8 栄養素の機能と代謝 3-6 たんぱく質の代謝と機能 3-6 たんぱく質の代謝と機能 酸は肝臓では分解されず主として筋肉で代謝・利用さ れる。 •タンパク質合成に利用されなかったアミノ酸は、脱ア •タ ンパ ク 質 は 細 胞 の 乾 燥 重 量 の 約 2 / 3を占める。 • 20種類のアミノ酸が数十から数千、結合して いる(ペプチド結合)。 アラニンとバリンのペプチド結合 • 体内では、遺伝情報にしたがってアミノ酸の 配列順序の異なるタンパク質が数万種類つく られている。 • 食事たんぱく質の主要な役割は体を構成する アミノ酸の供給。エネルギー源(4kcal/ g)にもなるが重要性は低い。 • 必須アミノ酸(体内でまったく合成できない か、合成できても十分量ではない)と非必須 アミノ酸(体内で合成できる)がある(表 1-7)。どちらのアミノ酸も体タンパク質合成 には必要。 • 体内におけるタンパク質の役割:構造タンパ ク質(形態の維持)、酵素(生体内反応の触 媒)、防御タンパク質(免疫)、収縮性タン パク質(筋肉収縮)、受容体タンパク質(特 定の物質を認識し細胞内応答を誘発)、輸送 タンパク質(物質の輸送)。その他、さまざ ま な 機 能 を も っ た タ ンパ ク 質 ( 神 経 伝 達 物 質、クレアチン、ヘム、グルタチオン、ビタミ ン、一酸化窒素、核酸など)の前駆体にもな る。 • 消化・吸収:アミノ酸として門脈経由で肝臓 へ/肝臓は生体のアミノ酸の必要量に応じて 代謝経路や代謝速度を調節し、末梢組織が必 要とするアミノ酸を供給するので、循環血中 のアミノ酸濃度は門脈血中と異なるが、ほぼ 一定に維持されている(表1)/分枝鎖アミノ 29 8 栄養素の機能と代謝 3-6 たんぱく質の代謝と機能 ミノ反応によってアミノ基がはずれてα-ケト酸とな glutamate pyruvate transaminaseとも)が主に関与 り、エネルギー源になったり糖新生や脂肪酸の合成材 (図6)/ビタミンB6が補酵素として必要/両酵素と 料となる。 も広く分布。肝臓で特に活性が高い。 • アミノ酸のアミノ基を他の炭素骨格に移す反応を「ア • 絶食時に筋肉などからアラニンが放出されるときには ミノ基転移反応」/アスパラギン酸アミノ基転移酵素 ALTが作用している(グルコース・アラニン回路)。 (aspartate aminotransferase,AST; GOT, glutamate アラニンは肝臓で糖新生に利用される。 • 肝臓ではほとんどのアミノ基がグルタミン酸に集めら oxaloacetate transaminase とも)、アラニンアミノ 基転移酵素(ALT, alanine aminotransferase; GPT, れ、尿素に転換して尿中へ排泄。 30 8 栄養素の機能と代謝 3-6 たんぱく質の代謝と機能 • 糖原性アミノ酸:ピルビン酸あるいはクエン酸回路の る。 • 体タンパク質は常に合成と分解を繰り返しており(代 中間体になり、糖新生によってグルコースとなるアミ ノ酸。 謝回転)、不可避的に尿素として排泄した量を食事で • ケト原性アミノ酸:炭素骨格がアセチルCoAあるいは 補給することが必要。 • 食物のたんぱく質の栄養価はアミノ酸の構成によって アセト酢酸(ケトン体)に代謝されるアミノ酸。 • クレアチンはグリシン、アルギニン、メチオニンから 決まる。必須アミノ酸の必要量に基づくアミノ酸評点 合成/筋肉や脳でクレアチンリン酸(高エネルギーリ パターンと比較して、最も不足している必須アミノ酸 ン酸結合の貯蔵分子)として貯蔵されATP再生に利用 (第一制限アミノ酸)の割合をアミノ酸価(アミノ酸 される/筋肉のクレアチンリン酸の貯蔵量はATPの4∼ スコア)と呼ぶ。 • 肉、卵、牛乳、魚のアミノ酸価は100、大豆は含硫ア 5倍。 • クレアチンリン酸は一定の速度で分解(1日に約 ミノ酸がやや少ないがアミノ酸価は高く86、穀類はリ 1.5%)し、クレアチニンに変換されて尿中に排泄され ジンが少なくアミノ酸価は低い(精白米65、食パン る。 45)。 • クレアチニンは筋肉量にほぼ比例/成人男子では1.5∼ • 米と大豆を組み合わせると不足するアミノ酸を補い 2.0g/日、成人女子では1.0∼1.5g/日が尿中排泄され 合ってアミノ酸価が上昇(補足効果)。 31 8 栄養素の機能と代謝 3-6 たんぱく質の代謝と機能 • たんぱく質の必要量は窒素出納法(食物中の窒素量と 糞便及び尿中への窒素排泄量との差)で測定/0.74g/ kg体重/日/推奨量は成人男性で60g/日、成人女性で 50g/日。 • エネルギーが不足している場合、タンパク質はエネル ギー源として消費されるので必要量は増加。 • 激しい運動は、アミノ酸の分解を亢進するのでたんぱ く質の必要量が増大。 • 適度な運動は、たんぱく質の体タンパク質への転換効 率を上昇させる。 • たんぱく質の摂取量が、2g/kg体重/日以上になるとイ ンスリン感受性の低下や、カルシウムの尿中排泄量の 増大が見られるなど、弊害が起こる可能性があるた め、成人(18∼69歳)の目標量(上限)はエネルギー 比率で20%とされている。 32
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