文部科学省の新しいプロジェクト 「科学技術・理科大好きプラン」とは? 財団法人 科学技術教育協会発行 教育と科学 No16.2002.11 p.14 より 科学技術創造立国の実現をめざして、将来の日本を担う科学技術系人材の育成を推進しよ うと、文部科学省のプロジェクト「科学技術・理科大好プラン」の実施が始まった。科学 技術・理科教育の充実のために様々な施策を総合的に一体化して推進する溝想はどんなも のなのだろうか? 「科学技術・理科大好きプラン」が、平成 14 年度から3年間をかけて推進されることとな った。今のところ8つの施策が計画されており、その中で柱となっているのが 「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」 「サイエンス・パートナーシップ・プログラム」 「デジタル教材の開発」。 この3つに関してはすでに動きだしている。 ●全国 29 校でスタート スーパーサイエンスハイスクール 科学技術、理科・数学教育を重点的に行う学枚をスーパーサイエンスハイスクールとし て、高等学枚、中高一貫教育校の中から公募により 26 校が選定された。文部科学省として は、各機関を結びつけた図1のような構想を描いている。文部科学省がこの施策でねらっ ているのは次の6ポイントだ。 ①学習指導要領によらない教育課程の篇成実施などを行い、理科・数学に重点を置いたカ リキュラムを開発する ②生徒が大学で授業を受講したり、大学教官や研究者が学校で授業を行うなど、大学や研 究横関等との連携方策を研究する ③論理的思考力、創造性や独創性等を一層高めるための指導方法等の研究 ④科学クラブ等の活動の充実を図る ⑤トップ研究者や技術者などとの交流、先端技術との出会い、スーパーサイエンスハイス クール校の交流 スーパーサイエンスハイスクール 26 校では、上に挙げた5点をカバーする取り組みをす でにスタートしているが、カリキュラム内容や授業形態は各々の教育環境を生かした個性 豊かなものとなっている。大学との連携という課題にしても、大学の教官を紹いてのティ ームティーチング、大学での聴講、各種メディアを使った講義など、手法は多彩である。 今回本誌で紹介している東京工業大学工学部附属工業高等学枚と千葉市立千葉高等学故に しても、前者が現 1 年生を対象にして進級に合わせたカリキュラムを用意しているのに対 し、後者は校内で公募した生徒に特別カリキュラムを受講させている。また、福島県立安 積高等学校のように、英語による数学の授業を設定するなど、国際的に活躍できる科学者 の育成を視野にいれたユニークな取り組みも見られる。 ●大学と研究機関、企業が協力 サイエンス・パートナーシップ・プログラム 中学校や高等学校を対象に、大学、公的研究機関、民間企業等との連携を図り、先進的 な科学技術・理科・数学教育等の実施を目指すのが、このプログラムの目的だ。具体的な 施策としては、 ①大学、研究横関等の研究者、技術者を大学に招聘しての特別講議に対する支援 ②学校と大学、研究機関等の組織的な連携によって実施する科学技術・理科・数学に関す る学習プログラムに対する支援 ③各都道府県教育委員会、指定都市教育委員会及び中核市教育委員会や、大学、研究機関 等において実施する、教員を対象とした科学技術・理科、数学に関する研修 が挙げられており、公募によって選ばれた機関が、この 11 月から3月末まで実施する。 国際教育到達評価学会の国際数学・理科調査で、 「理科が好き」、 「理科が生活の中で大切」 「将来、科学を使う仕事をしたい」などに対しての意欲が調査 23 か国の中でも下位だった という結果が出ているが、科学技術への憧れや尊敬が希薄になってしまっているのは確か だ。 ①では、最先端科学で活躍する研究者と子ども達を交流させることで、子ども達の科学 への興味を喚起させることがねらいとなっている。 また、③のような教員研修によって、教師自身が最先端技術などへの知識をさらに深め、 理論や法則を教える際に、それらが生活上でいかに活用されているかを言及できるよう、 に、といったねらいがあるように思われる。 ●「教育の情報化」と連携させて 先進的な科学技術・理科教育用デジタル教材の開発 この施策は科学技術振興事業団が中心となって実施している。学校現場でのデジタル教 材のニーズを調査した上で、教材のプロトタイブの試作、デモ授業の実験評価を行い、す でに学習指導要領に準拠した「現場ニーズ対応型」のコンテンツ開発を進めている。 一方これと平行して、文部科学省では、「施策適応型コンテンツ」の開発も進めている。 これは現時点では教育現場のニーズとはなっていないものの、今後の教育施策上に必要で はないかと考えられるコンテンツ作りを目的とし、業者に委託する形をとつている。 これらのコンテンツの提供システムについては、科学技術振興事業団が開発中で、 「教育 の情報化」によって学校のIT環境が整う平成 17 年を目処に提供が開始される予定だ。 以上の3つの施策に加えて、″ものづくり″の重要性を次世代に継承するために産業技 術史の保管と提供を行う「産業技術史資料情報ナショナルセンター」、地域社会と学校が一 体となって科学技術・理科教育に取り組めるようにする「科学技術・理科教育総合推進事 業」、環境教育に関する総合的な情報提供体制を整える「環境教育推進グリーンプラン」、 理科教育設備の経費を補助する「理科教育等設備整備費補助」などの施策が実施されるこ とになっている。 文部科学省 ●SSH への指定 (全国評価議会の開催) ●SSH 研究開発協議会の開催 ●アドバイザーやティーチング・アシス 大学等と教育現場と タント 等の人員の配置(ボランティ の連携の推進 (サイエンス・パートナー シッププログラム) 連 携 ・協力 ・ アなどの活用) ●必要となる実験機材・消耗品等の整備 ●科学技術系クラブ活動等支援(ボラン zu●研究者・技術者の教 ティア等の活用 育現場への派遣実施 管理機関 ●成果発表会等交流活動支援など ● 教員などの研究実施 ● 新たな教材の開発等 (教育委員会、学校法人、 SSH への指定・支援 活用 用コンテンツ開発 ●融合領域等に関するデ ジタル教材の研究開発 専門的見地から指導、 助言、評価にあたる (SSH) ール 高等学校、中高一貫教育校 ●高等学校や中高一貫教育校の理科数学 「運営指導委員会」の 設置など に重点を置いたカリキュラム開発 ●大学や研究機関など関係機関との連携 活用 国立大学) ●SSH の運営に関し、 スーパーサイエンスハイスク 先進的科学技術教育 指導・助言 方策の研究 ●創造性や独創性を高めるための指導方 指導・助言・ 評価 法の研究 ●科学クラブの取り組みの充実(ロボコ 科学技術振 興事業 (JST) 団 ン、数学オリンピック等への積極的な 参加など) 日本科学未来館 ●SSH 間の交流事業への参加 など ●研究者の招聘への協力 ●科学 技術 ・理 科の 教育 連携・協力 連携・協力 連携・協力 用コンテンツの提供 ●各種交流事業への協力 研究機関等 大 ●SSH への研究者・技術者の 派遣 学 ●SSH への教官の派遣 ●SSH 生徒を対象とし ●研究機関での体験授業 た講座の開設 など 図1 スーパーサイエンスハイスクールの構想(案)<文部科学省 HP より> など
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