物権第6版 - LEC東京リーガルマインド

物権 第6版
物権
物権総論 総説
物権の客体
物権の効力
物権変動
物権変動総説
不動産物権変動
動産物権変動
即時取得
明認方法
物権の消滅
占有権
占有権の成立と態様
編著
法定地上権
所有権
留置権
所有権の意義
留置権総説
抵当権設定後の賃貸借
相隣関係
留置権の成立要件
抵当不動産の
第三取得者の地位
所有権の効力
(物権的請求権)
所有権の取得
共有
用益物権
用益物権総説
地上権
永小作権
地役権
入会権
留置権の効力
留置権の消滅
先取特権
先取特権総説
各種の先取特権
先取特権の効力
質権
質権総説
各種の質権
抵当権侵害
抵当権の処分
抵当権の消滅
共同抵当
根抵当
非典型担保
非典型担保総説
譲渡担保
所有権留保
抵当権
仮登記担保
買戻し・再売買の予約
抵当権の設定
代理受領
占有権の取得
担保物権
抵当権総説
占有権の効果
担保物権総説
被担保債権の範囲
占有訴権
債権担保の意義
占有権の消滅
担保物権の効力
準占有
担保物権の通有性
抵当権の効力の及ぶ
目的物の範囲
物上代位
はしがき
第6版改訂にあたり
<本書の目的>
本書は、類書の中で、学術的レベルを維持し、受験科目の最適の教材としての役割を担
い、実務家のニーズに沿った課題に応えることを目的として、編成しました。
<編成概要>
1 民法の条文編成は、第1編総則、第2編物権、第3編債権、第4編親族、第5編相続と
分けられています。これをパンデクテン方式といいます。
しかし、法律が社会で使用されているときには契約が結ばれ、その履行段階で債務の不
履行があれば、解除権や損害賠償義務が発生します。そうであれば、その順序で講義やテ
キストを述べるほうが良く、LECでは契約を起点に講義を行い、テキストもこの順序で
作成しております。しかし、大学の講義や市販本は、依然としてパンデクテン方式のまま
なので、本書もこの点を踏まえて作成していますが、民法を実践的・効率的に理解するに
は思考プロセスに沿った講義が望ましいため、随所にその長所を採用しています。なお、
進行中の民法(総則・債権)の改正は、契約法を起点に条文を編成した改正が多く見受け
られます。
2 司法試験も、民事系分野において要件事実論を踏まえた出題が多くなされていることか
ら、本書でも司法試験の出題により一層対応するべく、要件事実に基づく論理を適宜記述
しております。
3 民法では、例えば土地を売買する契約を結ぶと、その土地の所有権移転義務・登記移転
義務と代金の支払義務が発生します。しかし、特にその土地の所有権を移転する義務を履
行しなくても、原則として、契約時と同時にその土地の所有権が移動します(意思主義・
独自性否定説。詳しくは、本書の物権変動の該当箇所をご覧ください)。
もっとも、大方は売買の当事者間の合意によって、所有権の移転時期などが決められま
すが、民法の物権編では、上記のような原則形態、いわば裸の物権を学んでいきます。
4 民法の原則である私的自治(自分の生活関係は自分で形成することができるという原
則)に従えば、当事者の合意が民法の規定に優先します。当事者が決めなかった部分につ
いては、補充的に民法の条文が適用されます(任意規定)。しかし、物権編では当事者の
合意の効力が法の規定に優先せず、合意が無効とされる場合もあります。このような法の
規定を強行規定といい、物権法に多く定められています(物権法定主義などが強行規定に
あたります。)。民法の物権編では、強行法規に定めた物権自体を学びます。
5 民法は、法とは何でしょうか。それは、民法を学ばなければ分かりません。民法を学習
することにより、法はどのように解釈すべきか等、多くの法律を学ぶ際の基本原則を学習
することができます。本書によって、法律の解釈方法の基本を修得することができます。
そのため、物権法の理解が法律の解釈方法の基本を学ぶ上で非常に重要です。
<前版からの改正―法・判例・学説>
C-Book民法Ⅱ<物権>の改訂にあたっては、要件事実論の新設、民法判例百選Ⅰ総則・
物権[第7版]の対応、司法試験短答式試験の過去問の新規追加などを重点的に行いまし
た。詳細は、下記のとおりです。
☆ C-Book民法Ⅰ<総則>[第4版]と同様、「考えてみよう!要件事実の世界」を7個新
設し、丁寧で分かりやすく解説するとともに、ブロック・ダイアグラムを掲載しました。
☆ 最新刊である民法判例百選Ⅰ総則・物権[第7版]及び平成23~25年度重判に掲載さ
れている判例のうち、前版のC-Book民法Ⅱ<物権>[第5版]に掲載されていない判例を
新たに追加しました。
☆ 法科大学院コア・カリキュラム(第2次案修正案)とC-Book民法Ⅱ<物権>[第6版]
の対照表を新規に追加しました。これにより、司法試験合格に必要な知識の範囲・程度を
把握しつつ、効率的な学習を進めることができます。
☆ 「短答式試験の過去問を解いてみよう」のコーナーに新司法試験過去問(平成22年度~
26年度)・予備試験過去問(平成23年度~26年度)の中から厳選した過去問を追加し、簡
潔な解答を付すこととしました。
☆ 最新かつ定評のある基本書(佐久間毅『民法の基礎2』、石田剛ほか・リーガルクエス
ト『民法Ⅱ物権』等)を参考文献表・文献略記表及び本文中の右枠に取り上げることで、
より受験生・大学生にとって使い勝手の良いツールとなるよう心掛けました。
2015年4月吉日
LEC総合研究所 司法試験部
編著者代表 反町 勝夫
本書をお使いいただくにあたって
一 本書の効果的活用法
本書は、民法<物権>について、司法試験・予備試験その他各種資格試験に合格するため
に必要・十分な知識や理解を得るための独習用教材として編集されました。そのため、本書
には試験合格のために必須である基本的かつ最低限の知識・情報から、司法試験の論文式試
験でも問われ得る応用的で高難度な知識・情報まで盛り込まれています。
そこで、初めて本書をお使いいただくにあたっては、1回で全ての事項を理解しようとせ
ず、メリハリを付けて、まずは「AA」「A」ランクが付されている単元をしっかり読み込み
ましょう。そして、民法の全体的な理解が進んだ段階で、「B」「C」ランクが付されている
単元を学習するのが効率的です。
単元のランク
AA:論文式試験・短答式試験を通して必ず理解しておく必要がある、きわめて重要度の
高い単元です。
A:論文式試験・短答式試験を通して理解しておくと良い、重要度が比較的高い単元で
す。
B:主として短答式試験の対策として理解しておくと良い単元です。
C:論文式試験・短答式試験を通して重要度が比較的低い単元です。
二 本書の構成
1 「これから学ばれる方へ」
本書では、章のはじめに導入部分として「これから学ばれる方へ」のコーナーを設けて
います。これは、民法をより身近に感じていただくとともに、その章で学習する大まかな
内容を、日常的な事例を用いて平易に説明したものです。民法を初めて学習する方や、民
法に苦手意識をお持ちの方は、
「これから学ばれる方へ」を読んでいただくと、民法の全体
像をイメージすることができます。
2 各節の「目次」
、
「学習の指針」
本書では、各節の「目次」と「学習の指針」を冒頭に設けています。
「目次」は節の構
成を大まかに示していますので、体系的な理解に役立ててください。また、
「学習の指針」
では、各節の内容を学習するにあたり、重要なポイントや必要な理解の程度を示していま
す。どこまで学習すれば良いのかとお悩みになったときは、
「学習の指針」を参考にすると
良いでしょう。
3 「問題の所在」
、
「考え方のすじ道」
、
「アドヴァンス」
本書では、論点を具体的に捉え、的確な論証をすることができるように、
「問題の所在」
と「考え方のすじ道」を設けています。
「問題の所在」では、何が争点となって判例がある
のか、どうして学説が見解を対立させているのか、民法のどの条文のどの文言の解釈が問
題となっているのか等を明示することにより、理解を深めることができるよう工夫してい
ます。そして、続く「考え方のすじ道」では、主として判例・通説に従った思考プロセス
を分かりやすく展開しました。さらに、論点をより深く理解できるように、
「アドヴァンス」
において判例・学説を詳しく紹介しています。
4 「判例」
、判例の「結論」
、
「OnePoint」
司法試験・予備試験では、短答式・論文式試験を問わず、正確な判例の知識・理解が必
要不可欠です。そこで、本文中において比較的詳細な「判例」の紹介をするとともに、欄
外にも随所に「判例」を掲載しました。欄外に掲載した「判例」は、本文中の判例と比べ
て端的に要旨を述べたものとなっています。そして、本文中の「判例」の「結論」を欄外
に掲載しています。
また、
「OnePoint」は、試験上有用と思われるやや応用的な知識・情報を記載したもの
です。本文や判例・学説等の理解を促進させるものであったり、実務的な視点を踏まえた
ものですが、やや難しいので、民法を初めて学習される方はさらっと読む程度で良いでし
ょう。
5 「先取り情報」
、
「実務では今」
、
「法律相談室」
民法では多くの条文・判例を学習しなければなりません。そして、民法<物権>を学習
する際にも、<総則>や<債権総論><債権各論><親族・相続>といった分野で学習す
る知識・理解を踏まえなければ正しく理解できない事項もあります。そこで、本書では、
後に詳しく学ぶ事項を簡潔に説明した「先取り情報」を設けて、学習効率を高めていま
す。また、法曹界の実務や新しい関連立法などの情報を掲載した「実務では今」や、日常
的な法律問題を民法はいかに解決しているかを述べた「法律相談室」を設けています。気
分転換に活用していただければ幸いです。
6 「短答式試験の過去問を解いてみよう」
各章末に司法試験・予備試験の短答式試験を掲載し、簡単な解説と本文へのリンクを施
した「短答式試験の過去問を解いてみよう」のコーナーも設けました。その章や節で学習
した知識や理解の確認に役立ててください。
7 付録~「論点一覧表」
「論点一覧表」は、
「問題の所在」が記載されているページやその他重要な論点を掲載し
たページを一覧化したものです。問題を正しく処理するためには、問題の背景や制度趣旨、
基本的知識・判例の理解を踏まえた学習が必要不可欠です。そこで、論点名と本文中の該
当頁のみを表にまとめ、直ちに本文にジャンプできるようにしました。
本書に関する最新情報は、『LEC司法試験サイト』
(http://www.lec-jp.com/shihou/cbook/)にてご案内いたします。
C-Bookの「C」って何?
いわゆる基本六法といわれる、憲法(Constitution)・民法(Civil Law)・刑法
(Criminal Law)
・商法(Commercial Law)
・民事訴訟法(Civil Procedure)
・刑事
訴訟法(Criminal Procedure)の意外な共通点をご存じですか。
ご覧のとおり、英語に訳すとすべて「C」が頭文字になっています。つまり、
C-Book の「C」には、六法のすべてが凝縮されているのです。
しかも、C-Book は、六法の知識を、完璧(Complete)、かつ簡潔(Compact)
に集約し、そして創造的(Creative)に表現しています。
だからこそ C-Book は、みなさんに、法律をわかりやすくお伝えできるというわ
けなのです。
● 6-3 所有権留保
6-3
「目次」でその節の構成を示
し、
「学習の指針」でその節
所有権留保
一 はじめに
はじめに
法的構成
二 法的構成
三
対内的効力(売主と買
三 対内的効力(売主と買
主の関係)
四 対外的効力
対外的効力(当事者と
(当事者と
四 対外的効力(当事者と
第三者の関係)
五 転得者の保護
五
転得者の保護
学習の指針
所有権留保とは、割賦販売など
の重要なポイントと必要な
理解の程度を明記
のように商品は直ちに買主に引き
渡すが代金は後払いでよいといっ
た売買契約において、代金完済ま
で目的物の所有権を売主に留保す
ることをいい、引渡しが先履行と
なる動産売買契約において売主の
代金債権を確保するための手段として用いられるものです。
試験においては、所有権留保が正面から問われたことはありません
該当箇所の重要度をAA~
が、譲渡担保と同様に法的性質に関する見解の対立があり、短答・論
文ともに出題可能性のある分野といえます。法的性質をめぐる争いと
Cランクで表示し、基本書
等の参照先を明確に表示
所有権留保の効力、特に対外的効力との関連性を意識しつつ転得者保
護を中心にしっかりと理解しておきましょう。
一 はじめに
近江Ⅲ・322 頁
高木・378 頁
道垣内・359 頁
LQⅡ・369 頁
▲
1 意義
所有権留保とは、売主が目的物の引渡しを終えつつ、代金が完済され
るまで目的物の所有権を留保するものをいい、目的物の売買契約中に、
売主から買主への所有権移転を代金完済まで留保するという一種の停止
条件を付した特約を合意することによって行われる。たとえば、AがB
にパソコンを代金割賦払の約束で販売し、パソコンはすぐに引き渡すが、
代金は後から月賦で支払えばよいとする形の売買契約(割賦販売)を締
結する場合において、代金完済までパソコンの所有権をBに移転させず
A自身に留保する特約を結んでおく場合がこれにあたる。
2 機能
所有権留保は代金債権を確保するための一つの担保方法としての機
能を果たす。すなわち、買主が残代金の支払を遅滞すると、所有権に基
て担保の目的を達しようとするものである。たとえば、買主が代金 30 万
円のパソコンを3万円ずつの10 回払の割賦払で購入したが、5回までし
か支払をしなかったという場合、売主は留保所有権に基づいてパソコン
を取り上げ債権を回収するのである。これにより、買主は十分な資金の
準備がなくても必要な物を直ちに手に入れることができ、商品の大量販
売が促進される。主として所有権留保は消費的商品(自動車、ピアノ、
電気製品など)について行われ、代金が割賦払のときに利用されること
が多い。
「問題の所在」で問題の核と
なるポイントを指摘し、
「考
え方のすじ道」で論理的な
思考プロセスを明示
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
「アドヴァンス」で判例や学
説の内容を整理し、当該問
題に関する理解を深める
● 2-4 即時取得
3 指図による占有移転(184)と即時取得
指図による占有移転(184)と即時取得
論点
我妻Ⅱ・225 頁
佐久間 2・145 頁
LQⅡ・99 頁
▲
づいて売買の目的物を取り戻し、これを代金債権に充当することによっ
目的物の譲受人が指図による占有移転(184)を受けた場合においても、即時
取得が成立するか。次の2つの事例に分けて検討する。
Ⅰ 当該動産が所有者の支配内にとどまる事例
Xから動産の管理を委ねられたAが、Xに無断でBに売却し、AがBのため
に引き続き当該動産の管理を継続することとされた(占有改定による引渡し)
。
その後、さらにBがYに当該動産を転売し、Aに対して以後Yのために管理す
るよう通知した(指図による占有移転)
。
Ⅱ 当該動産が所有者の支配から離れた事例
Xから動産の管理を委ねられたAが、当該動産を自己の物であるとしてBに
預けた上で、Xに無断でYに当該動産を売却し、Bに対して以後Yのために管
387
理するよう通知した(指図による占有移転)
。
即時取得の趣旨は、動産の占有に対する信頼を保護し、無権利者と取引をした者
は、動産の占有に対する信頼を保護し、無権利者と取引をした者
に権利取得を認めることで動産取引の安全を確保する点にある
に権利取得を認めることで動産取引の安全を確保する
に権利取得を認めることで
動産取引の安全を確保する点にある
点にある
↓とすると
第三者が善意無過失で取引行為を行ったかどうかが重要であり、指図による占有
移転でも即時取得の成立を認めるべきとも思えるが、192 条はあえて「占有を始
移転でも即時取得の成立を認めるべきとも思えるが、
めた」ことを要件としている
↓その趣旨は
真の権利者の静的安全をも保護する点にある
↓そこで
即時取得が成立するためには、一般外観上従来の占有状態に変更が生じるような
占有の取得を要すると解すべきである(判例)
↓Ⅰの事例では
Xから動産の管理を委ねられたAの現実の占有が継続している以上、一般外観上
従来の占有状態に変更は生じておらず、真の権利者であるXの静的安全の保護を
優先すべきである
↓よって
Yが指図による占有移転を受けても、Yの即時取得は認められない
↓Ⅱの事例では
Xから動産の管理を委ねられたAの占有は現実にBに移転し、一般外観上従来の
占有状態の変更が生じている
↓よって
Bの占有を信頼したYの保護を優先すべきであり、Yの即時取得は認められる
・ 類型的に考察する見解
指図による引渡しの結果、原権利者の占有が失われる場合には即時取得を
肯定し、原権利者の占有(間接占有を含む)が失われない場合には即時取得
を否定する。
(理由)
① 本問題の結論は、決して当然自明のものではなく、類型化して個別的
検討をなすべき問題性を含む。
② 指図による引渡しがなされても原権利者の占有が失われない場合に
は、原所有者の信頼は形のうえでは全く裏切られておらず、また占有取
得の存否も外部から認識しにくい。
③ 指図による引渡しの結果、原権利者の占有が失われる場合には、原所
有者の信頼は完全に裏切られたものといえる。
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
判 例 大判昭 8.2.13
原所有者甲が乙に占有を
委託し、乙が丙に対して
占有改定による譲渡をな
し、さらに丙が丁に譲渡
し、乙に対する指図によ
って占有を移転した事案
において、即時取得の成
立を否定した。
*これに対し、甲所有の
物を占有する乙がこれ
をさらに丙に占有を委
託し、その後、乙がそ
の物を丁に譲渡し、丙
への指図によって丁に
占有を移転するという
ような類型において
は、丁の即時取得を肯
定するのが判例(最判
昭57.9.7)である。
89
本書をお使いいただくにあたって
● 5-4 地役権
3 地役権と第三者(177)
重要判例は枠で囲み、
規範やキーワードを
青字で表示
論点
地役権は、登記をすることにより第三者(177)に対抗できる。それ
では、たとえば通行地役権について登記がされていなかった場合、要役
地の所有者は通行地役権を主張することができるか。
判 例 最判平10.2.13 /百選Ⅰ[第7版]〔60〕
事案: Aは、公道に面した地(甲地)とそれに連続する袋地を有していた。
Aは、袋地の一部(乙地)をXに売却し、その際、甲地に、乙地を
要役地とする通行地役権を設定する旨の合意がされたものの、通行
地役権の登記はされなかった。その後、Aは甲地をBに売却したが、
甲地を通行するXに対し、Bが異議を述べたことはなかった。そし
て、Bから甲地を買い受けたYが、Xの通行地役権を否定したため、
Xが通行地役権の確認を求めた。
判旨: 通行地役権の承役地が譲渡された場合において、
「譲渡の時に、右
承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されてい
承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されてい
ることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らか
であり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識するこ
とが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されている
ことを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定
試 験 上・実 務 上 非常
登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者にあたら
ポイント
客観的・継続的な通行
の事実がある場合に
は、承役地の譲受人に
おいて通行地役権の存
在が推認され、その有
無・内容を調査でき、
不測の不利益を被るお
それは低い。他方、通
行地役権者が従前の通
行を否定されると、重
