下肢の圧迫部位の違いがバランス能力に及ぼす影響

下肢の圧迫部位の違いがバランス能力に及ぼす影響
永福
瞳 (競技スポーツ学科 トレーニング・健康コース)
指導教員 佃 文子
キーワード:SEBT 重心動揺 下肢圧迫
重 心 動 揺 の 結 果 か ら ,大 腿 部 ベ ル ト 時 は ,
1.緒 言
近 年 の 健 康 ブ ー ム に 伴 っ て ,現 在 ま で に
圧迫がない時と膝部ベルト時と比較して比
多 く の 着 圧 タ イ ツ が 商 品 化 さ れ て き た .販
較 的 安 定 性 が 改 善 さ れ て い た (図 1).ま た ,大
売 さ れ て い る タ イ ツ の 中 に は ,身 体 機 能 を
腿 部 と 膝 部 の 左 右 を 比 較 す る と ,右 脚 の 膝
サポートすることを掲げている商品が多く
部 ベ ル ト 時 の 安 定 性 が 低 か っ た .し か し ,フ
存 在 す る が ,運 動 中 の 着 圧 効 果 に つ い て は
リー時においても左右差が見られたことか
いまだ十分に検証されていない.
ら ,競 技 種 目 や 利 き 足 等 の 個 人 差 に よ っ て ,
そ こ で 本研 究 で は ,下 肢 の 特 定の 部 位
(腰部・大腿部・膝部)の 圧 迫 が ,バ ラ ン ス 能 力 ・
重心動揺に与える影響を明らかににするこ
とを目的とした.
2.方 法
対 象 は 本 学 大 学 生 の 男 性 10 名 女 性 8 名 (年
齢 21±1 歳)の 計 18 名 と し た .
圧迫の効果が変動することも考えられた.
(㎝ )
(cm/s)
220
200
180
160
140
120
100
80
60
8
7
6
5
4
3
2
1
0
Star Excursion Balance Test(以 下 SEBT
と す る )で は 動 的 バ ラ ン ス ,重 心 動 揺 で は 静
的 バ ラ ン ス を 測 定 し た . SEBT は 8 つ の 方 向
を 測 定 し ,そ の う ち の 前 方 ,後 外 方 , 後 内 方
図 1 総軌跡長の平均
図 2 単位軌跡長の平均
の 3 方 向 を 用 い た .圧 迫 部 位 は 股 関 節 周 囲 と
し た .重 心 動 揺 は ,ア ニ マ 社 製 の 重 心 動 揺 計
4.結 論
ポ ー タ ブ ル グ ラ ビ コ ー ダ ー (GS-7)を 用 い て
1)動 的 バ ラ ン ス で は 、 脚 を 出 す 方 向 に よ っ
て ,股 関 節 圧 迫 の 効 果 は 異 な っ た .
測 定 し た .圧 迫 部 位 は 大 腿 部 と 膝 部 と し た .
統 計 処 理 は ,IBM SPSS Statistics 19 を 用
2) 静 的 バ ラ ン ス で は , 大 腿 部 に ベ ル ト を 巻
い て ,3 つ 以 上 の 群 間 比 較 に は 一 元 配 置 の 分
くことで安定性が得られる可能性が認め
散 分 析 ,2 群 間 内 の 比 較 に は 対 応 の あ る t 検
ら れ た .一 方 で ,膝 部 の み の サ ポ ー ト で は
定 を 用 い た .有 意 水 準 は 5%と し た .
安 定 性 の 獲 得 は 期 待 で き ず ,さ ら に 差 が
大きくなることが明らかとなった.
以 上 の こ と か ら ,局 所 の み の サ ポ ー ト 圧
3.結 果 お よ び 考 察
SEBT の 結 果 よ り ,股 関 節 周 囲 に ベ ル ト を
迫 に 特 化 す る と ,下 肢 全 体 の バ ラ ン ス 能 力
巻 い た 際 ,前 方 と 後 外 方 の 距 離 が 短 く な り ,
を改善させることは期待できない可能性が
後内方のみ距離が長くなった. 前方と後外
ある.
方 の 距 離 が 短 く な っ た の は ,脚 を 外 転 す る
際にベルトの収縮する力に大腿骨が押し戻
引用・参考文献
さ れ た こ と に よ る も の と 考 え ら れ る .一 方
1)
Brumitt,Jason(2008):
Assessing
Athletic
で ,後 内 方 の 距 離 が 長 く な っ た の は ,足 を 内
Balance with the Star Excursion Balance Test,
転させる際にベルトによる圧迫が加わり,
nsca’s performance training journal volume 7
重心位置が安定し距離が出やすくなったと
issue 3
考えられた.