第2部データの収集・活用編(Ver.1),3MB

本マニュアルは,農業人材育成・農業技術継承を支援する「農匠ナビ」 プロジェクトの
成果です.本マニュアルおよび成果集等は公式Webサイトからダウンロードできます.
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/keiei/NoshoNavi/
農作業ノウハウ伝承実践マニュアル
第2部
データの収集・活用編
(Ver.1)
2015年1月20日版
滋賀県農業技術振興センター 藤井吉隆
九州大学大学院農学研究院 南石晃明
本マニュアルの参考図書:南石晃明・藤井吉隆編著『農業新時代の
技術・技能伝承 ICTによる営農可視化と人材育成』 (農林統計出版)
(C)Y.FUJII & T.NANSEKI
1
第2部『データの収集・活用編』目次
1.営農情報の種類と内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
2.FVSクラウドの活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
1)FVSクラウドの概要
2)利用手順
3)利用者の声
4)利用効果
5)FACEBOOK連携機能の活用
3.作期分散試算ツールの活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
4.生育ステージ・作業適期ナビゲーション資料の作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
5.田んぼのクセの共有・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
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2
1.営農情報の種類と内容
●農作物の生産に関わるデータを活用する上で必要なデータは、以下のとおり大別できます。
①農作業情報:作業時間、資材の種類・投入量、機械・施設の設定など
②環境情報:気温、地温、水温など
③生育情報:草丈、茎数、葉色、生育の状態など
●これらのデータを農作業ノウハウの蓄積・伝承に活用するためには、農作業、環境、生育に関わる情報を
個別に活用するのではなく、統合表示して活用することがポイントです。
●以下に、これらのデータの種類と具体的な内容と活用方法について解説します。
農作業情報
①作業時間:作業を行った時間
②作業期間:浸種、催芽、出芽、緑化、乾燥
③作業のタイミング:中干し、落水タイミングなど
④機械・施設の条件生育情報:シャッターの開度、
施肥繰り出し、育苗器温度、乾燥機温度など
農作業情報
生育情報
営農情報
環境情報
気温、湿度、地温、水温、
降水量、風速・・・など
環境情報
出芽長、草丈、葉齢、茎
数、葉色、籾欧化率、病
害虫・・・など
生育情報
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3
●これまで農業経営では、野帳を用いて紙ベースで様々な情報の記録と蓄積が行われてきました。しかし、紙ベース
では情報の取得と活用に多大な労力と負担が生じ、蓄積できる営農情報に限界があります。
●そこで当マニュアルでは、新たに開発したFVSクラウドなどのICTを活用した営農情報の記録、蓄積、活用方法につ
いて解説します。
田植えノート
浸種時間記録
生育ステージの記録
作業地図
籾運搬・乾燥機の投入
実績の記録
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乾燥機稼働記録
4
2.FVSクラウドの活用
FVSクラウドでは、スマートフォン内蔵のカメラ、マイク、ICタグ(FeliCa)リーダ、GPS等を用いて、圃場や作物の状態、農
作業の詳細な内容を画像、映像、位置情報、 ICタグ情報、コメントで素早く記録し、経営内で蓄積・共有できます。
ICタグを用いると、カードにタッチするだけで、農作業項目、使用資材、圃場、作業時刻等の詳細な情報を自動的に記
録できます。そして、取得した情報は、スマートフォンからWeb経由でクラウドセンターに蓄積され、利用者の要求に応じ取
得した情報をWeb上で集計・解析・表示できます。
収集た情報をクラウドシステム
に蓄積します。
スマートフォンアプリ、ICタグを利
用して営農情報を収集します。
SNS連携機能を活用すること
で、FACEBOOK上で収集した情
報を表示できます。
取得した情報を統合表示したノ
ウハウ伝承支援資料を作成し
ます。
取得した情報をノウハウ伝承、
非熟練者の判断支援に活用し
ます。
