【FT-IR・ラマン レベルアップ講座】 異物分析における解析のヒント サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 モレキュラー営業部 アプリケーショングループ The world leader in serving science 1 異物分析のデータ解析において困ること 複数成分の混在 ライブラリ検索 etc. スペクトルは得られ たけれど、検索がう まくいかない… 2 いろいろな成分が混 ざっていて、どのピ ークがどの成分なの かわからない… 解析しやすいデータを得る -複数成分混在サンプルの場合- 3 複数成分の混在① 偏析を利用する 異物は単一成分ではなく、複数成分が混在するものが多い。 1.0 成分A 0.8 偏析が空間分解能より も大きい場合は成分A・ Bの単一スペクトルを得 ることができます。 Abs 0.6 0.4 0.2 1.0 成分B 0.8 Abs 0.6 0.4 0.2 3500 0.65 成 分 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 A +B 0.60 0.55 偏析が空間分解能よりも小さ い場合、両方の成分のピーク が重畳したスペクトルとなり ます。 0.50 0.45 Absorbance 0.40 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 3500 4 3000 2000 2500 Wavenumbers (cm- 1) 1500 1000 複数成分の混在① 偏析を利用する 赤外・ラマン顕微鏡の空間分解能よりもサンプルの偏析が小さい場合 0.70 0.65 0.60 Point 1 0.55 0.50 0.45 0.40 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 3500 3000 2500 2000 1500 1000 0.75 0.70 0.65 0.60 0.55 成分Aと成分Bの割合が異なる 部分をそれぞれ測定 Point 2 0.50 0.45 0.40 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 3500 5 3000 2500 2000 1500 1000 複数成分の混在① 偏析を利用する 0.75 0.70 0.70 0.65 0.65 0.60 0.60 Point 1 0.55 0.50 0.45 0.55 Point 2 0.50 0.45 0.40 0.40 0.35 0.35 0.30 0.30 0.25 0.25 0.20 0.20 0.15 0.15 0.10 0.10 0.05 0.05 3500 3000 2500 2000 1500 0.55 0.50 0.45 3500 1000 Absorbance 2500 2000 1500 1000 差スペクトルの結果 0.40 成分A 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 3500 6 3000 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 複数成分の混在① 偏析を利用する 0.70 0.75 0.70 0.65 0.65 0.60 0.60 0.55 0.55 0.50 Point 2 0.50 0.45 0.40 0.35 Point 1 0.45 0.40 0.35 0.30 0.30 0.25 0.25 0.20 0.20 0.15 0.15 0.10 0.10 0.05 0.05 3500 3000 2500 2000 1500 0.55 0.50 1000 3500 3000 2500 2000 1500 差スペクトルの結果: 0.45 成分B Absorbance 0.40 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 3500 7 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 1000 複数成分の混在② 表面の薄い付着物の場合 FT-IR (ATR) 表面に薄く付着したサンプルをATR測定し、基材のスペクトルを差し引きます 8 複数成分の混在② 表面の薄い付着物の場合 FT-IR (ATR) 基材のピークをうまく差し引く事ができない領域があります。 0.20 基材 Abs 0.15 0.10 0.05 -0.00 Abs 0.15 付着物 0.10 0.05 -0.00 Abs 0.03 差スペクトルの結果:付着物-基材 0.02 0.01 -0.00 9 3500 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 複数成分の混在② 表面の薄い付着物の場合 FT-IR (ATR) 表面の付着物が赤外光滲み込み深さよりも薄い場合、波数位置毎に基材と付着 物の割合が異なり、差スペクトルでうまく差し引けない領域がでてきます。 