19.自然のサイクルでの対応の仕方 自然のサイクルは、周期をもって活動していることがわかっているが、その周期は、収束 と消散、応力集中と解放、寿命と更新、上昇と下降などのタイプにさまざまなものはあるが、 いずれもトレンドをもって進行しているようにみえる。 それでいて、トータルでバランスがとられているということもできると思われる。そうい う中で、人間の活動が巨大化すると、これらのトレンドに影響を及ぼすことも発現し、それ が我々の安全や安心に対して、不利なものを生み出すということもある。自然は、寡黙では あるが、内実は敏感に反応しており、それが顕在化するときには、相当な努力がないと元に 服することができなくなる。 したがって、われわれとしては、できるだけ、今の環境に負荷を与えないように、一時的 に負荷が避けられないにしても復元が可能な方法を案出する対応が求められる。 自然は同じ動きで継続してきたわけではない。例えば、地形の成り立ちは、大きな変動が 突発的な活動で形成されたものが多い。したがって、安定化するには、後発的な運動が付き まとう。このような複雑な変動を複雑に絡ませながらサイクルをしている。 地震なども、弱小なマグニチュードのものが多発していても大きな影響がないが、突然巨 大なものが発生すると、大きな地殻変動が発生して、そのバランスをとるために様々な現象 が長期にわたって発生することになる。特に土砂災害はバランスにかかわる問題で、その素 因には自然環境の不安定、人工的なことへのバランス回復のための復元力によるものと思 われる。自然を賢く、循環的に支障のないように利用するには、自然のありようを正確に認 識して使い分けすることが必要である。その利用の主体は、土地の利用とエネルギーの活用 であると思われる。特に土砂災害は、土地の利用と密接な関係がある。利用する側としては できるだけ平坦な地域を求めるわけで、そうなると平野部にするか、河川に沿ったところや 丘陵の裾部ということになる。そして、より広くということになれば丘陵地を切土や盛土に して確保するということが行われる。我が国は平野部が限られているということから、そこ に都市が集中し、産業の基盤としての土地空間、住宅地の確保ということで、できるだけ都 市に近い丘陵地の造成が盛んに行われた。元来、人間は集落を長い間の経験で、安全なとこ ろを求めてきたもので、歴史のあるところほど、安全で安定した土地であるといわれてきた。 しかし、人口の増加、経済の発展で土地の歴史や形成史を考えずに、平たんなところを求め ていくようになった。その後、豪雨や、地震、津波の大きな変動を受けると、見事にかつて の地形を反映した被災を受けることになる。地盤が形成されるためには、時間とその材料を 含めた成り立ちがあり、それによって耐災害性も異なる。そのようなリスクを地下に潜在さ せて利用するということは、大変に危険なことである。自分たちの地域の地理情報をしっか りと理解して、そのリスクを特定した上で、災害時の対応を考えておくことが極めて重要で ある。そして、災害は繰り返し起きるという周期性があることもあり、過去の経験や歴史、 言い伝え、地名なども無視できない。いまだ自然災害をどこで、いつ、どのような規模でと いうことはできないが、少なくともどこで、なにが程度は把握しておく必要がある。
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