[別記] 「かつお・まぐろ類に関する国際情勢について(国際

[別 記 ]
「 か つ お・ま ぐ ろ 類 に 関 す る 国 際 情 勢 に つ い て( 国 際 資 源 管 理 の 動 向 )」
(要旨)
(説明者:水産庁資源管理部国際課長
下村
聡
氏)
我が国の水産業を取り巻く課題は大変多い。しかしながら、国民の
食を支える水産業、これを何とか維持発展させていきたいということ
で、全力で取り組んでいるところである。
そうした多くの課題の中の1つとして、国際的に水産資源が危機に
瀕しており、これを何とかしていかなければいけないということで、
「国際資源管理の強化」というものがある。本日は「かつお・まぐろ
類に関する国際情勢について」と題し、国際資源管理の動向について
話をさせていただきたい。
昨 年 の 10 月 ~ 12 月 に か け て 、 マ ス コ ミ 等 で 「 ク ロ マ グ ロ の 漁 獲 が
半 減 し て し ま う 」、 あ る い は 「( 庶 民 の ま ぐ ろ と 言 わ れ て い る ) メ バ チ
マ グ ロ が 3 割 も 減 ら さ れ て し ま う 」、「 マ グ ロ が ス ー パ ー 等 の 店 先 か ら
消えてしまうのではないか」などといった懸念の声が報道された。
世界の人口が年々増えていく中で、水産資源に対するニーズが強ま
っている。その一方で水産資源は有限であることから、資源状態が悪
くなってきており、資源管理が国際的にも非常に大きなテーマとなっ
ている。
資料の1ページには、
「 主 要 な か つ お・ま ぐ ろ 類 の 種 類 」を 掲 載 し て
いる。
日 本 人 が 食 べ る マ グ ロ の 種 類 は 大 き く 分 け て 5 種 類 。そ れ に カ ツ オ。
日本人はカツオとマグロというのは明確に区別しているが、国際的に
は全体をひっくるめて「マグロ類」という扱いをしている。
資源管理においても一体として扱われる。まぐろの中で、日本人が
最も高級とし、好むのはクロマグロと言われている。これは比較的寒
い海域に住んでいるマグロであり、日本からさらに北のほう、特に大
西洋の北のほうに多く棲んでいる。このクロマグロに匹敵する高級品
種としてミナミマグロというものがある。クロマグロは北半球にしか
いない一方、ミナミマグロは南半球にしかいない。これは、南半球の
高緯度地方におり、インドマグロとも呼ばれていて、主に刺身用とし
て利用されている。
日本人が刺身として最もよく食べているのがメバチである。値段も
手頃で「庶民のマグロ」と呼ばれている。
メバチと並んで国内供給量が多いのがキハダである。これは刺身に
も使われるが、ツナ缶詰の原料として多く使われている。
そして、最近人気が高まっているのがビンナガであり、これは身が
やわらかく、今まで刺身には向かないとして好まれなかったが、非常
に脂が多いので、最近では回転寿司などで人気となっている。また、
缶詰原料としてはビンナガが一番高級とされており、次がキハダ、そ
の次がカツオとされている。
資源量的に最も多いのがカツオであり、世界中の海に広く分布して
いる。最近はタタキなども普通に食べられるようになっているが、も
ともとは鰹節、それから缶詰など、加工用に多く利用されてきた。
資料2ページには、主な「漁業の種類」として、カツオ・マグロの
漁獲方法を掲載しているが、刺身用として最もポピュラーなのが「は
え 縄 」 で あ る 。 こ れ は 150 キ ロ ぐ ら い の 幹 縄 に 針 を 付 け 、 こ れ を 1 日
程度海に入れて、それを回収するという漁法である。この漁法による
と身が傷まないということで、刺身用の魚を獲るのに使われる。
カ ツ オ の 場 合 は「 竿 釣 り 」に 加 え 、
「 ま き 網 」と い う や り 方 が あ る が 、
これは量を一度に獲るということで、加工用(鰹節、缶詰)にするカ
ツオやキハダには、この「まき網漁法」が用いられている。
ヨーロッパをはじめ、世界で広く行われているのは、この「まき網
漁 法 」で あ り 、
「 は え 縄 」は 日 本 市 場 を 目 当 て に し た 、日 本 、台 湾 、韓
国などが採っている。
資 料 3 ペ ー ジ は「 世 界 の か つ お・ま ぐ ろ 類 の 漁 獲 量 の 推 移 」と し て 、
カツオ・マグロがどれくらい獲られているかを掲載している。
30 年 ほ ど 前 に は 170 万 ト ン 程 度 だ っ た の が 、今 で は 400 万 ト ン を 超