表面付着物 基材 高 10 赤外光滲み込み深さ 波数 低 複数成分の混在② Abs 0.2 Abs 0.1 Abs -0.0 0.02 Abs -0.00 0.02 -0.00 Abs 基材 0.1 0.0 0.02 -0.00 11 表面の薄い付着物の場合 FT-IR (ATR) 付着物 (基材のピークが重畳) 差スペクトルの結果:付着物-基材 係数=0.7755 この係数でうまく差し引けない領域を ブランクにする 差スペクトルの結果:付着物-基材 係数=0.8505 この係数でうまく差し引けない領域を ブランクにする 加算の結果=付着物のみのスペクトル 3500 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 + ライブラリ検索のヒント -ユーザーライブラリを活用する- 12 ライブラリ検索のヒント ユーザーライブラリの活用 Abs ある異物をFT-IRでATR測定し、ライブラリによる同定を試みました。 0.10 0.05 Abs 1.0 0.5 Abs 1.0 0.5 1.0 Abs 異物 <アドバンストATR補正後> 0.5 CELLOPHANE ヒット率:74.16 候補1 Chipboard P40 10.7%N ヒット率:70.79 Cellulose + lignin ヒット率:67.23 3500 3000 候補2 候補3 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 異物成分 = セルロース系化合物 + α 13 ライブラリ検索のヒント ユーザーライブラリの活用 Abs セルロース由来以外のピークに着目して再検索を行ったところ、異物にはセル ロース系化合物に炭酸塩が含まれることがわかりました。 0.10 異物 <アドバンストATR補正後> 0.05 Abs 1.0 Hubercarb Q-4 ヒット率:86.60 0.5 Chem Name: CalciumCarbonate Abs 1.0 0.5 Abs 1.0 0.5 CALCIUM ZINC MOLYBDATE #1 ヒット率:84.21 GROUND CALCIUM CARBONATE #4 ヒット率:83.46 3500 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 異物成分 = セルロース系化合物 + 炭酸塩 14 ライブラリ検索のヒント ユーザーライブラリの活用 市販のライブラリを用いて検索することにより、サンプルの「化合物名」を知 ることができます。 異物混入の原因を探る場合、より実際に近い名前(商品名等)で結果を知るこ とができると原因究明の近道となります。 15 ライブラリ検索のヒント ユーザーライブラリの活用 0.2 0.2 0.1 トイレットペーパー 0.2 0.1 キムワイプ 0.2 0.1 ペーパータオル Abs Abs Abs Abs Abs Abs プリンター用紙 Abs 0.1 Abs Abs 身近なセルロース系化合物のスペクトル 0.2 0.1 0.2 0.1 布(綿) 綿棒 0.1 綿棒の軸(紙) 0.2 封筒 0.1 0.2 ティッシュペーパー 3500 16 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 ライブラリ検索のヒント ユーザーライブラリの活用 身近なセルロース系化合物のスペクトル 0.75 0.70 0.65 0.60 0.55 Absorbance 0.50 0.45 プリンター用紙 0.40 トイレットペーパー 0.35 キムワイプ 0.30 ペーパータオル 0.25 布(綿) 0.20 綿棒 綿棒の軸(紙) 0.15 0.10 0.05 封筒 ティッシュペーパー 1800 1600 1400 1200 Wavenumbers (cm-1) 17 1000 ライブラリ検索のヒント ユーザーライブラリの活用 身近なセルロース系化合物のスペクトルをライブラリとして登録 ユーザーライブラリ 18 ライブラリ検索のヒント ユーザーライブラリの活用 ユーザーライブラリを用いた検索により、異物はプリンター用紙に最も近いこ とがわかりました。 Abs 0.2 0.1 Abs 0.2 Abs プリンター用紙 ヒット率:99.43 0.1 0.2 ペーパータオル ヒット率:89.42 0.1 0.2 Abs 異物 封筒 ヒット率:82.85 0.1 3500 19 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 ライブラリ検索のヒント -ラマンスペクトルの検索- 20 ラマンライブラリ検索の基本的な考え方 検索方法の考え方は赤外スペクトルの場合と同様です • 領域の指定(注目する領域を選択、あるいは除外) ⇒ 既知の不純物や窓材・マトリックスの影響を事前に除去する。 • 測定手法によるスペクトルの補正 ⇒ サーチ結果に及ぼす影響 (大 > 小) 1) ピーク位置 > ピーク強度 2) S/N > ベースライン • ライブラリスペクトルとの差(再検索) ⇒ 混合物スペクトルから検索スペクトルを差し引く。 ⇒ 分離したスペクトルを再検索、他の成分が予測できる。 21 ラマン ライブラリ検索のヒント ラマンスペクトルの場合 ラマン 赤外スペクトルと違い、レーザ波長によりピークバランスが変化します。 