非定常スペクトル解析の応用 スペクトル解析はデータ解析・故障探査等で広く用いられている基本技術 研究の背景と目的 犬塚 博 である。従来は、スペクトル解析のアルゴリズムとしてFFT(Fast Fourier Transform)を用いるものがほとんどであった。 しかし、FFTには非定常信号の解析で分解能が悪化する欠点があり、最近 ではウィグナー分布やウェーブレット変換等の非定常スペクトル解析の採用 が試みられている。 工学研究科 教授 非定常スペクトル解析法の中でもウィグナー分布を用いるウィグナー解析 ■ キーワード は時間・周波数分解能が最も高い究極のスペクトル解析法として知られてい る。しかし、ウィグナー分布には、クロス項と呼ばれる偽のスペクトルピークを ・ スペクトル解析 ・ FFT ・ ウィグナー分布 ・ ウェーブレット変換 発生させる重大な欠点があるため、従来は工学的にほとんど利用されてこな 研究の概要 ・ 非定常スペクトル解析 かった。 我々は、このウィグナー分布のクロス項成分のみを抑制する手法を開発し、 その結果、クロス項の発生しないウィグナー解析結果が得られるようになり、 非定常信号に対しFFTに比べてはるかに高い時間・周波数分解能のスペクト ・ 車間距離センサ ルが求められるようになった。 ・ 異常検出 ・ 異音検出 ・ 故障事前検出 ・ スペクトラムアナライザ ・ ■ 技術相談に応じられる関連分野 特筆すべき研究ポイント: 時間周波数分解能が高い、より正確な非定常信号のスペクトルが得ら ・ 計測・検査データの処理の れる。 高速化・高精度化 異常や異音の検出精度を改善できる ・ 傷の検査 ・ 異音による故障診断 ・ 非接触非破壊硬さ測定 セールスポイント ・ DSP を用いた信号処理 ・ 新規研究要素: 時間・周波数分解能を悪化させず事前情報を必要としないウィグナー 解析において発生する クロス項成分の抑制法は世界でも類を見ない。 ・ 従来技術との差別化要素・優位性: 非定常信号の場合におけるFFTに比べ圧倒的に高い分解能 事前情報を必要とせず、機械的に適用可能 ・ 特許等出願状況: 特になし 図2 同じ信号のウィグナー解析結果 W[A.U.] W[A.U.] イメージ図 図1 非定常信号の FFT 解析結果 .] t[A. U .] t[A.U f[A. U.] f[A.U.] 図3 通常のウィグナー解析結果 図4 クロス項を抑制したウィグナー解析結果 (赤く囲った部分がクロス項による偽のピーク) (クロス項は除去されている) ・ 高分解能スペクトル解析器の開発 今後の展望 ・ 高精度車間距離センサの開発 ・ 部品検査・異常・異音・故障の検出の高精度化 例えば、「自動車のドア開閉時の音の高時間分解能解析」、「ワイパー動作のびびり解析」、 「モーターの動作異常の検出」、「部品故障の事前検出」 ・ 異常・異音・故障の解析・研究の高精度化・時間短縮 ■ その他の研究紹介 ・ 超並列計算機(GPUやGRAPEシステム) による計算機シミュレーション ・ 計測データの信号処理 ・ 非接触非破壊硬さ測定
© Copyright 2024 ExpyDoc