第15回保全セミナー 原子力施設の安全性向上取組の最新動向 (更なる安全をめざして) 「現在の適合性審査の課題と提言」 平成27年2月4日(水) 日本保全学会 会長 北海道大学 奈良林 直 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 1 新規性基準の施行から1年半 平成25年7月8日。福島第一原子力発電所の事故の教訓や 世界の最新知見を踏まえ、原子力規制委員会が策定した 「新規制基準」が施行された。 新規制基準は次の3つから構成されている。 ①想定を上回る自然災害やテロ攻撃などに備えた「重大 事故対策」 ②活断層調査の強化や津波防護策を定めた設計基準 「耐震・耐津波性能」 ③既存設備の安全対策を強化する設計基準「自然現象・ 火災に対する考慮等」 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 2 適合審査は大幅遅れ ■当初、約半年間で審査を行うとの方針が示されたが、PWRの 川内1,2号機の適合審査合格まで2倍の約1年、さらに報告書の とりまとめに他のPWRの審査を止めて約半年かかっている。 ■審査報告書は約4万ページに上り、1つの修正が多数ページに 影響することから、書類審査も膨大なマンパワーを要している。 ■次いで高浜3,4号がようやく適合との見通しが得られたが、また もや、膨大な書類の山との格闘である。 ■次には工認図書の作成と審査、保安規定、使用前検査となる のだが、当初は同時進行のハズであった。 ■多くの原子力発電所は約3~4年停止しており、この間の火力 発電所の燃料代に我が国は年間4兆円近くの国富の流出。 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 3 深層防護とアクシデント緩和(AM)対策 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 4 検査書類中心の安全規制の弊害 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 5 従来の基準と新基準との比較 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 6 深層防護とは多様な鉄壁の守りと前段否定 人と環境を守る 起因事象 第4層 工学的 安全施設 (設計範囲) 第5層 過酷事故対応 防災 可搬ポンプ 人的アクション 緊急避難 復興 余裕ある設計・保全 地元との連携 水密化 内 的 事 象 自 然 災 害 「現在の適合性審査の課題と提言」 非 常 用 電 源 E C C S 注 水 ・ 電 源 北海道大学教授 奈良林 直 格 納 容 器 冷 却 緊 急 避 難 除 染 ・ 復 興 津波に対する深層防護の強化 高台で津波を避ける 防潮・耐水・避水 津波検知 防潮壁・水密扉 防潮堤で 津波を防ぐ 原子炉建屋の 防潮壁・扉で 津波に耐える 機器室の水密扉 で津波を侵入さ せない 8 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 泊原子力発電所の安全対策強化 ①蒸気発生器給水ポンプ・信号計測盤:31.0 ②炉心直接注水手段の整備(移動式) ・タービン動補助給水ポンプ:24.8m ・分電盤・中央制御室:20.0m 15mに揃えた設計 から高さ方向の 位置的分散へ 31.0m 24.8m 17m 15m 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 9 原子炉建屋の水密化(城塞) 海抜15m 防潮壁と防潮扉 原子炉建屋を要塞にして、 ECCSの注水系を強化 1号機の敷地高さ5m、7号機は12m 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 10 10 津波対策事例(中国電力の防波壁) ■防波壁の建設 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 11 中部電力浜岡原子力発電所の津波対策 浜岡発電所の防波壁(海抜18 m) 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 津波対策(50mの高台:中国電力) ■高台(海抜40m)への緊急用発電機の追加設置 (平成23年12月)中国電力HPより 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 13 中国電力の海水ポンプの津波対策 ■海水ポンプモータのシュノーケリング ■ドアの水密化 3号機防水蓋・給排気塔の設況置工事の状況 (平成23年11月) 中国電力HPより 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 14 浜岡原子力発電所の海水取水ポンプ 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 15 浜岡原子力発電所の建屋内浸水防止 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 適合審査が遅れた最大の理由 ■適合審査が遅れた最大の理由は、敷地内断層の調査と震源を 特定しない地震動の17個ある波形の繰り出し追加評価である。 ■「後出しじゃんけん」と酷評されているが、新規性基準のルールが 明確でなく、まるで、気分次第で、「次はこれ」という具合に際限なく 続いた。 ■この間の国富の流出のツケは、現在、電力会社の赤字ダムに蓄積。 ■見かけ上国民は原発停止していても大丈夫と錯覚 いずれ、電気代と立地市町村の雇用の低迷として国民に回って いくか、赤字ダムの決壊になる。 ■欧米は原子力発電所の運転を続け、ストレステストを継続して 完遂している。国富の流出はない。 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 17 米国NRCの規制のスタンス (1)アメリカNRCは15年前の北風から太陽政策に変身 SALP: 違反があれば、すぐに罰金を徴収 ROP: 原子力発電所で良い運転成績のプラントは、 Basic Line (年間1800時間)検査のみ。 電力をまず信頼して、情報交換を促進する。 (2)NRCは、事業者の自主性を引き出す規制の姿勢 (3)アメリカの電力会社は、NRCを信頼し、人事、経営情報 以外の発電所に関する全ての情報をNRCに提供。 (4)電力は経営上、原子力の安全運転が第一を基本、 科学的な合理性を追求している。 (5)電力は、CBM(状態監視保全)及びOLM(運転中保全) の採用による科学的・合理的な保全方式・周期を選択。 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 結論:海外の規制制度と日本(1/2) 1.世界の規制当局と電力が、緊張感を持った協調体制を確立 特にアメリカの規制は2000年のROP採用で、北風から太陽政策に 大転換。 Dr. Nils Diaz NRC元委員長: 「規制当局(NRC)は、国民の健康を放射線障害から守ることが責務。 その為NRCは電力の安全運転を監督。」 Dr.Joe Colvin NEI元会長 「電力会社は、電力の安定供給及び利益確保が社会的責務であり、 その為原子力の安全運転が重要。NRCも電力も安全運転は最重要 であり、従来のように喧嘩する必要はなく協調すべき。」 2.OLM(運転中保全)とCBM(状態監視保全)の徹底 燃料交換時の保全 20%、運転中の保全 80% 日本は逆の80%対20%。 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 海外の規制制度と日本(2/2) 3.事業者の検査の適切性を規制者が観察し独自に確認する姿勢 4.より一層の観察重視型の検査やフリーアクセス(抜き打ち)の活用 5.検査に関し、専門家や専門機関の一層の活用 規制局 自ら検査 米:NRC、フィンランド:STUK、英:HSE 等 専門組織に委託 独:TUEV(車検も)、仏:IRSN、韓:KINS等 検査制度と共に、最後は検査員の質、能力が重要 定期的な教育が重要(チャタヌーガで各地方局の意見交換) 6.本質をついた保安活動 形式的な書類上のQMS 本質をわきまえたQMS 規制・検査制度も、技術の進歩と世界の動向を参考に 科学的、合理的に改善すべき。 前年の検査につき、毎年国民の意見を聴き改善。(NRC) 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 リスク低減効果の定量化(炉心損傷) ケース1:基本対策実施時の評価結果例(炉心損傷) 起因事象 圧力制御 RCIC 電源車 追設DG ベースケースの主な炉心損傷 シーケンス 原子炉減圧 給水車 PCVベント 1.0E+00 ※2 9.6E-01 基本対策実施(ケース1)による 主な成功パス 9.1E-01 9.9E-01 4.0E-03 4.0E-02 1.0E-02 1.0E+00 ※2 9.2E-01 9.3E-01 9.3E-01 1 9.0E-02 成功 8.0E-02 7.0E-02 7.0E-02 1 4.0E-03 失敗 0 ε:微小 ※1・・・条件付炉心損傷確率:起因事象(外部電源喪失と非常用海水系機能喪失による全交流電源喪失)の発生確率を 1とした、条件付の確率。 ※2・・・(1-失敗確率): (1-0.004)=0.996であり、表示桁の関係で1.0となっている 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 条件付 炉心損傷 確率※1 (/Event) 健全 損傷 3.5E-03 損傷 3.6E-02 損傷 9.1E-03 健全 損傷 6.2E-03 損傷 5.8E-03 損傷 6.3E-03 損傷 4.0E-03 損傷 ε 合計 7.1E-02 2 リスク低減効果の定量化(格納容器損傷確率) 起因事象 圧力制御 電源車 追設DG RCIC 原子炉減圧 給水車 PCV注水 PCVベント ※3 ケース1:基本対策実施時の評価結果例(格納容器損傷) ※1 1.0E+00 9.6E-01 ベースケースの主な炉心損傷 シーケンス 4.0E-03 9.9E-01 9.3E-01 9.2E-01 基本対策実施(ケース1)による 主な成功パス 9.1E-01 7.0E-02 4.0E-02 8.0E-02 ※1 1.0E+00 成功 8.0E-01 格納容器健全 2.0E-01 9.3E-04 1.2E-03 ※2 1 4.0E-03 失敗 0 6.3E-03 4.0E-03 ε:微小 ※1・・・(1-失敗確率): 表示桁の関係で1.0となっている ※2・・・計算簡略化のため、PCV破損を仮定 ※3・・・ PCVベントの失敗確率は炉心損傷前後とも含む 「現在の適合性審査の課題と提言」 9.1E-03 6.2E-03 2.0E-01 7.0E-02 2.3E-03 8.0E-02 7.0E-02 9.0E-02 格納容器健全 格納容器健全 8.0E-01 1 3.4E-03 9.2E-01 9.3E-01 9.3E-01 格納容器健全 2.9E-03 ※2 1.0E-02 条件付 格納容器損傷 確率(/Event) ε 条件付格納容器破損合計 北海道大学教授 奈良林 直 3.6E-02 2 リスク低減効果の定量化(評価結果) ■ベースケース(対策前)のリスク評価を1として、各ケースのリスクを算出 相対リスク 1.0 0.8 0.6 ケース名 内容(考慮する対策) ベースケース 下記対策実施前 ケース1 基本対策 ケース2 基本対策+恒設DG ケース3 基本対策+恒設DG+フィルタベント 条件付炉心損傷確率(相対値) 0.4 条件付格納容器破損確率(相対値) 0.2 0.0 ベースケース 「現在の適合性審査の課題と提言」 0.07 0.04 ケース 1 0.06 0.02 ケース 2 北海道大学教授 奈良林 直 0.06 0.02 ケース 3 PWRの格納容器(CV)破損防止対策 ① CV再循環ユニットを使用したCV気相部冷却(既設海水ポンプ使用) ② CV再循環ユニットを使用したCV気相部冷却(可搬式海水ポンプ等使用) ③ CVスプレイ再循環運転によるCV気相部冷却(可搬式海水ポンプ等使用) 格納容器スプレイ ③ ② 自然対流 蓄圧タンク 可搬式 海水ポンプ 蒸気発生器 制御棒 再循環 ユニット ① 補機冷却水 系統 海水ポンプ 原子炉補機冷却水ポンプ 自然対流 大気への放射 性物質なし 海水 格納容器スプレイポンプ 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 24 BWRの格納容器の破損防止対策 ■過圧・過温破損防止:多種・多様な設備により、損傷炉心を 冷却し、格納容器内を冷却・崩壊熱を除去する ①電源喪失時も給水車の接続と格納容器ベントで安定的冷却 ②最終的には、電源および補機冷却系を確立し、冷温停止 原子炉建屋 給水車 可搬式バッテリ,窒素ボンベ等 排気筒 格納容器 消火系 D/Wベント 原子炉 圧力容器 SRV 復水補給水系 DWC 給電 電源車 注水 W/Wベント フィルタベント 圧力 抑制室 Hx 耐圧強化ベント (水フィルタ) 給電 S/P ペデスタル注水 車載代替UHSS (可搬式代替RCWユニット) 空冷電源 RHR 大容量電源車 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 25 浜岡原子力発電所の電源対策 泊発電所の耐津対策事例 ■開閉所の高台設置やガスタービン電源車の配備(北電) 標高85m ■水密扉の設置例 「現在の適合性審査の課題と提言」 ■水素対策 北海道大学教授 奈良林 直 26 新安全基準骨子案の火災防護 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 ケーブル火災対策(米国) 4.