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証明図の結論と 仮定
証明図は (根が下, 葉が上にある ) 木の形.
2015 年度 数理論理学
[P ∧ (P → Q)]1
講義資料 (5)
[P ∧ (P → Q)]1
P→Q
P
Q
P ∧ (P → Q) → Q
青戸 等人 (新潟大学 自然科学研究科)
証明図の結論
証明図の木の根にある 命題論理式
証明図の仮定
証明図の木の葉にある [A] や [A]i の部分
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目次
推論ステッ プ
証明図は仮定から 始めて , 複数の推論ステッ プを 適用し
て 構成さ れる . 証明図の横線で示さ れて いる 1 つ 1 つが推論
ステッ プ.
- 自然演繹体系 (1) 証明図, → と ∧ の規則
- 自然演繹体系 (2) ¬ と ↔ の規則
[P ∧ (P → Q)]
∧E
P→Q
Q
[P ∧ (P → Q)]
∧E
P
→E
• 推論の方向は上から 下.
• ど のよ う な推論が可能かは推論規則によ り 定めら れる .
• ∧E や →E は推論規則の識別子.
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自然演繹体系
仮定の除去
自然演繹体系は 20 世紀の初頭にゲン ツ ェ ン によ り 考案さ れた. 自然
演繹体系は, よ り 形式的な操作に適し たシ ーケ ン ト 計算, さ ま ざま な異
なる 体系を 扱う のに適し たヒ ルベルト 流の体系と と も に, 最も 一般的な
仮定は最初は肩に番号が付いて いないが, 推論の過程で
肩に番号を 付ける .
番号が付いて いる 仮定: 除去さ れた仮定
番号が付いて いない仮定: 除去さ れて いない仮定
証明体系の 1 つである .
自然演繹体系の重要性
• 自然演繹体系は我々 の直観と 合致し た証明体系 (“証明”
の構成方法を 規定する 枠組み ) であり , そ の推論方法はそ の
ま ま 数学の証明に用いる こ と が出来る .
• こ の先に学ぶ述語論理 (∀, ∃ を 扱う 論理) を 包括し た証
明体系と なっ て いる . 述語論理では, 命題論理の推論に加
え て 新し い推論規則が追加さ れる .
例. 除去さ れた仮定と 除去さ れて いない仮定を 指摘せよ .
[P → P → Q]
P→Q
[S → P]
P
[S]1
→E [S → P] [S]1
→E
→E
P
→E
Q
1
S → Q →I
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証明図
証明図の直観的な意味
自然演繹体系では, 証明図と いう 図を 作る こ と によ っ て
導出を 行う .
証明図の例
[P ∧ (P → Q)]1
[P ∧ (P → Q)]1
∧E
∧E
P→Q
P
→E
Q
1
P ∧ (P → Q) → Q →I
定義 5.1. Γ を 命題論理式の集合, A を 命題論理式と す る .
任意の B ∈ Γ に 対し て [[B]]v = T と なる 付値 v に ついて ,
[[A]]v = T と なる と き , Γ |= A と 記す. (特に , ∅ |= A は
A がト ート ロ ジーである こ と を 意味する . )
Γ を 証明図の除去さ れて いない仮定の集合, A を 証明図
の結論と する と き , 証明図は Γ |= A を 意味し て いる .
例.
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[P → Q]
Q
[P]
→E
{P → Q, P} |= Q
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自然演繹体系における 導出
定義 5.2. 結論が A です べて の仮定が除去さ れた証明図を
A の証明図と よ ぶ. A の証明図がある と き , A は導出可能
(証明可能) である と いい. そ のよ う な A を 定理と よ ぶ.
A の証明図がある こ と (定理である こ と ) は, ∅ |= A, つ
ま り , A がト ート ロ ジーである こ と に対応する .
(注意)
ただし ,「 そ う なる 」 と 記し ただけ で, 現段階では, ま だ証
明を し たわけ ではない. こ の対応関係は, 健全性や完全性
と よ ばれる 性質である .
3. 次に, → の導入規則を 用いて , 次の証明図が得ら れる .