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(C)Y.FUJII & T.NANSEKI
2)FVSクラウドの利用手順
STEP1:ICタグ・スマホ、データロガーなどを用いて必要な情報を収集します。
STEP2:WEBシステム上にこれらのデータを蓄積、統合表示して可視化します。
STEP3:収集したデータを用いて、ノウハウの伝承および作業判断を支援します。
以下に、育苗作業での活用事例を紹介します。
(C)Y.FUJII & T.NANSEKI
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STEP1 ICタグなどによる情報取得(育苗作業の例)
記録する情報取得項目および取得内容を整理するとともに、ICタグ、データロガー等を設置して情報取得の準備をしま
す。記録する情報取得項目は、経営戦略・方針により異なることが想定されるため、経営の状況に応じて必要な情
報取得項目を設定することが重要です。
設定した情報取得項目は、ICタグやデータロガーなどを用いて効率的に情報を取得します。
表
育苗作業における情報取得例)
区分
項目
ICタグの活用
情報取得内容
情報取得方法
作業時間
浸種、催芽、出芽、シート被覆、灌水の開始・終了
FVS(ICタグ)
作業状態
催芽温度設定(3)、出芽温度設定(3)、ハウスサイド開閉状態(7)
FVS(ICタグ)
農作業
種籾の状態 浸種終了時(5)、催芽終了時(5)
FVS(ICタグ)
出芽の状態 出芽終了時の出芽長(5)
FVS(ICタグ)
生育情報
生育トラブル(5)
FVS(ICタグ)
生育の状態 田植え開始時の苗の草丈(4)、葉齢(3)
FVS(ICタグ)
生育画像:記録間隔30分
環境情報 温度
定点観測カメラ
温度データロガー
定点観測カメラ
外気温、ハウス内気温、浸種水槽水温:記録間隔10分
温度データロガー
注:情報取得内容( )内は記録した区分数を表す.なお、画像・音声情報は利用者の判断に応じて任意に収集を行った。
7
(C)Y.FUJII & T.NANSEKI
ICタグの準備
カードタイプのICタグに記録する情報(「作業名」、「装置名」、「機械施設の設定」、「作物の状態」)などの名称を記載
します。
①タグ名称の登録:PCシステムを操作してICタグの名称を設定します。
②ICタグと名称の紐付:スマホアプリからICタグと名称を紐付ます。
③テプラなどを用いてICタグの名称を記載します。
カードタイプのICタグに、記録する情報
(「作業名」、「装置名」、「機械施設の設
定」、「作物の状態」)などの名称を記載し
ます。
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ICタグの設置・読み取り
準備したICタグを設置します。
①ICタグの設置に際しては、カードタイプのクリアファイルなどにICタグを入れ、コルクボード、圃場看板などに設置します。
圃場などの屋外で設置する場合は、粘着強度の強いテープ類を用いて貼り付けます。
②作業時にスマートフォンアプリを用いて、該当するICタグを読み取ります。また、画像・動画収集機能を活用すること
で、ICタグと紐付けて、より詳細な情報を収集できます。
育苗作業では、作業場所付近にI
Cタグを設置して、催芽時間や種
もみの状態などの情報取得に活
用しました。
育苗ハウスの管理では、育苗ハウス
付近にICタグを設置して、ハウスサ
イドの開閉状態や灌水などの情報
取得を行っています。
水管理では、圃場看板にIC タ
グを設置して、入水実績や生育
ステージなどの情報取得に活用
しました。
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STEP2 データの蓄積
取得した情報はスマートフォンを経由してクラウドセンターに蓄積され、Web上で利用者の要求に応じてデータを表
示します。
(C)Y.FUJII & T.NANSEKI
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STEP3 活用
取得した情報(ICタグ読み取り実績、画像、映像)は、必要に応じて温度データロガーなどで収集した情報と統合表
示、体系的に整理することで、①作業者の判断支援、②熟練ノウハウの伝承支援に活用できます。以下に,育苗作
業における活用事例を紹介します。
集計したデータなどを用いて熟練ノウハウ伝承、従業員の
判断支援に活用します。
集計したデータなどを用いて熟練ノウハウ伝承、従業員の
判断支援に活用します。
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【取得した情報の活用例①】育苗作業全体図