大な不利益を被りかね
ない。このような比較
衡量から、本判決は、
背信的悪意者排除論と
は異なる法理に基づ
き、未登記の通行地役
権を特に保護したもの
と理解されている。
論点
で巻末の
「論 点一覧表 」と
本文をリンク
ない」。
なぜなら、このような状況の場合、「譲受人は、要役地の所有者が
承役地について通行地役権……を有していることを容易に推認する
に重要な<物権>に
関する要件事実論を、
分かりやすく事例を交
えて丁寧に解説
ことができ、また、要役地の所有者に照会するなどして通行権の有
無、内容を容易に調査することができる」ため、
「通行地役権が設
定されていることを知らないで承役地を譲り受けた場合であっても、
随所に判例の
「 ポ イ ント 」
「結
論」を掲載し、端
的に判旨を要約し
たミニ「判例」も
記載
何らかの通行権の負担のあるものとしてこれを譲り受けたものとい
うべきであって、右の譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の
欠缺を主張することは、通常は信義に反する」からである。
「なお、このように解するのは、右の譲受人がいわゆる背信的悪意
者であることを理由とするものではないから、右の譲受人が承役地
を譲り受けた時に地役権の設定されていることを知っていたことを
要するものではない。」
● 2-2 不動産物権変動
考えてみよう! 要件事実の世界
▲
判 例 最判平25.2.26 /平25重判〔4〕
類型別・63 頁
所有権移転登記抹消登記手続請求、真正な登記名義の回復を原因とする抹消に代
わる所有権移転登記手続請求
<事例>
事案: Aが甲・乙・丙の各土地を、Bが丁土地を所有していたところ、
新問研・85 頁
まず、甲地につきCとの間で、次いで、甲・乙・丙・丁の各土地に
つきDとの間で、それぞれ抵当権の設定及び抵当権設定登記がなさ
Xは、甲土地を所有し、所有権移転登記を保有していたところ、Xの子であるYがX・
れた。その後、Dが有していた抵当権はEに移転され、Eの申立て
Y間において甲土地の売買契約があったかのように装い、登記申請書及び添付書類を偽造
に基づく抵当不動産競売によって、Yが各土地を買い受けた。甲・
し、Xの委任状も偽造の上、甲土地の所有権移転登記をY名義に移転させた。このことに
気付いたXは、Yに対し、甲土地のY名義にかかる所有権移転登記は不実の登記であると
乙・丙・丁の各土地には、上記抵当権の設定前もしくは設定から競
して、その抹消登記手続を求めた。
■ 請求の趣旨 売までの間に、Xらの所有する土地を要役地とする通行地役権が設
定されたが、通行地役権の登記はされていなかった。このような状
被告は、甲土地について別紙登記目録記載の所有権移転登記の抹消登記手続を
況の中、Xらは、Yに対し、各土地を承役地とする通行地役権の確
せよ。
■ 訴訟物及びその個数 認を求めた。
所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権 1個
■ 請求原因(Kg)
ポイント
本 判 決 は、 前 記 平 成
10 年 判 決 と 同 様、 背
信的悪意者排除論とは
異なる法理に基づいて
未登記の通行地役権を
特に保護するものとい
えるが、通行地役権者
による便益状況につい
ての認識可能性の判断
基準時を判旨した点が
注目される。すなわち、
承役地を取得した者の
認識可能性について、
●短答式試験過去問
189
短答式試験
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
の過去問を解いてみよう
Xは、甲土地を所有している。
(あ)Xは、甲土地を所有している。
(い)甲土地について、別紙登記目録記載のY名義の所有権移転登記がある。
実体法の要件から要件事実へ
1 登記請求権は、①物権的登記請求権、②物権変動的登記請求権、③債権的登記請求権
1 登記請求権は、①物権的登記請求権
物権的登記請求権、②物権変動的登記請求権
物権変動的登記請求権、③債権的登記請求権
債権的登記請求権
の3つに分類される。このうち、①物権的登記請求権は、相手方の登記の存在が物権に
1 土地の分割によって公道に通じない土地が生じた場合には、その土地の
所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することがで
き、その通行について償金を支払う必要はない。
[司H26-12]
○ 袋地所有者は、他の分
割者又は譲受人の所有
地のみを通行する権利を
有し、その際、償金を支
払 う 必 要 は な い(213
Ⅰ)
。
⇒第2編第4章
4-2 一(p.146)
2 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その枝を切
除することができ、かつ、その費用を隣地の所有者に請求することができる。
[司H26-12]
× 隣地の竹木の枝が境
界線を越えるときは、そ
の竹木の所有者にその枝
を切除させることができ
るにとどまる(233Ⅰ)
。
⇒第2編第4章
4-2 二(p.147)
対する目的物の占有以外の態様による妨害となっていることから、その法的性質は、
対する目的物の占有以外の態様による妨害となっていることから、その法的性質は、妨
害排除請求権
害排除請求権であると解されている。
<事例>
<事例>は、現実の実体的な権利関係と登記とが一致しない場合であるから、Xとし
ては、①物権的登記請求権に基づいて、Yの所有権移転登記の抹消登記手続を求めるの
が一般的であり、所有権に基づく妨害排除請求権
妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請
が一般的であり、所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請
を訴訟物とするのが通常である。そうすると、請求原因は、所有権に基づく返還請
求権を訴訟物とするのが通常である。そうすると、請求原因は、所有権に基づく返還請
求権としての土地明渡請求権(⇒ 19 頁)と同様となる。
について、登記に権利の所在自体を法律上推定する効力を認める見解
2 請求原因(い)について、登記に権利の所在自体を法律上推定する効力を認める見解
に立つ場合、
(い)を主張することにより、Yの現在の所有権が法律上推定されることに
なる。そうすると、Xは、Yの現在の所有権の不存在について主張立証責任を負うこと
となってしまい、Xに酷な結果となる。この点について、通説は、登記の推定力につき、
権利の所在自体又は登記記録に登記原因として記録された権利取得原因事実を事実上推
定する効力を有するにすぎないと解しており、判例(最判昭 34.1.8)も同様の見解に立
っているとされる。このように事実上の推定力のみを認める見解に立つ限り、登記の推
定力が要件事実の整理に影響を及ぼすことはなく、Xは、請求原因(い)のみを主張立
証すれば足り、Yが登記保持権原の抗弁(⇒ 266 頁)を主張立証しなければならないこ
ととなる。
3 次に、<事例>では抹消登記手続を求めたXが、これに代えて直接Xへの所有権移転
登記手続を求めることができるかが問題となる。この点について、学説上は、登記制度
が現在の権利関係のみならず物権変動の過程と態様をも反映させることを目的とするこ
と、これを認めることにより中間省略登記を許す結果となる場合があり、その場合に中
間者の利益を害するおそれがあることなどを理由として、これを否定する見解がある。
もっとも、判例(最判昭 30.7.5)は、真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権移
転登記請求権を認めており、登記実務上もこれを認める扱いとなっている。このような
判例・登記実務に従うと、Xは、Y名義の所有権移転登記の抹消に代えて、真正な登記
端的な解説が付された短
答式試験の過去問で復習
し、理解を深める
3 土地の境界線から50センチメートル以上の距離を保って建物を築造しな
ければならない場合においても、境界線に接して建築をしようとする者が
いるときに、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させること
ができない。
[司H26-12]
× 234 条1項の規定に違
反して建築しようとする
者に 対し、隣 地 所 有 者
は、その建築を中止させ、
変更させることができる
(234Ⅱ本文)
。
⇒第2編第4章
4-2 二(p.147)
4 他人の動産に工作を加えた者があるときの加工物の所有権は、民法の規
定に従って帰属する者が定められ、加工前に所有者と加工者との間で民法
の加工に関する規定と異なる合意をしても、
その合意の効力は生じない。
[司
H25-8=予H25-3]
× 加工(246)に関する
規定のうち、所有権の帰
属に関する部分は任意規
定であるから、異なる合
●論点一覧表
意も有効である。
⇒第2編第4章
4-4 三(p.151)
論点一覧表
名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができ、この場合、所有権に
基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権が訴訟物となり、請求原因も上記
(あ)
(い)と同様である。
巻 末 に「 論 点 一 覧 表 」を 掲 載、
「考え方のすじ道」や重要論点が
述べられている箇所にジャンプで
4 なお、Xが求めているのはY名義の所有権移転登記の抹消であるところ、請求の趣旨
では、
「抹消登記をせよ。
」と記載するのではなく、
「抹消登記手続をせよ。
」と記載する。
これは、登記を実際に行うのはYではなく登記官であり、Yは登記申請という意思表示
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
き、当該論点の周辺知識を深めつ
つ直前期の整理が可能
× 無権原の植栽農作物
5 土地を使用する権原のない者が作物の種をまき、これを自ら育てた場合
は土地に付合
(242 本文)
* 「問題の所在」が記載されている箇所やその他重要な論点が掲載されている箇所を一覧化しました。
「考え方のすじ道」
には、生育中の作物の所有権は、種をまいた者に帰属する。
[司H22-9]
し、作物の所有権は土地
が掲載されている論点には「○」マークを付しています。
所有権者に帰属する(最
考え方の
論点名
該当頁
判昭 31.6.19)
。
すじ道
⇒第2編第4章
物権総論
45
4-4 三(p.154)
――
9
1 一物一権主義の例外(独立性の例外)
2 一物一権主義の例外(単一性の例外)
6 建物の賃借人は、賃貸人の承諾を得て建物に増築を行っても、増築部分
3 物権的請求権の法的性質
が取引上の独立性を有しない場合には、当該増築部分の所有権を取得しな
4 物権的請求権の相手方
い。
[司H22-9]
5 物権的請求権の内容(費用負担の問題)
6 物権的請求権と他の請求権との競合(不法行為責任との関係)
7 物権的請求権と他の請求権との競合(契約責任との関係)
物権変動
8 「意思表示」の解釈①~物権行為の独自性の肯否
7
付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産
9 「意思表示」の解釈②~物権行為の無因性の肯否
の所有者のうち一人又は数人の請求により、裁判所がその所有者を定め
10 「その効力を生ずる」の解釈(物権変動の時期)
る。
[司H22-9]
11 真正な登記名義の回復を原因とする登記請求
12 中間省略登記
――
9
○ この場合、242 条ただ
――し書の適用はなく、建物
12
――賃借人は増改築部分の
14
○ 所有権を取得しない(最
15
判 昭 44.7.25 / 百 選 Ⅰ
――
17
[第7版]
〔70〕
)
。
○
⇒第2編第4章 18
4-4 三(p.154)
○
27
× この場合、各動産の所
――有者は付合の時における
28
価格の割合に応じて共有
○
28
する(244)
。
――
⇒第2編第4章 40
○
42
4-4 三(p.155)
13 「対抗することができない」の解釈(177)
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
14 二重譲渡の理論的説明(不完全物権変動説と公信力説)
○
――
46
15 「物権の得喪及び変更」の解釈
――
46
48
173
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国家試験合格を目指す皆さんへ
司法試験、予備試験、司法書士試験、公認会計士試験など、主要な国家試験には必ず
民法が出題されます。C-Bookはこれらの国家試験受験生のニーズに応ずるべく編集
されています。
ここでは、それぞれの国家試験等で、どのように民法が出題されているかについて、略
述しました。
◆ C-Bookで受ける「司法試験」
1 司法試験の概要
司法試験は、裁判官・検察官・弁護士となるために必要な学力及びその応用能力を有
するか否かを判定する試験です。司法試験が実施されるのは、例年、5月中旬の4日間で
す。短答式試験と論文式試験があり、両方の総合点によって合否が決せられます。短答式
試験では基本的な条文・判例の知識や理解が試され、論文式試験では高度な事案分析能
力・法的な論理的思考力が試されます。
2 司法試験におけるC-Book民法Ⅱ<物権>活用法
⑴ 短答式試験対策
司法試験短答式試験の民法では、民法総則から親族・相続まで満遍なく出題されるた
め、バランス良く正確に基本的な条文・判例に関する知識・理解の習得を積み重ねる必
要があります。そこで、
「短答式試験の過去問を解いてみよう」のコーナーを活用するこ
とで、現時点での自分の知識・理解のレベルを確認することができます。
⑵ 論文式試験対策
司法試験論文式試験は、長文の事例問題を短時間で整理・分析し、法的な論理的思
考力を駆使して、的確に問題を処理し妥当な結論を導くための思考プロセスを記述する
という過酷な試験です。とくに民法では、相当に複雑な事例が与えられた上で、具体的
な設問が用意されます。正しく題意を読み解き、事例中の事実を摘示しつつ、具体的な
設問に的確に答えるためには、条文・判例や民法上の制度について正確に理解していな
ければなりません。本書では、
「問題の所在」
、
「考え方のすじ道」
、
「アドヴァンス」の3
段階で、条文・判例や民法上の制度の理解を深めることができるように工夫しています。
LEC司法試験サイト http://www.lec-jp.com/shinshihou
LEC 司法試験
◆ C-Bookで学ぶ「予備試験」「法科大学院」
1 予備試験
予備試験は、法科大学院での教育課程を修了した者と同等の能力を有するか否かを判定
する試験です。予備試験に合格し、その後に控えている司法試験に合格するためには、法
科大学院での教育課程を修了したレベルに到達することが最低限の条件です。
もっとも、従来、法科大学院ごとに学者・実務家教員によって実に様々な指導が行われ
ており、
「法科大学院での教育課程を修了した」ということが具体的にどのようなレベルを
指すのかが不明瞭でした。
そのような中、2009 年 12月24日(2010 年 1月26日更新)
、法科大学院コア・カリキュ
ラムの第1次モデル案が、そして、2010 年 3月29日に第2次案が、同年 10月19日には第
2次案修正案が文部科学省の推進する高度専門職業人養成教育推進プログラム法科大学
院コア・カリキュラム調査研究グループより公表され、法科大学院教育が達成すべき共通
の到達目標をうかがい知ることができるようになりました。
そこで、C-Bookもこれに応える内容とするべく、法科大学院コア・カリキュラム第
2次案修正案に示されたテーマの記載を充実させております。
ぜひ、後掲の「法科大学院コア・カリキュラム対照表」を活用し、予備試験、司法試験
の合格を勝ち取ってください。
LEC予備試験サイト http://www.lec-jp.com/yobi_shiken/
LEC 予備試験
2 法科大学院
後掲の「法科大学院コア・カリキュラム対照表」は、法科大学院教育が達成すべき到達
目標のミニマムスタンダードとして発表された法科大学院コア・カリキュラム第2次案修
正案とC-Bookの記載とを対応させたものです。法科大学院既修者入学試験も、法科
大学院の教育もこの到達目標に掲げられた各論点の趣旨や要件の基本的な理解を前提に、
具体的事案に対しあてはめをする能力が求められる内容となっていますが、C-Book
の該当箇所を理解すれば十分に対応することが可能です。今後、この第2次案修正案の変
更は考えられますが、学習の指針としてこの対照表を活用してください。
LEC法科大学院サイト http://www.lec-jp.com/houka/
LEC 法科大学院
LEC 司法試験
◆ C-Bookで受ける「司法書士試験」
1 司法書士概要
司法書士の業務には、登記・供託・裁判に関する事務・簡裁訴訟代理等関係業務等があ
ります。このうち、最も大きな比重を占めているのが「登記に関する事務」で、業務全体
の約9割を占めているといわれています。
2 司法書士試験の概要
司法書士試験は、筆記試験と口述試験に分かれています。近年、筆記試験は7月第1日
曜日に実施されることが多く、午前の部(多肢択一式 35問)と午後の部(多肢択一式 35
問、記述式2問)があります。民法は、午前の部で出題されます。
筆記試験合格者を対象に、10月中旬、口述試験が実施されます。
3 司法書士試験におけるC-Book民法Ⅱ<物権>活用法
⑴ 知識問題対策のために
司法書士試験の民法は毎年 20問出題されます。出題範囲に関しては民法総則・物権・
債権・親族・相続など満遍なく出題されます。
司法書士試験の民法は、条文や判例を中心として、基本的な知識からやや応用的な知
識が身についているかどうかという点が問われます。学習にあたっては単元ごとにどの
ような条文があり、どのような趣旨・目的に基づいて規定されているか、判例がどのよ
うな問題に対してどのような処理をしたのかという点を学習するとよいでしょう。その
上で、六法に掲載されている条文に目を通しながら、
「短答式試験の過去問を解いてみ
よう」のコーナーで知識・理解を確認した後で、司法書士試験の過去問を解いていくと
よいでしょう。
⑵ 推論型問題対策のために
近年、司法書士試験においては、知識型の問題ではなく、学説の対立や判例の理論構
成を出題する、いわゆる推論型の問題が増加しています。本書は、
「問題の所在」
「考え
方のすじ道」で主要な論点の理論構成がわかるように示すとともに、
「アドヴァンス」で
判例の見解とともに主要な学説についても述べていますので、推論型問題対策のために
も有効です。
⑶ 司法書士試験情報収集のために
上記で司法書士試験の概要、本書の利用法について簡単に紹介いたしましたが、弊社
の司法書士サイトでも受験情報や合格体験記など司法書士試験に関するさまざまな情報
を提供しております。ぜひ、ご覧ください。
LEC司法書士サイト http://www.lec-jp.com/shoshi/
LEC 司法書士
◆C-Bookで受ける「行政書士試験」
1 行政書士試験の概要
行政書士試験は、毎年 11月の第2日曜日午後1時から午後4時までの3時間で行われ、
年齢、学歴、国籍等に関係なく受験することができます。試験科目は、①行政書士の業務
に関し必要な法令等(46問、択一式及び記述式)と、②一般知識等(14問、択一式)で
す。
また、内容については、①法令科目は、憲法、行政法、民法、商法及び基礎法学、②一
般知識は、政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解の構成になっています。
2 行政書士試験におけるC-Book民法Ⅱ<物権>活用法
民法は、例年、択一式9問・記述式2問の出題となっています。そして、<物権>の分
野からは、択一式で2問程度出題されるほか、記述式でも出題されることがあります(平
成18 年度「抵当権に基づく物上代位」
、平成 21年度「177 条の第三者」
、平成 23 年度「代