80000 90000 シクロヘキサン 532nm 80000 70000 40000 ライブラリ 検索 20000 0 1.0 0.8 Int 60000 Int 50000 0.6 0.4 1.0 30000 0.8 Int 20000 0.6 0.4 3000 0 シクロヘキサン 780nm Int 6000 5000 0.8 2000 0.4 1.0 0.8 Int 1000 22 0.6 0.2 3000 2500 2000 1500 Raman shift (cm-1) 1000 500 2000 1500 Raman shift (cm-1) 1000 500 シクロヘキサン 780nm 4000 0 1.0 Int Int 3000 2500 2000 ライブラリ 検索 4000 0 Cyclohexane ヒット率:96.28 0.2 10000 6000 Cyclohexane ヒット率:96.29 0.2 40000 7000 シクロヘキサン 532nm Int 60000 0.6 Sodium Bromate ヒット率:79.80 CYCLOHEXANE, 99+% ヒット率:78.54 0.4 0.2 3000 2500 2000 1500 Raman shift (cm-1) 1000 500 ライブラリ検索のヒント ラマンスペクトルの場合 ラマン ピークバランスの補正機能を利用する 60000 シクロヘキサン 780nm ホワイトライト補正 50000 7000 6000 5000 Int ホワイト ライト補正 & ライブラリ 検索 4000 3000 2000 1000 3000 2500 2000 1500 1000 Wavenumbers (cm-1) 780/785nmレーザで測定 したスペクトルは、ピーク バランス補正機能を用いる ことにより検索結果の向上 が見込めます。 23 30000 20000 10000 -0 1.0 Cyclohexane 500 ヒット率:92.91 0.8 Int 0 40000 Int シクロヘキサン 780nm 0.6 ライブラリ 検索結果 0.4 0.2 3000 2500 2000 1500 1000 Wavenumbers (cm-1) 500 ライブラリ検索のヒント ラマンスペクトルの場合 ラマン 検索のアルゴリズムを変えてみる 「絶対微分法」アルゴリズムを用いて 検索した結果 シクロヘキサン 780nm Int 6000 4000 2000 0 1.0 Cyclohexane Int 0.8 ヒット率:67.48 0.6 0.4 0.2 24 CYCLOHEXANE, 99+% 0.8 Int ピーク位置を重視するアルゴ リズムに変えることにより、 バランス変化の影響を軽減で きます。 1.0 ヒット率:67.05 0.6 0.4 0.2 3000 2500 2000 1500 1000 Raman shift (cm-1) 500 ライブラリ検索のヒント -明確な検索結果が得られない例- 25 明確な検索結果が得られない例 ラマンの場合 ラマン ラマン測定でレーザ波長が変わるとスペクトルが大きく変わる例 ① 40000 35000 活性炭 532nm 30000 Int 25000 20000 15000 10000 5000 5000 活性炭 780nm Int 4000 3000 2000 1000 1800 26 1600 1400 1200 Raman shift (cm-1) 1000 明確な検索結果が得られない例 ラマンの場合 ラマン ラマン測定でレーザ波長が変わるとスペクトルが大きく変わる例 ② 3000 2800 2600 水色ポストイット 532nm Int 2400 2200 2000 1800 1600 1400 2000 1800 Int 1600 水色ポストイット 780nm 1400 1200 1000 800 600 1800 27 1600 1400 1200 1000 Raman shift (cm-1) 800 600 明確な検索結果が得られない例 FT-IRの場合 FT-IR 樹脂上変色部分のATR測定を行いライブラリ検索を試みましたが、ぴったりと一 致するライブラリスペクトルがありませんでした。 0.14 0.13 変色部 0.20 サンプル <アドバンストATR補正> 0.15 Abs 0.12 0.11 0.10 0.05 0.09 -0.00 1.0 0.08 0.07 0.06 ライブラリ 検索 0.05 0.04 0.03 Abs Absorbance 0.10 Ethylene/ethyl acrylate copolymer ヒット率:87.95 0.5 0.02 1.0 0.01 3500 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 Abs -0.00 POLYCARBONIC ACID, CARBONATE, POLYETHYLENE MIX ヒット率:87.30 0.5 Abs 1.0 MONO AND DIGLYCERIDES FROM EDIBLE MEAT FATS ヒット率:86.83 0.5 3500 28 3000 2500 2000 1500 Wavenumbers (cm-1) 1000 明確な検索結果が得られない例 FT-IRの場合 FT-IR 正常部とのスペクトル比較を行うと、変色部にはC=O,C-O-C,OHなどの構造 由来ピークが存在していることがわかります。 このことから、変色部は酸化劣化 していることが推測されます。 0.14 変色部 C-O-C C=O伸縮 0.12 Abs 0.10 0.08 0.06 O-H伸縮 0.04 0.02 -0.00 0.5 正常部 Abs 0.4 0.3 0.2 0.1 -0.0 29 3500 3000 2500 2000 Wavenumbers (cm-1) 1500 1000 ご清聴ありがとうございました。 30
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