遊休農地を活用したキウイ栽培実証ほ場(吉原地区)の展示結果 善通寺市担い手育成協議会 善通寺市地域農業再生協議会 1.実証ほ設置目的 善 通 寺 市 の 果 樹 栽 培 は こ れ ま で カ ン キ ツ が 中 心 で あ っ た が 、価 格 暴 落 や 高 齢 化 な ど か ら 、 立地条件の良い園地はキウイフルーツに転換される一方、標高が高いなど条件の悪い園地 では、徐々に耕作放棄地が散見されるようになってきた。キウイフルーツは善通寺市の特 産品であるものの、剪定などの作業に多くの時間を要し、作業の適期が短いことから、規 模拡大が進まず経営的には補完作物に甘んじていた。 そこで、地区内の遊休園地を活用したキウイフルーツのモデル栽培実証ほを設置し、優 良品種の導入や省力栽培技術の確立による経営規模拡大を推進することとした。 2.実証ほの概要 1)実証ほの規模 キウイフルーツ専業経営の確立や特色あるオンリーワン産地の育成につながるよう、実 証 ほ の 規 模 を 約 1 ha( 94.5a ) 確 保 し た 。 2)展示期間 平 成 23 年 度 ~ 25 年 度 3)展示内容 ( 1 ) 1 ha 規 模 の キ ウ イ 経 営 モ デ ル 作 成 多品種組み合わせによる管理作業の労力分散と経営規模拡大を図るため、香川県農業試 験 場 で 開 発 さ れ た 面 談 経 営 計 画 作 成 支 援 シ ス テ ム ( FFF) を 利 用 し 、 1ha 規 模 の キ ウ イ 経 営モデルを作成した。 (2)栽培技術の省力化 大規模経営には省力栽培が不可欠であることから、樹形は新規参入者でも取り組みやす いよう一文字整枝法を採用し、栽培技術の省力化と単純化を図ることとした。さらに 小型 キウイの香粋については、新梢の回旋性が強く、鋼線への巻きつきが多いことから、従来 の平棚ではなく、農試府中果樹研究所で開発されたTバートンネル施設を 展示し、省力化 を図った。 3.結果 1 ) 1 ha 規 模 の キ ウ イ 経 営 モ デ ル 作 成 面 談 経 営 計 画 作 成 支 援 シ ス テ ム ( FFF) を 利 用 し て 実 証 ほ の 管 理 委 託 先 で あ る 「 さ ぬ き 果 匠 会 」と 協 議 し た 結 果 、家 族 2 名 で 1ha 規 模 の 経 営 可 能 な 品 種 組 み 合 わ せ を 想 定 す る こ と と し 、 品 種 配 分 は 、 香 粋 32a 、 レ ッ ド プ リ ン セ ス 25a 、 さ ぬ き ゴ ー ル ド 27.5a 、 香 緑 10a と し た ( 図 1 )。 労働可能時間および必要労働時間 300 さぬきゴールド(有袋) レインボーレッド 香緑(有袋) 香粋 200 労 働 時 間 ( 時 間 / 旬 ) 100 0 上 中 下 上中 下 上中 下 上 中下 上 中下 上 中 下上 中 下 上中 下 上中 下 上 中下 上 中下 上 中 下 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 面 談 経 営 計 画 作 成 支 援 シ ス テ ム ( FFF) に よ る 家族 2 名で経営可能な品種組み合わせ ( 香 粋 32a 、 レッドプリンセス 25a 、 さ ぬ き ゴールド 27.5a 、 香 緑 10a ) 図1 2)栽培技術の省力化 (1)一文字整枝 10a 当 た り の べ 作 業 時 間 は 、慣 行 区 の 231 時 間 に 対 し 、一 文 字 整 枝 区 は 207 時 間 で あ り , 慣 行 区 の 約 90% と な っ た 。特 に 省 力 効 果 の 高 か っ た 作 業 は 、せ ん 定 、新 梢 管 理 及 び 授 粉 で あ り 、 慣 行 区 の 約 83% の 作 業 時 間 と な っ た ( 表 1 、 図 2 )。 ま た 、 果 実 品 質 に は 整 枝 法 に よる差はなかった。 以上のことから、キウイフルーツ「レッドプリンセス」の一文字整枝は、慣行の整枝法 に比べて、果実品質の差はほとんどなく、また労働の集中するせん定と新梢管理作業 が約 10% 減 少 し 単 純 化 が 図 ら れ た こ と か ら 、新 規 参 入 者 に と っ て 分 か り や す く 省 力 化 で き る 整 枝法として有効と考えられた。 