価弁済と抵当権消滅請求」
、平成25 年度「即時取得と盗品の回復」
)
。
そこで、択一式の対策としては、
「問題の所在」
「アドヴァンス」
「短答式試験の過去問
を解いてみよう」を活用するとよいでしょう。
「問題の所在」では、何が争点となって判例
があるのか、民法のどの条文でどのような解釈問題が生じているのか等を明示し、より理
解を深めることができるように工夫しています。また、
「アドヴァンス」では判例・学説が
整理されており、さらに詳しく学習することができます。各章末に掲載した「短答式試験
の過去問を解いてみよう」は、手軽に知識・理解の確認や簡単なアウトプットが可能とな
ります。
記述式の対策としては、
「考え方のすじ道」が判例・通説の立場から当該論点の思考プ
ロセスや規範を明示していますので、
「考え方のすじ道」を学習するとよいでしょう。
LEC行政書士サイト http://www.lec-jp.com/gyousei/
LEC 行政書士
◆C-Bookで受ける「公務員試験」
1 公務員試験の概要
公務員は、国家公務員と地方公務員に大別されます。国家公務員は、中央官庁やその出
先等の国家機関の職員です。専門職として裁判所職員、国税専門官等があります。地方公
務員は、県庁、市役所、区役所等の職員です。試験区分は、受験資格によって、大学卒業
程度の人を対象とした試験、高校卒業程度の人を対象とした試験に分かれています。
2 試験内容紹介
試験内容は、一次試験として教養科目と専門科目に関する「択一式試験」が実施され、
一次試験又は二次試験で専門科目その他に関する「記述式試験」ないし「論文式試験」が
実施されることが多いです。
民法の出題数は試験種によって異なりますが、国家総合職や地方上級の法律職、裁判所
職員のようにかなり出題数が多い試験種もあり、公務員試験における民法の重要度は高い
といえます。
二次試験では、面接試験が実施される場合もあります。これら一次、二次試験を突破す
ると「最終合格」となります。もっとも、公務員試験では「最終合格」イコール採用とい
うわけではないことに注意が必要です。
3 公務員試験におけるC-Book民法Ⅱ<物権>活用法
⑴ 択一式試験対策
択一式試験では、重要判例に関する出題が多くあります。本書では、重要判例のポイ
ントには色をつけて強調し、欄外でも判例の「結論」を平易に示しています。
また、学説の内容をあらかじめ理解していないと正解を導くことが困難な問題が出題
される試験もあります。本書では、
「アドヴァンス」でどのような判例・学説があるのか
を詳細に紹介していますので、これらを用いれば学説問題も十分に対応できるでしょう。
⑵ 記述式試験対策
記述式試験の多くは、事例問題の形式で出題されます。この事例問題を解答するにあ
たり、重要な論点を理解していないことには十分な答案は作成できません。本書では、
「問題の所在」
「考え方のすじ道」で答案の骨組みを示し、さらに巻末に「論点一覧表」
を掲載して、直前期の見直しもしやすいように工夫しています。
4 公務員試験情報収集のために
上記で公務員試験概要、本書の活用法について簡単に紹介しましたが、公務員には様々
な種類・試験があります。弊社の公務員サイトでは、公務員試験ガイドや公務員試験に役
立つ様々な情報を提供しております。ぜひ、ご覧ください。
LEC公務員サイト http://www.lec-jp.com/koumuin/
LEC 公務員
◆C-Bookで受ける「公認会計士試験」
1 試験内容紹介
公認会計士試験は、公認会計士となるのに必要な専門的学識を有するかどうかを判定す
るため、短答式と論文式による筆記の方法により行われており、短答式試験の合格者に対
し論文式試験を実施し、これに合格した者が最終合格者となります。
「短答式試験」では、企業法・監査論・管理会計論・財務会計論の4科目から出題され、
全 78問(平成27 年第1回)
、試験時間合計 300 分で実施されます。
「論文式試験」では、監査論・租税法・会計学・企業法の必須4科目と、選択科目であ
る経営学・経済学・
「民法」
・統計学の4科目のうち1科目を受験することになります。試
験時間は、合計 780 分です。
このように、公認会計士試験においては、民法が「論文式試験」で出題されますが、そ
の出題傾向・難易度は、旧司法試験の論文式試験に類似しているということができます。
2 公認会計士試験におけるC-Book民法Ⅱ<物権>活用法
民法の論文式試験では、過去の出題のほとんどが事例形式の出題となっています。ここ
数年、1問は事例分析の難解な長文の事例問題、もう1問は典型的な事例問題という出題
傾向がみられます。そこで、本書では、具体的な論点について「問題の所在」
「考え方の
すじ道」
「アドヴァンス」を掲載しており、これらを読み込むことで、答案の骨格となる部
分を論理的に学習することができるでしょう。
LEC公認会計士サイト http://www.lec-jp.com/kaikeishi/
LEC 公認会計士
・はしがき
・本書をお使いいただくにあたって
・購入者特典
・国家試験合格を目指す皆さんへ
・参考文献表・文献略記表
・法科大学院コア・カリキュラム対照表
第 2 編 物権
第
1章
物権総論
1-1 総説 ��������������������������� 3
一 物権とは… ………………………………………… Aランク…………………… 3
二 物権法定主義… …………………………………… Aランク…………………… 5
1-2 物権の客体 ������������������������ 7
一 物権の客体の要件… ……………………………… Aランク…………………… 7
二 一物一権主義… …………………………………… AAランク………………… 8
1-3 物権の効力 ����������������������� 10
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 10
二 優先的効力… ……………………………………… Aランク………………… 11
三 物権的請求権… …………………………………… AAランク……………… 12
考えてみよう!要件事実の世界… ………………………………………………… 19
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 22
第
2章
物権変動
2-1 物権変動総説 ���������������������� 24
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 24
二 「のみによって」の解釈
~意思主義と形式主義… ………………………… Aランク………………… 26
三 「意思表示」の解釈①
~物権行為の独自性の肯否… …………………… Bランク………………… 27
四 「意思表示」の解釈②
~物権行為の無因性の肯否… …………………… Bランク………………… 28
五 「その効力を生ずる」の解釈
(物権変動の時期)… …………………………… Aランク………………… 28
2-2 不動産物権変動 ��������������������� 30
2-2-1 不動産物権変動の公示………………………………………………… 30
一 物権変動の公示… ………………………………… Aランク………………… 30
二 公示の原則と公信の原則… ……………………… Aランク………………… 31
2-2-2 不動産物権変動における対抗要件…………………………………… 32
一 不動産登記簿… …………………………………… Aランク………………… 32
二 登記の有効要件… ………………………………… AAランク……………… 37
考えてみよう!要件事実の世界… ………………………………………………… 45
三 「対抗することができない」の解釈… ………… AAランク……… ………… 46
四 「不動産に関する物権の得喪
及び変更」の解釈… …………………………… AAランク……………… 48
五 「第三者」の解釈… ……………………………… AAランク……………… 57
考えてみよう!要件事実の世界… ………………………………………………… 65
2-2-3 登記の対抗要件以外の機能(権利保護要件としての登記)……… 69
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 69
二 具体例… …………………………………………… Aランク………………… 70
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 71
2-3 動産物権変動 ���������������������� 74
2-3-1 動産物権変動総説……………………………………………………… 74
・ 動産物権変動総説… ……………………………… Aランク………………… 74
2-3-2 動産物権変動における対抗要件……………………………………… 75
一 「引渡し」の解釈… ……………………………… Aランク………………… 75
二 「対抗することができない」の解釈… ………… Aランク………………… 76
三 「動産に関する物権の譲渡」の解釈
(引渡しを対抗要件とする物権変動)… ……… Aランク………………… 77
四 「第三者」の解釈… ……………………………… Aランク………………… 77
五 動産賃借人と178条の「第三者」………………… Aランク………………… 77
六 動産受寄者と178条の「第三者」………………… Aランク………………… 78
考えてみよう!要件事実の世界… ………………………………………………… 79
2-4 即時取得 ������������������������ 81
2-4-1 即時取得総説…………………………………………………………… 81
・ 即時取得の意義… ………………………………… Aランク………………… 81
2-4-2 動産の即時取得の要件………………………………………………… 82
一 即時取得の要件総説… …………………………… Aランク………………… 82
二 目的物が「動産」であること
(要件①について)… …………………………… Aランク………………… 83
三 前主が無権利者であること
(要件②について)… …………………………… Aランク………………… 84
四 前主に占有があること
(要件③について)… …………………………… Aランク………………… 85
五 無権利者との間に有効な取引行為が存在すること
(要件④について)… …………………………… Aランク………………… 85
六 占有の取得時に平穏・公然・善意・無過失であること
(要件⑤について)… …………………………… AAランク……………… 86
七 占有を取得すること
(要件⑥について)… …………………………… AAランク……………… 86
八 即時取得の要件のまとめ… ……………………… Aランク………………… 90
九 192条と178条の関係… …………………………… Bランク………………… 90
2-4-3 動産の即時取得の効果………………………………………………… 91
一 取得される権利… ………………………………… Aランク………………… 91
二 原始取得… ………………………………………… Aランク………………… 91
三 無償行為による即時取得… ……………………… Bランク………………… 92
四 即時取得と不当利得… …………………………… Bランク………………… 92
2-4-4 盗品及び遺失物の例外………………………………………………… 93
一 193条の場合………………………………………… Bランク………………… 93
二 194条の場合………………………………………… Bランク………………… 94
考えてみよう!要件事実の世界… ………………………………………………… 95
2-5 明認方法 ������������������������ 98
一 はじめに… ………………………………………… Bランク………………… 98
二 明認方法により公示される権利… ……………… Bランク………………… 99
三 明認方法を対抗要件とする物権変動… ………… Bランク………………… 100
四 対抗力の存続と明認方法… ……………………… Bランク………………… 103
五 伐木所有権の対抗要件… ………………………… Bランク………………… 103
2-6 物権の消滅 ���������������������� 104
一 物権の消滅事由… ………………………………… Bランク………………… 104
二 目的物の滅失… …………………………………… Bランク………………… 104
三 消滅時効… ………………………………………… Bランク………………… 104
四 混同… ……………………………………………… Aランク………………… 104
五 放棄… ……………………………………………… Bランク………………… 107
論文式試験の過去問を解いてみよう~旧司平成4年度第1問類題~… ……… 108
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 110
第
3章
占有権
3-1 占有権の成立と態様 ������������������ 113
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 113
二 要件… ……………………………………………… Aランク………………… 114
三 代理占有… ………………………………………… Aランク………………… 114
四 その他の占有の態様… …………………………… Aランク………………… 116
3-2 占有権の取得 ��������������������� 120
一 占有権の原始取得… ……………………………… Bランク………………… 120
二 占有権の承継取得… ……………………………… Aランク………………… 120
3-3 占有権の効果 ��������������������� 125
一 権利の推定(188)………………………………… Bランク………………… 126
二 取得時効(162、163)… ………………………… AAランク……………… 126
三 即時取得(192)…………………………………… AAランク……………… 127
四 占有による動物の取得(195)…………………… Cランク………………… 127
五 占有訴権… ………………………………………… Aランク………………… 127
六 本権者と占有者との利益調整規定… …………… Aランク………………… 127
3-4 占有訴権 ����������������������� 132
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 132
二 占有訴権の内容… ………………………………… Aランク………………… 132
三 占有訴権の実益… ………………………………… Bランク………………… 136
四 物権的請求権との相違… ………………………… Bランク………………… 137
五 交互侵奪… ………………………………………… Bランク………………… 137
六 占有の訴えと本権の訴えとの関係… …………… Aランク………………… 137
3-5 占有権の消滅 ��������������������� 138
一 自己占有の消滅… ………………………………… Cランク………………… 138
二 代理占有の消滅(204)…………………………… Cランク………………… 138
3-6 準占有 ������������������������ 139
一 意義… ……………………………………………… Cランク………………… 139
二 成立要件(205)…………………………………… Cランク………………… 139
三 準占有の認められる「財産権」… ……………… Cランク………………… 139
四 準占有の効果… …………………………………… Cランク………………… 140
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 141
第
4章
所有権
4-1 所有権の意義 ��������������������� 144
・ 所有権の意義… …………………………………… Aランク………………… 144
4-2 相隣関係 ����������������������� 145
い にょう ち
一 囲 繞 地通行権……………………………………… Aランク………………… 145
二 その他の相隣関係… ……………………………… Bランク………………… 147
4-3 所有権の効力(物権的請求権) ������������� 148
4-4 所有権の取得 ��������������������� 149
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 149
二 先占・拾得・発見… ……………………………… Bランク………………… 149
三 添付(242以下)…………………………………… Aランク………………… 150
4-5 共有 ������������������������� 159
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 159
二 共有者の権利一般… ……………………………… Aランク………………… 160
三 共有の内部関係… ………………………………… Aランク………………… 161
四 共有の対外関係… ………………………………… Aランク………………… 165
五 共有物の分割… …………………………………… Bランク………………… 166
六 準共有… …………………………………………… Cランク………………… 169
七 区分所有権… ……………………………………… Cランク………………… 169
論文式試験の過去問を解いてみよう~旧司昭和47年度第2問~… …………… 171
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 173
第
5章
用益物権
5-1 用益物権総説 ��������������������� 177
5-2 地上権 ������������������������ 177
一 意義… ……………………………………………… Bランク………………… 177
二 特徴… ……………………………………………… Bランク………………… 177
三 地上権の取得・存続期間・消滅原因… ………… Bランク………………… 178
四 地上権の効力… …………………………………… Bランク………………… 180
五 区分地上権… ……………………………………… Cランク………………… 181
5-3 永小作権 ����������������������� 182
一 意義… ……………………………………………… Cランク………………… 182
二 特徴… ……………………………………………… Cランク………………… 182
三 永小作権の取得・存続期間・消滅原因… ……… Cランク………………… 183
四 永小作権の効力… ………………………………… Cランク………………… 183
5-4 地役権 ������������������������ 184
一 意義 … …………………………………………… Bランク………………… 184
二 特徴… ……………………………………………… Bランク………………… 185
三 地役権の取得・存続期間・消滅原因… ………… Bランク………………… 187
四 地役権の効力… …………………………………… Bランク………………… 188
いりあい
5-5 入会権 ������������������������ 190
一 意義… ……………………………………………… Cランク………………… 190
二 民法の規定… ……………………………………… Cランク………………… 190
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 192
