の少ない薬剤を薬品トレイ
●薬品カートの導入
内からなくすこととした。その他,薬品トレ
薬品カートを導入する前は書類の引き出し
イ内に配置されていないが,手術中に使用頻
のようなもので医薬品を管理しており,全身麻
度が高い薬剤や抗菌薬などを保管する中央
の科に特化した科別の薬品トレイを作成する
ことを決定した(写真3)
。
手術看護エキスパート ̶̶ Vol.9 no.4
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写真1●改善前の薬品保管庫
増やすことにした。
●手術室担当薬剤師による
確認・補充の実施
薬剤師が手術室で半日常駐を行うまでは,
以前の薬品管理
手術時に使用した薬剤の確認・補充は翌日に
処置薬品
薬品カートを薬剤部におろし,そこで行って
いたため,用途不明な薬剤も散見されてい
た。また,確認・補充を手術翌日に行ってい
輸液
たので,コスト漏れ,用途不明薬剤,過剰請
消毒薬
求などの不備があった場合は,まず薬剤部か
写真2●薬品トレイ
ら手術室に電話でその旨の連絡を入れ,手術
改善前
室クラークからその日の手術室看護師リー
ダーに連絡が行き,看護師が業務の合間に確
認を行うという,確認が終了するまで多くの
人と時間・手間がかかっていた。その上,手
術翌日ということから,不備のあった手術を
担当した看護師が不在であったり,記録に
残っていない場合は担当者の記憶があいまい
になっていたりと,確実に確認が取れない場
合もあり,コスト漏れも多く存在していた。
また,手術中に薬品カートにない薬剤を使
改善後
用する際は,手術室看護師が薬剤部まで薬を
受領しに来ており,業務負担となっていた。
その他にも,麻薬の確認・補充は翌日の手
術に間に合うように,大体の手術が終了する
19時過ぎ頃に薬剤師が手術室に出向いて行っ
ていたため,不備があった際も医師は帰宅し
ている場合が多く,確認・修正は翌日になら
ないと行えず,また,業務時間外に行ってい
たことから,薬剤師にとっても業務負担となっ
ていた。しかし,薬剤師の増員があり,薬剤
カートを新たに導入することにした。そのた
師が手術室にかかわれる時間が取れるように
め,手術中に急に必要になった薬剤が手術室
なったため,薬剤師が手術室に半日常駐して
にない場合に,看護師が薬剤部へ薬を取りに
医薬品の管理,使用薬剤の確認・補充を手術
行く手間がなくなった。
当日中に,手術室内で行うことにした。
補充のタイミングが合わず,手術中に使用
可能な薬品トレイが足りなくなるようなこと
がないように,全身麻酔トレイ30個,局所
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手術室担当薬剤師の選定と
業務スケジュールの決定
麻酔トレイ12個,心臓血管外科トレイ3個,
薬剤師の手術室での半日常駐を開始するに
泌尿器科トレイ4個,形成外科トレイ3個,
あたり,まず,手術室担当の薬剤師を3〜4
眼科トレイ2個と,薬品トレイの数を大幅に
人選定することにした。薬剤師としての病棟
手術看護エキスパート ̶̶ Vol.9 no.4
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