D-11 西日本発米国向けコンテナ貨物の母船積出港選択傾向

平成 26 年度 日本大学理工学部社会交通工学科 卒業論文概要集
西日本発米国向けコンテナ貨物の母船積出港選択傾向の分析
D-11
Analysis of the Trend to Choose Transshipment Port of Container Cargo on Western Japan-US Sea Route
指導教授
川
﨑
智
1.はじめに
也
轟
朝
幸
1152
李
鳳
秋
300,000.00
250,000.00
幅な伸びを記録しており,基幹航路であるアジアから
200,000.00
貨物の取扱量(TEU)
現在,世界の定期コンテナ船の荷動きは各航路で大
北米や欧州へのコンテナ荷動きはここ数年,対前年比
で毎年2桁の伸びを示している1)。
下松
和歌山
佐世保
伊万里
下関
福岡
大田
今治
姫路
尾道
高知
宇部
水島
大分
博多
神戸
150,000.00
100,000.00
しかし,1995 年に発生した阪神・淡路大震災の影響
50,000.00
で,日本のコンテナ貨物の動きは,主に阪神港から釜
0.00
山港へシフトした。また,基幹航路の日本港湾への寄
2003
港頻度は年々減少し,日本発着の貨物は主に釜山港へ
2004
2005
2006
図-1
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
唐津
舞鶴
北九州
長崎
油津
高松
熊本
境港
八代
岩国
松山
細島
志布志
広島
大阪
2014
対象仕出港の貨物量推移
のトランシップする傾向がある。さらに,上海洋山港,
図-1より神戸港の貨物量は2004年から2006年にか
釜山新港の開港に伴い,今後大手船会社は日本海を通
けて増加しており,特に2003年から2006年の間には
過する最短距離のルートで北米航路に向かう可能性が
20,000TEU増加している。これは2004年に神戸港がス
2)
あるとされている 。西日本発北米航路の母船積出港に
ーパー中枢港湾・
「阪神港」として指定され,2005年に
おいては,価格競争力などが理由となり,釜山港が優
ポートアイランド2期竣工,そして指定特定重要港湾
位にあると言われている3)。
になった影響ではないかと考えられる。また2009年の
既存研究では,日本港湾の世界ランキングが下がり,
コンテナ港の国際競争力が低下したと明らかにされて
取扱量は前年より減少しており,これはリーマンショ
ックの影響ではないかと考えられる。
いるが,港湾競争力低下の詳細なデータ分析がなされ
250,000.00
ていない。そこで本研究では,西日本発の母船積出港
Chiwan
200,000.00
貨物の取扱量(TEU)
の選択について Zepol“TradeIQ”
(以下,Zepol データ)
を用いて西日本発の母船積出港の選択状況を明らかに
する。
2.分析対象と使用データ
本研究の対象仕出港は表-1に表す西日本の 32 港で
境港
北九州 佐世保
大阪
大田
唐津
福岡
高松
東京
100,000.00
博多
釜山
大阪
神戸
2003
2004
2005
図-2
ある。対象母船積出港はすべての母船積出港とする。
舞鶴
浜田 長崎
神戸
横浜
0.00
湾から北米へ向かう航路の Zepol データを対象とする。
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
母船積出港の貨物量推移
図-2より,神戸港は母船積出港としての取扱量は
分析対象港湾
対象港湾
伊万里 広島
博多
志布志 和歌山 宇部
水島
岩国
名古屋
150,000.00
50,000.00
本研究では 2003 年から 2014 年に東アジア地域の港
表-1
Kao Hsiung
2010年から2012年にかけて毎年約8,000TEU増加してい
る。また,大阪港の取扱量は2009年から約20,000TEUを
熊本 細島 大分 下関
八代
姫路
高知
尾道
今治
松山
徳山下松
油津 減少しており,東京港も約5,000TEU減少している。釜山
港はある程度の差があり起伏はあるももの,約
9,000TEUの増加である。また大阪港の取扱量は,神戸
3.分析結果
港または釜山港にシフトしたものと考えられる。釜山
(1)仕出港・母船積出港コンテナ貨物量の推移
港における2010年の取扱量の増加は,2009年度から釜
図-1に仕出港の貨物量推移,図-2に仕出港にお
山港湾公社がインセンティブ制度を改編し,トランシ
ける母船積出港の貨物取扱量の推移を示す。