え る ま で に な っ て お り 、 こ の 間 、 2.5 倍 と 急 速 に 増 え て き て い る 。
食 べ ら れ 方 と し て は 主 に 缶 詰 で あ り 、 鳥 イ ン フ ル エ ン ザ や BSE の 影
響によって魚に需要がシフトした。また魚自体がヘルシーな食べ物だ
と い う こ と で 、欧 米 や 中 東 と い っ た と こ ろ で の 消 費 が 増 え て き て い る 。
更に最近では、まだ量的には少ないものの、和食ブームの影響を受け
て、刺身のおいしさにも世界の人たちが目を向けはじめている、そう
いった面での需要の伸びというものもある。
資料4ページの「海域別かつお・まぐろ類の漁獲量」を見ていただ
くと、日本を含む西太平洋で一番漁獲量が多いのはカツオで、次はキ
ハダである。地中海ではクロマグロ以外の他の魚はあまり獲られてお
らず、これはほとんど日本向けに獲られている。こういったかたちで
世界のカツオ・マグロ類は獲られているが、では、どういった国がど
れくらい獲っているかというと、世界で一番多く獲っているのは日本
である。
資料5ページを見ていただくと、カツオとマグロの合計で計上して
い る が 、2006 年 の「 国 別・魚 種 別 ま ぐ ろ 類 の 漁 獲 量 」に よ れ ば 、マ グ
ロのほぼ1割強を日本が獲っている。次いで台湾、インドネシア、ス
ペインである。これらの国は「まき網」により、缶詰用として獲って
いる。
また資料6ページを見ていただくと、マグロについてはメキシコも
漁獲量が多いのだが、これは「蓄養」というかたちで、獲ったマグロ
を太らせ、日本向けに輸出しているということである。
5ページに戻っていただきたいが、魚種別に見ると、一番多いのは
カツオであるが、次がキハダ。その半分にも満たないのがメバチ、ビ
ンナガとなっており、我々が大好きなクロマグロとかミナミマグロと
いったものは、ごくわずかな量になっており、そういう構成であるた
め値段も高くならざるを得ない。
資 料 7 ペ ー ジ に は 「 我 が 国 の 主 要 な か つ お ・ ま ぐ ろ 類 供 給 量 」、「 供
給量」とは「消費量」とお考えいただければよいが、世界で獲られて
いるマグロ・カツオが、どういった形で日本において消費されている
か、ということを掲載している。
こ れ に よ る と 、地 賄 い の 部 分 は カ ツ オ・マ グ ロ 合 わ せ て 約 6 割 だ が、
台湾、韓国、中国などは日本に売るために獲っている、という状況で
ある。そして種類を見てみると、カツオは当然いっぱい獲られている
が、世界の動きと違うのは、やはり刺身需要があるということで、キ
ハダが一番多く、主に加工向けに消費されるメバチが続いている。
また資料8ページにあるとおり、世界の漁獲からみるとクロマグロ
やミナミマグロが日本に多く集まっているということが、この図から
読み取れる。
資 料 9 ペ ー ジ の「 海 外 に お け る ま ぐ ろ 養 殖( 蓄 養 )の 輸 入 量 の 推 移 」
を見てみると、最近は国内でもこういった取組が盛んになってきてい
るが、地中海、それからメキシコから来るクロマグロというのは、ほ
とんどが蓄養、養殖ものである。これはどういったパターンで来るか
というと、5月~6月頃、産卵のため地中海に入ってきたマグロを捕
まえ、これを5ヶ月くらい生け簀の中で餌をやって太らせる。これを
日本の年末年始の需要期に合わせるかたちで日本に輸出するというよ
う な パ タ ー ン に な っ て お り 、1998 年 か ら 見 て い た だ く と 、グ ー ッ と 伸
び て き て い る 。( 最 近 は 、 や や 足 踏 み 状 態 。)
また、棒グラフの中の赤い線の部分は、太平洋クロマグロを表して
いるが、最近の特徴的な動きとしては、メキシコの蓄養ものの在庫が
積み上がっているというふうに言われており、今まで順調に蓄養もの
は伸びてきたが、ここのところ、やや販売面で苦戦しているという状
況である。
先ほど「蓄養」のパターンについて申し上げたが、地中海において
は 、こ の「 蓄 養 」が 資 源 管 理 上 、や や 問 題 に な っ て い る 。こ れ は 、色 々
な国が、錯綜する中で一気に「まき網」で獲って、それを生け簀にご
ちゃ混ぜにして入れるという状態となっているためである。
資源管理については「何トン獲って、それがどこにいったか」とい