第3編 担保物権
第
1章
担保物権総説
1-1 債権担保の意義 �������������������� 197
一 物的担保制度… …………………………………… Aランク………………… 197
二 人的担保制度… …………………………………… Aランク………………… 197
1-2 担保物権の効力 �������������������� 198
一 優先弁済的効力… ………………………………… Aランク………………… 198
二 留置的効力… ……………………………………… Aランク………………… 198
1-3 担保物権の通有性 ������������������� 198
一 付従性… …………………………………………… Aランク………………… 198
二 随伴性… …………………………………………… Aランク………………… 198
三 不可分性… ………………………………………… Aランク………………… 199
四 物上代位性… ……………………………………… Aランク………………… 199
第
2章
留置権
2-1 留置権総説 ���������������������� 202
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 202
二 法的性質… ………………………………………… Aランク………………… 202
2-2 留置権の成立要件 ������������������� 203
一 要件… ……………………………………………… Aランク………………… 203
二 債権と物との牽連性
(要件①について)… …………………………… Aランク………………… 203
三 債権が弁済期にあること(295Ⅰただし書)
(要件②について)… …………………………… Bランク………………… 206
四 留置権者が他人の物を占有していること
(要件③について)… …………………………… Bランク………………… 207
五 占有が不法行為によって始まったものでないこと
(295Ⅱ)(要件④について)…………………… Aランク………………… 207
2-3 留置権の効力 ��������������������� 209
一 留置的効力… ……………………………………… Aランク………………… 209
二 その他の効力… …………………………………… Bランク………………… 210
2-4 留置権の消滅 ��������������������� 213
一 留置権の消滅原因… ……………………………… Cランク………………… 213
二 留置権の行使と被担保債権の消滅時効(300)…Bランク………………… 215
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 216
第
3章
先取特権
3-1 先取特権総説 ��������������������� 219
一 はじめに… ………………………………………… Bランク………………… 219
二 法的性質… ………………………………………… Bランク………………… 219
三 種類… ……………………………………………… Bランク………………… 219
3-2 各種の先取特権 �������������������� 220
一 一般先取特権… …………………………………… Bランク………………… 220
二 動産先取特権… …………………………………… Cランク………………… 221
三 不動産先取特権… ………………………………… Cランク………………… 221
四 先取特権の順位… ………………………………… Bランク………………… 222
3-3 先取特権の効力 �������������������� 224
一 一般的効力… ……………………………………… Aランク………………… 224
二 第三者に対する効力… …………………………… Bランク………………… 227
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 230
第
4章
質権
4-1 質権総説 ����������������������� 233
一 はじめに… ………………………………………… Bランク………………… 233
二 質権の設定(344、345)… ……………………… Bランク………………… 234
三 効果… ……………………………………………… Bランク………………… 236
四 質権の消滅… ……………………………………… Bランク………………… 238
五 転質… ……………………………………………… Bランク………………… 239
4-2 各種の質権 ���������������������� 242
一 動産質(352以下)………………………………… Bランク………………… 242
二 不動産質(356以下)……………………………… Bランク………………… 243
三 権利質(362以下)………………………………… Bランク………………… 244
四 質権のまとめ… …………………………………… Aランク………………… 246
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 249
第
5章
抵当権
5-1 抵当権総説 ���������������������� 253
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 253
二 抵当権の特質… …………………………………… Bランク………………… 254
5-2 抵当権の設定 ��������������������� 257
一 抵当権設定契約… ………………………………… Aランク………………… 257
二 目的物… …………………………………………… Aランク………………… 258
三 対抗要件… ………………………………………… Aランク………………… 258
5-3 被担保債権の範囲 ������������������� 261
一 被担保債権… ……………………………………… Aランク………………… 261
二 被担保債権が無効・取り消された場合の
抵当権の効力… …………………………………… Bランク………………… 263
三 被担保債権の範囲… ……………………………… Aランク………………… 264
考えてみよう!要件事実の世界… ………………………………………………… 266
5-4 抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲 ������������ 269
一 はじめに… ………………………………………… Bランク………………… 269
二 付合物(242)……………………………………… Aランク………………… 270
三 従物… ……………………………………………… AAランク……………… 271
四 従たる権利… ……………………………………… Aランク………………… 273
五 果実… ……………………………………………… Aランク………………… 273
六 分離物(特に伐採された伐木)… ……………… Aランク………………… 274
5-5 物上代位 ����������������������� 277
一 はじめに… ………………………………………… AAランク……………… 277
二 物上代位の対象(要件①について)… ………… Aランク………………… 278
三 物上代位と差押え(要件②について)… ……… AAランク……………… 285
5-6 法定地上権 ���������������������� 292
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 292
二 法定地上権の要件… ……………………………… Aランク………………… 293
三 抵当権設定当時に建物が存在していること
(要件①について)… …………………………… Aランク………………… 294
四 抵当権設定当時土地と建物が同一所有者に
帰属すること(要件②について)… …………… Aランク………………… 299
五 共有と法定地上権… ……………………………… Aランク………………… 305
六 法定地上権の要件についての論点整理… ……… Aランク………………… 309
七 効果… ……………………………………………… Aランク………………… 311
八 一括競売… ………………………………………… Bランク………………… 311
5-7 抵当権設定後の賃貸借 ����������������� 312
一 はじめに… ………………………………………… Bランク………………… 312
二 賃借人の保護… …………………………………… Bランク………………… 313
5-8 抵当不動産の第三取得者の地位 ������������� 314
一 第三取得者の地位の保護… ……………………… Bランク………………… 314
二 代価弁済(378)…………………………………… Bランク………………… 314
三 抵当権消滅請求(379~386)… ………………… Bランク………………… 315
四 その他… …………………………………………… Bランク………………… 316
5-9 抵当権侵害 ���������������������� 317
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 317
二 第三者による抵当権侵害… ……………………… AAランク……………… 318
三 設定者による抵当権侵害… ……………………… AAランク……………… 328
5-10 抵当権の処分 �������������������� 329
一 はじめに… ………………………………………… Bランク………………… 330
二 転抵当(376Ⅰ前)………………………………… Bランク………………… 330
三 抵当権又はその順位の譲渡・放棄
(376Ⅰ後)………………………………………… Bランク………………… 332
四 抵当権の順位の変更(374)……………………… Bランク………………… 333
五 抵当権の処分のまとめ… ………………………… Bランク………………… 334
5-11 抵当権の消滅 �������������������� 334
一 はじめに… ………………………………………… Bランク………………… 334
二 抵当権の時効消滅(396)………………………… Bランク………………… 334
三 目的物の時効取得による消滅(397)…………… Bランク………………… 335
四 抵当権の目的たる用益権の放棄(398)………… Bランク………………… 336
5-12 共同抵当 ���������������������� 336
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 336
二 共同抵当の設定と公示… ………………………… Bランク………………… 337
三 共同抵当における配当… ………………………… Aランク………………… 337
5-13 根抵当 ����������������������� 344
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 344
二 特色… ……………………………………………… Aランク………………… 344
三 設定… ……………………………………………… Bランク………………… 345
四 効力… ……………………………………………… Bランク………………… 345
五 根抵当関係の変更… ……………………………… Bランク………………… 346
六 根抵当権の処分… ………………………………… Bランク………………… 347
七 根抵当権の確定… ………………………………… Bランク………………… 348
八 共同根抵当、累積根抵当、共有根抵当… ……… Bランク………………… 349
論文式試験の過去問を解いてみよう~旧司昭和53年度第1問類題~… ……… 350
論文式試験の過去問を解いてみよう~旧司昭和38年度第2問類題~… ……… 352
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 354
第
6章
非典型担保
6-1 非典型担保総説 �������������������� 362
・ 非典型担保総説… ………………………………… Aランク………………… 362
6-2 譲渡担保 ����������������������� 363
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 363
二 譲渡担保の法的構成… …………………………… AAランク……………… 365
三 譲渡担保権の設定… ……………………………… Aランク………………… 366
四 譲渡担保権の対内的効力… ……………………… Aランク………………… 368
五 譲渡担保権の対外的効力… ……………………… AAランク……………… 372
六 譲渡担保の侵害… ………………………………… Aランク………………… 379
七 譲渡担保の消滅… ………………………………… Aランク………………… 380
八 集合動産譲渡担保… ……………………………… Aランク………………… 380
九 債権譲渡担保… …………………………………… Bランク………………… 384
6-3 所有権留保 ���������������������� 387
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 387
二 法的構成… ………………………………………… Aランク………………… 389
三 対内的効力(売主と買主の関係)… …………… Bランク………………… 390
四 対外的効力(当事者と第三者の関係)… ……… Bランク………………… 390
五 転得者の保護… …………………………………… Bランク………………… 390
考えてみよう!要件事実の世界… ………………………………………………… 392
6-4 仮登記担保 ���������������������� 393
一 意義… ……………………………………………… Bランク………………… 394
二 仮登記担保権の設定… …………………………… Bランク………………… 394
三 仮登記担保権の効力… …………………………… Bランク………………… 394
四 仮登記担保権の消滅… …………………………… Bランク………………… 396
五 他の非典型担保との比較… ……………………… Bランク………………… 396
6-5 買戻し・再売買の予約 ����������������� 396
一 意義… ……………………………………………… Bランク………………… 397
二 機能… ……………………………………………… Bランク………………… 397
6-6 代理受領 ����������������������� 398
一 はじめに… ………………………………………… Aランク………………… 398
二 関連当事者間の法律関係… ……………………… Bランク………………… 399
三 代理受領を承諾した第三債務者が、
自己の債権者に弁済した場合… ………………… Bランク………………… 399
論文式試験の過去問を解いてみよう~旧司平成4年度第1問類題~… ……… 401
短答式試験の過去問を解いてみよう… …………………………………………… 403
論点一覧表
INDEX(判例索引・事項索引)
参考文献表・文献略記表
内田貴『民法Ⅰ(第4版)総則・物権総論』東京大学出版会…
内田貴『民法Ⅱ(第3版)債権各論』東京大学出版会…
内田貴『民法Ⅲ(第3版)債権総論・担保物権』東京大学出版会…
川井健『民法概論2 物権(第2版)
』有斐閣…
佐久間毅『民法の基礎1 総則(第3版)
』有斐閣…
(内田Ⅰ・頁)
(内田Ⅱ・頁)
(内田Ⅲ・頁)
(川井2・頁)
(佐久間1・頁)
佐久間毅『民法の基礎2 物権』有斐閣…
(佐久間2・頁)
石田剛・武川幸嗣・占部洋之ほか・LEGALQUEST『民法Ⅱ 物権』有斐閣…
(LQⅡ・頁)
近江幸治『民法講義Ⅰ 民法総則(第6版補訂)
』成文堂…
(近江Ⅰ・頁)
近江幸治『民法講義Ⅱ 物権法(第3版)
』成文堂…
(近江Ⅱ・頁)
近江幸治『民法講義Ⅲ 担保物権(第2版補訂)
』成文堂…
(近江Ⅲ・頁)
近江幸治『民法講義Ⅳ 債権総論(第3版補訂)
』成文堂…
(近江Ⅳ・頁)
近江幸治『民法講義Ⅴ 契約法(第3版)
』成文堂…
我妻栄『民法講義Ⅰ~Ⅴ4』岩波書店…
山田卓生・河内宏・安永正昭・松久三四彦ほか著
『民法Ⅰ~Ⅳ(第3版補訂)
・Ⅴ(第4版)
』有斐閣…
鎌田薫『民法ノート物権法①(第3版)
』日本評論社…
高木多喜男『担保物権法(第4版)
』有斐閣…
道垣内弘人『担保物権法(第3版)
(現代民法Ⅲ)
』有斐閣…
(近江Ⅴ・頁)
(我妻Ⅰ~Ⅴ4・頁)
(SⅠ~Ⅴ・頁)
(鎌田・頁)
(高木・頁)
(道垣内・頁)
山田卓生・野村豊弘・円谷峻・鎌田薫ほか『分析と展開 民法Ⅰ(第3版)・Ⅱ(第5版)』弘文堂
…
(分析と展開Ⅰ・Ⅱ・頁)
『新版注釈民法⑴~(28)』有斐閣…
(新版注釈・頁)
潮見佳男・道垣内弘人編『民法判例百選Ⅰ(第7版)』有斐閣…
(百選Ⅰ[第7版]〔事件番号〕)
中田裕康・窪田充見編『民法判例百選Ⅱ(第7版)
』有斐閣…
(百選Ⅱ[第7版]〔事件番号〕)
水野紀子・大村敦志編『民法判例百選Ⅲ』有斐閣…
(百選Ⅲ[初版]〔事件番号〕)
中田裕康・潮見佳男・道垣内弘人編『民法判例百選Ⅰ・Ⅱ(第6版)』有斐閣
…
(百選Ⅰ・Ⅱ[第6版]〔事件番号〕)
星野英一・平井宜雄・能見善久編『民法判例百選Ⅰ・Ⅱ(第五版新法対応補正版)』有斐閣
…
(百選Ⅰ・Ⅱ[第五版]〔事件番号〕)
水野紀子・大村敦志・窪田充見編『家族法判例百選(第7版)』有斐閣
…
『平成~年度 重要判例解説』有斐閣…
『月刊法学教室』有斐閣…
『月刊法学セミナー』日本評論社…
(家族法百選[第7版]〔事件番号〕)
(平~重判〔事件番号〕)
(法教・~号・頁)
(法セミ・~号・頁)
我妻栄・有泉亨・清水誠・田山輝明…
『我妻・有泉コンメンタール民法(第3版)―総則・物権・債権―』日本評論社… (我妻コンメ・頁)
松岡久和・中田邦博編『新・コンメンタール民法(財産法)』日本評論社…
(新コンメ・頁)
村田渉・山野目章夫編『要件事実論30講(第3版)』弘文堂…
(30講・頁)
岡口基一『要件事実マニュアル第1巻(第4版)総論・民法1』ぎょうせい…
(岡口1・頁)
司法研修所編『改訂 紛争類型別の要件事実―民事訴訟における攻撃防御の構造―』法曹会
…
(類型別・頁)
司法研修所編『改訂 問題研究 要件事実―言い分方式による設例15題―』法曹会…
(問研・頁)
司法研修所編『新問題研究 要件事実』法曹会…
(新問研・頁)
法科大学院コア・カリキュラム対照表
コア・カリキュラム第2次案修正案
第2編 物権
第1章 総則
第1節 物権の一般原則
○物権にはどのような種類があり、それぞれどのような内容の権
利であるかを概括的に説明することができる。
○物権に共通する特徴を、債権の特徴と対比して説明することが
できる。
○物権法定主義の意義と根拠について説明することができる。
○物権的請求権とはどのような権利であり、どのような侵害につ
いてどのような救済手段を求めることができるかを、具体例を
挙げて説明することができる。
第2節 物権変動
1 総説
○物権の変動が生ずる種々の法律上の原因を、具体例を挙げて説
明することができる。
○公示の原則とはどのような原則であるか、そのような原則を認
める必要があるのはなぜかを説明することができる。
○公信の原則とはどのような原則であるかを、無権利の法理や公
示の原則との関係を踏まえて説明することができる。
2 不動産物権変動
2-1 意思主義と対抗要件主義
○物権変動に関する意思主義を、形式主義と対比して説明するこ
とができる。
○物権変動が生ずる時期、とくに所有権の移転が生ずる時期につ
いて、判例・学説の考え方の対立とその問題点の概要を説明す
