2015 年 9 月号 みなと総合グループニュースレター 今月の TOPICS 【 税務 】 ・役員報酬の取り扱いが変わる? ・マイナンバー制度 詳報 【 人事・労務 】 ・「マイナンバー制度」雇用保険関係の最新情報! ・平成 27 年度 最低賃金額引上げの目安と企業の対応 【 税務 】 役員報酬の取り扱いが変わる? 平成 27 年 8 月 7 日付日本経済新聞において、 「役員報酬、法人税優遇広く ROE連動も対象に」 という記事が掲載されました。役員報酬は、「毎月定額であること」などの要件を満たさないと税務 上の費用として認められない、など厳しい制約があります。しかし、現実には役員退職慰労金制度を 廃止し、業績連動報酬としてのストックオプションを導入するなど、世間的には役員の業績に応じた 報酬体系の導入が進んでいます。税制が世間の流れから取り残されている状況です。 ◆役員報酬に関する税制上の制約 役員報酬を税務上の費用とするためには、以下の条件を満たす必要があります(※同業種・同規模の 他社と比較して不相当に高額ではないか、という制約もあります) 。 定期同額の役員給与 毎月同額の報酬となっていなければなりません。増額する場合には、事業年度開始 3 か月 以内に開催される定時総会で決議する必要があります。また、減額は基本的には認められて いませんが、経営状況の相当な悪化などの場合には認められることもあります。 事前確定届出給与 事前(株主総会での決議日から 1 月以内)に税務署に届出をすることで、いわゆる役員賞 与の支払いが可能となります。事前に金額を決定する必要があり、業績連動賞与が認められ ているわけではありません。 利益連動給与 利益に応じて役員報酬を変動させることが可能ですが、算定方法を有価証券報告書に記載 する必要があり、実質適用は上場企業に限定されています。また、利益連動といっても上限 を○○○○万円と定める必要があり、青天井の報酬が認められているわけではありません。 算定方式も全役員一律とする必要があります。 ◆現状でも利益連動給与は認められているが・・・ 上記のとおり、現状でも利益連動給与は認められているのですが、残念ながら対象は上場企業に限 定され、かつ、非常に使い勝手が悪くなっています。したがって、税法上の基準は満たさないが、業 績連動報酬を導入し、報酬は税務上の費用とはしていない、というケースが増えています。 ◆中小企業における現状 業績がある程度安定し、資金力にも余裕のある上場企業であれば定期同額の役員報酬も特に資金繰 り上問題ないのですが、中小企業では景気や取引先の影響を受け、業績が極端に悪化するケースがあ ります。税法上、業績悪化に伴う役員報酬引き下げは認められているものの、どの程度の悪化であれ ばよいのか、基準は明確ではないため、無理してでも定期同額給与を支払い続けなければならない、 というジレンマが生じます。中小企業においても業績連動給与の導入は必須である、と考えます。 ◆改正の方向性 現行 業績連動 指標は利益のみ 今後 自己資本利益率(ROE) や総資産利益率(ROA) も指標に 算定方式 すべての役員が一律 職務に応じた個別算定も 可能に 株式報酬 算入しにくい 算入しやすく ボーナス 期中の変更は可能 期中の変更も可能に (日本経済新聞 2015.8.7 朝刊より抜粋) 素直に国税が要望を受け入れるとは考えにくいですが、経済産業省がより現実に即した制度への改 正を主導しています。 業績連動報酬の算定方式の柔軟化のほか、現状は損金算入時期に制約があるストックオプション付 与に係る報酬費用、そして役員賞与の期中変更について改正の検討が行われています。早ければ来年 度に導入される予定、とのことなので、改正の動向をしっかり見守っていきたいと思います。 マイナンバー制度 詳報 いよいよ来月よりマイナンバーの通知が始まり、来年から本格的に運用されるマイナンバー制度。 導入目前ですが、まだまだ詳細が決まっていない部分が多いです。そのなかで2点ほど、具体的な対 応案が発表されましたのでご紹介いたします。 ◆通知カードの居所への送付 通知カードは原則住民票の住所へ送付されますが、下記のような事情がある場合には、現在の居所 へ送付することが可能となりました。 ・東日本大震災による被災者 ・ドメスティック・バイオレンス(DV)、ストーカー行為等、児童虐待等の被害者(以下「DV 等被害者」といいます。 )の方で、住民票を残して、別の場所(居所)にお住まいの方 ・長期間にわたって医療機関・施設等に入院・入所することが見込まれ、かつ、入院・入所期間 中は住所地に誰も居住していない方 ただし、平成 27 年 8 月 24 日(月)∼9 月 25 日(金)までに住民票のある市区町村で手続きをす る必要があります。詳細は http://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/08.html をご参照ください。 ◆個人番号カードの一括申請 平成 27 年 8 月 20 日付日本経済新聞において、 「職場での一括申請(及び受取) 」が可能となる旨 の報道がありました(※内閣官房のHPには 8/30 時点でまだ情報は掲載されていません)。平成 28 年 1 月以降希望 者に配布される個人番号カードについては原則市町村窓口での交付となっていましたが、窓口の混雑 などの混乱が予想されていました。まだ制度の詳細は分かっていませんが、一括申請・受取による利 便性向上を期待したいところです。 