確かな学力を育むための指導方法のあり方 ~ 算数科における思考力

1 研究主題
確かな学力を育むための指導方法のあり方
~ 算数科における思考力・表現力の伸長を核として ~
2 主題設定の理由
(1)教育の今日的課題から
現在の社会は,新しい知識・情報・技術が政治・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤とし
て飛躍的に重要性を増す,
「知識基盤社会」である。このような知識基盤社会やグローバル化の波により,
国際競争を加速させる一方で,異なる文化や文明との共存や国際協力の必要性が増大されている。このよ
うな社会の中,確かな学力,豊かな心,健やかな体の調和を重視する「生きる力」をはぐくむことが重要
となっている。また,PISA調査などからは,
①思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問題,知識・技能を活用する問題,
②家庭での学習時間などの学習意欲,学習習慣・生活習慣,
③自分への自信の欠如や自らの将来への不安,体力の低下,
といった課題が見られている。これらの課題は,本校においても実態として同じことがいえる。
学習指導要領算数科では,これらの課題をふまえ,算数的活動を一層充実させ,基礎的・基本的な知識・
技能を確実に身に付け,数学的な思考力・表現力を育て,学ぶ意欲を高めるようにする,という基本方針
が打ち出された。
(2)研究の経過と児童の実態から
本校では,平成25年度まで「一人一人のよさを認め合う,よりよい集団づくり」をテーマに「つかむ」
「感じる」
「伝える」
「つなぐ」学習指導の工夫,および構成的グループエンカウンターやソーシャルスキ
ルトレーニング等の方法を用いた仲間づくりの研究を行ってきた。それにより,友だちの良さを感じる児
童が増えてきたことは成果としてあげられる。ただ,いじめ等の問題行動も多く,相手の気持ちを考える
力の育成に今後も取り組んでいく必要がある。学習の基盤となる集団づくりについては,一定の成果が表
れてきており,落ち着いて学習に取り組む環境が少しずつ整ってきている。
平成25年度全国学力・学習状況調査の結果をみると,算数A(0.93)
・算数B(0.88)と,ともに全国比
を大きく下回っている。特に算数Bにおける数学的な考え方は(0.73)と著しく低い状況にある。児童は,
自分の考えを説明したり,文章に書いたりすることが難しいと感じている。そのため,学習課題に対して
自分の考えを持つことができても,自信を持って表現し,その考えを交流しながら学び合い,思考を深め
ていくことにつながっていっていない。同時に,要努力の児童の割合が高くおおむね達成・十分達成の児
童の割合が低いことから,全体的な底上げを行っていく必要がある。
メディアに接する時間が県平均より大きく上回っており,家庭学習の習慣化が不十分であることも推測
される。計画的に学習する習慣が身に付いていないことが,おおむね達成の割合が低い要因の一つとして
考えられる。
これまでにも,学力向上のために授業改善(問題解決学習)
,
「大坪チャレンジ」
(プリント学習)や「家
勉」
(自主学習)
,などに取り組んできた。これらの取り組みによって,基礎・基本定着のための繰り返し
学習を行い,定着を図ると共に,家庭での学習習慣づくりを推進してきた。児童は,自分で課題を考え,
ノートに学習内容をまとめていくことで,少しずつ表現することに対しての抵抗を減らしてきている。
しかし,学習意欲や基礎・基本の定着には個人差が見られ,学習に対して受動的になる場面も見られる。
そこで,本年度は,昨年度までの取組を土台として,取組を深化させながら全体的な底上げを図ってい
きたい。まず,算数科の授業研究を行い,思考力・表現力を伸ばすための授業づくりを行う。次に,朝の
時間を活用した「大坪チャレンジ」における基礎・基本の定着。更には,家庭との連携を図りながらの学
習習慣の確立を行っていく。このような実践を積み重ねていくことで,思考力・表現力を育成することが
でき,ひいては,それが確かな学力へつながると考え,本主題を設定した。
