新中期経営計画説明会要旨

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サイバネットシステム
田中
邦明
(タナカ
クニアキ)
サイバネットシステム株式会社 CEO
1D CAE、3D CAE とテスト・計測の連携でサイバネット独自の価値を提供
◆First Contact Company を目指す
2014 年 12 月期の連結業績は、営業利益ベースで増益となったが、計画に対しては未達となった。売上
高については、主力の構造解析系ソフトウェア「ANSYS(アンシス)」が堅調な成長を続けている。また、
開発子会社においても大きな案件を獲得することができたが、販売子会社については、韓国が苦戦し、中
国が赤字となるなど、課題が残った。
経常利益については、計画を 1 億 25 百万円下回った。商品原価率が 40%弱であり、売上高が 6 億 3 百
万円の未達となったことが大きく影響している。また、当期の期初計画の公表後に苦戦している韓国の販
売子会社を連結対象としたことも、減益の要因となった。さらに、当社が総代理店権を有する商品に対し
て、一部、前渡金を支払っていたが、販売が計画通りに進まず、期中に減損処理を行った。
当期は、3 カ年の中期経営計画の最終年度であった。数値目標としては、経常利益率 8%を掲げたが、実
績は 6.3%となっている。実額では約 2 億 60 百万円の未達となったが、売上高の未達が主な要因であり、
2015 年 12 月期からスタートする新中期経営計画においては、売上高の拡大が大きな課題となる。
当社は、CAE(Computer Aided Engineering:コンピュータ上での仮想実験・シミュレーション)を中心
とした IT で日本のエンジニアを支援しており、
「つくる情熱を、支える情熱。
」をコーポレートメッセージ
に掲げ、顧客にとっての「First Contact Company」を目指している。
新中期経営計画については、期間を 6 カ年(前期 2015 年~2017 年、後期 2018 年~2020 年)とする。基
本戦略としては、
「当社独自の価値の提供」を掲げた。当期までの中期経営計画でも同様の戦略を掲げたが、
内容は拡大している。これまでは 3D CAE(3 次元形状を元に解析を行う手法)における MDS(マルチドメ
インソリューション:電気・熱など異なる分野をまたがって解析する手法)を推進してきたが、この 3 年
で 1D CAE(対象とする製品やシステムなどの機能を数学モデル(数式)で表現し、評価解析する手法)の
需要が増加しているため、今後 6 年をかけて、1D CAE と 3D CAE を連携させた MDS に取り組んでいく。ま
た、ものづくりの工期短縮、経費節減が大きな課題となる中、テスト・計測ソリューションに参入し、拡
大 MDS にも注力する。現在、この分野の当期の売上高は 127 億円となっているが、2020 年 12 月期には 259
億円を達成したいと考えている。
2 つめの戦略は、自動車関連分野への注力である。当期の売上高は 15 億円(国内売上高の 12%)となり、
前期に対して 19%の成長を実現したが、2017 年 12 月期には約 35 億円、2020 年 12 月期には約 50 億円(同
25%)まで拡大させていく。
3 つめの戦略は、パートナーとの連携の強化である。グローバル販売については、マーケットポテンシ
ャルの高い中国、CAE のリーディングカントリーである米国だけでなく、2015 年 1 月末で閉鎖した韓国に
対しても引き続きパートナー戦略で販売拡大を図る。国内販売については、九州や東北など当社単独では
十分リーチできていない地域は、地場の商社や大手の商社などと連携を取っていく。さらに、カナダ、ア
メリカ、ベルギーにある開発子会社製品の OEM 提供を推進する。前期はカナダの子会社 Maplespft 社(メ
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イプルソフト)で 5 億円強、当期にはアメリカ子会社 Sigmetrix 社(シグメトリックス)で 3 億円のカスタ
マイズ化した大型商談があったため、これをさらに加速させていきたい。
◆テスト・計測ビジネスに参入
目標とする経営指標としては、2017 年 12 月期の連結営業利益率 8%超、2020 年 12 月期の連結売上高 300
億円超、営業利益 30 億円超を掲げた。当期までの中期経営計画は、連結経常利益率を経営指標としていた
が、本業での利益拡大に注力すべく、今回から連結営業利益の目標を設定した。
当社は現在、グローバルで 6 つのソリューション(CAE、ビッグデータ、可視化、テスト・計測、IT、そ
の他)を展開している。可視化については、
、2020 年 12 月期には全体に占める比率が大きく低下する見込
みだが、これは当期に大型案件を獲得したためであり、この部分を除くと、コンスタントに 10%程度の成
長を見込んでいる。主力の CAE については、新たなものづくりの概念である MBD(モデルベース開発)が
大きく伸びると見ており、カナダの開発子会社の製品である「MapleSim(メイプルシム)」とコンサルティ
ングをグローバルに展開していく。
グローバル戦略は、北米においては、MBD のコンサルティングを中心に拡大を図る。
アジアにおいては、台湾と中国の経営管理機能を一元化し、ノウハウ、人材などを共有していく。さら
に、M&A によってテスト・計測コンサルティングビジネスに参入し、CAE とのシナジーを図っていくことを
考えている。国内においては、中心となるのは CAE である。
国内戦略としては、商談の大型化、コーポレート契約への拡大を図る。また、テスト・計測ビジネスへ
の参入により、1D CAE ビジネスを加速させていく。
光学設計は横ばいで推移すると見ているが、一方で EDA(Electronic Design Automation)が大きく伸び、2020
年 12 月期には光学設計とほぼ同程度の構成比となる見込みである。EDA については、10 年以上、米国の開
発ベンダーである Cadence 社(ケイデンス)の代理店となっていたが、当期に取扱商品を、米国の開発ベン