基本対策の効果:リスク低減効果の定量化(6/7) ~火災防護上の分離要求に対応 した、ケーブルトレイのラッピング 施工事例~ ■3M Interam E-54 は米国の原 子力発電所でERFBS(electric raceway fire barrier systems)と して使用されるケーブル火災防護 資材であり、アルミもしくはステン レス薄板材で含水ポリマーをサン ドイッチした構造。 (厚さ約10mm) ■分離要求に対して離隔距離を確 保出来ないケーブル(ケーブルト レイ)に対し、Interam E-54をラッ ピングすることで、対応。 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 28 ケーブル火災対策(米国) 4.基本対策の効果:リスク低減効果の定量化(6/7) 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 29 特定重大事故対処施設 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 航空機テロ対策:障害物の設置 1.背景(国内) 新規制基準において「故意の大型航空機の衝突その他のテロリズム」により、格納容器が破損し 多量の放射性物質が放出されるような事象の抑制が要求されている。 上記要求に対応する特定安全施設の設置が検討されているが、対策の有効性を示すため、航空 機衝突の評価が必要となっている。 航空機衝突の評価に際しては、対象とする航空機の選定、地形/飛行特性を踏まえた事象の想 定、事故シナリオと対応する防護すべき設備の選定など多岐にわたる評価条件の選定が必要とな る。 ~航空法に基づく制限表面~ 空港周辺の建設物制限範囲図(名古屋空港) 原子力発電所の特定安全施設検討、航空機衝突でも、航空機の特性などを踏まえたサイト毎の評価条件選定が必要 「現在の適合性審査の課題と提言」 2/7 北海道大学教授 奈良林 直 内部溢水と配管の耐震性 <規制要求> 地震に起因した内部溢水の対策を検討す る場合、基準地震動Ssで耐震性が確保さ れない設備は、破断による漏水の想定を 要求 以下のいずれかの対応が必要 • B,Cクラス配管の全数破断による漏水想定 (大量漏水の想定が必要) • B,Cクラス配管の基準地震動Ssに対する耐 震性評価(膨大な物量の耐震評価が必要) 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 評価対象となる耐震B,Cクラス設備 耐震性評価対象選定フローに従い,以下の①~③の耐震性を評価 ケーブル トレイ ①溢水防護区画内 の耐震B,Cクラス 設備 ②大容量の水源 を保有する耐 震B,Cクラス設 備 止水板 溢水防護区画 防護対象設備 水密扉 空調ダクト 止水バウンダリ 《評価対象となる耐震B,Cクラス設備のイメージ図》 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 ③溢水時に止水 バウンダリを 超えて浸水す る耐震B,Cクラ ス設備 実質的な安全性向上に向けて 従来の設計手法で設計された配管は、破断に対 する裕度が大きいことが知られている。 配管終局強度試験(JNESにて実施)の概要 <試験で得られた知見> • 従来設計は現実の破損に対し て8.5倍以上の余裕がある。 • 配管の破損モードは低サイクル 疲労 試験体の写真 (参考資料)原子力発電施設耐震信頼性実証試験の概要;(独)原子力安全基盤機構 既往の知見を活用した技術的妥当性のある合理的な耐震評価により、適切な漏 水の想定、合理的かつスピード感のある溢水対策を実施する。 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 竜巻飛来物速度の評価方法 各ガイドで例示されている飛来物速度の評価方法 実施機関 仮定する風速場 飛来物の運動方程式 U.S. NRC (Reg. Guide 1.76, 2007) 移動ランキン渦 竜巻影響評価ガ イド(規制委員会) 非定常乱流渦 (LES解析結果) ・外力として、平均流 体抗力と重力のみを 考慮 ・回転がない3自由度 並進運動 いずれのガイドでも,竜巻中 の高さ40mに初期設置した 物体が地上に落下するまで の空中での最大水平速度を 「飛来物速度」と定義 NRA 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 飛来物放出 位置・数 高さ40mの1 点から放出 高さ40mの多 数点から放出 35 竜巻飛来物速度の比較と対策 関西電力 高浜発電所の海水ポンプ の竜巻飛来物対策実施機関 仮定する風速場 評価方法 (鋼鉄のミサイルシールド建屋) U.S. NRC: Reg. 