育苗作業全体図では、品種・播種ロット単位で、温度データ、
画像と関連付けることで、育苗の経過を体系的に整理してい
ます。
月日
外気温
(
A
4
ハ
ウ
ス
3月
4月
28
29
30
31
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
平均
5
6
7
9
7
8
7
8
7
8
13
11
11
12
8
9
9
11
12
11
10
11
9
8
9
10
11
9
9
最高
12
14
12
14
15
16
11
13
14
14
22
12
14
19
16
15
16
17
17
14
15
19
14
11
14
14
13
16
13
最低
-2
-1
1
4
0
3
4
4
-1
0
4
1
3
8
7
6
5
6
4
2
7
7
5
ハ 平均
ウ
ス 最高
温
度 最低
作業工 浸種
程
)
農
1 作
回 業
生育
目
画像
浸種期間:6.1日
催芽 播種
25
7
9
9
6
4
17
14
15
15
12
13 12 15 15 14 14 14 12 12 12 14 13 12
11
30
18
24
26
24
27 22 25 23 20 24 22 20 25 24 22 19 22
19
7
8
8
5
4
4
1
4
苗出 緑化期間:3.8日 緑化
終了
不十分
~出過
ぎ、芽
揃わず
5mm
以下
●
●
8
7
5
6
7
4
2
7
6
5
播種~田植開始日までの日数:21日
5
6
田植
草丈
11cm
,葉齢
2.5
●
●
(1)育苗作業全体図
(C)Y.FUJII & T.NANSEKI
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
12
【取得した情報の活用例②】育苗作業実績一覧表(年度別)
浸種
ハウ (品種
ス 名)
A7
開始日時
終了日時
水槽
催芽
積算 平均
浸種状
日数
温度 水温
態
開始日時
播種
A7
キヌヒ
3/30 17:13 4/8 17:33 水槽4 81.8 10.1 9.0
カリ
A7
ゆめお
うみ
終了日時 催芽機 時間 温度 程度 日 枚数 開始日時
設定
A4
終了日時
育苗器
苗出し
外気温 外気温
時間
積算温 平均気 温度設定 出芽長 月日
(hr)
度 温
遅れて
不十分
3/27 13:19 3/28 17:04 催芽機2 27.7 30℃
3/29 66 3/29 10:09 4/1 9:35 育苗器3 72.6 19.4 10.3
いる
〜鳩胸
ゆめお
うみ
4/8 17:32 4/9 13:16 催芽機3 19.6 30℃ 鳩胸
3/30 17:12 4/8 17:32 水槽4 81.8 10.1 9.0
30℃ 長い
4/8 17:32 4/9 13:17 催芽機4 19.6 30℃ 鳩胸
4/10 11:15 4/14 10:31 育苗器1 95.3 25.7 13.2
30℃ 長い
不十分
〜鳩胸
4/14 10:31 4/17 9:42 育苗器1 95.2 22.3 11.8
30℃ 標準
4/14 4/14 11:04 4/16 9:27 46.5 4/30 20
4/13 12:20 4/16 8:46
17.0
水槽5
→4
バカ
苗
12cm
●
以上
12cm
以上
不十分 4/13 1880
4/14 10:32 4/17 9:42 育苗器2 95.2 22.3 11.8
〜鳩胸
12cm
30℃ 標準 4/17 4/17 9:34 4/19 7:41 46 5/2 19 以上
4/12 18:50 4/13 8:19 催芽機4 13.5 30℃
鳩胸~出
すぎ
4/14 10:39 4/17 9:42 育苗器3 95.2 22.3 11.8
30℃ 標準
4/17 16:37 4/20 10:11 育苗器1 65.6 22.6 12.9
30℃ 標準
4/16 8:50 4/16 19:01 催芽機4 10.3 30℃
6.6 正常
17.0
12cm
●
以上
4/12 18:50 4/13 9:33 催芽機2 14.7 30℃
進んで
鳩胸~出
ゆめお
4/16 8:47 4/16 13:24 催芽機3 4.6 30℃
4/9 17:39 4/16 8:46 水槽3 96.6 15.5 6.6
4/17 1062
いる
すぎ
うみ
96.1
生
播種
終了日時 時間 開始日 後日 草丈 徒 病 育 備考
(hr)
長 気 ム
数
ラ
30℃ 短い 4/1 4/1 10:42 4/8 9:39 16.8 4/23 25
4/10 11:15 4/14 10:30 育苗器3 95.3 25.7 13.2
