B09 Research Abstracts on Spatial Information Science CSIS DAYS 2015 厳格な形状制約や連結性を仮定しない空間集積検出手法の開発 福本 潤也,○氏家 晃仁 東北大学大学院 情報科学研究科 Email: <[email protected]> (1) 動機: 空間データの探索的な分析手法の1つに, 事象が集中する空間領域(以下,集積領域)の検 出手法がある.集積領域を検出する場合,空間的 にまとまった領域を検出するため,集積領域の幾 何形状に制約を加える必要がある.既存手法では, 集積領域が地理空間上の連結した領域であると仮 定している.空間解像度が高い空間データに既存 手法を適用すると,集積領域に事象が観測されな い空間単位が含まれたり,本来1つとみなされるべ き集積領域が複数に分裂して検出される可能性が ある.本研究では,集積領域が地理空間上の連結 した領域であるという仮定を緩めた空間集積検出 手法を開発する. (2) アプローチ: 画像処理分野で広く用いられるモデ ルベースクラスタリングの枠組みを採用する.モデ ルベースクラスタリングは,画像等のデータが確率 的プロセスを経て生成されると仮定する空間的クラ スタリング手法である.データの生成過程を表す確 率モデルには Q 状態ポッツモデルを用いる.Q 状 態ポッツモデルは,距離が近い空間単位(e.g. 市 区町村,メッシュ)が同一の領域に所属する可能性 が高いことを表す確率モデルである.Q 状態ポッツ モデルを用いることで,集積領域が地理空間上の 連結した領域であるという仮定を緩める. (3) 意義: 空間解像度が高い空間データの利用可能 性が近年高まっている.集積領域が地理空間上の 連結した領域であるという仮定を緩めた空間集積 検出手法を開発することで,既存手法を空間解像 度が高いデータに適用する場合に生じる問題が緩 和される.集積領域の幾何形状の制約が集積領域 の数や範囲に及ぼす影響が小さくなり,詳細に事 象が集中する場所を把握したり,集積領域の数や 広さについて規則性を見出すことが容易になる. (4) 特徴: 画像の分割問題等の空間的クラスタリング の問題に対するモデルベースクラスタリングの手法 の定式化をそのまま適用すると,遠く離れた空間単 位から成る集積領域といった,地理空間上の集積 領域とは認め難い集積領域が検出される恐れがあ る.本研究では,Q 状態ポッツモデルのエネルギー 関数に集積領域とは認め難い幾何形状の集積領 域の検出を防ぐためのペナルティを追加することで, この問題に対処する. (5) 結果: 本研究では一都三県を分析範囲として 1/2 地域メッシュ単位で集計された産業別事業所数デ ータに空間集積検出手法を適用し,事業所の集積 領域を検出した.図 1 は全産業合計の事業所数を 東京都区部について示した図である.黒の濃いメッ シュほど事業所数が多いことを意味する.図 2 は, 全産業合計の事業所数データに本研究で提案す る空間集積検出手法を適用した結果を示す.色が 同じメッシュは同一の集積領域に所属する.新宿 駅を含む集積領域を始めとして,本手法により,地 理空間上で一続きでない集積領域を検出できる. (6) 謝辞: 本研究では,東京大学空間情報科学研究 センターの研究用空間データ(研究番号 582)を利 用した.ここに感謝の意を表する. 池袋駅 池袋駅 新宿駅 新宿駅 渋谷駅 渋谷駅 図 1: 1/2 地域メッシュの全産業合計の事業所数 図 2: 全産業合計の事業所数から検出された集積領域 - 28 -
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