移動ランキン渦 Guide 1.76, 2007 日・規制委員会: 竜巻評価ガイド 非定常乱流渦 (LES解析結果) ジェネコン・電中研 移動ランキン渦 評価ガイドに例示さ れている竜巻条件 最大接線風速Vm 84[m/s] 評価ガイド 評価方法 コンクリ板 に例示さ れている U.S. NRCガイド 8 重量物に 30 日・評価ガイド 対する 41 評価結果 ジェネコン・電中研 トラック 14 34 43 飛来物の運動方程式 飛来物放出 位置・数 高さ40mの1 点から放出 ・外力として、平均流 体抗力と重力のみを 考慮 ・回転がない3自由度 高さ40mの多 数点から放出 並進運動 Vtr 16[m/s] Rm 30[m] 鉄パイプ 鉄骨部材 コンテナ 30 49 51 33 57 57 34 60 59 単位:[m/s] 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 36 フィルターベントの据え付け(中部電力、東京電力) 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 37 フィルターベント設計上の 操作性向上 ■ ベント操作の基本的な考え方 - ラプチャーディスク単独でのCVバウンダリ機能の担保は困難で、CV隔離弁の設置が 必要。すなわちラプチャーディスクを設置した場合にも弁開操作は必要となり、操作の 完全受動化とならない。 - 周辺住民の避難状況や気象条件を考慮した上で、弁操作によって人的判断によって 開始。人的判断を介在せず受動動作のラプチャーディスクは設置しない。 ■ ベント操作の確実性、操作性向上策(NISA30-21への対応) - ベント弁によるベント操作の確実性、操作性に対する向上策を考慮。 格納容器 システムの遮へいの考慮 線源強度及び近接時期・頻度によ り恒設/仮設遮へいを選択 遮へいを考慮した弁現場操作場所 の確保 遮へい 原則既設壁で遮へいされた場所を 考慮 フィルタ M ・制御室(低線量エリア)からの遠 隔操作 ・信頼性ある代替電源からの給電 「現在の適合性審査の課題と提言」 耐震性、耐津波性の確保 北海道大学教授 奈良林 直 エクステンションハンドル OR ボンベ駆動手段 電源喪失時の弁現場操作手段 の確保 操作場所を考慮した操作手段 の選択 今後の竜巻評価の課題 高さ40mから放出する科学的な(物理的な)理由が不明。 設計飛来物速度の評価において,風速場(乱流orランキン渦)の 影響は顕著ではないが,物体の初期設定位置が結果に大きな 影響を与えている。 Dunlap and Wiedner (1971)によると, “ 44.7m/sはパイプ飛来 に関する不確実性を超えた速度”, “水平速度22.4m/sは自動車 の飛来速度の保守的な値”と述べており,これらの実態に即した 評価手法の改良が今後必要。 従来のNRC法では,地上付近の流れを模擬できないので,浮き 上がりの模擬には不適である。 電中研にて竜巻評価コードを開発されたので、これを今後使うと よいと思われる。 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 39 活断層の見分け方 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 過酷事故時の格納容器健全性確保 上部区画 ■ PWRにおける格納容器構造健全性 PWRの格納容器ではシビアアクシデント環境下にお いて十分な限界耐力及び漏えい耐力があるとの知見 が得られている。 今後、機械学会で策定中のSA時格納容器構造健全 性評価ガイドラインにおいて、格納容器の耐力評価 手法を確立し、実機適用につなげる。 ■ 輻射熱による過温破損の可能性 PWRでは、溶融炉心が存在する原子炉容器及びその 下部のICISコンジット室(原子炉キャビティ)は、1次遮 蔽壁又は2次遮蔽壁により囲まれているため、輻射 熱が格納容器貫通部へ直接的に伝熱する経路は存 在しない(右図)。 原子炉容器の上方向には遮蔽壁が存在しないが、格 納容器貫通部は存在しない。 ■ PWRにおけるAM策 PWRでは、AM策「格納容器内注水」を整備している。 