4/4 17:35 4/12 18:49 水槽2 96.8 13.0 8.1 正常
A4 日本晴
苗
短い~
12cm
4/1 4/1 10:42 4/8 9:39 16.8 4/23 25
● ●
標準
以上
30℃
4/10 1320
- 水槽5
開始日時
田植
育苗作業実績一覧表では、品種・播種ロット単位で、育苗の
3/30 17:11 4/8 17:32 水槽3 81.8 10.1 9.0
4/9 17:39 -
緑化(シート被覆)
4/8 17:32 4/9 8:37 催芽機4 19.6 30℃ 鳩胸 4/10 115 4/10 11:各工程の実績を一覧表に整理しています。
15 4/14 10:30 育苗器3 95.3 25.7 13.2 30℃ 長い 4/14 4/14 11:04 4/16 9:27 46.5 受託 -
4/4 17:34 4/12 18:48 水槽1 96.8 13.0 7.7 正常 4/12 18:49 4/13 9:33 催芽機1 14.7 30℃
A6
出芽
アキタ
遅れて
3/19 11:00 3/27 13:18 水槽2 58.5 7.2 6.2
3/27 13:18 3/28 17:03 催芽機2 27.7 30℃ 鳩胸 3/29 361 3/29 10:09 4/1 9:34 育苗器3 72.6 19.4 10.3
コマチ
いる
A7 黒米 3/19 11:00 3/27 13:18 水槽2 58.5 7.2 6.2
(C)Y.FUJII & T.NANSEKI
4/17 16:37 4/20 10:11 育苗器3 65.6 22.6 12.9
30℃ 標準
4/17 16:37 4/20 10:11 育苗器1 65.6 22.6 12.9
30℃
4/17 16:37 4/20 10:11 育苗器2 65.6 22.6 12.9
12cm
●
以上
4/20 4/20 17:00 4/23 9:03 64 5/6 19
12cm
●
以上
短い~
標準
出過ぎ 4/17 824
4/16 19:01 4/17 8:46 催芽機4 12.6 25℃
4/20 4/20 17:00 4/23 9:03 64 5/5 18
短い~
標準
30℃
13
【取得した情報の活用例③】育苗作業実績一覧表(品種別)
浸種
年度
(品種名)
開始日時
終了日時
催芽
積算 平均水
水槽
日数 浸種状態
温度 温
開始日時
終了日時
播種
催芽機 時間 温度設定
8:51 温湯1 14.5 32℃
出芽
程度
日
枚数
鳩胸~出過ぎ
4/8
1792
開始日時
4/8
終了日時
12:08 4/11 8:00
外気
外気温
時間
温平 温度設
育苗器
積算温
出芽長
(hr)
均気 定
度
温
2013 Bゆめおうみ 3/31 12:00
4/6
18:18 温湯1 82.6 13.2 6.2
正~進
4/6
18:20 4/7
小1
68 26.4 9.4 30℃ 13mm以上
2013 Bゆめおうみ 3/31 12:00
4/6
18:19 温湯2 82.6 13.2 6.2
正~進
4/6
18:20 4/7 複数年蓄積したデーターを品種単位などで整理することで、
8:52 温湯2 14.5 32℃ 鳩胸~出過ぎ 4/8 1792 4/8 12:09 4/11 8:00 小2 68 26.4 9.4 30℃ 13mm以上
品種ごとの特性や年次間の相違などの把握に活用します。
2013 Cゆめおうみ
4/7
12:03 4/14
10:38 温湯1 78.6 11.3 6.9
遅~正
4/14 10:39 4/15 8:23 温湯1 22
32℃
鳩胸
4/15 1820
4/15
17:15 4/18 8:00
小1
63 34.6 13.2 30℃ 0~11mm
2013 Cゆめおうみ
4/7
12:03 4/14
10:38 温湯1 78.6 11.3 6.9
遅~正
4/14 10:39 4/15 8:23 温湯1 22
32℃
鳩胸
4/15 1820
4/15
17:15 4/18 8:00
大
63 34.6 13.2 30℃ 0~11mm
2013 Cゆめおうみ
4/7
12:03 4/14
10:39 温湯2 78.6 11.3 6.9
遅~正
4/14 10:39 4/15 8:24 温湯2 22
32℃
鳩胸
4/15 1820
4/15
17:15 4/18 8:00
小2
63 34.6 13.2 30℃ 0~11mm
2013 Dゆめおうみ 4/11 15:07 4/18
13:00 催芽器 83.3 12.0 4.9
4/18 13:00 4/19 9:22 催芽器 19.4 32℃
鳩胸
4/19
720
4/19
15:28 4/22 8:00
大
65 23.0 8.5 30℃ 10mm