[P → Q]1 [P]
→E
Q
1
(P → Q) → Q →I
4. さ ら に, → の導入規則を 用いて , 次のよ う な証明図が得
ら れる .
[P → Q]1 [P]2
→E
Q
1
(P → Q) → Q →I 2
P → (P → Q) → Q →I
仮定の除去は, 推論前の証明図にあっ た仮定 [A] の肩に自
然数 i を 付け る こ と によ っ て 行う . ま た, 自然数 i には, そ
れ以前に使われて いない新し い値を 用いる .
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自然演繹体系の推論規則
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各推論規則の直観的な意味
命題論理の自然演繹体系に は 12 種類の推論規則がある .
ま ず, →, ∧, ∨, ¬, ↔ のそ れぞれの命題結合子について , 導
入規則と 除去規則がある . そ の他に, 排中律と 背理法と い
う 特別な規則がある .
• → の導入規則は, A を 仮定と し て B を 示せたなら ば,
(A を 仮定せずに ) A → B を 示し たこ と になる , と いう 推
論.
• → の除去規則は, A と A → B から B が推論でき る , と
いう 推論.
英語で 導入は “introduction”, 除去は “elimination” な
ので, → の導入規則を →I, ∧ の除去規則を ∧E 等と 記す.
演習 5.3. 以下の証明図に は 3 つの推論が使われて い る .
ど の推論が正し く , ど の推論が正し く ないか?
推論規則を 記述す る ために, A を 結論に持つ証明図を 以
下のよ う に記す.
..
A
[P → Q]2 [Q]1
→E
P
1
Q → P →I
2
(Q → P) → P → Q →I
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→ の導入・ 除去規則
(1) → の導入
除去する 仮定の数について
(2) → の除去
[A]i
..
B
i
A → B →I
..
A→B
B
除去さ れる 仮定は, 0 個でも 複数個でも 良い.
演習 5.4. P → Q → P の証明図である . 足り ない部分 (推
論規則の識別子を 含む) を 補え .
..
A →E
[ ]
1
Q → P →I
P→Q→P
推論規則中の [A]i は, 推論規則を 適用す る と き に, 証明
図中に 現われる 仮定 [A] を 0 個以上 (適当な数だけ ) 除去し
て よ い, と いう こ と を 意味する . i にはそ れま で使っ て いな
い自然数を 用いる .
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証明図の構成例 (1)
演習 5.5. 以下は, (P → P → Q) → P → Q の証明図であ
る . 足り ない部分を 補え .
1. 証明図はま ず仮定から 構成する .
]2
[
[P]
P→Q
は結論が P の証明図. 同様に,
は結論が P → Q の証明図と なる .
2. こ の 2 つの証明図から , → の除去規則を 用いる と , 次の
証明図が得ら れる .
[P]
[P]1
Q
→E
[P]1
(P → P → Q) → P → Q →I
[P → Q]
[P → Q]
Q
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→E
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2
除去さ れる 仮定が 0 個のと き の → の導入規則は冗長な仮
定を 付加する こ と に相当し , 逆に, 除去さ れる 仮定が 2 個以
上の → の導入規則は何度も 使われて いる 同じ 仮定を 1 つに
ま と めて , 冗長な仮定を なく すこ と に相当する .
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∧ の導入・ 除去規則
(3) ∧ の導入
1. ま ず, 結論が (P → Q → R) → P ∧ Q → R になっ て いる は
ずなので, 証明図の形は
(4) ∧ の除去
..
(P → Q → R) → P ∧ Q → R
..
..
A ∧ B ∧E A ∧ B ∧E
A
B
..
..
A B ∧I
A∧B
と なっ て いる こ と がわかる .
∧ の除去規則は 2 種類ある が区別し ない.
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証明図の構成例 (2)
→ の導入で [P → Q → R] と いう 仮定は除去さ れる ので ,
P ∧ Q → R を 導く のに, [P → Q → R] と いう 仮定を 使っ て
も よ いこ と がわかる . そ こ で, 証明図の上の方に覚え 書
き と し て , [P → Q → R] を 書いて おく (証明図完成後には
消し て よ い ). 書いて おいた仮定は, こ れよ り 上の推論の
途中で, 何度でも 使え る (使わなく て も よ い ). ま た, こ
れよ り 以前に枝分かれし た証明図の部分では使え ない.