【人事・労務】 「マイナンバー制度」雇用保険関係の最新情報! ◆厚労省から続々と情報が公表 8 月に入り、厚生労働省から雇用保険関係のマイナンバー制度に関する情報が続々と公表されてい ます。 まず、8 月 3 日に「概要リーフレット」と、事業主向けの詳細資料である「マイナンバー制度の導 入に向けて(雇用保険業務)」が公表され、来年 1 月から使用するマイナンバー制度に対応した雇用 保険関係の様式案(7 月時点の改正案)も公開されました。 さらに 8 月 5 日には「雇用保険業務等における社会保障・税番号制度への対応に係るQ&A」が公 表されています。 マイナンバー制度に関する同省関係の情報発信は、国税庁などに比べると遅れ気味ではありますが、 ようやく出てきたといった感じです。 なお、個人番号については厳重な管理が必要とされているため、同省ではできるだけ電子申請によ る届出を行うよう呼びかけています。 ◆「Q&A」の内容 以下では、上記「Q&A」の内容からいくつかご紹介します(全体版は『厚生労働省 ー制度 マイナンバ 雇用保険関係』で検索してご覧ください) 。 Q7 「離職票−1」は事業主が個人番号を記載して離職者に交付するのか。 (答) 「離職票−1」の個人番号欄は離職者が記載することとしており、事業主はハローワークから 交付された「離職票−1」 (個人番号欄は空欄)を離職者に交付していただくこととなります。 Q11 従業員から個人番号の提供を拒否された場合、雇用保険手続についてどのような取扱いとなる のか。 (答)雇用保険手続の届出にあたって個人番号を記載することは、事業主においては法令で定められ た(努力)義務であることをご理解いただいた上で、従業員から個人番号の提供を求めることとな りますが、仮に提供を拒否された場合には、個人番号欄を空白の状態で雇用保険手続の届出をして いただくこととなります。その上で、再度、従業員から個人番号の提供を求めた上で、個人番号の 提供があった場合には、所定の様式により提出していただくこととしています。 平成 27 年度 最低賃金額引上げの目安と企業の対応 ◆地域別最低賃金額改定の目安 地域別最低賃金額が 10 月から引上げとなる見込みです。引上げ額の目安については、都道府県の 経済実態に応じ、次の通り提示されています。 ・A ランク⇒19 円(千葉・東京・神奈川・愛知・大阪) ・B ランク⇒18 円(茨城・栃木・埼玉・富山・長野・静岡・三重・滋賀・京都・兵庫・広島) ・C ランク⇒16 円(北海道・宮城・群馬・新潟・石川・福井・山梨・岐阜・奈良・和歌山・岡山・ 山口・香川・福岡) ・D ランク⇒16 円(青森・岩手・秋田・山形・福島・鳥取・島根・徳島・愛媛・高知・佐賀・長崎・ 熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄) ◆今後の流れ 現在、各地方最低賃金審議会で上記の目安を参考に調査審議が行われており、その答申を経て、各 都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定することとなります。 もっとも、提示された目安と異なる地域別最低賃金額が定められた例は過去ほとんどなく、目安額 通りに決定されるものと考えられます。 ◆引上げ前のチェックが必要 最低賃金額に近い額で雇用契約を結んでいる従業員が多い事業場では、引上げ後の最低賃金額を上 回る額が支払われているか、注意が必要です。 時間給を計算してみると最低賃金額を割り込んでしまっているケースが、アルバイト・パートタイ マーはもちろん、正社員の場合であっても散見されます。 時給制の場合にはわかりやすいのですが、月給制や日給制の場合は、賃金額を労働時間数で割り戻 して時間給を算出し、最低賃金額と比較してみてください。 賃金額が最低賃金額を下回る場合には刑事罰が定められており(最低賃金法 40 条、50 万円以下の 罰金)、悪質な場合には書類送検の可能性もあります。 「引上げにきちんと対応できていなかった」と いう“うっかりミス”が多い部分ですので、10 月の引上げ前に、再度、最低賃金額関連の管理につ いて見直しておきましょう。 編集後記 小4の息子の夏休みもあっという間に終わりました。今年こそは夏休みの宿題を 7 月中に終わらせ るようにうまく誘導したつもりでしたが、結局、詰めが甘かったようで、最終的に完了したのは夏休 み最終日。お尻に火がつかないと…というのは誰しも同じなのですが、やはり前倒しは仕事の基本。 将来に向けて残されたあと 2 回の夏休みでなんとか改善できればと思うのですが・・・果たして結果 は如何に? (税理士 杉山 直) 経営者の皆様といっしょに理想のみなとをめざします!! み な と 総 合 グ ル ー プ 杉山直税理士事務所 ∼会計・税務を通じて中小企業の発展に貢献∼ 杉山社会保険労務士事務所 ∼社会保険手続きをはじめ、人事・労務に関する幅広いサービスをご提供∼ みなと総合コンサルティング株式会社 ∼経営・再生コンサルティングを通じて企業の発展に貢献∼ 〒108-0075 TEL 東京都港区港南 4‐6‐4‐2608 03-5782-8115 FAX 03-5782-8116 URL:http://www.minato-grp.com/
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