2012 ゆめおうみ
3/30 17:11
4/8
17:32
水槽3 81.8 10.1 9.0
4/8
17:32 4/9 13:16
催芽機
19.6
3
30℃
鳩胸
4/10 1320
4/10
11:15 4/14 10:30 育苗器3 95.3 25.7 13.2 30℃
長い
2012 ゆめおうみ
3/30 17:12
4/8
17:32
水槽4 81.8 10.1 9.0
4/8
17:32 4/9 13:17
催芽機
19.6 30℃
4
鳩胸
4/10 1320
4/10
11:15 4/14 10:31 育苗器1 95.3 25.7 13.2 30℃
長い
2012 ゆめおうみ
4/4
17:34 4/12
18:48
水槽1 96.8 13.0 7.7
正常
4/12 18:49 4/13 9:33
催芽機
14.7
1
30℃
不十分〜鳩胸
4/13 1880
4/14
10:31 4/17 9:42 育苗器1 95.2 22.3 11.8 30℃
標準
2012 ゆめおうみ
4/4
17:35 4/12
18:49
水槽2 96.8 13.0 8.1
正常
4/12 18:50 4/13 9:33
催芽機
14.7 30℃
2
不十分〜鳩胸
4/13 1880
4/14
10:32 4/17 9:42 育苗器2 95.2 22.3 11.8 30℃
標準
(C)Y.FUJII & T.NANSEKI
14
画像・映像収集機能の活用
FVSクラウドの画像・動画収集機能を活用して、作業時の気づきや問題点などの情報をWEBシステムに蓄積するこ
とで、作業の振り返りや改善策の検討に活用できます。
生育に関わる画像の一例
作業に関わる画像の一例
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15
3)利用者の評価
FVS クラウド利用者からは、収集したデータの活用は、「計画策定などの判断支援に役立つ」、「ノウハウの伝承に役立
つ」などの評価を得ており、従業員の能力養成に有効であることを確認しています。
【従業員の評価】
項目
発話内容
計画策定判断
浸種の場合だと、積算温度になってくるので、「いつ頃浸種すると、いつの播種できると
か」というのが、このデータを見れば分かるので。平均気温がこの位だから。何日後くらい
に播種出来るとして、逆算して浸種していくと。それを前もって具体化出来て計
画作りに活用出来る。
データで残っていれば、ここまでやればOKとか分かりやすい。例えば、芽が出過ぎていた
時や予想以上に芽が良く伸びたり、品種によって伸びやすかったり、脱水を早めないと
いけないという判断をする時の助けになる。「これ以上はまずい」とか、「この時点で
この程度だとか、2日後の播種日には間に合わない」とか。
作業期間中の判断
今、ICタグのほうは育苗の実績一覧表だったり集計出来て見える形になってきているが、
画像が紐付いてデータであれば何かあった時にそれを見れば、去年はこれ位の積算で
こんな状態だったと一目でわかる様になる。同じ様な状態で、今年は芽の出が悪い
と言うのなら、今年は全体的に長めに浸けるという判断が出来る。
データに基づき社長と話し合うことで、社長のおっしゃっていることが理解しやすく
なったし、自分の考えた計画も伝えやすくなった
作業者間の対話
自分がやっていることを一覧表のようにまとめる事によって他の人が作業の状況や流れ
を理解しやすくなった。今までは、積算何度というのは知識として入れていて、作業と
してこういう事をするというのを教わってやっていた部分が、具体的なデータに基づきわか
りやすく説明出来る。
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4)利用効果
FVS クラウドを活用することで、①作業精度の向上,②作業体制の変化などの効果を有することを確認しています。
①作業精度の向上(例:催芽)
データ活用後、最適な状態で作業できた割合が
向上し、問題があった割合が低下しているなど
作業精度が向上している
100%
90%
データ活用後
80%
70%
データ活用後
60%
50%
40%
2011年
2012年
2013年
47.8%
38.7%
31.8%
30%
21.7%
20%
9.7%
10%
0%
最適(鳩胸)
問題あり(出過ぎ・不十分)
注:催芽後の種籾の状態が適正であった割合を表す。
②データ活用による作業体制の変化
従来:熟練者が計画策定し従業員に提示→現在:従業員が計画原案を作成し、熟練者の助言を得て修正 17
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参考:機械作業などへの活用
