資源の高度利用を行う生産・消費システムによるエコトピアの形成 と評価

●融合プロジェクト研究部門
資源の高度利用を行う生産・消費システムによるエコトピアの形成
と評価
ふじい
講師
藤井
みのる
実 [email protected]
主な研究と特徴
エコトピアの実現に向けて、資源が最も
効率的に利用され、その結果として環境負
荷が最小限となり、また限りある資源から
最大の効用が得られることで、人々の幸福
度の高い社会への転換を目指す。物的資源
の乏しいわが国においては、国際競争力を
維持・発展させるためにも重要である。そ
の手段として、生産システムと消費システ
ムを効果的に組み合わせた社会システムを
設計し、その普及を図るとともに、物質フ
ローの観点から重要となるエコトピア指標
について整理する。このとき、資源を繰り
返し有効活用する社会システムを描くこと
と、温暖化対策分野の既存研究との重複を
避ける観点から、主として鉄、アルミ、土
石、プラスチック(石油)、木材など、素
材として利用される資源に着目する。
(これまでの研究状況)
1. 資源循環システムのライフサイクル評
価研究
ライフサイクルアセスメント(LCA)の
手法を用いて、例えば廃プラスチックのマ
テリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、
エネルギー回収など、様々な資源循環シス
テムの評価手法を確立し、現地調査を実施
して評価を行った。また、リサイクルの効
果を要素に分解して整理する手法を提案し、
各リサイクル手法の特性を明確にするとと
もに、今後の改善が可能な部分と範囲を明
示した。
2. 地域・国際資源循環のシステム設計と評
価に関する研究
上記の資源循環システムの LCA 評価に、
マテリアルフローや金銭フローを組み合わ
せて、地域、あるいは国際的な資源循環シ
ステムの評価を行ってきた。このとき、従
来の“製品 LCA”から、提案する“資源の
LCA”、すなわち資源の有効利用度を評価
する LCA に変更することで、従来は前提条
件によって大きく変動しがちで、部分にの
み最適な解の導出に陥りがちな資源循環の
LCA を、普遍性が高く全体最適に繋がる
LCA とすることに努めてきた。一方、近年
急増している国際資源循環に対応すべく、
中国のリサイクル工場や石油化学産業など
のインベントリ調査を行った。また、水平
リサイクル・カスケードリサイクルの評価
の枠組みを構築し、更に日中それぞれの経
済的な得失を分析してきた。
3. 廃棄物の収集プロセス―モデル開発と
実態調査
資源循環システムの費用対効果を評価す
る上では輸送過程、特に広範囲に分散して
排出される循環資源の収集過程が重要であ
る。そこで、資源の分別収集モデルの開発
と実態調査を行った。既存のグリッドシテ
ィーモデル(GCM)と呼ばれる、収集範囲
を正方形で近似し、廃棄物が空間的に均一
に排出されると仮定した極めてシンプルな
モデルの利点は活かしたまま、これに GIS
による地形や排出量分布を組み合わせたモ
デル(GOM-GIS)を共同開発した。実態調
査との比較から、モデルの予測精度が飛躍
的に向上することが確認された。これによ
り、例えば全国で分別収集方法を変更した
場合、どれだけの追加的費用や CO2 排出を
生じるかを、高精度かつ短時間で計算する
ことが可能となった。
今後の展望
主として以下の 4 つのテーマを推進する。
・脱物質化のための消費・生産構造の転換
と物質フロー変化の予測
・機能を重視した、貨幣価値のみによらな
い経済指標の作成
・既存動脈産業の活用による循環資源の高
効率利用
・バイオマスの原燃料利用システムの設計
と評価
経歴
2000 東京大学大学院工学系研究科化学シ
ステム工学専攻単位取得退学、2001 博士
(工学)、2000 東京大学大学院工学系研究
科化学システム工学専攻助手 2003 産業技
術総合研究所環境管理研究部門特別研究員、
2003 国立環境研究所循環型社会・廃棄物研
究センター研究員、2009 名古屋大学エコト
ピア科学研究所融合プロジェクト部門講師
所属学会
日本 LCA 学会、廃棄物資源循環学会、化学
工学会、環境情報科学、日本建築学会、室
内環境学会、日本海洋学会
主要論文・著書
(1) 柳沢幸雄, 藤井 実, 廃セメントのリ
サイクルによる廃棄物・二酸化炭素排出量
同時削減プロセス, 日本建築学会総合論文
誌, 第 1 号, 87-92 (2003)
(2) M. Fujii, N. Shinohara, A. Lim, T.
Otake, K. Kumagai and Y. Yanagisawa,
A Study on Emission of Phthalate Esters
from Plastic Materials Using a Passive
Flux Sampler, Atmospheric Environment,
Vol. 37, 5495-5504, (2003)
(3) 藤井 実, 村上進亮, 南齋規介, 橋本征
二, 森口祐一, 越川敏忠, 齋藤 聡, 家庭系
容器包装プラスチックごみの収集と運搬に
関する評価モデル, 廃棄物学会論文誌, 17,
5, 331-341, (2006)
(4) 藤井 実, 川畑隆常, 橋本征二, 村上進
亮, 南齋規介, 山田正人, 大迫政浩, 森口祐
一, ネットの輸送-輸送効率の包括的評価
指 標 , 廃 棄 物 学 会 論 文 誌 , 18, 1, 77-85,
(2007)
(5) 藤井 実, 橋本征二, 南齋規介, 村上進
亮, 稲葉陸太, 森口祐一, リサイクルの
LCI 分析結果の表記法, 土木学会論文集,
Vol. 63, 2, 128-137, (2007)
(6) N. Shinohara, M. Fujii, A. Yamasaki,
Y. Yanagisawa, Passive flux sampler for
measurement of formaldehyde emission
rates, Atmospheric Environment, Vol. 41,
19, 4018-4028, (2007)
(7) 藤井 実, 橋本征二, 南斉規介, 村上進
亮, 稲葉陸太, 大迫政浩, 森口祐一, マテリ
アルリサイクルの評価方法の整理と評価事
例, 日本 LCA 学会誌, 4, (1), 78-88, (2008)
(8) 藤井 実, 長澤恵美里, 橋本 禅, 藤田
壮, 代替的なリサイクル技術の資源循環効
果の評価―木材資源の水平循環とカスケー
ド循環の比較―, 環境システム研究論文集,
36, 275-280, (2008)
(9) R. V. Berkel, T. Fujita, S. Hashimoto
and M. Fujii, Quantitative Assessment of
Urban and Industrial Symbiosis in
Kawasaki
(Japan),
Environmental
Science and Technology, 43, 5, 1271–1281,
(2009)