ることができる。
○民法 177 条の対抗要件主義とはどのような制度であり、同条が
どのような原因(契約、取消し、解除、取得時効等)に基づく
物権変動に適用されるかについて、基本的な考え方の対立と問
題点を説明することができる。
○民法 177 条の対抗要件主義において、判例・学説の基本的な考
え方を踏まえて、第三者(転得者を含む)の主観的要件につい
てどのような議論があるかを、具体例に即して説明することが
できる。
○不動産取引において、民法 94 条2項の適用や類推適用がどの
ような意味を持つかを、公信の原則との関係に留意しながら、
具体例に即して説明することができる。
2-2 不動産登記
○物権の変動が生じた場合に、どのような手続きにしたがってそ
の登記をすることができるかを理解している(共同申請の原則
と単独申請ができる例外)。
○登記請求権はどのような根拠に基づいて、どのような場合に発
生するかを、具体例を挙げて説明することができる。
○仮登記とはどのような場合になされる登記であり、それがどの
ような効力を持つかについて、具体例を挙げて説明することが
できる。
3 動産物権変動
○動産物権変動における対抗要件主義がどのような制度であり、
どのような場合に問題となるかを具体例に即して説明すること
ができる。
○動産の即時取得とはどのような制度であり、それが認められる
ための要件はどのようなものか、盗品・遺失物についてどのよ
うな例外が認められるかを、具体例に即して説明することがで
きる。
C - Book該当箇所
第 2 編 第 1 章 1 - 1 二
第 2 編 第 1 章 1 - 1 一
第 2 編 第 1 章 1 - 1 二
第 2 編 第 1 章 1 - 3 三
第 2 編 第 2 章 2 - 1 一
第 2 編 第 2 章 2 - 2 - 1 二
第 2 編 第 2 章 2 - 2 - 1 二
第 2 編 第 2 章 2 - 1 二
第 2 編 第 2 章 2 - 1 五
第 2 編 第 2 章 2 - 2 - 2 三、四
第 2 編 第 2 章 2 - 2 - 2 五
(C - Book民法Ⅰ)第 1 編 第 6
章 6 - 2 - 3
第 2 編 第 2 章 2 - 2 - 2 一
第 2 編 第 2 章 2 - 2 - 2 二
第 2 編 第 2 章 2 - 2 - 2 一
第 2 編 第 2 章 2 - 3 - 1 、 2 - 3
- 2 三
第 2 編 第 2 章 2 - 4
4 物権の消滅
○物権が消滅する原因を、具体例を挙げて説明することができ
る。
第2章 占有権
○占有とはどのような概念であるかを理解し、どのような態様の
占有があり、占有の承継が生ずるのはどのような場合であるか
を、それぞれ具体例を挙げて説明することができる。
○占有の侵害についてどのような態様があり、占有者はそれぞれ
どのような救済を求めることができるかを、具体例を挙げて説
明することができる。
○所有者が無権原占有者に対して目的物の返還を求める場合に生
ずる問題点の概要(果実収取権、費用償還請求権、本権と占有
権との関係等)を、条文を参照しながら説明することができる。
第3章 所有権
第1節 所有権の意義
○所有権とはどのような権利か、また、どのような制限に服する
かを、具体例を挙げて説明することができる。
第2節 相隣関係
○袋地の所有者は、どのような場合にどのような要件の下で隣地
通行権を有するかを、条文を参照しながら説明することができ
る。
第3節 所有権取得の原因
○添付とはどのような概念であり、どのような類型があるか、添
付によってどのような効果が生じるかについて、その概要を説
明することができる。
○不動産の付合とはどのような制度であるかについて、条文を参
照しながら具体例を挙げて説明することができる。
第4節 共有関係
○同一の目的物を複数の者が共同的に所有する法律関係につい
て、通常の共有のほか、どのような場合があるか、いくつかの
具体例を挙げることができる。
○共有者が共有物についてどのような権利を(他の共有権者及び
第三者に対して)有するかを、条文を参照しながら説明するこ
とができる。
○区分所有権とはどのような概念であるかを、一物一権主義との
関係に留意しながら説明することができる。
第4章 地上権
○地上権とはどのような物権であり、どのような場合に利用され
る権利であるかを、土地賃借権と対比しながら説明することが
できる。
第5章 地役権
○地役権とはどのような物権であり、どのような場合に利用され
る権利であるかを、いくつかの具体例を挙げて説明することが
できる。
第6章 担保物権総論
○担保物権とはどのような性質の担保であるかを、債権者平等原
則や保証との関係に留意しながら説明することができる。
第7章 留置権
○留置権とはどのような性質の担保物権であるかを、具体例を挙
げて説明することができる。
○留置権の成立要件とその効果について、具体例に即して説明す
ることができる。
第8章 先取特権
○先取特権とはどのような性質の担保物権であるか、とくに、一
般先取特権、特別先取特権は、それぞれどのような性質・効力
第 2 編 第 2 章 2 - 6
第 2 編 第 3 章 3 - 1 、 3 - 2
第 2 編 第 3 章 3 - 4 二
第 2 編 第 3 章 3 - 3 六、3 - 4 六
第 2 編 第 4 章 4 - 1
第 2 編 第 4 章 4 - 2 一
第 2 編 第 4 章 4 - 4 三
第 2 編 第 4 章 4 - 4 三
第 2 編 第 4 章 4 - 5 一
第 2 編 第 4 章 4 - 5 三、四、五
第 2 編 第 4 章 4 - 5 七
第 2 編 第 5 章 5 - 2
第 2 編 第 5 章 5 - 4
第 3 編 第 1 章 1 - 1 、 1 - 2
第 3 編 第 2 章 2 - 1
第 3 編 第 2 章 2 - 2 、 2 - 3
第 3 編 第 3 章 3
を有する担保物権であり、どのような種類の先取特権があるか
を、条文を参照しながら説明することができる。
○先取特権における物上代位とはどのような制度かを、具体例に
即して説明することができる。
第9章 質権
○質権とはどのような性質の担保物権であるかを、具体例を挙げ
て説明することができる。
○質権には、動産質権以外にどのような種類のものがあるかを、
条文を参照しながら、具体例を挙げて説明することができる。
第 10 章 抵当権
第1節 抵当権総論
○抵当権とはどのような性質の担保物権であるかを、具体例を挙
げて説明することができる。
第2節 抵当権の効力等
○抵当権の効力がどのような目的物(果実や目的不動産から分離
された目的物等を含む)に及ぶかについて、具体例を挙げて説
明することができる。
○抵当権によって担保される債権の範囲はどうなっているか、そ
の範囲について制限が認められる理由は何かを、具体例を挙げ
て説明することができる。
○抵当目的不動産の侵害(物理的侵害や、優先弁済権の実現を困
難にする侵害行為)に対して、抵当権者がどのような救済手段
を行使することができるかについて、判例・学説の考え方を踏
まえて、具体例に即して説明することができる。
○抵当権について物上代位が認められるのはどのような場合か、
また物上代位権を行使するためにどのような要件を備えている
必要があるかについて、判例・学説の基本的な考え方を踏まえ
ながら説明することができる。
○抵当目的不動産が第三者に譲渡された場合に、第三取得者と抵
当権者がどのような関係に立つかを、説明することができる。
○抵当権の処分とはどのような行為を指すか、またその効果はど
のようなものであるかを、条文を参照しながら説明することが
できる。
○抵当権の実行とは何を意味するかを、具体例を挙げて説明する
ことができる。
第3節 抵当権と利用権の調整
○抵当権の設定された不動産について、利用権が存在する場合に
抵当権と利用権の関係がどうなるかを、説明することができ
る。
○法定地上権とはどのような制度であり、どのような場合に法定
地上権が成立するかを、具体例に即して説明することができ
る。
第4節 共同抵当・根抵当
○共同抵当とはどのような制度であり、抵当権がどのように実行
され、どのような効果を生ずるかについて、具体例を挙げて説
明することができる。
○根抵当とはどのような制度であり、通常の抵当権と対比してど
のような特徴を備えているかについて、その概要を説明するこ
とができる。
第 11 章 非典型担保
○仮登記担保とはどのような制度であるかを、具体例を挙げて説
明することができる。
○譲渡担保とはどのような制度であるかを、質権の場合と対比さ
せながら、具体例を挙げて説明することができる。
○譲渡担保権者・譲渡担保設定者・第三者がそれぞれどのような
第 3 編 第 3 章 3 - 3 一
第 3 編 第 4 章 4 - 1
第 3 編 第 4 章 4 - 2
第 3 編 第 5 章 5 - 1
第 3 編 第 5 章 5 - 4
第 3 編 第 5 章 5 - 3
第 3 編 第 5 章 5 - 9
第 3 編 第 5 章 5 - 5
第 3 編 第 5 章 5 - 8
第 3 編 第 5 章 5 - 1 0
第 3 編 第 5 章 5 - 1 一
第 3 編 第 5 章 5 - 7
第 3 編 第 5 章 5 - 6
第 3 編 第 5 章 5 - 1 2
第 3 編 第 5 章 5 - 1 3
第 3 編 第 6 章 6 - 4
第 3 編 第 6 章 6 - 2 一
第 3 編 第 6 章 6 - 2 四、五
法的地位を有するかを、具体例に即して説明することができ
る。
○いわゆる集合動産譲渡担保とはどのような制度であるか、一物
一権主義との関係に留意しながら、説明することができる。
○所有権留保の意義と効力について、その概要を説明することが
できる。
第 3 編 第 6 章 6 - 2 八
第 3 編 第 6 章 6 - 3
2
[物権]
第
編
民法
第1編
第2編
第2章 物権変動
第3章 占有権
第4章 所有権
総則
親族
物権
第5章 用益物権
物権変動
占有権
所有権
用益物権
第3編
担保物権
第4編
債権総論
第5編
第6編
第1章 物権総論
契約総論
契約
債権
契約各論
債権各論
事務管理
不当利得
不法行為
第7編
第8編
親族
第9編
相続
1
物権総論
●1-1 総説 ●1-2 物権の客体 ●1-3 物権の効力
これから学ばれる方へ
私達の周りにはたくさんの物があふれています。そして私達は、かかる物を生産したり、誰かから買っ
たり、誰かに売ったり、使ったり、壊したり、捨てたりするといった活動を続けています。こうした活動
が円滑に進められていくには、誰がどの物をどのように使えるのかということに関する一定のルールが
必要になります。
そこで、民法は物権編において、物に対する権利(物権)の種類と内容、さらには、物権の発生・移
転・消滅に関するルールを決め、どの物が誰に帰属し、誰がどのように利用・処分できるかという物に関
する秩序を定めているのです。
物権のなかで、最も典型的であり、かつ、物を全面的に支配することができる権利である所有権を例
に説明すると、あなたが新しいゲームソフトを購入した場合、あなたにそのゲームソフトの所有権が移転
したということになります。そして、所有権の内容として、あなたは自由にそれを利用したり、友人に売
ったり貸したりするという処分をすることができます。また、もし誰かにゲームソフトを奪い取られた場
合、物権の効力として、その物を返せと請求することもできます。
本章においては、物権とは何か、そして民法は物権に関してどのようなルールを定めているかという
基本的な事項を学んでいくことになります。
2
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
● 1-1 総説
1-1
総説
一 物権とは
二 物権法定主義
学習の指針
物権とは、物を直接的・排他的
に支配する権利をいいます。物権
を学ぶ際には、物権の性質(直接性・排他性)を債権の性質(間接性・
非排他性)と対比しながらおさえていくのが学習上重要です。
また、民法は 175 条で、物権は民法をはじめとする法律で定められ
たもの以外は、当事者が合意で創設することができない、という物権
法定主義を定めています。物権法定主義の趣旨は、明文にない慣習上
の物権が物権として認められるか、という論点を検討するにあたって
関連してきますので、おさえておくと良いでしょう。
一 物権とは
近江Ⅱ・1頁
佐久間 2・2 頁
LQⅡ・1頁
▲
1 意義
物権とは、物を直接的・排他的に支配する権利をいう。
* 物を支配するとは、使用権能・収益権能・処分権能を総括的に指称
するものである。
たとえば、ある物の所有者が、その所有権(206)に基づいて、自由
にその物を使ったり(使用)
、人に貸して賃料を得たり(収益)
、売った
り(処分)することができることを、
「物を支配する」という。
2 性質
⑴ 直接性:他人の行為を介在
せずに、自己の意思のみに基
物権
債権
づいて物を支配できること。
地上権者
使用収益権
賃貸人 賃借人
(債権者) (債務者)
たとえば、ひとたび地上権設
定契約により地上権が設定さ
直接的
に支配
れたならば、地上権者は地上
間接的に
支配
権そのものに基づいてその土
地を使用しうるのであって、
地主を介して使用するのではない。
⑵ 排他性:一つの物権が存在
する物の上には、同じ内容の
所有権者A
物権は成立しえないというこ
と。たとえば、同じ土地がA
とBとに二重に譲渡された場
合、AがBより早く所有権を
取得すれば、もはやBがこの
B
Bの所有権取得
は不可
土地を取得することはできな
い。これが物権の排他性の意味である(もっともこの排他性をBに対
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
3
● 1 物権総論
して主張するためには登記が必要である)
。
* 同一物について同一内容の直接的支配権をいくつも認めると、自己
の意思のみに基づいて支配することは困難となる。つまり、直接性と
排他性は密接不可分の関係にある。また、物に対する直接的支配は、
権利者以外の者による干渉を排除する法上の力により裏付けられる。
すなわち、物に対する支配状態を侵害する者があれば、それが何人で
あれ、その侵害行為は違法とされ、法的保護が与えられる(法的保護
の絶対性)
。物権の直接性と絶対性は表裏の関係にあるため、物権の
絶対性を物権の性質として独立して挙げることも可能である。
ただし、物権の排他性から取引の安全を確保するために、物権の内
容や帰属を外部から認識できるような工夫(公示方法、177・178)
がなされている。
3 債権との区別
物権が物を直接支配する権利であるのに対し、債権とは、特定人(債
権者)が他の特定人(債務者)に対して一定の行為を請求する権利であ
る。
ここで、物権である地上権(265)と債権である賃借権(601)を比べ
てみると、いずれも他人の土地を使用させてもらう権利という点におい
て相違はない。
しかし、①債権である賃借権にあっては、賃貸借契約に基づき賃貸人
が賃借人に目的物を使用させる債務を負担し、その債務の履行として賃
借人に使用させることになる。つまり、賃借人の土地使用はあくまで賃
貸人を介してなされるのである。これに対し、②物権である地上権の場
合には、地上権者は地上権そのものに基づいてその土地を使用しうるの
であって、地主を介して使用するのではない。
言い換えれば、物権は人と物との関係であり、物権者(物権を有する
者)は目的物を直接支配できるのに対し、債権は人と人との関係であり、
債権者が物を支配するとしても、それはあくまで債務者の行為を介した
間接的なものにすぎない。これが債権と物権の大きな違いである。
One Point
▶物権の絶対性
たとえば、賃借権に基づいて土地を占有している場合、第三者から土地の占有
を侵害されたときは、債権は債務者を介して目的を達成するものなので、その第
三者に対して占有権限を主張して妨害の排除を求めることはできないのが原則で
す。これに対して地上権に基づいて土地を占有している場合には、地上権は物権
であるから、かかる第三者に対しても占有権限を主張して救済を得ることができ
ます。これを物権の絶対性と表現することがあります(これに対して債権は相対
的な権利であるといわれます)。
4
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
● 1-1 総説
二 物権法定主義
近江Ⅱ・6 頁
内田Ⅰ・350 頁
佐久間 2・4 頁
LQⅡ・4 頁
▲
1 はじめに
⑴ 意義
物権は、民法をはじめとする法律で定められたもの以外は、当事者
が合意で創設することができない。これを物権法定主義という。
この原則は、以下の2つの意味をもつ。
① 民法その他の法律に定めていない新しい種類の物権を作ること
はできない。
② 法律の定める物権につき、それらの規定と違った内容を与えて
はならない。
⑵ 趣旨 ① 所有権の自由を不当に制約する封建的で合理性を欠いた複雑
な権利関係を廃止し、所有権を中心とする物権関係を確立した上
で、再び権利関係が複雑なものにならないよう、物権を法律の認
める種類に限る必要がある(民法施行法 35 参照)
。
② 物権は絶対性・排他性を有する権利であるため、物権の種類を
限定し、内容を画一化しておかなければ、取引の安全を害し、第
三者に不測の損害を与えてしまうおそれがある。
③ 物権が排他性を有する権利である以上、物権の帰属状態を恒
常的に公示し、社会において認識される必要があるところ、公示
する際の技術的な理由から、物権の種類を限定する必要がある。
2 種類
民法は以下の種類の物権を認めている。
【物件の分類】
本権
民法上の
物権
(11種類)
全面的物権
制限物権
: 所有権
(206∼)
用益物権 : 地上権
(265∼)
、永小作権
(270∼)
地役権
(280∼)
、入会権
(263、294)
担保物権
法定担保物権 : 留置権
(295∼)
先取特権
(303∼)
約定担保物権 : 質権
(342∼)
抵当権
(369∼)
(根抵当権
(398の2∼)
)
: 占有権
(180∼)
慣習法上の物権̶水利権、温泉権、譲渡担保権など
以上の各物権の分類基準は次のような内容である。
⑴ 占有権とその他の物権(本権)
占有権は、占有しているという事実状態に基づいて認められる権利
である。これに対し、その他の物権は、物の占有とは無関係に、物の
支配の権原を本体とする権利であり、本権ともよばれる。
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
5
● 1 物権総論
⑵ 所有権と制限物権
所有権は、物を全面的ないし包括的に支配しうる権利である。これ
に対し、制限物権は、所有権の部分的権能(使用収益権能又は交換
価値支配権能)を内容とする。制限物権という呼称は、所有権を制限
する効力を有するという点に由来している。
⑶ 用益物権と担保物権
用益物権は、物の使用収益権能を内容とする物権である。これに対
し、担保物権は、債権担保を目的として、物の交換価値支配権能を内
容とする。
3 慣習法上の物権
慣習法上の物権には、①民法典ができる以前から存在していたもの
と、②民法典ができた後、取引の必要から商慣習として発達したものが
ある。前者の例が、水利権(河川などの水を排他的に利用する権利をい
う。大判大 14.12.11)や温泉専用権(地下から湧き出る温泉を排他的に
管理・使用する権利をいう。大判昭 15.9.18 /百選Ⅰ[第7版]
〔47〕
)
であり、後者の例が、譲渡担保権(⇒ 363 頁)である。
⑴ 物権法定主義(175)を採用する我が民法下において、温泉権や譲
渡担保権といった慣習法上の物権を承認することができるのか。この
点、学説は、物権法定主義の趣旨(封建的諸権利の復活阻止・公示
制度の要請)を害さなければ、慣習法上の物権も認めてよいとする。
⑵ ただ、慣習法上の物権を承認しようとする場合、次の2つの規制と
の関係が問題となる。
① 法の適用に関する通則法3条:
「法令の規定により認められた」
慣習、又は「法令に規定されていない事項に関する」慣習に限り、
法律と同様の効力を有する。