表1 「レッドプリンセス」の主要管理作業に及ぼす整枝法の影響(2013) 試験区 一文字整枝区 慣行区 労働比率y(%) せん定 35.7 43.4 82.3 10a当たりのべ作業時間(時間)z 新梢管理 授粉 摘果 収穫 86.1 23.1 17.5 14.0 102.2 23.1 17.5 14.0 84.2 100.0 100.0 100.0 防除 30.8 30.8 100.0 合計 207.2 231.0 89.7 z:樹冠面積は6m×4mの10aあたり42本として換算した。 y:慣行区を100とした時間比率。 250 1 0 a 200 当 た り 150 作 業 100 時 間 ( 50 h ) 防除 収穫 摘果 授粉 新梢管理 せん定 0 一文字整枝区 図2 写真1 慣行区 作業時間に及ぼす整枝法の影響 一文字整枝 写真2 慣行整枝 (2)Tバートンネル仕立て 10a 当 た り の べ 作 業 時 間 は 、慣 行 区 の 218 時 間 に 対 し 、T バ ー ト ン ネ ル 区 は 182 時 間 で あ り ,慣 行 区 の 約 84% と な っ た 。特 に 省 力 効 果 の 高 か っ た 作 業 は 、せ ん 定 、新 梢 管 理 及 び 授 粉 で あ り 、 慣 行 区 の 約 66% の 作 業 時 間 と な っ た ( 表 2 、 図 3 )。 ま た 、 果 実 品 質 に は 仕 立て法による差はなかった。 以上のことから、小型キウイフルーツ「香粋」のTバートンネル仕立ては、慣行の平棚 仕立てに比べて、果実品質の差はほとんどなく、また労働の集中するせん定と新梢管理作 業 の 短 縮 に よ り 作 業 時 間 が 約 15% 減 少 す る こ と か ら 、現 地 に お け る 管 理 作 業 の 省 力 仕 立 て 法として有効と考えられた。 第2表 「香粋」の主要管理作業に及ぼす仕立て法の影響(2013) 試験区 Tバートンネル区 平棚区(慣行) 労働比率y(%) せん定 44.7 67.5 66.2 10a当たりのべ作業時間(時間)z 新梢管理 授粉 摘果 収穫 57.0 16.8 13.4 27.9 85.0 12.5 10.0 26.7 67.0 134.0 134.0 104.7 防除 22.3 15.8 141.1 z:Tバートンネル区は樹冠面積5m×3mの67本/10a、慣行区は5m×4mの50本として換算した。 y:慣行区を100とした時間比率。 合計 182.0 217.5 83.7 250 1 0 a 200 当 た り 150 作 業 100 時 間 ( 50 h ) 防除 収穫 摘果 授粉 新梢管理 せん定 0 Tバートンネル区 図3 写真3 慣行区 作業時間に及ぼす仕立て法の影響 Tバートンネル施設 写真4 作業状況 4.問題点 T バ ー ト ン ネ ル 施 設 の 施 設 費 ( 施 工 費 込 み ) は 、 10a 当 た り 約 120 万 円 で あ り 、 慣 行 の 平 棚 の 約 80 万 円 に 比 べ て 高 く な る 。 5.実証ほの波及効果 遊休園地を活用したモデル栽培実証ほの設置により、地元と地権者の理解が深まり遊休 農 地 の 解 消 が 進 む ( 約 2ha) と と も に 、 キ ウ イ 栽 培 に 対 す る 生 産 意 欲 が 刺 激 さ れ 産 地 全 体 が活性化している。また、キウイ栽培への興味・関心が、現在は会社勤めをしている農家 の子弟にも広まり、将来はキウイ栽培を希望する潜在的後継者も増加しつつある。 写真5 実証ほ設置直後 ( 平 成 23 年 7 月 ) 写真6 実証ほ設置 3 年後 ( 平 成 26 年 3 月 ) 6.今後の取組み 当 協 議 会 で は 、農 業 生 産 法 人 、JA 香 川 県 善 通 寺 地 区 キ ウ イ フ ル ー ツ 部 会 等 と 連 携 し 、担 い手の確保と併せ、耕作放棄地の再生・利用により作付の拡大を図り、オンリーワンの産 地を確立していくこととしている。さらに、市民が花や自然を親しむ施設として、市営の 「善通寺五岳の里」市民集いの丘公園が設置されている。キウイフルーツの園地が、こう した施設との連携のなかで、市民の安らぎや農業学習の場として活用されるよう検討して いきたい。
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