うものをずっと追いかけて(トレースして)いかなければいけないの
だが、地中海などで行われている蓄養というのは、そこがうやむやに
なってしまっている。
普通に獲るのであれば、釣ったものを量って、それをずっと追って
いけばよいのだが、蓄養だと、捕まえて、それを他の船が獲った魚と
一緒にして生け簀に入れるため、生け簀の中でどの魚がどのように混
ざっているかわからないということもあり、外国においては、資源管
理上、問題になっている。
次 に 価 格 で あ る が 、資 料 10 ペ ー ジ を 見 て い た だ く と 、ち ょ う ど 平 成
元年、2年のバブルのころは非常に高くなっていたが、最近は下降し
ている。ここ1、2年は高かったが、需要が落ちたため、価格が低迷
している状況である。
ここまで、カツオ・マグロを巡る漁業の現状と、その消費の状況に
ついてざっとお話ししたが、ここからは、国際的な資源管理をしなけ
ればいけないということで、現在、取り組まれている訳だが、具体的
にどういった枠組の中で取り組まれているかということをお話しする。
資 料 12 ペ ー ジ を ご 覧 い た だ く と 、 海 の 利 用 に 関 し て は 、「 国 連 海 洋
法 条 約 」と い う も の が 1993 年 に 発 効 し て お り 、我 が 国 も 締 結 し て い る 。
国連海洋法条約というのは、ご承知のとおり海の憲法とも言われる
も の で あ り 、「 ど こ ま で を 領 海 と し て い い か 」、 そ れ か ら 「 大 陸 棚 は ど
う い う ふ う に 利 用 し て い い の か 」、あ る い は「 水 産 物 を は じ め と す る 生
物 資 源 の 利 用 」だ と か 、
「海底資源についての権利あるいは利用の方法」
等を決めている。
それまで日本は世界の海をまたにかけて遠洋漁業大国として魚を獲
ってきたわけだが、この海洋法条約の下で、大きな転換を迫られたと
こ ろ で あ る 。そ の 1 つ が「 経 済 水 域 200 海 里 」と い う こ と で 、昔 は「 12
海里までが領海」とか、その前は「3海里」だとか、いろいろな国の
沿 岸 近 く ま で 魚 を 獲 り に 行 け た の だ が 、 そ れ ぞ れ 経 済 水 域 200 海 里 と
いうものが海洋法条約の下で定められ、
( 実 態 的 に は そ れ 以 前 か ら 、各
国 が 勝 手 に「 専 管 水 域 」な ど と 宣 言 し て や っ て き て い た が )、200 海 里
から締め出された。
それからもう1つ大きいのはサケ・マスである。日本人がいっぱい
食べるサケ・マスであるが、これも「母川国主義」ということで、日
本 の 200 海 里 で あ れ ば サ ケ ・ マ ス を 獲 っ て い い と い う わ け で は な く 、
「 そ の サ ケ が ど こ か ら 来 る か 」、こ れ は 、日 本 に 来 る サ ケ は ロ シ ア の 川
から来ているが、そうした「母川国」と協力しながらやらなければい
けないということで、その利用・漁獲をどうするかということについ
ても、毎年交渉しなければいけないという大きなルールの変更があっ
たわけである。
こ の 海 洋 法 条 約 の 中 で 、マ グ ロ の 資 源 管 理 に つ い て の 規 定(「 高 度 回
遊 性 魚 種 」)が あ る が 、こ れ は 、要 は 1 つ の 国 の 沿 岸 に お さ ま ら ず 、マ
グロであれば、太平洋の端から端まで回遊するわけで、どこかの国が
単独で一生懸命資源管理をやってもうまくいかないわけで、こういっ
たものについては、それぞれの国が単独で対応するのではなく、関係
する国が集まって国際機関を創り、そこで管理しようというようなこ
とを海洋法条約で定めている。
では具体的にマグロの場合どういうふうに管理されているかという
と 、 資 料 の 13 ペ ー ジ を 見 て い た だ く と 、 カ ツ オ ・ マ グ ロ に 関 し て は 、
現 在 5 つ の 管 理 機 関 (「 地 域 漁 業 管 理 機 関 」) と い う も の が あ り 、 こ れ
でほぼ全ての海域のカツオ・マグロ類をカバーしている。
ま ず い ち ば ん 古 い の が「 全 米 熱 帯 ま ぐ ろ 類 委 員 会 」
( 本 部:ア メ リ カ )
である。この委員会は、資料中のアメリカ大陸の周りに青い破線で表