ップ貨物を誘致する目的を鮮明にし,トランシップ貨
-93-
平成 26 年度 日本大学理工学部社会交通工学科 卒業論文概要集
物を対象にインセンティブを支給した影響が考えられ
いて,取扱量がなくなったとわかる。釜山港はある程
る4)。
度 の差 や起 伏が あり, 2006 年の取 扱量 は 最 大の約
(2)仕出港の選択状況
100,000TEU である。神戸港は前年と比べ 2014 年を増加
図-3に 2003 年の仕出港発母船積出港の貨物量,図
傾向があることがわかる。これは神戸港に新たにガン
-4に 2013 年の仕出港発母船積出港の貨物量を示す。
トリークレーン2基を供用し、22 列5基の荷役体制を
100%
確保した影響ではないかと考えられる。
90%
80%
60%
50%
16,000.00
14,000.00
その他の 国内
港湾
大阪
40%
30%
貨物取扱量(TEU)
貨物量の割合(%)
18,000.00
その他の 国外
港湾
釜山
70%
神戸
20%
10%
12,000.00
10,000.00
大阪
8,000.00
神戸
6,000.00
釜山
4,000.00
0%
2,000.00
0.00
図-3
2003
2003 年の各仕出港発母船積出港の貨物量
100%
2005
図-5
90%
その他の国外の
港湾 国外港湾
釜山
70%
60%
50%
30%
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
広島港を仕出港としての
釜山港の増加は釜山新港の開港の影響と考えられる。
その他の国内の
港湾 国内港湾
大阪
40%
2006
母船積出港の貨物量の推移
80%
貨物量の割合(%)
2004
神戸港は,コンテナ物流の総合的集中改革プログラム
神戸
として内航4航路・バージ3航路・鉄道1路線を立ち
20%
10%
上げ,夜間 20 時まで港の稼動時間が拡大6)した影響で
0%
はないかと考えられる。
図-4
2013 年の各仕出港発母船積出港の貨物量
4.おわりに
図-3より,高松港,今治港,八代港,松山港,大
本研究では,Zepol データを用いて 2003 年から 2014
分港,博多港,広島港などの港湾は釜山港を母船積出
年に西日本の対象港湾の選択状況分析を行った。母船
港とする貨物量の割合が多い。2002 年時のフィーダー
積出港の貨物量推移により,博多港,釜山港と神戸港
料金(20TEU)は,阪神港で 37,000 円,釜山港は 22,900
の取扱量は増加傾向があり,東京港と大阪港の取扱量
5)
円であり ,釜山港の利用料金が安い影響ではないかと
は減少している。日本の取扱量は減少している港湾が
考えられる。
あるが,増加傾向の港湾もあることが明らかとなった。
図-3,および図-4より,2003 年と 2013 年の全体
今後の課題としては,博多港の取扱量の増加原因が
の割合で比べると,神戸港を母船積出港とする貨物の
明らかになってないため,より深い分析が必要である。
取扱量は,
博多港約 10%,水島港約 12%,
宇部港約 50%,
参考文献
岩国港約 33%,大分港 30%減少しており,釜山港を母
1) 大高俊記:東アジアの海運と港湾インフラ,アジ研
選書(8) /アジア経済研究所,東アジア物流新時代-
グローバル化への対応と課題-,pp.51-70,2007.
2) 高玲:日本海側コンテナ港の現状と課題,
「立命館
経営学」
,Vol. 4,2008.
3) 川﨑智也:西日本発北米航路における母船積出港の
選択について,日刊 CARGO,2013.
4) 横浜港海外代表ニュースレター,
http://www.yokohamaport.org/portal/kaigaidaihyounew
s/,最終閲覧日:2015.02.02.
5) 日本内航海運組合総連合会:国内コンテナ・フィー
ダーに関する研究,2011.
6) 国土交通省港湾局:国際コンテナ戦略港湾政策のレ
ビュー,2013.
船積出港とする貨物の取扱量博多港約5%,水島港約
12%,宇部港約 60%,岩国港約 12%,大分港約 70%と
それぞれ増加していることがわかる。
以上より,2003 年の神戸港の取扱量の多くが 2013 年
には釜山港に流れたと考えられる。これは,釜山新港
の開港の影響ではないかと考えられる。
(3)仕出港別の選択状況
図-5は 2003 年から 2014 年に広島港が釜山港・神
戸港・大阪港を母船積出港とした貨物量を示す。
広島港を仕出港とした大阪港の取扱量は 2006 年から
減少している。2010 年からの取扱量は0TEU になって
-94-