京都大学大学院訪問報告１、日時平成２７年１１月１１日（水）１４：００～１７：００２、参加者１年生ＳＧＨ生徒２０名３、訪問先京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻４、場所京都大学稲森財団記念館３階中会議室５、内容（１）ゼミ訪問 ①京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科について教授池野旬博士（地域研究）より説明本研究科では、大学院の下の大学で研究があるわけではなく、様々な学部や大学外から集まりアフリカの研究を深めたいと行っている研究集団である。 ②ゼミ発表発表者大山修一（おおやましゅういち）准教授サハラ以南アフリカの知識と研究ア．平成 24 年度センター試験で出題された問題についての回答手順について実際に、ゼミ受講者及び高志高校生で問題を解き、解説が行われた。 → 回答手順の中で、 GNI も平均寿命も低い、貧困、携帯電話・固定電話の普及率が低いなど、真っ先に判別されるのがアフリカ諸国であるという事実がある。 → 統計は水ものであるため、従来の法則がいつまで通用するかはわからない。 → 世界は流動的で、変化が激しい。 2050 年世界人口は 108 億人と予想される。その８割はアジアとアフリカであるため、国際理解、相互理解のために地域研究がある。イ．アフリカ地域研究者（＝アフリカニスト）がみるアフリカの魅力 ○経済格差のゆくえつつましさとみるか？貧困とみるか？ザンビア農村の事例が紹介された。一人 1.25 ドル未満の所得の村だが、それは貧困なのかという問いかけ。アフリカの食事は粉食の文化で、主食はトウモロコシ、シコクビエなどだが、それはほとんど自家生産されたものである。副食は多種類で、肉は家畜、野生動物、魚など、葉菜は栽培作物、野生植物、キノコ、昆虫などである。自給を基本とした生活を送っている彼らには「現金」の必要がない生活を送っているため、貧困という概念はない。村での商品のやりとりも、現金を介した売買よりも贈与や交換で行われているため、一日 1 ドル未満の生活を送っているため、何も不自由していない。アフリカの土地問題がある。世界企業が人件費を求め東南アジアに進出しているように、アフリカにも土地・鉱物を求め世界企業が入ってきている。アフリカは物価、賃金は安くないが、土地はとても安い。 75ha で 7,000 円。その安い土地を巡り “ ランドラッシュ”という状態が起きているが、その土地は農村の住民にとって生きる術であり、失われたらどうなるか？ ○深刻な社会問題に立ち向かうための人々の協業農耕民と牧畜民との対立が問題になっている。「乾季は友人、雨季になると敵になる」という状態で、雨季になるとフルベ人の放牧が始まり、農耕民に追い出される形になり、争いがこじれて紛争になることもある。そのため、紛争予防として地元自治体と連携協力をして、都市のゴミ収集と荒廃地の修復（緑化実験）を行っている。実験が進むと、ゴミをまくことで草木が生えてくることが実証された。ゴミの多くは家畜の糞や人間のし尿（アルカリ性）であるため、酸性が強いこの土地（ ph4.5～ 4.4）で、土壌改良というメリットが生まれることになった。また、乾燥するこの土地では、日本でいうミミズの働きをシロアリが行ってくれることになる。ゴミから生まれた草地のフェンス内に家畜を放つ取り組みもある。従来は休閑期間をもうけ、まわしながら使用していた土地を、逆転の発想で、ゴミから草を生やさせ、そこに家畜を放すという取り組みである。家畜は草も食べるが糞もする。その糞で土地を肥やしていくという発想である。休閑期間をもうけると、土地はやせていくだけらしい。フェンスを建て、草を生やし、放牧する道をつくる「ウシの道」プロジェクト（長期放牧ルートの作成）も計画中である。 ○問題を大きく設定し、シンプルに切れないか古代文明は河川文明で川の流域、とくに河口で発展した。エジプト (ナイル川 )メソポタミア (チグリス・ユーフラテス川 )、インダス (インダス川 )、中国 (黄河 )がある。しかし、文明はほかにもあるのではないか？そこで、高地文明プロジェクトを立ち上げようとしている。アンデス（ペルー）はクスコ、メキシコはメキシコシティ、チベット・ヒマラヤ（ブータン）はブムタン、エチオピアはゴンダール。ここでは、エチオピアを参考に検証した。エチオピア・アジスアベベ近郊の標高 2600m 前後の平原では牧畜、2400m 前後ではテフ栽培が行われており、グザラ城をはじめいくつかの城が建てられている。そこには、確かに文明が確認される。地形条件は、山に囲まれ湖に面し、マラリアフリー (標高 2000ｍが境界 )以上の、標高 2000～ 2400ｍが住みやすく、高地文明になったのではないかという研究だ。ウ．質疑・応答ゼミの中で教授、院生が積極的に質疑応答をしていた。それにつられるように、高志高校生も手を挙げて質問などをしていた。質疑応答というより、みんなで会話して「それ、どうやったの？」といった感じで質問しあっていた印象だ。高志高校生の質問は、「燃料として使用している牛糞で料理をして、臭くないのか」→「皆さんが思っているような臭さではなく、それほど嫌な臭いではない。家の壁などにも塗るくらいなので大丈夫」。そのほか、「ゴミをまいて草を生やしたくらいで、紛争はなくなるのか」→「紛争になったらもう止められないが、緑化によって紛争の火種を消すことができるのではないかと考えている」などがあった。 ③ゼミ生とのディスカッション 5 グループに分かれてフリートークが行われた。自己紹介から始まり、それぞれの院生が、自分が研究している国や研究内容について話をしてくれ、その話に対して質問したり、逆に院生から高志高校生に対して質問なども行われたようで、大変有意義なディスカッションになった。