示されている海域をカバーしており、主にメバチとかキハダを管理し
ている。ただここは、色々な国が主張しており、なかなかうまく資源
管 理 が 進 ん で お ら ず 、昨 年 、「 ど の く ら い 漁 獲 を し て い い か 」と い う 枠
を 決 め よ う と し た が 、2008 年 は 結 局 決 め ら れ ず に 、う ま く 動 い て い な
いというところである。
次に、オーストラリア、ニュージーランド、日本などが中心になっ
て つ く っ て い る「 み な み ま ぐ ろ 保 存 委 員 会 」で あ る 。ミ ナ ミ マ グ ロ も 、
今はだいぶ落ち着いてきたが、一時、非常に資源的に危ない状態だっ
た。
それから、先週ちょうど年次会合が開かれていた「インド洋まぐろ
類 委 員 会 」。 こ こ も メ バ チ ・ キ ハ ダ を 主 に 管 理 し て い る 。
次に、今、資源的に一番危ないと言われているのが大西洋のクロマ
グ ロ で あ り 、こ れ に つ い て は 1969 年 に 発 足 し た「 大 西 洋 ま ぐ ろ 類 保 存
国 際 委 員 会 」(「 ICCAT」。 本 部 : ス ペ イ ン の マ ド リ ッ ド ) が 管 理 し て い
る。
日本は遠洋国であり、
「 そ の 海 域 に 行 っ て 魚 を 獲 る 」と い う こ と を や
っているが、日本が沿岸国として含まれる中部・西部の太平洋海域に
つ い て は 、「 中 西 部 太 平 洋 ま ぐ ろ 類 委 員 会 (「 WCPFC」)」 と い う 、 2004
年にできた一番新しい委員会が管理している。
「 ICCAT」 な ど は キ ッ チ リ し た 規 制 措 置 が 決 ま っ て い る が 、「 WCPFC」
については、どういった規制の在り方がいいか、ということを、日本
が中心になりながら議論をしていっているという状況である。
では、それぞれの海域で資源がどうなっているかというと、資料の
14 ペ ー ジ に あ る と お り 、ク ロ マ グ ロ が い る の は 大 西 洋 と 中 西 部 の 太 平
洋が中心だが、いずれも資源水準は低位にあり、資源動向としては横
ばいとなっているが、これ以上、漁獲量を増やすと危ない状況になっ
ている。
ミナミマグロの資源水準は低位で、これは資源措置が徹底してきた
おかげで横ばいとなっているが、まだ低位が回復するまでにはいって
いない。
それからメバチについては、昨年暮れに「メバチの3割削減」とい
うのが大きく報道されたが、中西部太平洋海域では減少傾向になって
いて、このまま放置すると資源的に問題が生じるおそれがある。
なお、カツオはどの海域を見ても非常に資源水準が高位だが、一方
で、具体的な漁獲は最近うまくいっていない、というような報道、ニ
ュースなどもなされている。
最 後 に 資 料 の 15 ペ ー ジ を 見 て い た だ く と 、そ れ ぞ れ の 地 域 漁 業 管 理
機関において、資源管理がどう行われているかというのを表に整理し
ている。
「 ICCAT」は 、5 つ の 漁 業 管 理 機 関 の 中 で は 一 番 厳 し い 管 理 を し てき
ているが、クロマグロについては、なかなか資源が回復していないな
ど、管理の実効性が上がっていない。
こ の た め 昨 年 、「 も う ぎ り ぎ り の と こ ろ に き て い る 」「 こ の ま ま 放 置
し た ら 、ク ロ マ グ ロ が 絶 滅 し て し ま う の で は な い か 」と い う 声 も あ り、
こ れ を 強 化 し て い く こ と が 決 ま っ た 。( た だ 、当 初 は 現 在 の 漁 獲 枠 約 2
万 8,500 ト ン を 半 分 近 く ま で 減 ら さ な い と だ め だ と い う 議 論 を し た が 、
結局、地中海で獲っている国々の反発も強くて、3割減らす程度に落
ち 着 い た 。)
ま た 、管 理 強 化 の 一 環 と し て 、
「 蓄 養 」に つ い て は 、こ れ を し っ か り
監視できるように、生け簀に入れるときはカメラで監視するとか、オ
ブザーバーという第三者が立ち会わないといけないというような規制
を取り入れたところである。
そ れ か ら WCPFC で は 、 漁 獲 量 を 3 割 削 減 す る こ と と し た 。
日本は主に「はえ縄漁業」で獲っているが、日本の一部及び他の国