1. 証明図 [P ∧ Q] から ∧ の除去規則を 使う と ,
D1 =
[P ∧ Q]
Q ∧E
3. 次も 同様で, 素直に → の導入を 選ぶと 以下のよ う になる .
と いう 証明図が作れる . ま た, 同様に
D2 =
[P → Q → R] [P ∧ Q]
..
R
P ∧ Q → R →I
(P → Q → R) → P ∧ Q → R →I
[P ∧ Q]
P ∧E
も 作れる .
2. 最後に適用でき る 推論規則が複数ある こ と も ある が, 一
般的に は 1 番外側の命題結合子の導入規則を 用いる と よ
い.
[P → Q → R]
..
P∧Q→R
(P → Q → R) → P ∧ Q → R →I
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16/32
2. D1, D2 に ∧ の導入規則を 使う と ,
20/32
4. こ こ で問題になる のは, ど う やっ て , 2 つの仮定 [P → Q →
R] と [P ∧ Q] から , R を 導く か.
[P ∧ Q]
[P ∧ Q]
Q ∧E
P ∧E
∧I
Q∧P
と いう 証明図が作れる .
3. 最後に, → の導入規則を 適用し て , (2 箇所の [P ∧ Q] を 除
去する )
[P ∧ Q]1
[P ∧ Q]1
∧E
∧E
Q
P
∧I
Q∧P
1
P ∧ Q → Q ∧ P →I
今, R が使われて いる 仮定は [P → Q → R] だけである , と
いう こ と から , R を 結論と する 証明図は以下の形の可能性
し かない.
..
..
[P → Q → R] P
→E Q
Q→R
→E
R
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定理の証明
5. こ こ で, P や Q が ∧ の除去規則によ っ て P ∧ Q から 導かれる
こ と に気がつく と 次の証明図が得ら れる .
命題論理式が定理である こ と を 示すには, そ の命題論理
式を 証明図を 構成す ればよ い. こ のためには, そ の命題論
理式から 始めて , 下から 上へ, 適用でき る 推論規則を 探り
ながら , 証明図を 書く .
演習 5.6. (P → Q → R) → P ∧ Q → R の証明図を 与え よ .
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[P ∧ Q]1
∧E [P ∧ Q]1
P
→E
∧E
Q
→E
R
1
→I
P∧Q→R
2
(P → Q → R) → P ∧ Q → R →I
[P → Q → R]2
Q→R
演習 5.7.
(1) P → Q → P ∧ P の証明図を 与え よ .
(2) (P → P ∧ P) ∧ (Q → P → Q) の証明図を 与え よ .
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(1)
⊥ (常に 偽と なる 命題) がト ート ロ ジ ーと なる こ と はな
い. なぜ, ⊥ を 導く 推論規則が必要なのだろ う か?
[P]2 [P]2
P ∧ P ∧I 1
Q → P ∧ P →I 2
P → Q → P ∧ P →I
除去さ れる 仮定はなく て も よ い ([Q]1). ま た, 除去さ れる 仮定が 2 個
以上でも よ い ([P]2).
(2)
3
[Q]
[P]1 [P]1
2
P → Q →I 3
P ∧ P ∧I 1
P → P ∧ P →I
Q → P → Q →I
(P → P ∧ P) ∧ (Q → P → Q) ∧I
仮定は自分の分岐の上にある も のし か使え ないこ と に注意. 右の証
明図の [P] が余っ て いる から と いっ て 左の証明図で使っ て はいけない.
導出途中の証明図には, ま だ除去さ れて いない仮定があ
る . 証明図の結論は, こ れら の除去さ れて いない仮定から
正し い推論によ っ て 導かれる 結論である .
こ れら の仮定は, 正し い命題と は限ら ない. ま た, いく
つかの仮定を おいた場合, こ れら が, 一緒に成立でき る よ
う な場合も ある . 例え ば, ¬A と A を 同時に仮定し て いる か
も し れない. こ のよ う な場合には, 正し い推論によ っ て , 仮
定から 矛盾が導かれる .
