アートワークショップ「つくる やく もちいる」

事 業 名 :アートワークショップ「つくる やく もちいる」
鳥取大学地域学部芸術文化センタ―教授
石 谷 孝 二
平成26年度大学開放推進事業内容
1.事業の概要(背景と目的)
総合芸術である「茶の文化」をキーワードに①器を粘土で造る②乾いた作品に釉薬掛け
を施す。③焼成中の陶芸窯に入れ、釉薬が解けたところで引き出す。④手づくりの器を使
用して茶を点て、互いにふるまい、自分も飲むなどの体験型の事業を実施した。これらを
通して制作のよろこびや芸術文化を通じたコミュニケーションを体験し、生活の質の向上
及び地域の活性化に寄与することを目指した。
2.実施内容
15名の募集定員であったが途中参加も含め18名の参加になった。
陶芸家松元洋一氏の指導のもと抹茶用の茶碗と蓋置を信楽粘土で制作し、簡易陶芸用炭
窯を用いて焼成した。松元氏は銀座・松屋や京都・建仁寺等をはじめ全国で個展を開催し
ている陶芸家である。焼き上がった茶碗を用いて自分も飲み、客にも振る舞うという体験
型のイベントは前年度に続き2回目である。松本氏には市販の陶芸用窯を引き出しが出来
るよう改良してもらい実施した。
参加者の多くが初めての茶碗づくりであったが、プロの陶芸家の適切なアドバイスのお
かげで一人1個の茶碗と1個の蓋置が成形された。引き出し黒という技法は焼成中の窯の
中から火ばさみで作品を取り出すもので割れるリスクはあるが変化に富んだ魅力的でオリ
ジナルな作品が出来上がる。
乾燥後、日にちを設定し一日で釉薬掛け、焼成を行なった。
学内敷地の使用許可を事前に取って実施した。奈良の工房から持参して頂いた自ら調合
した釉薬をベースに用いたおかげで完成作は完成度の高い釉調に仕上がった。
参加者は炎で焼成する本格的な焼き物の持つ魅力を再確認する講座となった。当日時間
切れで焼成できなかったものは後日、松元氏が持ち帰って焼成し送り届けてくれた。
出来上がった茶碗を使い芸術文化センター長室においてミニ茶会を行った。それぞれが
自作の茶碗を使い抹茶を点てあって飲んだ。互いの作品を鑑賞し合う機会にもなった。
3.結果(成果)
粘土を使って成型することの面白さや、焼成の現場に立ち会い参加することの楽しさを
参加者は感じとることができた。実践的体験の中から用の美の大切さや、作る難しさも味
わうことができた。これらの経験を通して一椀の持つ奥深さを感じ取ってもらうことがで
きたと思う。特に高台のバランスによって大きく印象が変わるなどの体験は貴重な機会で
あった。自らつくった器で抹茶を点て、お互いににふるまうことでコミュニケーションを
含めた体験ができ参加者からは好評であった。
5.結果を踏まえて(今後の課題、まとめ等)
今回の試みは前回のワークショップの反省をふまえコンパクトにして実施した。そのた
めそれぞれの場面で深く楽しむ事ができる広がりのある実践型の企画になった。
特に焼成は予想以上の時間がかかるためスケジュールに余裕を持たせなければならない
との反省のうえ、一人1個の茶碗と1個の蓋置を作ってもらった。時間的にはちょうど適
当な課題だと感じた。簡易窯のため、かなり損傷が進んでいるので次回は大幅な外枠の修
理もしくは新しいものに変えなければならないだろう。