定圧一面,単純せん断試験の供試体変形と強度特性の

第 34 回地盤工学研究発表会 , pp. 419∼420, 1999.7
定圧一面,単純せん断試験の供試体変形と強度特性の比較
大阪市立大学工学部 正 ○大島昭彦 高田直俊
同 大学院 学 土橋 徹
1)
まえがき 砂質土の定圧一面せん断試験における供試体は,レンズ状のすべり面が生じて不均一な変形となる 。この
せん断変形の不均一性が 強度に与える影響を調 べるためには,均一な変 形が期待できる単純せ ん断試験と比較するこ と
2)
によって可能になる。これまでにも一面,単純せん断試験の比較を行ったが ,両試験とも周面摩擦力の影響を考慮して
いなかった。ここでは供 試体内部に色砂柱を設 置して,周面摩擦力の影 響を考慮した「真の定 圧」条件下で一面せん 断
試験と多段式単純せん断試験を行って,供試体変形と強度特性の関係を調べた結果を報告する。
反力ネジ
反力板
右ネジ
左ネジ
反力ローラ
実験方法 図 −1に 多段式 単純せ ん断試 験機の せん断 箱周り の
概略を示した。供試体の直径 12cm,高さ 4cm,下面垂直力載荷・
上箱可動型で,上箱の反力板側でせん断面上の垂直応力を直接測定
できる。せん断箱は 8 段の剛なせん断箱要素からなり,各要素の両
側 2 ヶ所ずつに 45°の角度に取り付けた斜めガイドローラとガイド
斜材によって,せん断中に各せん断箱要素は水平に,かつ隣り合う
上荷重計
斜めガイド
ローラ 要素間の 相対水 平変位 は等し く保た れる。 せん断 箱のす ぐ内側 は せん断力
「七面せん断」となるが,巨視的には均一なせん断変形が与えられ
る。一面せん断試験は同じ試験機でせん断箱のみを取り替えて行っ
供試体
横ガイド板
下せん断箱
加圧板
ガイド斜材
た。なお,試験機の詳細は文献 2)を参照されたい。
一面せん断試験は,反力板側垂直応力σU(せん断面上の垂直応力
となる)が一定になるように加圧板側垂直応力σL を制御する真の定
圧条件で行った。単純せん断試験は,供試体側面全体に周面摩擦力
が生じるため,σU ,σL はそれぞれ上,下面の垂直応力となる。そこ
で,平均垂直応力σM(=(σU + σL )/2)が一定になるようにσL を制御す
反力板
ポーラス
ストーン
せん断箱要素
(8段)
垂直力
上ガイド
ローラ
加圧軸
図−1 多段式単純せん断試験機のせん断箱周り
の概略
る定圧条件で行った。
試料は,三隅砂(島根県三隅町で採取した海砂,Dm ax = 0.425,D50 = 0.17mm,Fc = 5. 8%,ρdmax = 1.52,ρdmin = 1.28g/cm3)
を用いた。供試体は wopt = 19%の試料を締固め法により,圧密後の相対密度 Drc = 4 0,75%に作製した。ただし,供試体の
内部変形を見るために,供試体中央部に色砂柱を設置した(設置方法は文献 1)を参照されたい)。圧密応力σc は 0.5,1,
2kgf/cm2,上下せん断箱の隙間は一面で 0.5mm,単純で各要素間とも 0.2mm とした。
実験結果 と考察 写真 −1, 2にそれ ぞれ代 表例と し
て,一面,単純せん断試験の Drc = 75%,σc = 1kgf/cm2 にお
ける最終せん断 変位δ =16mm 時の供試 体中央部に設置 し
た色砂柱の変形状態を示した。一面では,文献 1)で報告し
たように すべり 面が供試 体の左 右の端部 から中 心に向 か
って上下にレンズ状に生じている。単純では,全体的には
単純せん断変形をしているものの,左上から右下方向に斜 写真−1 一面せん断供試体の変形状態
2
めのすべり面が生じている。各試験条件ともこのような写 (Drc=75%, σc =1kgf/cm , δ =16mm)
真から外形,色砂柱の境界をトレースして供試体中央部の
変形状態を捉えた。
図−2に Drc = 75%における一面,単純せん断試験の応力
−変位関係を,図−3,4にそれぞれのせん断終了時の供
試体変形を比較した。いずれのσc でもダイレイタンシーは
正を示している。一面に比べて単純は,せん断応力τ の 立
ち上がり が緩や かで,ピ ークを 生じる変 位が大 きい。 ま 写真−1 単純せん断供試体の変形状態
2
た,垂直変位∆ H の膨張量が大きい。しかし,ピーク強度 (Drc=75%, σc =1kgf/cm , δ =16mm)