② 民法施行法 35 条:
「慣習上物権ト認メタル権利ニシテ民法施行
前ニ発生シタルモノト雖モ其施行ノ後ハ民法其他ノ法律ニ定ムル
モノニ非サレハ物権タル効力ヲ有セス」
⒜ 法の適用に関する通則法3条(以下「通則法3条」)と民法 175
条の関係
この関係については以下の2説がある。
① 民法 175 条の「法律」のなかには、通則法3条により法律と
同一の効力を有するとされる「法令に規定されていない事項に
関する」慣習法も含まれるとする説
② 慣習法は、民法 175 条の「法律」には含まれないが、通則法
3条によって物権と認められるとする説
⒝ 民法施行法 35 条については、本条は民法施行前の慣習上の物
権の整理に関するものであり、それ以後に発生するものまでも否
認する趣旨ではないと解するのが一般である。
⑶ 以上のように、慣習法上の物権は、一応物権的な取扱を受けてい
る。しかし、このことは慣習法上の物権が必ずしも民法上の「物権」
6
近江Ⅱ・8 頁
佐久間 2・5 頁
LQⅡ・6 頁
▲
4 慣習法上の物権と諸規制との関係
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
● 1-2 物権の客体
として承認されたということではない。慣習法上の物権については、
民法典上の物権に与えられた物権的効力をすべて認める必要はなく、
場合に応じて個別的に認めれば足りる(ex.譲渡担保権については優
先弁済権を認めれば足りる)
。したがって、そのような個別的効力を
有する物権的権利を承認することは、175 条に抵触するものではない
といえる(判例も、このような権利を「物権的権利」という表現で承
認している)
。
1-2
物権の客体
一 物権の客体の要件
二 一物一権主義
学習の指針
物権は物に対する直接的・排他
的な支配をその本質としますから、
このような物権の客体たるにふさわしい物の要件として、①有体性
(例外もありますが)
、②支配可能性、③非人格性、④特定性、⑤独立
性・単一性、が要求されることになります。
⑤の独立性と単一性をみたさなければならないということを一物一
権主義といいますが、実際には取引の必要性から、一定の範囲で例外
も認められています。この一物一権主義の例外として認められるかが
問題となるものとして、後に非典型担保のところで扱う集合物譲渡担
保があります。この集合物譲渡担保は短答・論文を通じて重要なので、
一物一権主義の例外として認められるのだということをおさえておき
ましょう。
一 物権の客体の要件
85 条は、物権の客体を有体物(空間の一部を占めるもの。気体、
内田Ⅰ・350、357頁
佐久間 2・11頁
LQⅡ・3 頁
▲
物権の客体となるには、以下の要件が必要とされる。
① 「物」すなわち有体物であること(有体性、85)
液体、固体)に限定するための規定であるが、今日では、無体物の
上にも所有権をはじめとする物権が成立することを認めざるを得な
いため、85 条は物権の対象を限定する意味をもっていない。すでに
民法のなかでも権利の上に物権が成立する場合を規定している。
ex.転抵当権(376Ⅰ)
、転質権(348)
、権利質(362)
、準占有
権(205)等
判 例 最判昭 61.12.16
百選Ⅰ
[第五版]
〔11〕
② 排他的支配が可能であること(支配可能性)
→月や星は、有体物であっても、物権の客体となりうる物ではない
③ 生きている人の身体でないこと(非人格性)
→現代法では、人の身体に対して排他的支配は認められていない
* すでに分離された身体の一部(毛髪・歯など)は、
「物」とし
て物権の客体となりうる。
④ 特定していること(特定性)
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
海はそのままでは土地に
あたらないとしつつも、
国が一定範囲を区画し、
排他的支配を可能にした
上で、公用を廃止し、私
人の所有に帰属させた場
合には、その区画部分は
所有権の客体たる土地に
あたる、とした。
7
● 1 物権総論
∵ 物が特定していなければ、何に対して直接的支配をなしうる
のかがわからない
* 特定性具備の有無は、物理的状態のみならず、社会的・経済的
な観点をも顧慮して決定される。したがって、当初の客体が終始
固定していなくても(一個の物の構成部分が変更しても)特定性
は失われるわけではない。
ex.特定の株式会社の総財産を客体とする企業担保権(その総財
産の構成要素は変動するにもかかわらず、総財産としては終始特
定しており、それについて担保権が存続する)
→同様のことは、集合物譲渡担保についてもいえる
⑤ 独立しており、物の一部ではないこと(独立性、単一性)
→一物一権主義
二 一物一権主義
一つの物権の客体は一個の物でなければならない。
* 一物一権主義は、物権の排他性を示す「一つの物には一つの物権」
という意味で用いられることもあるので、注意が必要である。
2 内容
① 一個の物の一部には独
A所有の家
立の物権は存在しえない
(独立性)
。
B所有の柱
たとえば、家の柱の一本
だけを他人に譲渡すること
はできない。
② 数個の物に対して一つの
一個の所有権
物権は存在しえない(単一
性)
。
たとえば、一ダースのジ
ュースに対して一つの所有
権が成立することはない。
3 趣旨
① 物の一部や物の集団の上に一個の物権を認める社会的必要性が
ない。
② 物の一部や物の集団の上に物権が成立していることを示す公示方
法がないのに、これを認めると権利関係が複雑となり取引の迅速・
安全を害することになる。
4 例外
社会的必要性があり公示方法があれば、一物一権主義の趣旨に反し
ない。
↓そこで
例外的に、① 物の一部に物権を設定できる(独立性の例外)
8
内田Ⅰ・359 頁
佐久間 2・12 頁
LQⅡ・2 頁
▲
1 意義
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
● 1-2 物権の客体
…
② 集合物に一個の物権を設定できる(単一性の例外)
⑴ 独立性の例外
論点
⒜ 一筆の土地の一部
* 一筆の土地とは、地表を人為的に区画して、これを一個の所有
権の客体とした場合の、
この土地の区分のことを
分筆前の土地
分筆後の土地
いう。
B
AがBに土地の一部を譲
渡した場合、AB間で所有
権が移転する。また、Aの
B
分筆する
A所有
A
土地の一部について、Bは
時効取得しうる。
(理由)
① 土地の一部であってもBの所有権を認める社会的必要性があ
る。
② AB間(当事者間)では取引安全を考慮して公示を備える必
要がない。
* Bがこの所有権を第三者に主張(対抗)したいときは、分筆し
たうえで登記すればよい。
⒝ 土地に生立する樹木
ア 立木法に基づく登記により公示された立木〔りゅうぼく〕は、
独立の不動産とみなされる。
イ 立木法に基づく登記が
ない立木〔たちき〕の場
合は原則として、土地の
A
A
立木のみ
Bへ譲渡
一部であり独立の物権の
客体とはならないが、土
地から独立して取引の対
象となることもある。
A
B
B
B
B
A
明認方法による公示
(理由)
これを認める社会的必要性があり、明認方法という公示方法
もある。
⒞ 未分離の果実・桑葉・稲立毛
原則として土地の一部であるが、立木と同様、分離前に独立に取
引の対象とすることができる。
⑵ 単一性の例外
論点
⒜ 各種の財団抵当法・企業担保法
企業を構成する数個の物を一体として一個の担保権の目的とする
もの。
∵ 各々の構成物の価格の総和よりも総財産の結合体の価格の
方がはるかに高額になる
⒝ 在庫商品などの集合物に設定された譲渡担保権
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
9
● 1 物権総論
以下の要件をみたす場合には、集合物の上に単一の物権を認める
ことができる。
① 集 合 物が 個々の 構
成物とは異なる独自の
倉庫内の部品に対して譲渡担保
判 例 最判昭 62.11.10
集合動産の譲渡担保
構成部分の変動する集合
動産であっても、その種
類、所在場所及び量的範
囲を指定するなどの方法
利益を有すること。
② 物権に関する特定性
の要件をみたしている
搬入 倉庫 搬出
によって目的物の範囲が
特定される場合には、一
個の集合物として譲渡担
こと。 ③ 物権に関する公示の原則に適合していること。
【一物一権主義の例外】
保の目的とすることがで
きるものと解すべきであ
る。
①… 一筆の土地の一部につき、所有権の成立は可能。時効取得も可
② 地役権は承役地の一部に設定可(282 Ⅱただし書)
独立性の例外
③ 立木法に基づく登記がない立木
④ 未分離の果実・桑葉・稲立毛
① 抵当権の効力は従物にも及ぶ
②… 立木法上の「立木」(樹木の集団)は不動産とみなされ、一括
して所有権及び抵当権の目的となりうる(立木2Ⅱ)
単一性の例外
③ 集合動産の譲渡担保
④ 各種の財団抵当法・企業担保法
1-3
物権の効力
一 はじめに
二 優先的効力
三 物権的請求権
学習の指針
すべての物権に共通の一般的効
力として、①優先的効力、②物権
的請求権がありますが、この部分
は、物権法の基本部分なのでしっかりと理解しておく必要がありま
す。
①の優先的効力には、物権相互間の優先的効力と債権との関係にお
ける優先的効力とがあり、この二つを分けて整理しておく必要があり
ます。
②の物権的請求権については、その意義・種類を具体例とともにお
さえておくことが重要です。また、費用負担の問題は、論文・短答を
通じて大切なので、まずは判例の考え方を理解しましょう。
一 はじめに
の物権に共通の一般的効力について説明する。
物権の一般的効力として挙げられるのは、通常、①優先的効力と②物
権的請求権である。これらは、いずれも物権の直接的排他的支配性とい
う特質から導かれる効力である。
10
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
近江Ⅱ・20 頁
我妻Ⅱ・18 頁
LQⅡ・9 頁
▲
各種の物権は、それぞれ特有な効力を有している。それらについては、
後に個々の物権を取り上げる際に述べていくとして、ここでは、すべて
● 1-3 物権の効力
二 優先的効力
近江Ⅱ・21頁
佐久間 2・18 頁
LQⅡ・10 頁
▲
1 物権相互間の優先的効力
⑴ 意義:…互いに相容れない物権相互間では、時間的に先に成立した物
権が優先するという原則
⑵ 趣旨:…物権の排他性
* 取引安全のため公示の原則が採用されている結果、優先的効力
は、実際には公示、すなわち、不動産では登記(177)
、動産では引
渡し(178)を先に備えた
方が優先することになって
売却①
X いる(ただし、先取特権等
A
の例外もある。329 条以下)
。
売却②
ex.AがX所有の家屋を買
い受ける契約をし、代金
を支払ったにもかかわら
B
ず、Xが同一家屋をさら
所有権の主張
③登記を具備
にBに売却してしまった
という場合、たとえAは先にXと売買契約を締結したとしても登
記を得ていない限り、当該家屋の所有権取得をBに主張すること
はできず、反対に、後から売買契約をXと結んだBであっても、
Aよりも早く登記を取得すれば、Aに対し当該家屋の所有権取得
を主張することができる
2 債権との関係における優先的効力
⑴ 意義:…同一物について物権と債権が競合する場合には、その成立の
前後にかかわらず、物権が債権に優先する
ex.ある物を所有者から借り受けた者と買い受けた者がいる場合、
原則として買い受けた者が優先する(売買は賃貸借を破る)
⑵ 趣旨:…物権が物を直接支配しうるものであるのに対し、債権は債務者
の行為を介して間接的に物を支配しうるものにすぎないから
⑶ 例外:不動産賃借権(605)
たとえば、Xが自己所有の
土地をAに賃貸した後、当該
ら、原則としてBの土地所有
権が優先するが、不動産賃貸
借については、債権のなかで
も例外的に、物権に近い効力
が認められており、登記等の
対抗要件を備えれば、新所有
者に対しても賃貸借を主張す
ることができるとされている
(605、借地借家法10、31)
。
②譲渡
土地をBに譲渡した場合、売
買は賃貸借を破るの原則か
①賃貸
X A
X所有土地
賃借権(601)
→土地を利用
できるはず
B 所有権(206)
→全面的に支配
できるはず
どちらを優先すべきか
↓
原則として物権が優先する
↓
例外:605条、借地借家法
10条、31条
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
11
● 1 物権総論
三 物権的請求権
近江Ⅱ・23 頁
内田Ⅰ・367 頁
佐久間 2・17 頁
LQⅡ・11頁
▲
1 意義
物権の円満な支配状態が妨害され、またはそのおそれのある場合に、
あるべき状態の回復、または妨害の予防を求める請求権。
2 根拠
① 202 条1項の「本権の訴え」という文言が物権的請求権を予定し
ている。
② 占有権にすら占有訴権(197 以下)が認められているのだから、
ましてや本権である物権には、当然に認められるはずである。
③ 自力救済が禁止されている民法のもとで物の直接的支配を全うす
る必要がある。
One Point
▶自力救済の禁止
たとえば、土地の所有者が第三者に土地を奪われたという場合に、土地の所有
者が勝手に暴力などを用いて土地を取り戻すことを認めてしまうと、社会は混乱
してしまうので、これは認められません。これを「自力救済の禁止」といいます。
3 法的性質
物権的請求権の法的性質をどう捉えるかについては、若干の争いがある。
【物権的請求権の法的性質】
A説/物権的効力説
物権的請求権は、物権の作用もしくは効力にすぎないので、
独立の権利ではないとする説
B説/準債権説
物権的請求権は、物権から独立した純粋の債権、あるいは
債権に準じて取り扱われるべき特殊の請求権であるとする
説
C説/独立請求権説
(通説)
物権的請求権は、物権から派生して常に物権に依存する独
立の請求権であるとする説
これらの性質論は、それ自体は抽象的なものだが、実際には以下のよ
うな問題の解決に影響を及ぼしている。すなわち、
⑴ 侵害除去の請求につき、債権に関する規定(債務不履行や弁済の
規定)を適用できるか。
この点、B説からは当然肯定、他説も準用ないし類推適用を認める。
⑵ 物権的請求権を物権と切り離して移転しうるか。
この点、A説・C説からは否定される。他方、B説に立つと、理論
上は物権的請求権のみを譲渡しうることになる。
判例は、物権を有する者でなければ物権的請求権を有しえないし、
物権を有する者がその物権を他人に譲渡したときは、その者は物権的
請求権を失うとする(大判昭 3.11.8)
。
⑶ 物権的請求権は消滅時効にかかるか。
この点、A説・C説からは物権的請求権が物権と独立して消滅時効
にかかるということはありえないことになる(大判大 5.6.23)
。もっと
も、C説に立ちながらも、相続回復請求権(物権的請求権と同質)が
時効にかかること(884)を理由に、物権的請求権も特定の妨害者に
12
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
論点
● 1-3 物権の効力
対する関係では消滅時効にかかるとする説もある。
他方、B説に立つと、理論上は物権的請求権が独立して消滅時効
にかかるということになる。
4 種類
【物権的請求権の種類・内容】
所有権
占有権
請求内容
⑴
物権的返還請求権
占有回収の訴え(200)
目的物の返還
⑵
物権的妨害排除請求権
占有保持の訴え(198)
妨害の除去
物権的妨害予防請求権
侵害を生ずる原因を除去
占有保全の訴え(199)
すること(妨害の予防)
⑶
⑴ 物権的返還請求権
物を占有する者に対して返還を求めるものである。
たとえば、A所有の本がBに盗まれ、現在Bがその本を占有する場
合は、AはBに対して、所有権に基づく返還請求権を根拠に「その本
を返してくれ」と主張できる。
地役権者は、承役地の使用権能を有するのみであり、占有権能・管
理権能を有しないため、返還請求権を有しない。
⑵ 物権的妨害排除請求権
占有以外の方法で妨害する者に妨害の除去を求めるものである。
たとえば、A所有の土地の上に、隣の高台にあるBの塀が崩れ落ち
てきた場合に、AはBに対して、所有権に基づく妨害排除請求権を根
拠に「私の土地の上に落ちてきた塀をどかしてくれ」と主張できる。
⑶ 物権的妨害予防請求権
妨害を生じさせるおそれがある者に対して予防措置を求めるもので
ある。
たとえば、Bが自己所有の山林の土砂を採取したことにより、将
来、隣地にあるA所有の土地に山林が崩れる危険が高いというような
場合に、AはBに対して、所有権に基づく妨害予防請求権を根拠に
「山林が崩れてこないように何か対策を講じてくれ」と主張できる。
【返還請求権・妨害排除請求権・妨害予防請求権の相違】
<請求権者>
物権的返還請求権
<相手方>
占有を失った物権者
①… 占有回収の訴えと異なり、詐取・遺失の場合も除外
されない
②… 所有者以外の第三者に占有権原がある場合(ex.賃
借人)でも、所有者は直接自分に対して明渡しを請求
できる(最判昭 41.10.21)
。
所有者に対する関係で、占有権原を有しないのに占有し
ているすべての者
①… 占有回収の訴えと異なり、善意の転得者に対しても
行使できる
②… 相手方は現在目的物を占有している者でなければな
らない(ただし、相手方は間接占有者でもよい)
③ 占有補助者・占有機関に対しては行使できない
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
13
● 1 物権総論
物権的妨害排除請求権
<請求権者>
<相手方>
<差止請求>
物権的妨害予防請求権
当該物権の完全な実現を妨げられている者
請求権者の保有する物権につき、現に妨害状態を生じさ
せている者
物権的請求権は、しばしば差止請求の法的根拠とされて
きた
現在の判例は、公害問題については、「人格権」を根拠と
して妨害排除及び妨害予防請求を認めている。日照被害
の差止については、「土地・建物の利用に結びついた、物
権的請求権と人格権の複合的なもの」としている
環境権については、判例は認めていない
<請求権者>
妨害されるおそれのある物権の保有者(一度妨害が生じ
たことは要しない)
<相手方> 将来、請求権者の保有する物権を妨害するおそれのある者
<請求内容> ①… 単に物権の妨害になるような行為をしないこと
ex.木材の伐採・搬出をしないことなどの不作為
②… 妨害のおそれを生ずる原因を除去して妨害を未然に
防ぐ措置をとること
ex.がけの損壊を防ぐ工事をすることなどの作為
5 物権的請求権の要件
⑴ 返還請求権の要件
返還請求権の要件は、①請求者が目的物の物権を有していること、
②相手方が目的物を占有していることである。もっとも、相手方が正
当な占有権原を有している場合には返還請求は認められない。
⑵ 妨害排除請求権の要件
妨害排除請求権の要件は、①請求者が目的物の物権を有しているこ
と、②相手方が占有以外の方法で目的物の物権を侵害していることで
ある。もっとも、相手方に②の事実を正当化する事由がある場合には、
ONE POINT
物 権 的 請 求 権は、物
権の 侵 害 等によって
当 然 に 発 生し、不 法
行 為に基 づく損害 賠
償 請 求 権 と 異 な り、
相 手 方 の 故 意・ 過 失
を 問 わ な い( 大 判 昭
12.11.19 /百選Ⅰ
[第
7版]
〔48〕
)
。
妨害排除請求は認められない。
⑶ 妨害予防請求権の要件
妨害予防請求権の要件は、①請求者が目的物の物権を有しているこ
と、②相手方が目的物の物権を侵害するおそれがあると認められる事
情があることである。
6 物権的請求権の相手方
論点
⑴ 原則
▲
LQⅡ・14 頁
物権的請求をする場合の相手方は、現在妨害を行っている者又はそ
のおそれがある者である。これは、物権的請求が物の支配を現に回復
するためのものであるから、過去の妨害者を対象にしても意味がない
ためである。
⑵ 例外
上記原則に従うと、たとえ
ば、Aの土地所有権がBの所
有物によって侵害されていて
も、その物がBからCに譲渡
されれば、現在妨害を行って
①妨害排除?