ICタグの設定・登録は、利用者の要求に応じて柔軟に対応できるため、機械作業時間、水管理、生育調査など幅
広い場面で活用可能です。
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5)FACEBOOK連携機能の活用
FVSクラウドシステムではFACEBOOK連携機能があります。FACEBOOK連携機能を活用することで、スマホで
収集した画像・映像、ICタグの読み取り情報をFACEBOOK上で瞬時に共有できます。
これらの機能を活用することで、経営内での情報の共有・伝達を効率的・効果的に進めることができます。
Facebookを活用することでコメント付き画像・映像を
共有でき、栽培管理上の問題点や注意事項をわか
りやすく共有できます。
Webシステムを活用することで、コメント付き画像・映
像を蓄積・閲覧できます。これにより、過去の問題点
や注意点などの情報を経営内で蓄積でき、従業員
の教育指導や栽培管理の改善に活用できます。
19
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FACEBOOKの活用例
・大規模稲作経営においてFACEBOOK連携機能を活用した実証実験では、5か月間で1000件を超える
投稿があるなど、経営内での情報共有に活用されています。
・FACEBOOKの投稿内容は、①作業の指示、②問題点・課題の指摘、③作業の予定、④業務連絡・報
告、⑤生育状況、⑥相談、⑦気づき、⑧その他に大別できます。
なお、熟練者からは、「問題点・課題の指摘」、「作業の指示」、従業員からは「生育状況」、「業務連絡」、
「問題点・課題の指摘」に関する投稿が多くなっています。
・次項に具体的な投稿内容を例示します。
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20
投稿内容例)
①問題点・課題の指摘
分類
問題点・課題の指摘
投稿者
投稿内容
熟練者
金沢、羽二重糯。肥料の散布ムラ。自分の散布技術を向上さすには、散布
跡を数日後に必ず確認することです。散布角度、エンジン回転、歩くス
ピードなどを常に考え頭に入れて、振り返った時に反省できるように心掛
けること。
熟練者
今年の直播縦方向と枕の交差部分が異常に繁茂している。肥料も種も二重
で撒けたからだが来年は注意が必要。
熟練者
畦畔の草刈りの時点で、モアーの刈り残しだけでなく、草刈り機での刈り
残しが目立った!圃場との際、というより圃場側に生えている雑草を刈り
残している。刈らないでいいと判断しているのか、要領のわかっている者
がしっかりと指導してやってください。大きなロスです。
熟練者
賀田山、横孫子。かなり前から湛水状態ではなかったか?一旦、水を抜き
ます。
熟練者
にこまるは、今水が欲しい時期です。水見をしっかりしてください。薩
摩、下西川、上岡部 画像は屋中寺
熟練者
山崎綾、水が抜け過ぎ!出穂期で水が要る時期です。これではダメです。
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②作業の予定
分類
投稿者
投稿内容
野菜班、来週から晴れが続く予報になっていますが例年より最高、最低気
温が低い為、圃場を準備しながら定植を進めていきます。一日定植目標
は、1台1町以上目指します。スプリンクラーは、2町分ある。灌水時間を
長くし、活着を早めます。15日までに、定植、キャベツ、ブロッコリー
は、終わりたいです。圃場次第ですが、定植日人員は、最低3~5お願いし
従業員(野菜担当者) ます。稲刈りも忙しいので早朝5時30分開始、昼まで2台、昼から1台でお
願いします。予定から大きく圃場が変わってます。薩摩一ノ坪、長瀬は、
年内収穫キャベツでしたが8月台風進路で定植圃場を変更しました。今、考
えてますが、一ノ坪1町田に、年明けキャベツは、危険すぎるので5反は、
中かぶら、後5反は、なばな。なばなは、収穫 日当たりを考え、1畝飛び
に播種します・・最後のバカ力を出して行くので協力お願いします。
作業予定
従業員(稲刈り責任
者)
明日の刈取り、使える乾燥機が1.3.4号機。残りの清崎の圃場の稲刈りを終
わらせて日夏に入ります。H1本郷1.7、H2下姥が辻6.3、H41高山田が町
12.5、運搬は常務、剛。備考:ヒメノモチは刈る量が多いのでできるだけ
朝早く刈りたいです。大変だと思うのでスムーズに無駄なく動いていきま
しょう。余裕があればミルキーもちょっとでも多く刈りたいです。
従業員
ヘリ防除、朝には20日と言っていましたが、天気の状況を考え、19日に飛
ばすように変更しました。よろしくお願いします。
熟練者
にこまるの色が落ちてきました。今週穂肥散布します。薩摩早崎307