3 研究主題の考え方
(1)
「確かな学力」とは
基礎的・基本的な知識・技能,知識・技能を活用して課題を解決するための思考力・
判断力・表現力,主体的に学習に取り組む態度。
(2)
「思考力・表現力」とは
根拠を明らかにし筋道を立てて体系的に考えることや,言葉や数,式,図,表,グラ
フなどの相互の関連を理解し,それらを適切に用いて問題を解決したり,自分の考えを
分かりやすく説明したり,互いに自分の考えを表現して伝え合ったりすること。
4 研究の目標
各学年の発達段階に応じた算数的活動を取り入れ,
課題に対して自分の考えをもち,
筋道立てて表現し,
互いの考えを伝え合う活動を取り入れた授業を展開していくことで,確かな学力を育む指導方法の在り方
を明らかにする。
5 研究の仮説
算数科の授業において,次のような手だてをとれば,児童は主体的に問題を解決し,数学的
な思考力・表現力が育つであろう。
ァ 単元を見通した指導計画の中に思考力・表現力を育てる場を位置づけ,個に応じた指導を
行う。
ィ 1単位時間の基本的学習過程(つかむ,見通す,さぐる,練り合う,振り返る)を組み,
算数的活動を通して児童相互が考えを交流できる場を位置づけて指導にあたる。
ウ 基礎・基本問題」に取り組む時間として「特設タイム」を位置づけ,全職員で指導にあた
る。
学び合いの充実・深化
基礎・基本的技能の育成
・ 主体的に学習に取り組む児童
・ 算数的活動の充実
・ お互いの考えを伝え合う中で,
認め合い,高め合う児童
思考力・表現力の伸長
6 研究の内容
(1) 「思考力・表現力」を育成するための単元計画の作成
(2) 算数的活動を通して自分の考えを持ち,表現し,交流する場を設けた授業実践
(3) 朝の時間(大坪チャレンジ)の効果的な活用
(4) 家庭学習(家勉など)
,学習習慣・生活習慣の確立(学校・家庭)
7 研究の方法
(1) 「思考力・表現力」を育成するための単元計画の作成
ア 基本的な知識・技能及び思考力・表現力を育てるために,各単元おいて「考えさせる場」
「教える
場」
「習熟を図る場」
「活用する場」を位置づけた指導計画を作成する。
イ 各単元で自力解決のための表現活動と交流のための表現活動を具体化する。
(2) 算数的活動を通して自分の考えを持ち,表現し,交流する場を設けた授業実践
ア 1単位時間の授業において,基本的な学習過程(つかむ,見通す,さぐる,練り合う,振り返る)
を組み,各学年に必要な算数的表現力・説明力とはどのようなものか明らかにし,その育成のた
めの手立てを探る。
イ 単元の始めに,前単元や前学年までの学習内容の系統を把握し,児童の知識・技能及び数学的な
考え方・表現力をみるレディネス調査を行い,授業に生かす。
ウ 問題提示や意見交流の場,確かめなど,学習過程におけるICT機器の効果的な活用を図る。
エ 学習の定着度を把握するために,単元終了の1ヶ月後をめやすに「把持力テスト」
(単元後終了後
と同じテスト)を行う。
オ 特別支援部を立ち上げ,算数科及び,数を生活に生かす授業づくりの研究に取り組む。
カ 全体授業研究会を実施し,全員が研究授業に関わっていく体制をつくり,講師を招いて研究内容
についての指導を受ける。
(3) 朝の時間(大坪チャレンジ)の効果的な活用
ア 「大坪チャレンジ」(8 時 15 分~8 時 35 分)を設定し,授業の土台となる基礎的・基本的な知識
及び技能の確実な定着を図るための問題と補充的な指導を行うための問題の選定を行うととも
に,全職員で指導にあたる。
イ 朝の時間の効果的な運用を図るための年間計画を作成する。その際,音読,算数科のドリル学習,
活用問題,社会・理科の復習問題等を計画的に位置付ける。
(4) 学習習慣・生活習慣の確立
ア 算数的な環境・掲示物を工夫し,児童の算数科に対しての関心・意欲向上につなげる。
イ 家庭との連携を図りながら,家庭学習(家勉など)
・学習習慣・生活習慣の充実を図る。
ウ 育友会と連携し,児童の家庭生活の改善(パワーアップカード等)や,家族で読書に取り組
む「家読(うちどく)
」を継続して取り組む。
8 研究の構想図
【