本AM策により格納容器内へ注水し格納容器内を飽 和状態とすることで、過温破損を防止することが可能 「現在の適合性審査の課題と提言」 外周部 北海道大学教授 奈良林 直 原子炉キャビティ 機器ハッチ 下部区画 玄海発電所に確認に行きました 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 42 格納容器(CV)の冷却の多様性 再循環冷却ユニット 「現在の適合性審査の課題と提言」 格納容器スプレイヘッダー 北海道大学教授 奈良林 直 43 格納容器(CV)内水素低減装置 静的触媒式水素再結合装置 「現在の適合性審査の課題と提言」 イグナイター(ヒータ加熱式) 北海道大学教授 奈良林 直 44 原子炉補助建屋水密扉(11.3m) 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 移動式大容量ポンプ車 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 46 常設電動注入ポンプ 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 47 可搬型ディーゼルポンプ 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 48 格納容器からのFP低減策:放水砲 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 49 原子力発電所の建設は続く ■欧州・中国・ベトナム・インドネシア・アラブ諸国を中心に100基以上が建設 欧州・ロシア ロシア 2020年までに21 基(計2,100万kW) 中国 2020年までに32 基(計3,200万kW) 北米 イギリス 2030年までに 米国 10基~20基 5基建設中 他にESBWR? 日本 2030年まで に脱原発? トルコ 2020年までに5基 (計540万kW) アラブ首長国連邦 2020年までに14基 ベトナム アジア 2020年までに2~4基 (計200~400万kW) サウジアラビア 2030年までに16基 インド 2020年までに16基 (計1,600万kW) 「現在の適合性審査の課題と提言」 インドネシア マレーシア 2020年までに2基 2025年までに4基 (計400万kW) 北海道大学教授 奈良林 直 50 福島第一発電所の事故の教訓(米ボーグル発電所) 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 51 米Vogtle 発電所の幹部と安全意識共有 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 52 アメリカの出力増強 573万kw 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 NRCはこれらの審査を4000人体制で実施している。規制の重点化は当然! 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 今後の適業審査の改善に向けた提言 国際標準として原子炉安全および猶予期間の考え方について次の5 項目について提言を行った。 ①新規制安全基準骨子(案)では、要求事項決定にあたっての前提条 件,検討経緯については示されていない。これらを明らかにすべき。 ②これまでの技術基準に対する考え方の基本である性能を規定する という基本原則から外れているのではないか。 ③最新の科学的・技術的知見を基本に,国際的な基準・動向との整合 性を図った規制体系とするという原子力規制委員会設置時の国会意 見に合致しないのではないか ④最高水準の安全を求めるとは、格納容器の損傷の防止ではなく、炉 心損傷すなわちSA発生防止であると考える。従って、新安全基準に 移行してもSA発生防止を出発点として策定すべきである。 ⑤実施した安全対策も含め,SA発生のリスクを考慮して重要度分類を 設定すべきではないか。 これらの提言は、現在でも生きていると考える。 