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③気づき
分類
投稿者
投稿内容
左側が黒大豆で右側が白大豆です。播種量に違いはほぼないです。雨降り
従業員(大豆責任者) 前と雨降り後の播種では雨量によるのでしょうが、来年はもう少し考えて
行動します。
従業員
清崎、松田以降はまだ葉色が濃い。籾の具合を見ても、この天候ではもう
少し成熟に時間がかかるかと思う。 今日はイナゴが飛び回ってるのが、気
になった。
従業員(研修生)
今日は昼から稲刈り。自分は籾の運搬をしました。怪我など大きな失敗は
なかったのですが、小さな失敗はいくつかしてしまい反省しています。
具体的に言うと、トラックの停車位置を間違えました。フォークリフトが
コンテナ降ろし難い位置に車を止めてしまい、結局専務に車を動かしてい
ただきました。時間をくい、仕事もスムーズに進まずイライラします。今
日はそういう失敗はしましたが、次回は失敗しません。専務。今日はあり
がとうございました。もっとセンスを磨きます。
従業員(研修生)
今日四尺院でネム草を取っている時に田んぼの持ち主のお婆ちゃんに話か
けられました。『おおきに、草取ってもらってありがとう。こんな小さい
田んぼやけれどよろしく頼みます。』何度もよろしゅうを言われました。
色々考えましたが一番思ったのは『これが農業のお金じゃない所なんだ
な』でした。
従業員
ミルキークイーン、収量コンバインのデータによると、八幡の増えた圃場
が640kg,南の変形が790kg。籾摺りで減る分(一般に2割)を考慮すると、
それぞれ512kg、632kg。10俵超えています。差がついたのは石灰窒素?
気づき
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3.作期分散試算ツールの活用
作期分散試算ツールは、水稲生育予測システムおよび過去の作業実績をもとに整理した栽培様式・品種別の収穫適
期データに基づいて、当該作付計画における収穫適期の分散状況を半旬単位に試算するものです。
当ツールを活用することで、作付計画策定時に重要となる収穫適期の分散状況を把握できるなど、作付計画策定時の
判断支援に活用できます。
以下に、作期分散試算ツールの活用方法について紹介します。
面積入力シート:品種・栽培様式ごとに田植時期
毎の作付面積を半旬単位で入力する。
品種名
移植時期
出穂期
収穫時期
アキタコマチ
4月21日
7月15日
8月15日
アキタコマチ
4月26日
7月16日
8月16日
アキタコマチ
5月1日
7月17日
8月17日
コシヒカリ
4月21日
7月27日
8月29日
コシヒカリ
4月26日
7月28日
8月30日
コシヒカリ
5月1日
7月28日
8月31日
30
コシヒカリ
5月6日
7月29日
9月1日
30
コシヒカリ
5月11日
7月30日
9月2日
コシヒカリ
5月16日
8月1日
9月4日
コシヒカリ
5月21日
8月2日
9月6日
コシヒカリ
5月26日
8月5日
9月8日
コシヒカリ
6月1日
8月7日
9月11日
コシヒカリ
6月6日
8月9日
9月13日
作期分散表示シート:「面積入力シート」で入力した条件下での田植時期、収穫
適期面積を半旬単位で試算し、機械施設の稼働能力と対比させながらグラフ
上に視覚的に表示する。
面積(10a)
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STEP1 作付予定面積の入力
「面積入力シート」では、栽培様式・品種・田植時期毎の作付予定面積を半旬単位で入力します。
品種名
移植時期
出穂期
収穫時期
アキタコマチ
4月21日
7月15日
8月15日
アキタコマチ
4月26日
7月16日
8月16日
アキタコマチ
5月1日
7月17日
8月17日
コシヒカリ
4月21日
7月27日
8月29日
コシヒカリ
4月26日
7月28日
8月30日
コシヒカリ
面積(10a)
5月1日
7月28日
8月31日
30
コシヒカリ
5月6日
7月29日
9月1日
30
コシヒカリ
5月11日
7月30日
9月2日
コシヒカリ
5月16日
8月1日
9月4日
コシヒカリ
5月21日
8月2日
9月6日
コシヒカリ
5月26日
8月5日
9月8日
コシヒカリ
6月1日
8月7日
9月11日
コシヒカリ
6月6日
8月9日
9月13日
面積入力シート:品種・栽培様式
ごとに田植時期毎の作付面積を
半旬単位で入力します。
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STEP2 作期分散状況の確認
「作期分散表示シート」では「面積入力シート」の設定面積に基づく田植時期、収穫適期面積を半旬単位で自動計