大
坪
チ
ャ
レ
ン
ジ
】
基
礎
・
基
本
の
定
着
算数科
授業実践
学
習
習
慣
・
生
活
習
慣
【
学
校
・
家
庭
】
9 研究の組織
育友会本部役員会
校 長
教 頭
教 務
研究委員会
研究主任・研究副主任
学年グループ部長
研究推進委員会
校長,教頭,教務,研究主任,研究副主任,
専門グループ部長,学年グループ部長,学年主任
・研究計画立案
・全体研修の計画と運営
・講師招聘
等
全体研究会
学年グループ部会
専門部会
特別
高学年 中学年 低学年
支援
G
G
G
G
こ
べ
つ
・
こ
と
ば
4
組
5
組
6
組
第
六
学
年
部
会
第
五
学
年
部
会
第
四
学
年
部
会
第
三
学
年
部
会
第
二
学
年
部
会
環境部
・
保
護
者
の
意
識
ア
ン
ケ
ー
ト
第
一
学
年
部
会
(
家
庭
と
の
連
携
)
・
学
習
習
慣
・
生
活
習
慣
の
確
立
特設部
・
学
習
環
境
の
充
実
・
児
童
の
意
識
ア
ン
ケ
ー
ト
容
及
び
年
間
計
画
・
大
坪
チ
ャ
レ
ン
ジ
の
方
法
や
内
10 研究の経過と計画
月
4
5
6
内
容
・推進委員会(研究概要の提案と確認)
・全体会(研究概要の提案と確認)
・専門部会(研究内容の確認,年間計画)
・学年グループ研(研究内容の確認,年間計画)
・推進委員会
・指導案検討会
・算数科授業研究会①
全体研:5 年 2 組「小数×小数」 馬場美奈(T1)百武英敏(T2)
指導助言:西部教育事務所 白濱 勝先生
・講師招聘(国立教育政策研究所:礒部年晃調査官)
・専門部会
・学年グループ研
授業部
・
児
童
の
意
識
ア
ン
ケ
ー
ト
・
学
習
習
慣
の
確
立
・
指
導
力
向
上
・
授
業
改
善
・指導案検討会
・算数科授業研究会②
全体研:1 年 2 組「ひきざん 1」 楠本由佳子(T1)溝上晴香(T2)
指導助言:西部教育事務所 野口幸子先生
・推進委員会
・指導案検討会
・算数科授業研究会③
全体研:4 年 3 組「式と計算のじゅんじょ」 脇本千晶(T1)上田 悟(T2)
指導助言:西部教育事務所 藤田大輔先生
7
8
9
・保護者向け講話(
「福井県における家庭教育について」西部教育事務所 北原成之先生)
・学年グループ研(1 学期の振り返り)
・アンケート実施(児童,保護者,教職員)
・専門部会(1 学期の振り返り)
・全体会(1 学期の振り返り)
・平成 25,26 年度全国学力・学習状況調査及び佐賀県学習状況調査の結果分析
・専門部会,学年グループ研,全体会(2 学期に向けて)
・指導案作成
・環境整備
・大坪チャレンジプリント作成 ・単元計画作成
・推進委員会(研究発表会に向けて) ・ICT機器を活用した授業作りの研修
・講師招聘(佐賀大学文化教育学部附属教育実践総合センター:篠原一彦先生)
・専門部会
・学年グループ研
10
・専門部会,学年グループ研
・指導案検討会
・算数科授業研究会④
全体研:6 年 2 組「小数や分数の計算のまとめ」 中原嘉孝(じっくりコース)
百武英敏(どんどんコース)
指導助言:佐賀大学文化教育学部附属教育実践総合センター 篠原一彦先生
西部教育事務所 白濱 勝先生
・推進委員会
11
・専門部会,学年グループ研
・指導案検討会
・算数科授業研究会⑤
全体研:3 年 1 組「1 けたをかけるかけ算の筆算」
) 中尾照美(T1)上田 悟(T2)
・指導案検討会
・算数科授業研究会⑥
全体研:2 年 1 組「かけ算(2)」 岩﨑 昭子(T1)溝上晴香(T2)
指導助言:佐賀大学文化教育学部数学教育講師 米田重和先生
西部教育事務所 野口幸子先生
・指導案検討会(研究発表会用)
・アンケート実施(児童,保護者,教職員)
12
・専門部会
1
・23日(金)研究発表会
公開授業:4 年 1 組「変わり方」
,5 年 3 組「割合」
講演会:国立教育政策研究所 礒部年晃調査官
2
・専門部会,学年グループ研(年間反省,まとめ)
・研究のまとめと次年度の構想
3
・次年度準備
・学年部会
・推進委員会