が主にやっている「まき網」について、規制をかけることができたと
いうことが大きい。
今回、日本の漁業者にとっても、マグロ漁船の減船というような措
置が取られるなど、非常に厳しい状況であると思うが、やはり国際的
に資源がなくなっていく中で、これを何とか将来にわたって守ってい
く、そうすることによって漁業も存続できるし、日本の場合はどちら
かというと人口は減りはじめているものの、途上国あるいは発展しつ
つある国というのは、ますますこれから需要が増えていく。そういう
国との折り合いをどうやってつけていくかという意味でも、やはり大
漁業国たる日本が主導して、こういった資源管理の取組というものを
進めていかなければいけないということで、我々も積極的にイニシア
ティブをとって、こういった資源管理を進めていくよう取り組んでい
る。
本 日 は マ グ ロ 類 に つ い て お 話 し し た が 、ほ か に も オ キ ア ミ な ど 、色 々
な魚種において、こういった資源管理の取組は、今後とも強まること
はあっても、結果として将来資源が回復し、安定的に獲れるようにな
らない限り緩和されることはなく、仕組み自体はますます精緻化され
ていくと考えている。
ただ、そのことによって世界共通の資源である水産資源を未来にわ
たって利用することができるということで、我々としては国民の理解
を得ながら進めていきたいと考えている。
(質疑応答)
A市長:
2点伺いたい。1つはカツオについてであるが、資源動向が「高位
横ばい」というが、実際はどうなのか。
最近、特に中国において缶詰の消費が増えているようであり、その
影響から鰹節用の原料確保について関係者が大変危機感をもっている
と聞いている。そうするとカツオ資源の枯渇と、その奪い合いが懸念
されるが、そうした点に関する現在の情勢をどう捉えているか。
次にクロマグロについてであるが、資源が減っている中、現在、蓄
養が注目されており、各水産大手メーカーは、今後、畜養の元となる
「 ヨ コ ワ( ク ロ マ グ ロ の 子 ど も )」の 漁 獲 制 限 が 厳 し く な る 場 合 に 備 え
て、既に獲得競争を始めている。漁業者にとっては「ヨコワ」を良い
値 段 で 買 っ て も ら え る と い う 面 は あ る も の の 、今 後 の こ と を 考 え る と 、
国の基本的な考え方、将来の制限等も含めて考える必要があるのでは
ないかと思われるが、その点についてはどうか。
下村・国際課長:
世界の5つの地域漁業管理機関においては、それぞれ科学者による
調査・研究が行われており、もちろん科学的な限界というものはあろ
うかと思うが、カツオに関する全体的な統計数値を見ると、いずれも
資源的には極めて優良な状態にある、ということになっている。
実 際 に 漁 業 を さ れ て い る 方 々 か ら 、「 最 近 カ ツ オ が 獲 れ な く な っ た 」
という話をうかがっており、これが、カツオの回遊状況によって獲れ
なくなっているのか、そうでないのかは、はっきりしていないが、一
応、我々としては、5つの機関の科学者がそれぞれ別々に調査をし、
こういった数字が出ているということで、現在のところカツオの資源
そのものが危なくなっているというような見方はしていない。
それから、最近国内でも盛んになってきているクロマグロの養殖で
あるが、我々としても、やはり心配しているのは「皆が獲り過ぎれば
結局、資源に悪影響が出てきてしまうのではないか」ということであ
り、地中海で起こっているような事態になってしまってはいけないと
いうふうに考えている。
メキシコにおける蓄養の状況を見ても、最近では在庫がかなり積み
上 が っ て い る と 言 わ れ て お り 、そ う い っ た こ と も 踏 ま え 、
「みんながや
るからやる」というのではなく、そこはよく見極めた上で取り組んで
いただく必要があると考えている。
A市長:
現在のところ、国による規制などは考えていないか。
下村・国際課長:
「国が規制」という形でやるのがいいのか、それ以外のやり方がい
いのか、手法は色々あると思うが、我々としては、やはりそれなりの
秩序を持って、やっていただかなければいけないと思っている。
B市長:
まぐろ類について温暖化の影響みたいなものはないのか。
下村・国際課長:
それも様々な機関で議論されているが、現在のところ、いずれの機
関においても「こういった影響がある」というところまでの結論・成
果は発表されていない。
【 以上 】