演習 5.8. (P → Q) → ¬Q → ¬P の証明図を 与え よ .
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仮定の番号の付け方について の補足
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1. 素直に → の導入で展開し て いく と ,
仮定の番号の付け方に意味はない. 番号を 上から 順につ
け て も よ いし , 分岐の上であれば区別がつく ので, 同じ 番
号を 使っ て も 構わない. 例え ば, 前ページ の証明図は, 以
下のよ う に番号付けし て 書いて も 構わない.
[Q]2
[P]2 [P]2
1
P → Q →I 2
P ∧ P ∧I 2
→I
→I
P→P∧P
Q→P→Q
(P → P ∧ P) ∧ (Q → P → Q) ∧I
[P → Q] [¬Q]
..
¬P
¬Q → ¬P →I
(P → Q) → ¬Q → ¬P →I
2. こ こ で, ¬P が出て く る 論理式が仮定にないので, → の除
去規則では ¬P は導けない. そ こ で, ¬ の導入規則が使え
ないか考え る .
[P]
証明図の左側と 右側で 2 を 使っ て いる が, 2 つの枝は [A]2 の
仮定を 除去し た後に合流し て いる ので曖昧さ はない.
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目次
[P → Q] [¬Q]
..
⊥ ¬I
¬P
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3. [P], [P → Q], [¬Q] から ⊥ を 導く 証明図に気がつけば,
[P → Q]3 [P]1
→E
Q
⊥ 1 ¬E
¬P ¬I
2
¬Q → ¬P →I
3
(P → Q) → ¬Q → ¬P →I
- 自然演繹体系 (1) 証明図, → と ∧ の規則
- 自然演繹体系 (2) ¬ と ↔ の規則
[¬Q]2
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¬ の導入・ 除去規則
(5) ¬ の導入
[A]i
..
⊥
i
¬A ¬I
→ の推論規則と の関連性
(6) ¬ の除去
¬A と A → ⊥ は論理的同値であっ た.
¬ に関す る 推論規則において , ¬A を A → ⊥ と 置き 換え
て みる と , → に関す る 推論規則の特殊な場合と みなす こ と
ができ る :
..
.
¬A A ¬E
⊥
し ばし ば ⊥ は矛盾と 読ま れる . つま り ,
¬ の導入規則: ¬A を 示すには, A を 仮定し て 矛盾を 導け
¬ の除去規則: ¬A と A が同時に言え たなら , 矛盾である
と よ めばよ い.
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[A]i
..
⊥
i
A → ⊥ →I
..
A→⊥
⊥
..
A →E
従っ て , → に関す る 推論を 認める なら ば, ¬ に関す る 推論
はご く 自然に得ら れる 推論である .
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まとめ
↔ の導入・ 除去規則
(7) ↔ の導入
(8) ↔ の除去
[A]i [B]i
..
..
B
A
i
A ↔ B ↔I
..
A↔B
B
..
A ↔E
..
A↔B
A
..
B ↔E
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→, ∧ の推論規則と の関連性
A ↔ B と (A → B) ∧ (B → A) は論理的同値であっ た.
↔ に 関す る 推論規則に お いて , A ↔ B を (A → B) ∧
(B → A) と 置き 換え て みる と , → と ∧ に関する 推論規則に
よ る 推論ステッ プの省略と みなすこ と ができ る :
..
(A → B) ∧ (B → A)
∧E
A→B
B
• → と ∧ に関する 導入規則と 除去規則
定理の証明
• ¬ と ↔ に関する 導入規則と 除去規則
⊥ を 矛盾と よ む
→ と ∧ に関する 規則と の関係
↔ の除去規則は 2 種類ある が区別し ない.
[B]i
[A]i
..
..
A
B
i
→Ii
A → B →I B → A ∧I
(A → B) ∧ (B → A)
• 自然演繹法
証明図, 推論規則, 導出
仮定の除去
導出可能性, 定理
..
A →E
従っ て , → と ∧ に関する 推論を 認める なら ば, ↔ に関する
推論はご く 自然に得ら れる 推論である .
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