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 55 40年問題:2030年代半ばで原発ゼロ 原発40年問題を適用した場合 東海第二(B ) 2013年 5年後 2035年 敦賀1号(B ) 敦賀2号(P ) 泊1号(P ) 泊2号(P ) 2049年12月22日 泊3号(P ) 女川1号(B ) 女川2号(B ) 女川3号(B ) 東通1号(B ) 福島第一1号(B ) 福島第一2号(B ) 福島第一3号(B ) 福島第一4号(B ) 福島第一5号(B ) 福島第一6号(B ) 福島第二1号(B ) 福島第二2号(B ) 福島第二3号(B ) 福島第二4号(B ) 柏崎刈羽1号(B ) 柏崎刈羽2号(B ) 柏崎刈羽3号(B ) 柏崎刈羽4号(B ) 柏崎刈羽5号(B ) 柏崎刈羽6号(A B ) 柏崎刈羽7号(A B ) 浜岡3号(B ) 浜岡4号(B ) 浜岡5号(A B ) 志賀1号(B ) 志賀2号(A B ) 美浜1号(P ) 美浜2号(P ) 美浜3号(P ) 高浜1号(P ) 高浜2号(P ) 高浜3号(P ) 高浜4号(P ) 大飯1号(P ) 大飯2号(P ) 大飯3号(P ) 大飯4号(P ) 島根1号(B ) 島根2号(B ) 伊方1号(P ) 伊方2号(P ) 伊方3号(P ) 「現在の適合性審査の課題と提言」 玄海1号(P ) 北海道大学教授 奈良林 直 再稼働後の保全分野の課題 各国の設備利用率 2000年~2009年迄の世界主要国の設備利用率 100% 90% 設備利用率 80% 70% 60% 日本 フランス スウェーデン 韓国 50% アメリカ ドイツ スペイン フィンランド 40% 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 年 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 2007 2008 2009 構造強度偏重の安全規制 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 58 わが国の職業被曝線量は世界最高 世界の原子力発電所一基当たり線量の推移(発電炉)(1980-2008) 平均線量(人・Sv/基) 10 分解点検主義が、今や 世界最大の職業被曝の 原因 米国 フ ラ ンス 日本 韓国 ドイツ ス ウェー デ ン 5 0 '80 '81 '82 '83 '84 '85 '86 '87 '88 '89 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 92 年 (暦年) 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 わが国の年次停止期間は世界最長 運転中保全(オンラインメンテナンス) への移行の必要性 ビッグデータによる予兆監視保全 133 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 米国:NRCの基本的な規制に対する姿勢 NRCの基本姿勢を示す2つのキーワード "We trust licensees, but verify them" NRCは事業者の自主性を重んじた規制を行っている 例)NRCの保守に対する規制=メンテナンスルール ・NRCは系統・機器が安全であることを示すパラメー タが基準値以内であること(=保守の結果)を要求 ・保守方法については事業者の自主に任せている "What is the Risk Significant" ・NRCはが事業者から信頼を受け続けるには ⇒NRC自身が適切にリスクを把握していることが必須 ⇒NRCはリスクのより大きい事象に焦点 ・可能なものは炉心損傷頻度(CDF)を活用 ⇒原子炉の内包する放射能→ほとんど炉心に存在 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 提 言 (1)新規制基準適合のための安全対策工事,可搬機器等の購入 は,事業者の責任で実施し、法令上の措置により安全対策を 推進する。AM機器の審査の合理化とPerformance検査が重要。 (2)内部溢水・静的機器の単一故障・竜巻・火山の噴火と火砕流・ 航空機落下の際の火災鎮火など、次から次へと後出しじゃんけ んの規制が続いたため、再稼働は逃げ水のごとく遠ざかってし まった。後続機への審査は、先行機の審査経験を活かし、 重要度分類に基づく、規制の重点化を図ることが必要。 規制の希薄化ではなく、重点化が必要。 審査書類の厚さが安全性向上に必ずしも比例する訳ではない。 (3)新規制基準の指針を明示し、科学的・技術的見地から,新規 制基準の求める要件を満足している否かを集中して審査すべき。 (4)事業者自ら考え提案した安全対策が新規制基準の求めている 意図を満足すべく、事業者の創意工夫とそれを向上させる規制 の取り組みが必要である。例えば台風に対するAM対策など。 「現在の適合性審査の課題と提言」 北海道大学教授 奈良林 直 62
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