在宅ホスピスでの 麻薬・疼痛緩和の具体的な方法 総合在宅医療クリニック 市橋 亮一 身体的痛みのコントロールの目標 「夜間の睡眠の確保」・・・痛みに妨げ 第一目標 られない夜間の睡眠時間の確保 「安静時の除痛」・・・日中の安静時の 第二目標 痛みの消失 「普通の日常生活がおくれる状態」・・・ 第三目標 体動時や体重負荷時の痛みの消失 痛みの消失が維持され、平常の生活 最終目標 に近づくこと ・・・・・・身体的、精神的、社会的、スピリチュアルな痛み “痛み”日記 数字の目安 0―2 痛みなしかほとんど痛くない 3―5 痛みをもっと減らしたい 8―10 我慢できない痛み いたみ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 使用時間 痛み止めの種類 6時 8時 10時 2 / 3 12時 10 : 00 オキノーム 12:00 オキノーム 朝 なんとか我慢できる程度の痛み 6―7 できれば 睡眠 吐き気 眠気 排便 よく眠れた ○ ちょっと寝 た △ 眠れなかっ た × ある× ない○ ある× ない○ ない× ある○ ○ × × ○ × ○ ○ × × 14時 木 曜 日 16時 18時 昼 ○ 20時 22時 0時 2時 夕 4時 6時 2 / 4 8時 10時 朝 12時 金 曜 日 14時 16時 18時 昼 20時 22時 0時 2時 4時 夕 痛みの系統 放射線 ステロイ ド 麻薬 NSAIDS 鎮痛補 助薬 臓器 ○ ○ ◎ ○ △ 神経 △ ○ × △ ○ 骨 ◎ ○ △ ○ × 注:個人的な印象です 名称 Good Bad レスキュー MSコンチン (モルヒネ) 呼吸苦に有効 便秘、せん妄 オプソ オキシコンチン 便秘・せん妄やや少ない オキノーム 注射 プレペノン (モルヒネ) 速く効く、量の調節が楽 内服不要、PCAで楽 プレペノン 貼り薬 デュロテップMT 長時間安定して効く、便秘に なりにくい、腎機能に依存し ない、便秘・せん妄少ない 長時間作用す ? るので、多す ぎた時に困る 座薬 アンペック座薬 (モルヒネ) 飲めなくても使える 便秘、せん妄 経口 種類 吸収 開始 最高血 中濃度 作用 時間 腎障害 の影響 便秘 傾眠・ せん妄 呼吸 抑制 オプソ 10分 0.5-1 時間 3-5 時間 オキノーム 12分 1 6 オキシコンチ ン 12分 2-3 12 +/- ++ + + MSコンチン 1 2-4 8-12 +++ ++ ++ + アンペック座 薬 20分 1-2 6-10 デュロテップ パッチ 2 17 72 - +/- +/- + 持続皮下注 プレペノン 直ちに 12 - レスキュー:経口は1/6,座薬は1/12、静脈注射時は1/24 デュロテップ MT4.2mg (モルヒネ60mg、オキシコドン40mg) オキノーム アンペック 5-10mg(7mg) 5mg 症例を考えてみよう! • 80歳男性 膵癌で、腸 閉塞、糖尿病あり、背 部痛が強い、腎機能低 下あり • 使う薬は? • ベースの麻薬は? • レスキューは? • 60歳男性 肺癌で上大 静脈症候群、胸水で呼 吸不全あり、腰椎転移 部の痛みと下肢のしび れ、脳転移による意識 障害。 • 使う薬は? • ベースの麻薬は? • レスキューは? がん性痛への鎮痛薬使用法の 基本5原則 • 経口投与を基本とすること(by the mouth) ---経口投与は患者の活動を制約しない。 • 時間を決めて規則正しく(by the clock) • 痛みの強さに応じて(by the ladder) • 患者個人の特性に合わせて(for the individual) (1)痛みの消失に必要な量は患者ごとに異なるので、比較的少量で投与を 開始し、翌日(24時間後)効果を判定し、痛みが残っていれば約50%増量す るという漸法を用いる。 • (2)痛みが除去されていて、しかも副作用、殊に眠気が強ければ約50%減 量する。 • その上でさらに細かい配慮を(副作用対策の実施、患者の心への配慮な ど)(with attention to detail) 副作用への対策 • • • • • 吐き気 便秘→腸閉塞 せん妄 傾眠 呼吸抑制 2週間、予防 予防、治療 予防、治療 減量 減量? そもそも点滴はどれだけ必要か? • 顔面、頚部の浮腫の為気管切開口も閉塞気 味となり、顔貌も変容した患者に対して点滴 を中止したところ、浮腫が軽減し、呼吸は楽 になり、顔貌も以前に戻ったという報告がある。 • 生命予後が1-2週間以下と考えられる終末期 がん患者に対して嘔気・嘔吐緩和の目的とし て輸液を行わずに、薬物療法を行うことが推 奨される。 終末期癌患者に対する輸液治療のガイドライン 日本緩和医療学会 2007年4月
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