算し、機械施設処理能力と対比させグラフ上に視覚的に表示します。
作期分散表示シート:「面積入力シート」で入力した条件下での田植時期、収穫適期面積を半旬単位
で試算し、機械施設の稼働能力と対比させながらグラフ上に視覚的に表示する。
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STEP3
試算結果の活用
作期分散試算ツールを活用しながら、熟練者と従業員の対話により作付計画を策定することで、作付計画に関わる熟
練ノウハウの伝承を促進できます。
現地実証事例では、当ツールを活用することで、熟練者からは、「従業員にある程度計画策定を任せられるようになっ
た」、従業員からは、「試算結果を提示しながら話し合うことで、熟練者の考えが理解しやすくなった」などノウハウ伝承に
有用であることを確認しています。
今、出ているグラフが、「にこまる」、「日本晴」、「キヌヒ
カリ」、「ヒメノモチ」、「コシヒカリ」、「ミルキークィーン」、
「羽二重糯」、「玉栄」の順に植えて、そうするとこういう
グラフになる。「ゆめおうみ」が極端に遅くなる。
それでいくなら刈り取る順番は「ヒメノモチ」、「ミルキークィーン」、「コシヒカ
リ」、「キヌヒカリ」、「ゆめおうみ」、「日本晴」、「にこまる」。この順番で普通
だから。これで言えば、「コシヒカリ」、「ミルキークィーン」を前で刈り取りをし
て、「キヌヒカリ」はそのまま。それから、「ゆめおうみ」も「日本晴」の前で
刈って、「日本晴」が来て、「にこまる」。そういう体系になるように作付け計
画をしていった方がいいな。
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4.生育ステージ・作業適期ナビゲーション資料の作成
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生育ステージ・作業適期ナビゲーション資料は、水稲生育予測システム(WEB水稲生育予測)や生育観察などにより収
集・整理した栽培様式・品種生育ステージに基づき、育苗播種ロット・品種・地区を基本単位に生育ステージ、作業適
期に関わる情報を一覧表で体系的に整理したものです。
当資料を作成することで、構成員の生育ステージに応じた農作業適期の判断支援(穂肥、水管理、畦畔管理な
ど)に活用できます。
以下に、生育ステージ・作業適期ナビゲーション資料の概要を紹介します。
生育ステージ予測:WEB生育
予測システムなどを用いた生育
ステージ(幼穂形成期、出穂期、
成熟期)の予測日を記載
生育ステージ実績を記載
作業適期予測:生育ステージ予測結果
から想定される作業適期を予測
例)出穂期→畦畔管理
出穂期→水管理
育苗播種ロット・地区:
作業の進捗管理の基本単位
例)4月20日播種・コシヒカリ・A集落
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5.田んぼのクセの共有
大規模水田作経営で安定した収量・品質を確保するためには、圃場の状況に応じて的確に農作業を実施すること
が求められます。
しかし、田んぼのクセは、作業者が作業時の経験を通して習得するものであり、経験の浅い従業員がこれらを短期間で習
得することは困難です。
以下に、田んぼのクセを抽出・整理した圃場特性管理表を用いて、田んぼのクセを共有する方法について紹
介します。
従業員は必要に応じて田んぼのクセを確認しなが
ら作業を実施します。
熟練者・従業員が参画して、圃場毎に田んぼのクセ
を洗い出して、圃場特性管理表に記録します。
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●圃場特性管理表の概要
田んぼのクセの要因
①作業を行う上で重要な田んぼのクセの要因を抽
出します。
要因
③備考欄には、特に注意す
べき情報を記載します。
圃場
区分
固まりやすさ
3:とても固まりやすい・2:固まりやすい・1:少し固まり
やすい
石(レキ)
3:とても多い・2:多い・1:少し多い
湿田
3:とても湿田・2:湿田・1:半湿田
雑草多少
3:とても多い、2:多い、1:少し多い
異物混入
3:要注意・2:注意・1:少し注意
構造物
3:要注意・2:注意・1:少し注意
保水力
3:とても悪い・2:悪い・1:少し悪い
高低差
3:とても大きい・2:大きい・1:少し大きい
進入路
3:要注意・2:注意・1:少し注意
②圃場毎の状況を4段階で評価して記録しま
す(要注意:3,注意:2,少し注意1,空欄:問
題なし)。
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