実験的に開始した 「医師の処方を順守するCL販売システム」 さど眼科 佐渡一成 利益相反公表基準に該当なし 演題募集締め切り後の4月17日に 厚生労働省医政局総務課が発出した事務連絡などに対応 しているため、発表内容が一部抄録と異なっています。 はじめに 東日本大震災後の混乱の際、「コンタクトレンズやメガネに よって常に視力が矯正されている状態が確保されていること」 は不可欠のセーフティーネットであり、このためには 眼科医が関わり続ける必要があることがはっきりしました1)。 今回は、CLトラブル減少の道筋が見えてこない 混沌としている現状打破のために開始した社会実験的な試み について報告します。 1) 日本コンタクトレンズ学会誌53東日本大震災特集:320-330,2011 現状 使い捨てCLに加えてカラーCLユーザーの急増もあり、 重篤な眼障害が報告されていること、その原因として購入時の 情報提供不足、眼科を受診していないことなどが指摘されて いることから、厚労省が販売時の情報提供の徹底を求めて 「コンタクトレンズ販売時における取扱いについて」という 通知を3回も発出したにもかかわらず、 CLトラブルの多発には歯止めがかかっていません。 現在の法律では、医師の処方なしにCLを販売しても違法 ではないし、処方内容を無視した販売も違法ではありません。 このため、インターネットや通販、薬局チェーンでは 「処方箋不要」を掲げてCLを販売しているところもあります。 さらに、大手メーカーがネット通販(先行販売)を始めました。 眼科で処方とケアの説明・指導、定期検査を受けない(眼科を 受診しない)ユーザーが多いことがトラブル多発の原因2)です。 そして、ユーザーが眼科を受診しないのは、 「眼科を受診しなくてもCLを自由に購入できる」からです。 2)平成26年度厚生科学研究費補助金特別研究事業 カラーコンタクトレンズの規格適合性に関する調査研究 例え、CL診療が自由診療になっても、法的に 「CLの購入には医師の処方が必要」となっていれば、 ユーザーは眼科を受診すると思われます。 しかし、医師の処方が義務付けられないまま 自由診療になれば、CLの価格差が最大の理由で 眼科を受診するユーザーはほとんどいなくなる 危険性が高いと考えざるを得ません。 CLをユーザーに届ける方法は、(特に使い捨てCLであれば) 通販・宅配であっても問題はありませんが、震災直後の状況を 考えてもCL処方には眼科が関わらなければなりません。 販売店が医師の処方を守らないこともありましたので、 「CL購入に医師の処方を義務付ける」だけでは不十分です。 CLに伴うトラブルを減らすためには 「CL購入に医師の処方を義務付ける」ことに加えて 「販売店は医師の処方を順守するシステム」が欠かせません。 しかし、これまでのように隣接販売店での販売価格が ネットや通販、量販店や薬局チェーンよりかなり高ければ、 眼科で検査を受けたいと思っているユーザーも さすがに離れていくでしょう。 眼科医主導の(メーカーなどと協力した)システムであれば、 安全を第一に、価格や利便性においても ネットや通販、量販店や薬局チェーンそしてメーカーとでも 十分競争できるようになります。 そこで CLの価格やユーザーの利便性にも最大限に配慮したうえで、 医師の処方を順守するCL販売システム (TP311 : TOHOKU PHOENIX 3.11)を 立ち上げました。 コンタクトレンズ購入者(必ず眼科で処方を受ける) 眼科医療機関から処方データー送信 眼科の処方を順守する (交付を手伝う) TP311 眼科の処方以外は扱わない CLオーダー 宅急便(流通王手との契約) 患者直送 コンビニ受け取り 病院直送 ユーザーの利便性に加えて、 多忙な眼科外来に、交付に伴う 業務を増やすことがないように 4.10 宮城県震災復興政策課に 「地方創生に関する「民の力」提案」を提出 4.17 厚生労働省医政局総務課がQ&A発出 5.12 仙台市保健所、宮城県薬務課の担当者と面談 (交付と販売管理者等について) 5.17 「厚労省の事務連絡に対応するため休止中」と HPに表示 5.26 市保健所 医務薬務係に「交付」について質問 6.16 厚生労働省医政局総務課が通知発出 4.17 厚生労働省医政局総務課がQ&A発出 5.12 仙台市保健所、宮城県薬務課の担当者と面談 (交付と販売管理者等について) 5.17 「厚労省の事務連絡に対応するため休止中」と HPに表示 5.26 市保健所 医務薬務係に「交付」について質問 6.16 厚生労働省医政局総務課が通知発出 6.17 日本眼科医会 前日の通知発出に関するお知らせ 6.09 仙台市健康福祉局保健所健康安全課医務薬務係 ご提示頂きましたTP311のシステムについて 医師の指示を受けての販売業者から購入者への直送については、 院内で「交付」が完結していないため、 「交付」に当たるかを厚生労働省医政局に照会中です。 医政局側でも、想定していない形態なため、検討に時間を要する とのことでした。 回答が来るまで2~3週間お待ち頂くようお願いします。 考察 メーカーが準備した 処方→販売→ユーザーという流れの 選択肢であれば、メーカーの利益が優先されるのが当然です。 CLトラブルを減らすため、 「CLのあるべき姿」を実現するためには、 販売・流通システムにまで眼科医が関わる必要があるという ことを 私は今回はっきりと認識しました。 TP311 〇 価格や利便性にも最大限に配慮したうえで、 医師の処方を順守するCL交付(販売)システム 〇 CLがユーザーに届くまで眼科医が責任を持つことができる これまでにはなかったシステム 〇 医療機関で直接販売(交付)できるという通達によって 可能になりました 現在は メーカーと宅配業者の間でデーター受け渡しの テストをしている段階だと聞いています トラブルを減らすために必要な 「CL処方・流通のあるべき姿」(私見) 価格やユーザーの利便性にも最大限に配慮する一方で • 購入には医師の処方(指導・定期検査)が義務づけされること • 販売店は医師の処方を順守しなければならないこと <これらがそろえば、眼科医が責任を持てる状態になる> 〇 今回の「医師の処方を順守するCL販売(交付)システム」は 眼科医主導で立ち上げたシステムです。 〇 CLトラブルを減らすために必要な 「本来あるべき姿」を実現できるシステムです。 〇 「CL処方→販売(交付)→ユーザー」という 供給システムにおいて、 メーカーが提供しているものに加えて 少なくとも選択肢のひとつにはなると思います。 TP311が想定している対象 (今後 CLの交付を行う医療機関) • 公立病院や大学病院(院内スタッフ) • これまで処方のみで販売を行えなかった施設 • CL処方数が少なかった施設でTP311 に参加することで 処方数の増加と増益が見込まれる場合 • 新規開業 など 今後、問題点の抽出、整理、改善を経て、順次他施設にも紹介・ 拡大していきますので、ご助言、ご協力をお願いいたします
© Copyright 2024 ExpyDoc