は大差ない。図−3,4 の変形状態から,一面 ではレンズ状のすべり面 が生じているのに対し て,単純では供試体全 体
が変形している。ただし,左上から右下方向に斜めのすべり面が生じている。
Comparison of specimen deformation and strength characteristics between box and simple shear tests under constant pressure
condition : Akihiko Oshima, Naotoshi Takada and Tooru Tsuchihashi (Osaka City University)
2.0
σc = 2
τ–δ
1.5
τ (kgf/cm2 )
↓:ピーク位置
0.5
σc =0.5kgf/cm2 2
0
1
∆H – δ
0
白抜き:一面
黒塗り:単純
(1) σc=0.5kgf/cm2
(1) σc=0.5kgf/cm2
(2) σc=1kgf/cm2
(2) σc=1kgf/cm2
∆H (mm)
σc = 1
1.0
-1
16
(3) σc=2kgf/cm2
(3) σc=2kgf/cm2
図−2 応力−変位関係の比較(Drc = 75%) 図−3 一面の供試体変形(Drc = 75%) 図−4 単純の供試体変形(Drc = 75%)
0
2.0
4
8
δ (mm)
白抜き:一面
黒塗り:単純
σ c= 2
τ (kgf/cm2)
1.5
1.0
12
↓:ピーク位置
τ–δ
σ c= 1
(1) σc=0.5kgf/cm2
(1) σc=0.5kgf/cm2
(2) σc=1kgf/cm2
(2) σc=1kgf/cm2
σ c=0.5kgf/cm2
0
1
∆H – δ
0
∆H (mm)
0.5
-1
16
(3) σc=2kgf/cm2
(3) σc=2kgf/cm2
図−5 応力−変位関係の比較(Drc = 40%) 図−6 一面の供試体変形(Drc = 40%) 図−7 単純の供試体変形(Drc = 40%)
0
4
8
δ (mm)
12
2.0
図−5に Drc = 40%における一面,単
σ c= 2
純の応力−変位関 係を,図−6,7 に
ピ
はτ の立ち上がりが緩やかであるが,
ーク強度は大差な い。両試験ともピ ー
クはδ =12mm 以降で生じる。また,∆ H
は単純の方が膨張 傾向が強い。変形 状
態も Drc = 75%と同じ傾向である。
以上の傾向は,以 下のように考察 で
1.5
τ (kgf/cm2 )
それぞれのせん断 終了時の供試体変 形
を比較した 。Drc = 75%と同 様に,単 純
c d φd
白抜き:一面 0.06 38.4°
黒塗り:単純 0.09 38.1°
σ c= 1
1.0
σ c=0.5kgf/cm2
0.5
一面 γ= δ /40/3
単純 γ= δ /40
0
c d φd
白抜き:一面 0
36.6°
黒塗り:単純 0.02 36.1°
0
10
σ c= 1
σ c=0.5kgf/cm2
一面 γ= δ /40/3
単純 γ= δ /40
20
30
40 0
10
20
γ (%)
γ (%)
レンズ状の変形領 域の最大高さは供 試 (1) Drc = 75% (2) Drc = 40%
きる。今回の結果 から,一面におけ る
σ c= 2
30
40
図−8 応力−ひずみ関係の比較
体高さの 1/3 程度となっている。この
変形領域でせん断ひずみγ(=せん断変位δ /供試体高さ)が定義できると仮定すると,同じγ となるδ は単純の 1/3 となる。
この観点で図−2,5の応力−変位関係を応力−ひずみ関係に書き直したものが図−8である。Drc = 75%, σc = 1kgf/cm2
の単純はやや強いが,それを除けば Drc = 7 5,40%ともに両者の応力−ひずみ関係,強度定数は比較的よく一致している。
まとめ 以上から,一 面せん断試験における 供試体変形は不均一なも のとなるが,定圧せん 断強度は単純せん断試 験
とほぼ一致する。今後,供試体高さあるいは直径を変えた実験を追加し,この結果の妥当性を確認したいと考えている。
参考文献 1) 大島, 他:定圧一面せん断試験における上下せん断箱の隙間と供試体変形,第 34 回地盤工学研究発表会 (投稿中),1999.
2) 高田, 他:一面せん断試験と単純せん断試験の比較,直接型せん断試験の方法と適用に関するシンポジウム,pp. 173∼180,1995.