ダーである Mentor Graphics 社(メンター・グラフィックス)製品に変更した。EDA は IC 設計と PCB 設計に
分類されるが、当社は PCB 設計に強く、ケイデンスは IC 設計に強い。一方、メンターは PCB 設計に強く、
グローバルで約 50%程度のシェアを有しているが、日本では伸び悩んでいた。そこで、日本で PCB 設計の
経験と販売能力を持つ当社と代理店契約を締結する運びとなった。このため、当期は代理店移行期であり、
売上高が若干減少したが、中期的には PCB ビジネスを強化するとともに、IC 周辺、ワイヤーハーネスビジ
ネスにも参入していくため、増加を見込んでいる。
◆ビッグデータの見える化に取り組む
CAE は、Computer Aided Engineering の略称であり、コンピュータ上で仮想的に現象を再現して試みる
こと(仮想実験・シミュレーション)である。現在は 3D CAE が中心となっており、3 次元的情報(形状)
を含む細部を再現する詳細なモデルで、強度や対象物の挙動など、具体的な性能を検討することができる
ため、詳細設計に向いている。一方、1D CAE は、温度や強度、機能など対象の動作原理を抽象化したモデ
ルであり、構想設計向きである。
当社では、1D と 3D の連携・統合により、独自の価値を提供していきたいと考えている。モノの形状を
含む 3D の詳細な情報をもとに1D CAE で必要とされる機能的な情報を抽出するためにはノウハウが必要と
なるが、当社は CAE ビジネスにおいて 30 年の経験がある。国内では、すでに自動車メーカーに対してコン
サルティングサービスを提供しているが、今後はグローバルに展開すべく、業務提携や M&A などの施策を
推進していく。
2009 年~2010 年にかけて、ビジネスモデルの変更に伴い、約 45 億円で 3 社の M&A を実施したが、今回
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も、テスト・計測分野への参入を含め、同規模の額を想定している。なお、テスト・計測分野では、計測
器を作るのではなく、計測器メーカーと連携し、コンサルティングを行う予定である。
また、新たにビッグデータソリューション事業部を立ち上げ、ビッグデータの見える化に取り組んでい
く。理論値ではなく、顧客の過去の実験・計測データなどを取り込み、それをもとに 1D のモデルを作成し、
シミュレーションすることが可能となり、より現実に近いシミュレーションも可能となるだろう。こうし
たノウハウを付加価値として顧客に提供していきたい。
クラウドについては、主に IT 資産やインターネットのセキュリティなどをマネジメントするツールとし
て「CYBERNET CLOUD」を立ち上げたが、今後は主力ビジネスである CAE もクラウド化していく。すでに大
手 IT 企業が手掛けているが、サポート面で問題があり稼働率は低いと聞いている。当社としては、自社が
サポートできるものを中心にクラウド化し、使いやすい環境を顧客に提供していきたいと考えている。
◆自動車関連分野に注力
自動車関連分野では、今後、これまでにないアプリケーションに強い CAE が必要となる。特に、先進運
転支援システム(ADAS)関連では、高級車には 200 個、国産の軽自動車にも 50 個程度のマイコン(電子制
御ユニット(ECU))が搭載されている。また、この自動車の電動化、電子化に伴い、車載ネットワークのデ
ータ伝送に用いるワイヤーハーネスの重量が増加傾向にある。
高級車のワイヤーハーネスの総延長は 5 キロ程の長さとなり、いかに効率良く這わせ、ワイヤーハーネ
スの重量を軽量化させ、自動車の燃費を良くするかも大きなテーマの一つとなっている。
一般的には、今後 5~6 年でマイコンやワイヤーハーネスの搭載量が倍増すると見られているため、これ
をどのように開発・搭載していくのか、シミュレーションツールや解析ノウハウへのニーズが今後さらに
高まると予想している。
OEM 提供については、CAD、CAE、EDA、PLM ベンダーとの OEM 契約を推進していく。また、大手ユーザー
に対しては、自社製品をカスタマイズして提供するほか、ビッグデータベンダーに対しては、計算エンジ
ンとして提供していきたい。以上の取り組みにより、顧客にとって最適なソリューションを提供する「ソ
リューション・インテグレータ」を目指す。
◆配当政策の基本方針の変更
配当政策については、これまで配当性向 40%、純資産配当率 2.5%を目安としていたが、配当性向を 50%、
純資産配当率を 3%に変更し、いずれか高い方を配当金額決定の参考指標とする。当期は 30 周年の記念配
当を含めて年間 13.80 円としたが、2015 年 12 月期は普通配当で年間 13.80 円とする予定である。
ROE は、現時点で 4%台となっているが、ROE の改善も推進していく。また、現在は純資産配当率が配当金
額決定の参考指標となっているが、2017 年 12 月期には配当性向が参考指標となる見込みである。
◆質
疑
応
答◆
株主還元の方針は、富士ソフトグループ全体のものか。
当社は富士ソフトの連結子会社だが、株主還元の方針は、親会社とリンクしていない。
今後の資金需要を伺いたい。
次のステップとして、テスト・計測と、それに絡むコンサルティングをグローバルに展開する予定であ
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り、数十億円の資金が必要となるが、手持ちの資金を充当するか、借入を行うかは、今後、検討していく。
今期の計画について、売上高と比較して利益の伸びが低い理由を教えてほしい。
人員不足によってビジネス機会を逸するケースが増えているため、今期は単体ベースで社員を 30 名程度
採用する予定である。なお、採用にあたっては、親会社と連携し、優秀な人材を確保したいと考えている。
(平成 27 年 2 月 27 日・東京)
*当日の説明会資料は以下の HP アドレスから見ることができます。
(http://www.cybernet.jp/documents/pdf/ir/closing_accounts/report/2015/20150227_presentation.pdf)
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