B
請求
B名義のまま
②売却
C
A所有地
いるのはCであるから、Aの
14
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
● 1-3 物権の効力
物権的請求権の相手方はCであるということになる。
しかし、判例は、
「他人の土地上の所有権を取得した者が自らの意
思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、たとい建物を他
に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、土地所有
者に対し、右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地
明渡しの義務を免れることはできない」とした(最判平 6.2.8 /百選
Ⅰ[第7版]
〔49〕
)
。つまり、Bが相手方になる。
上記判例が登記を基準としうることを正当化する実質的根拠は、土
地所有者と登記名義人(建物譲渡人)
、建物所有者(建物譲受人)と
の利益衡量にある。すなわち、登記を基準とすることが双方にとって
不当ではなく、むしろ登記名義人が所有権の喪失を主張するのは信義
則及び公平の見地に照らして許されないという判断に基づくものであ
る。
そして、登記名義人が物権的請求権の相手方となるという例外は、
177 条を根拠とするものであるから、未登記建物の所有者が未登記の
まま建物を第三者に譲渡した後に、譲渡人の意思に基づかずに譲渡人
名義の所有権取得登記がなされた場合(最判昭 35.6.17)や、建物登
記名義人がその建物を所有したことがなく、登記名義のみを有する場
合(最判昭 47.12.7)には妥当しない。
7 物権的請求権の内容(費用負担の問題)
論点
▲
我妻Ⅱ・23 頁
佐久間 2・305 頁
LQⅡ・17 頁
B所有地に生育していた樹木が、台風により隣接するA所有地に倒れ込んだ。
この場合、Aとしては、Bに対して土地所有権に基づき樹木による妨害の排除を
請求することが考えられ、Bとし
ては、Aに対して樹木の所有権に
基づき樹木の返還を求めることが
考えられる。このようなA、Bの
請求は認められるか。また、認め
られるとした場合、その費用はい
B所有地
ずれが負担すべきか。
A所有地
物権的請求権の内容として、権
利者は自己の費用による妨害除去
行為を受忍すべき旨を相手方に請
求しうるにすぎない(受忍請求権)
のか、相手方の費用により妨害を
除去すべき旨を請求しうる(行為
請求権)のかが問題となる。
土地所有権に基づく樹木の
妨害排除請求
樹木の所有権に基づく
樹木の返還請求
物権は物を排他的に支配する権利であり、物権の円満な支配を回復するための権
利が物権的請求権である
↓そのため
相手方によって物権の円満な支配を妨げられた者は、相手方の費用において妨害
状態の除去に必要な積極的行為を請求できるものと解すべきである(行為請求権
説)
↓もっとも
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
15
● 1 物権総論
本問の事案のように、AのBに対する妨害排除請求権とBのAに対する返還請求
権が衝突する場合、先に物権的請求権を行使した者が費用を負担しなくてもよい
こととなり、不都合であるとも思える
↓しかしながら
相手方の意思に基づかない占有が物権侵害の原因である場合、そもそも物権的請
求権は発生しない
↓なぜなら
物権的請求権の要件は自己の所有と相手方の占有であるところ、占有の取得には
「自己のためにする意思」(180)が必要であり、相手方の占有がその意思に基づ
かなければ、相手方の占有の取得が認められないからである
↓そして
本問の事案に即せば、A所有地にB所有の樹木が台風によって倒れ込んだ場合、
AはB所有の樹木を自己のためにする意思をもって占有したわけではないから、
Aによる占有は認められず、BはAに対して返還請求権を行使することはできな
い
↓これに対し
A所有地に倒れ込んだ樹木がB所有のものであれば、Bは自己の所有にかかる樹
木をもってA所有地を支配することになる以上、Bの意思に基づく占有が認めら
れる
↓よって
物権的請求権はAのBに対する妨害排除請求権のみ発生し、物権的請求権は衝突
しないと解されるため、前記不都合は生じない
判 例 大判昭 5.10.31
X所有建物の賃借人A
が、Yから賃借した砕石
機を建物に据え付けた
が、賃貸借契約終了後、
これを撤去しなかったの
で、XはYに損害賠償を
求めた。判旨は「所有者
は賃借人に対する関係如
何に拘らず之を撤去する
ことを要する」とし、物
権的妨害排除請求につい
て、妨害状態惹起の故
意・過失を問わず、妨害
物の所有者がこれを自己
の費用で撤去する義務を
負うと判示した。
判 例 大判昭 12.11.19
百選Ⅰ
[第7版]
〔48〕
A 行為請求権説(判例、通説)
物権的請求権は、相手方に対して妨害を除去するための積極的行為を請求
しうる権利であり、その費用も相手方負担となる。
(理由)
権利者には一般的に自助行為が認められていないから、妨害事情を支配
する地位にある者に対して、その妨害の除去を請求できなければ、物権は
有名無実となる。
(批判)
① 不可抗力による妨害の場合にまで費用を相手方の負担とするのは、相
手方に酷である。
② 同一事実についてある者の返還請求権と他の者の妨害排除請求権が衝
突するような場合には、いずれが原告となるかによって費用負担者が決
定されるという不都合がある。
B 行為請求権修正説(我妻)
原則としてA説と同様の立場を採りつつ、返還請求権については、相手方
がその意思により占有を取得したのでないときには、例外として相手方に取
戻行為の受忍を請求しうるにとどまる。
(理由)
A説の(理由)
、及びA説に対する(批判)②
(批判)
① 妨害排除、妨害予防については、A説に対する(批判)①と同様の批
判が妥当する。
② 返還請求について例外を認める理論的根拠が明らかでない。
C 受忍請求権説
物権的請求権は、一般に物権侵害という客観的状態を物権者自らが除去す
ることを相手方に受忍させる権利であり、その費用は原則として請求者の負
16
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
「侵害又ハ危険カ自己ノ
行為ニ基キタルト否トヲ
問ハス又自己ニ故意過失
ノ有無ヲ問ハス此ノ侵害
ヲ除去シ又ハ侵害ノ危険
ヲ防止スヘキ義務ヲ負担
スルモノト解スルヲ相当
トス」として、行為請求
権説を採用している。
* ただし、判例は、侵
害が不可抗力によって
生じた場合については
判断を留保している。
ONE POINT
行為請求権説に対す
る②の批 判について
は、そもそも物権的請
求 権の 衝 突という場
面 が 生じないと考え
る見解(侵害基準説、
佐久間2・308 頁、L
QⅡ・18 頁 )が 有 力
である。すなわち、物
権的請求権の要件は
自己の所 有と相手 方
の占有であるところ、
占 有 の 取 得 に は「 自
己のためにする意思」
(180)が必要であり、
相手方の占有がその
意 思に基 づかなけれ
ば、 相 手 方 の 占 有 の
取得は認められない。
● 1-3 物権の効力
担となる。
* この見解では、相手方が同時に不法行為者である場合に限り、不法行為
による損害賠償請求として、物権的請求権実現の費用を相手方に請求でき
ることになる。
(理由)
物権的請求権は、物権の円満な状態を回復するための物に対する追求権
であって、人に対する権利ではないから、相手方に回復行為を受忍すべき
ことを請求しうるにすぎない。
(批判)
侵害が相手方の所有物から生じている場合には、この説の結果は必ずし
そ の た め、 相 手 方 の
意 思に基 づかない占
有が物権侵害の原因
で ある 場 合、 物 権 的
請 求 権 は 発 生 せ ず、
物権的請求権は衝突
しないという見 解 で
あ る。こ の 見 解 に 立
つ 場 合、行 為 請 求 権
説に立って考えてい
くことになる。
も妥当ではない。
D 責任説
C説と同様、物権的請求権を侵害除去の受忍請求権であると解しつつ、た
だ、侵害行為が相手方の帰責事由による場合には、相手方の費用による妨害
の除去請求を肯定する。
* この見解は、相手方に帰責事由がある場合には、費用負担のみならず積
極的な除去行為をも相手方に請求しうる点で、C説と異なることになる。
(理由)
過失責任の原則から、法がある人に一定の積極的行為を行う義務を負わ
せるためには少なくとも過失が必要である。よって、相手方に対して積極
的に妨害排除の行為をなすべき義務を課すためには故意・過失等の要件が
必要である。
【費用負担の典型例と各説の帰結】
事例Ⅰ
事例Ⅱ
台風で倒れた
乙の土地
甲のバイク
甲
事例
第三者丙が無断使用後に放置
乙
費用負担者
A説
B説
C説
D説
Ⅰ甲が返還請求
(*)
甲
甲
甲
乙が妨害排除請求
(*)
甲
乙
乙
Ⅱ甲が返還請求
乙
甲
甲
甲
乙が妨害排除請求
甲
甲
乙
乙
* 判例は、傍論ではあるが、危険ないし侵害状態が人工により作出された
のではなく「自然ニ存スルモノ」
(大判昭 7.11.9)
、あるいは「不可抗力ニ
基因スル場合」
(大判昭 12.11.19 /百選Ⅰ[第7版]
〔48〕
)には、相手方
にその除去の積極的行為義務なしとする。
8 物権的請求権と他の請求権との競合
論点
不法行為責任については金銭賠償の原則が採用されており(722Ⅰ・
417)
、原状回復請求は認められないから、物権的請求権とは請求の
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
内田Ⅰ・373 頁
近江Ⅱ・35 頁
佐久間 2・299 頁
LQⅡ・14 頁
▲
⑴ 不法行為責任との関係
17
● 1 物権総論
内容が異なる。
→物権的請求権と不法行為責任の競合は生ぜず、要件をみたす限
り、いずれの請求も認められる
ex.Aの土地にBが廃棄物を不法投棄した場合、Aは土地所有権に
基づく妨害排除請求権と不法行為に基づく損害賠償請求権の双
方を行使しうる
⑵ 契約責任との関係
論点
Bは、A所有の家屋を賃借していたが、賃貸借契約終了後も家屋を返還しな
い。この場合、Aとしては賃貸借契約に基づき家屋の返還を請求することと、家
屋所有権に基づき家屋の返還を請求することが考えられるが、いずれを行使しう
るか。契約に基づく請求の場合には、債権であるから 10 年の消滅時効にかかり、
また、必要費返還請求権に基づく留置権が発生する場合がある等契約上の制約に
服するのに対し、物権的請求権の場合には無条件・永久に認められる。したがっ
て、いずれの請求をなしうるのかが問題となる。
契約に基づく請求と、物権的請求権は、その要件・効果が異なっており、両者は
別個独立の権利といえる
↓よって
それぞれの要件がみたされている以上、両者の競合を否定すべき理由はないか
ら、権利者はいずれの権利も自由に選択して行使することができると解する
A 請求権競合説(判例、通説)
契約に基づく請求と物権的請求権の双方の要件をみたす限り、権利者はい
ずれを行使してもよい。
(理由)
契約責任と物権的請求権は、要件・効果を異にする別個独立の権利であ
るから、双方の要件をみたしている限り、その競合を否定する理由はない。
B 法条競合説(近江)
契約に基づく請求が成立する場合には、契約に基づく請求権が物権的請求
権を排除して優先的に適用される。
* この見解でも、契約上の請求権が時効消滅したような場合には、物権的
請求権を行使しうるとするのが一般である。
(理由)
所有権等の物権が問題となるのは、特別の関係にない他人間の関係に限
られ、契約という特別な関係のある者相互間では、契約が物権法の規定を
排除して適用される。
18
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
● 1-3 物権の効力
先月友人がドライブ旅行で聴きたいというので、
何枚かC Dを貸したのですが、何かと理由をつけ
てなかなか返してくれません。そこで、この前彼
の家に遊びに行ったとき勝手に持って帰ってきち
ゃいました。問題ありませんよね。
あなたはただでその友人にCDを貸したのでしょうから、友人との間に
使用貸借契約が成立しています。そして、その使用目的は終えたのだか
ら、あなたには返還請求の権利が発生しています。もっとも、だからと
いって勝手に持って帰るのは原則許されず(自力救済の禁止)、法律の
定めるルールにのっとることが必要です。
考えてみよう! 要件事実の世界
類型別・45 頁
新問研・53 頁
▲
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求、建物収去土地明渡請求
<事例1:土地明渡請求>
Xは、空き地である甲土地を所有しているところ、Yは、正当な占有権原を有すること
なく、甲土地に建築用資材を置いて甲土地を占有している。そこで、Xは、Yに対し、甲
土地の明渡しを求めた。
■ 請求の趣旨 被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。
■ 訴訟物及びその個数 所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個
■ 請求原因(Kg)
(あ)Xは、甲土地を所有している。
(い)Yは、甲土地を占有している。
実体法の要件から要件事実へ
要件事実の基礎知識については、民法Ⅰ(総則)序編参照。
1 物権的請求権は、①返還請求権、②妨害排除請求権、③妨害予防請求権の3つに分類
される。①返還請求権は、他人の占有によって物権が侵害されている場合、②妨害排除
請求権は、他人の占有以外の方法によって物権が侵害されている場合、③妨害予防請求
権は、物権侵害のおそれがある場合であり、①は占有回収の訴え(200)
、②は占有保持
の訴え(198)
、③は占有保全の訴え(199)に対応している。
<事例1>では、Yの占有によって甲土地の所有権が侵害されている場合であるから、
①返還請求権が訴訟物となる。また、物権的請求権が訴訟物である場合の訴訟物の個数
は、侵害されている物権の個数と物権侵害の個数によって定まる。<事例1>では、侵
害されているのは甲土地1筆にかかるXの所有権であり、侵害態様は甲土地を建築用資
材置き場として使用することによるもので、1個の侵害ということができることから、
訴訟物の個数は1個となる。
2 所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権の請求原因は、上記(あ)
(い)
のとおりであるが、これらに加えて、
「Yが甲土地について正当な占有権原を有しないこ
と」という実体法上の要件が請求原因(=請求を理由づける事実、原告が主張立証しな
ければならない事実)となるか、それとも抗弁(=請求原因の主張立証によって発生す
る法律効果の発生を障害・消滅・阻止する事実、被告が主張立証しなければならない事
実)となるかが問題となる。
この点について、民法188 条は、
「占有者が占有物について行使する権利は、適法に
有するものと推定する。
」旨規定しているところ、同条が適用されれば、占有者である被
告の占有権原が法律上推定される結果、原告が上記事実を主張立証しなければならない
ことになる。しかし、通説は、同条は占有が権利の表象であることを尊重して、第三者
が占有者の権利を容易に争えないとする趣旨に基づいており、占有者の権利そのものの
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
19
● 1 物権総論
存否が所有者との間で争点となっている場合には適用されない等と解しており、判例(最
判昭 35.3.1)も、他人の土地を占有権原に基づいて占有しているという主張は、その主
張をする者に立証責任がある旨判示している。また、所有権の内容を完全に実現するこ
とが相手方の占有によって妨げられている場合には、所有者は、占有者に対して、所有
権の内容の完全な実現を可能にするためにその物の返還を請求できるのが原則である
上、占有者が「正当な占有権原を有しないこと」を所有者が主張立証することは困難で
あり、占有者が抗弁として正当な占有権原を有していることを主張立証するべきと解す
るのが主張立証責任の負担の公平にも適うという訴訟法的な観点から、
「Yが甲土地に
ついて正当な占有権原を有しないこと」という実体法上の要件は、請求原因ではなく「Y
が甲土地について正当な占有権原を有していること」という抗弁となると解されている。
3 請求原因(あ)
「Xは、甲土地を所有している。
」については、後述(⇒ 65 頁)する。
請求原因(い)
「Yは、甲土地を占有している。
」については、
「占有」の意義と、いつ
の時点における「占有」が必要となるかが問題となる。
まず、
「占有」の意義について、
「占有」は事実概念と解される一方、代理占有(⇒ 114
頁)も認められており、相当観念化していることから、攻撃防御方法の観点から見た場
合、
「占有」は極めて概括的・抽象的な事実であると解されている。そのため、Yの占有
について当事者間に争いがない場合には、
「占有」について自白(=相手方の主張を認め
ること)が成立したものとして、
「Yは、甲土地を占有している。
」と摘示するだけで足
りるが、占有について当事者間に争いがある場合、単に「占有している。
」と摘示するだ
けでは攻撃防御方法の目標として不十分であるから、Xとしては、少なくとも、自己占
有(⇒ 114 頁)か代理占有かを明らかにするため、自己占有のときには民法180 条所定
の所持の具体的事実を、代理占有の時には民法181条所定の成立要件に該当する具体的
事実を主張しなければならないと解されている。
次に、いつの時点における「占有」が必要となるかという問題については、占有者が
現在(=口頭弁論終結時)その不動産を占有していることを主張立証しなければならな
いという見解(現占有説)と、占有者の過去の一定時点における占有を主張立証すれば
足り、占有の喪失を占有者が抗弁として主張立証すべきであるという見解(もと占有説)
がある。この点について、物権的請求権は物権に対する妨害状態が存する限りその物権
から不断に発生するものであり、かつ、絶えず消滅し続けているという実体法的な認識
と整合するのは現占有説であり、現占有説が通説・実務となっている。
Xは、甲土地を所有しているところ、長年の間、海外で生活していた。その間、Yは、
正当な占有権原を有することなく、甲土地に乙建物を建築して甲土地を占有している。そ
こで、帰国したXは、Yに対し、甲土地の明渡しを求めた。
■ 請求の趣旨 被告は、原告に対し、乙建物を収去して甲土地を明け渡せ。
■ 訴訟物及びその個数 所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権 1個
■ 請求原因(Kg)
(あ)Xは、甲土地を所有している。
(い)Yは、甲土地上に乙建物を所有して甲土地を占有している。
要件事実のポイント
1 土地の所有者が、土地上に建物を所有して土地を占有する者に対して、所有権に基づ
き建物収去土地明渡しを請求する場合の訴訟物については、
「所有権に基づく返還請求
権としての土地明渡請求権1個」とする旧1個説、
「所有権に基づく妨害排除請求権とし
ての建物収去請求権と所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権の2個」とす
る2個説、
「所有権に基づく建物収去土地明渡請求権1個」とする新1個説がある。通説・
実務は、旧1個説に立っているが、その理由を説明する前に、訴訟物の意義について説
明する。
2 訴訟物は、訴訟において審判の対象となる権利又は法律関係であり、民事訴訟では、
20
類型別・58 頁
岡口1・314 頁
▲
<事例2:建物収去土地明渡請求>
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
● 1-3 物権の効力
裁判所が原告の主張する訴訟物の存否について判断する。もっとも、訴訟物である権利・
法律関係の存否を直接認識することはできず、実体法が権利・法律関係の発生・障害・
消滅・阻止という法律効果の発生要件を規定していることから、実体法の定める法律効
果の発生要件を基礎付ける具体的事実(=要件事実)の存否を通じて、裁判所は訴訟物
の存否を判断する。そうすると、訴訟物の個数やその捉え方が異なると、訴訟における
審判の対象や当事者の主張立証等も異なってくることになる。
3 通説・実務である旧1個説は、土地上の建物所有による土地の占有によって土地所有
権が侵害されている場合、土地所有者には土地返還請求権のみが発生するのであり、判
決の主文に「建物を収去して」という一文が加えられるのは、土地明渡しの債務名義(=
判決等、強制執行を行うために必要となる文書をいう。
)だけでは別個の不動産である建
物の収去執行ができないという執行法上の制約から、執行方法を明示する必要があるた
めであって、建物収去は土地明渡しの手段や履行態様にすぎず、別個の実体法上の請求
権が現れたものではないとする。
2個説に対しては、同一人の同一土地に対する同一時期の妨害として、占有侵奪とい
う態様によるものとそれ以外の態様によるものとは併存し得ないという批判があり、新
1個説に対しては、伝統的な物権的請求権の3類型(返還・妨害排除・妨害予防)を変
更するだけの理論的根拠に欠けるという批判がある。
旧1個説によれば、請求原因は<事例1>と同じように考えることになる。なお、
「甲
土地上に乙建物を所有して」という事実は、
「占有」の具体的な態様に他ならないから、
当事者間に「占有」についてとくに争いがなければ、
「占有」の具体的な態様をあえて主
張立証する必要はないとも思えるが、この事実は判決の主文に「建物を収去して」と明
示するために必要となるので、
「占有」についての争いの有無にかかわらず主張立証しな
ければならない。また、乙建物が甲土地の一部を占めているにすぎない場合には、
「甲土
地上に乙建物を所有して」という事実を主張しても甲土地の「占有」を主張立証したと
はいえないから、Yが甲土地の残部についても占有していることをも主張立証しなけれ
ば、甲土地全部の明渡請求は認められないこととなる。
実体法の要件から要件事実へ
仮に、乙建物が未登記建物であり、その所有者であるYが未登記のままZに乙建物を譲
渡した場合には、確定的に乙建物の所有権を失うことになるから、その後、Yの意思に基
づかずにY名義に所有権取得の登記がされても、Yは、乙建物の所有権の喪失により土地
を占有していないことを抗弁として主張することができる(最判平 6.2.8 /百選Ⅰ[第7版]
〔49〕
)
。これに対し、Yが、乙建物の所有権を取得し自らの意思に基づいてその旨の登記
をした場合は、乙建物をZに譲渡したとしても、Yが引き続き乙建物の登記名義を保有す
る限り、Xに対し、乙建物の所有権の喪失を主張して建物収去土地明渡しの義務を免れる
ことはできない(最判平 6.2.8 /百選Ⅰ[第7版]
〔49〕
)
。
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
21
短答式試験
の過去問を解いてみよう
…1… 法律や判例には、物の集合体に1個の物権を認めるものがある。
[司H
18-9]
…2… 所有権に基づく物権的請求権は、所有権から派生する権利であるから、
所有権と独立に物権的請求権のみを譲渡することはできないが、所有権と
は別に消滅時効にかかる場合がある。
[司H24-11=予H24-4]
…3… Aは、B所有の土地に何らの権原なく建物を建て、この建物をCに賃貸
した。この場合、建物を占有しているのはCであるから、Bは、Aに対し
て、建物を収去して土地を明け渡すことを請求することはできない。
[司H
24-11=予H24-4]
…4… Aが所有する物について、Bが物の占有ではない方法によって所有権の
行使を妨げる場合、AがBに対して所有権に基づき妨害の除去又は停止を
請求することができるのは、Bの妨害によりAが重大にして著しく回復困
難な損害を被るときに限られる。
[司H21-7]
…5… AがBに対して所有権に基づく妨害排除請求権を行使するには、Bに事
理を弁識する能力があることは必要でないが、妨害状態が発生したことに
ついてBに故意又は過失があることが必要である。
[司H24-11=予H24
-4]
…6… 建物を所有することによって土地を不法占有している者がいる場合、土
地の所有者は建物の所有者を相手に訴えを起こさなければならず、建物の
登記名義人がだれかは被告を選ぶ基準とはならない。
[司H18-10]
…7… 所有者が占有者に対して占有物の返還を求める場合、原告は、被告の占
有が権原に基づかないことを立証する必要はなく、被告が自己に正当な占
有権原のあることを立証しなければならない。
[司H18-10]
22
〈物権〉第6版
C-Book民法Ⅱ
○ 企業担保法等参照。ま
た、 判 例( 最 判 昭
62.11.10)は、集合物譲
渡担保を認めている。
⇒第2編第1章
1-2 二(p.10)
× 判例(大判大 5.6.23)
は、物権的請求権につい
て、物権から独立した譲
渡可能性を否定するとと
もに、消滅時効によって
消滅しないとしている。
⇒第2編第1章
1-3 三(p.12)
× 間接占有によっても所
有権は侵害されるから、
請求の相手方は間接占有
者でもよい。
⇒第2編第1章
1-3 三(p.13)
× 妨害排除請求権は、物
権の侵害があれば発生
し、重大にして著しく回
復困難な損害が生ずるこ
とを要しない。
⇒第2編第1章
1-3 三(p.14)
× 物権的請求権は、物権
の侵害等によって当然に
発生し、不法行為に基づ
く損害賠償請求権と異な
り、相手方の故意・過失
を 問 わ な い( 大 判 昭
12.11.19 / 百 選 Ⅰ[ 第
7版]
〔48〕参照)
。
⇒第2編第1章
1-3 三(p.14)
× 原則は建物所有者が被
告となるが、例外的に登
記名義人が被告となるこ
ともある(最判平 6.2.8
/百選Ⅰ[第7版]〔49〕
)
。
⇒第2編第1章
1-3 三(p.15)
○ 最判昭 35.3.1参照
⇒第2編第1章
1-3 三(p.20)
●論点一覧表
論点一覧表
*… 「問題の所在」が記載されている箇所やその他重要な論点が掲載されている箇所を一覧化しました。「考え方のすじ道」
が掲載されている論点には「○」マークを付しています。
考え方の
すじ道
論点名
該当頁
物権総論
1 一物一権主義の例外(独立性の例外)
――
9
2 一物一権主義の例外(単一性の例外)
――
9
3 物権的請求権の法的性質
――
12
4 物権的請求権の相手方
――
14
5 物権的請求権の内容(費用負担の問題)
○
15
――
17
○
18
8 「意思表示」の解釈①~物権行為の独自性の肯否
○
27
9 「意思表示」の解釈②~物権行為の無因性の肯否
――
28
10 「その効力を生ずる」の解釈(物権変動の時期)
○
28
――
40
6 物権的請求権と他の請求権との競合(不法行為責任との関係)
7 物権的請求権と他の請求権との競合(契約責任との関係)
物権変動
11 真正な登記名義の回復を原因とする登記請求
12 中間省略登記
13 「対抗することができない」の解釈(177)
14 二重譲渡の理論的説明(不完全物権変動説と公信力説)
15 「物権の得喪及び変更」の解釈
16 取消しと登記…
17 解除と登記…
⇒『総則』
⇒『債権各論』
○
42
――
46
○
46
――
48
――
48
――
49
18 取得時効と登記
――
49
19 共同相続と登記
○
51
20 相続放棄と登記
○
52
21 遺産分割と登記(遺産分割後の相続財産の処分)
○
53
22 「第三者」の意義(177)
○
57
23 悪意の第三者(177)
○
59
――
61
24 背信的悪意者の判断基準
25 背信的悪意者からの取得者
○
62
26 背信的悪意者でない者から譲り受けた背信的悪意者
○
64
27 「対抗することができない」の解釈(178)
…
⇒論点13 参照
――
76
28 「第三者」の解釈(178)
…
⇒論点 22 参照
――
77
○
77
29 動産賃借人と178 条の「第三者」
30 動産受寄者と178 条の「第三者」
○
78
31 目的物が「動産」であること~登録済の自動車(192)
○
83
32 前主が無権利者であること~制限行為能力、意思の不存在・意思表示の瑕疵
○
84
33 前主が無権利者であること~無権代理行為
○
85
34 占有改定(183)と即時取得
○
87
35 指図による占有移転(184)と即時取得
○
89
36 無償行為による即時取得
――
92
37 即時取得と不当利得
――
92
38 回復請求権(193)の法的性質
――
94
39 代価弁償(194)の法的性質
――
95
405
判例索引
408
大判明 35.10.14……………………………………… 90
大判大 14.1.20… …………………………………… 128
大判明 38.9.29… …………………………………… 380
大判大 14.7.18… ……………………………… 273,…336
大判明 39.12.24……………………………………… 126
大判大 14.12.11………………………………………… 6
大連判明 41.12.15 /百選Ⅰ[第7版]
〔52〕
…… 48,…57
大判大 15.2.5………………………………………… 309
大判大 3.4.14………………………………………… 311
大判大 15.2.22… …………………………………… 156
大判大 3.7.4… ……………………………………… 221
大判大 15.4.30… …………………………………… 41
大判大 3.8.13………………………………………… 41
大判大 15.10.4… …………………………………… 41
大判大 4.3.6… ……………………………………… 286
大判大 15.10.8… …………………………………… 138
大判大 4.4.27………………………………………… 78
大判昭 3.8.1… ………………………………… 324,…327
大判大 4.5.20………………………………………… 86
大判昭 3.8.8… ……………………………………… 90
大判大 4.9.15………………………………………… 265
大判昭 3.11.8………………………………………… 12
大判大 4.9.20…………………………………… 133,…134
大判昭 4.12.11… …………………………………… 94
大決大 4.10.23… …………………………………… 267
大判昭 5.5.3… ……………………………………… 134
大判大 5.2.2… ……………………………………… 41
大判昭 5.5.31………………………………………… 276
大判大 5.5.31………………………………………… 275
大判昭 5.10.31… …………………………………… 16
大判大 5.6.23………………………………………… 12
大判昭 5.12.18 /百選Ⅰ[第五版]
〔85〕…… 271,…276
大判大 5.6.28………………………………………… 276
大判昭 6.1.17………………………………………… 206
大判大 5.7.22………………………………………… 135
大判昭 6.4.24………………………………………… 369
大判大 5.12.25… …………………………………… 235
大判昭 6.10.21… ……………………………… 319,…327
大判大 6.4.26………………………………………… 39
大判昭 7.4.13………………………………………… 133
大判大 6.7.26…………………………………… 228,…229
大判昭 7.4.20…………………………………… 275,…276
大判大 7.1.18………………………………………… 244
大判昭 7.5.27………………………………………… 326
大判大 7.3.2… ……………………………………… 49
大判昭 7.6.1… ……………………………………… 262
大判大 8.3.15………………………………………… 271
大判昭 7.8.29………………………………………… 332
大判大 8.9.27………………………………………… 164
大判昭 7.11.9………………………………………… 17
大判大 8.10.8………………………………………… 105
大判昭 8.2.13………………………………………… 89
大判大 8.12.11… …………………………………… 161
大判昭 8.3.29………………………………………… 263
大判大 9.3.29………………………………………… 237
大判昭 8.4.26………………………………………… 369
大判大 10.4.14… ……………………………… 99,…102
大判昭 8.11.7………………………………………… 260
大判大 10.6.1………………………………………… 154
大判昭 9.12.28… …………………………………… 102
大判大 10.6.13… …………………………………… 40
大判昭 10.5.13… …………………………………… 211
大判大 10.7.8………………………………………… 94
大判昭 10.8.10… …………………………………… 309
大判大 11.2.20… …………………………………… 164
大判昭 10.10.1… …………………………………… 156
大判大 11.7.10… …………………………………… 164
大判昭 11.1.14… …………………………………… 260
大判大 11.9.19… …………………………………… 130
大判昭 11.7.14… …………………………………… 343
大判大 11.11.24………………………………… 273,…336
大判昭12.11.19 /百選Ⅰ[第7版]
〔48〕
…… 14,…16,…17
大判大 11.11.27……………………………………… 133
大判昭 13.5.25… …………………………………… 309
大連判大 12.4.7………………………………… 284,…382
大判昭 13.12.26……………………………………… 134
大判大 12.7.11… …………………………………… 379
大判昭 14.7.26… ……………………………… 303,…310
大連判大 12.12.14…………………………………… 304
大判昭 15.9.18 /百選Ⅰ[第7版]
〔47〕
…………… 6
大判大 13.3.17… …………………………………… 185
大判昭 17.3.23… …………………………………… 286
大判大 13.5.22… …………………………………… 137
大判昭 17.4.24… …………………………………… 169
大判大 13.6.12… …………………………………… 234
大判昭 17.9.30 /百選Ⅰ[第7版]
〔53〕
………… 56
事項索引
英数字
管理占有…………………………………………… 324
177 条の「第三者」… ……………………………… 57
帰属清算型………………………………………… 370
期限の利益の喪失………………………………… 328
協議による分割…………………………………… 166
あ行
共同質入説………………………………………… 240
悪意占有……………………………………… 118,…119
共同占有…………………………………………… 119
明渡猶予期間制度………………………………… 313
共同相続と登記………………………………… 51,…56
遺産分割と登記………………………………… 53,…56
共同抵当…………………………………………… 336
意思主義…………………………………… 26,…30,…74
共同抵当建物の再築……………………………… 297
遺失物……………………………………………… 93
共同根抵当………………………………………… 349
――拾得………………………………………… 150
共有………………………………………………… 159
異時配当…………………………………………… 337
――と法定地上権……………………………… 305
一部価格賠償………………………………… 166,…167
――の対外関係………………………………… 165
一物一権主義………………………………………… 8
――の弾力性…………………………………… 161
一括競売…………………………………………… 311
――の内部関係………………………………… 161
一般先取特権……………………………………… 220
共有根抵当………………………………………… 349
囲繞地通行権………………………………… 56,…145
共有物の分割……………………………………… 166
入会権……………………………………………… 190
共有持分…………………………………………… 161
受戻権……………………………………………… 371
共用部分…………………………………………… 170
売渡担保…………………………………………… 363
区分所有権………………………………………… 169
永小作権…………………………………………… 182
区分地上権………………………………………… 181
温泉専用権…………………………………………… 6
形式競売……………………………………… 210,…212
共同申請主義……………………………………… 36
形式主義…………………………………………… 26
か行
競売権………………………………………… 210,…212
権原………………………………………………… 153
解除と登記……………………………………… 49,…56
原始取得……………………………………… 91,…149
買戻し・再売買の予約…………………………… 396
現実の引渡し……………………………………… 75
加工…………………………………… 150,…152,…156
現物分割…………………………………………… 166
瑕疵ある占有………………………………… 118,…119
権利質……………………………………………… 244
果実………………………………………………… 273
権利の推定………………………………………… 126
――からの優先弁済受領権……………… 210,…245
権利部(乙区)
… …………………………………… 33
――収取権………………………… 128,…131,…248
権利部(甲区)
… …………………………………… 33
過失ある占有………………………………… 118,…119
権利保護要件としての登記……………………… 69
過失なき占有………………………………… 118,…119
牽連性……………………………………………… 203
瑕疵なき占有………………………………… 118,…119
行為請求権説……………………………………… 16
仮登記……………………………………………… 34
交互侵奪…………………………………………… 137
仮登記担保………………………………………… 393
公示の原則………………………………………… 31
――と譲渡担保との違い……………………… 394
公信の原則………………………………………… 31
代担保の提供………………………………… 210,…214
公信力…………………………………………… 31,…34
簡易の引渡し……………………………………… 76
合有………………………………………………… 159
慣習法上の物権……………………………………… 6
混同………………………………………………… 104
間接占有…………………………………………… 114
混和…………………………………………… 150,…155
411
編著者代表 反町 勝夫(そりまち かつお)
<経歴>
1965 年東京大学経済学部卒業。株式会社電通勤務を経て、
1970 年公認会計士第2次試験合格。公認会計士試験受験指導を
通じて開発した、経済学・経営学・会計学の論理体系思考を法律
分野に導入し、新しい実務法律体系
(LEC 体系)
を創造する。
1978 年司法試験合格後、株式会社東京リーガルマインド
(LEC)
を創立。わが国で一般的に行われている実務法律・会計の、教育・
研修システムのほとんどを考案し、今日それらは資格試験・実務
研修のデファクトスタンダードになっている。2004 年日本初の株
式会社大学
「LEC 東京リーガルマインド大学
[略称:LEC(れっく)
大学]
」創立、2005 年 LEC 会計大学院創立。若年者の就職100%
を目指してキャリア開発学という学問分野を立ち上げ、研究・教
育に邁進する。現在、弁護士・弁理士・税理士・会計士補・社会
保険労務士・職業訓練指導員
(事務科)
。株式会社東京リーガルマ
インド代表取締役会長。LEC 会計大学院学長。
リーガルマインド
『司法改革―時代を先取りする
著書に
『21世紀を拓く法的思考』
「提言」―』
『司法改革 2―新時代を築く人々―』
『各界トップが語る
―改革への法的思考』
『各界トップが語る―改革のプロセス』
『各界
トップが語る―改革の羅針盤』
『各界トップが語る―改革の発進』
『各界トップが語る―ここまで進んだ
「改革」
『
』わかる!楽しい!法
律』
(LEC 東京リーガルマインド)
、
『士業再生』
(ダイヤモンド社)
。
広報誌
『法律文化』編集長。そのほか、資格試験受験用テキスト
(
『C-Book』
など)
・社員研修用教材、論文・評論多数。
PROVIDENCEシリーズ
C-Book 民法Ⅱ<物権> 第6版
2001年 3 月15日… 第 1 版 第 1 刷発行
2015年 6 月15日… 第 6 版 第 1 刷発行
…
編著者●…株式会社 東京リーガルマインド
…
…
…
発行所●…株式会社 東京リーガルマインド
…
…
〒164-0001… 東京都中野区中野…4-11-10
…
…
…
アーバンネット中野ビル
…
…
…
☎03(5913)5011(代 表)
…
…
…
☎03(5913)6336(出版部)
…
…
…
☎048(999)7581(書店様用受注センター)
…
…
振 替 00160-8-86652
…
…
www.lec-jp.com/
…
…
カバーデザイン●大久保正幸事務所
…
…
印刷・製本●株式会社 サンヨー
LEC総合研究所 司法試験部
©2015…TOKYO…LEGAL…MIND…K.K.,…Printed…in…Japan…
ISBN978-4-8449-2622-1
複製・頒布を禁じます。
本書の全部または一部を無断で複製・転載等することは、法律で認められた場合を除き、著作者及
び出版者の権利侵害になりますので、その場合はあらかじめ弊社あてに許諾をお求めください。
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営利目的での使用等は固くお断りいたしております。
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定価 本体2,400円 +税
LD02622
物権
第6版