「スポーツハンティング構想」

「スポーツハンティング構想」
清水俊宏(東京)・東野剛巳(札幌)
この構想のきっかけは、昨年12月にトルコ共和国へ旅行したときに、たまたまツアー
のバスで一緒になった人と意気投合して、北海道のエゾシカ問題について語り合った内容
をまとめたのがこの構想です。2人とも狩猟経験がないため、この構想の内容に間違いな
ど含んでいるかもしれませんが、皆様の忌憚のないご意見などいただければ幸いです。
1.はじめに
現在、北海道ではエゾシカの急増により、多くの農林業被害や森林被害をもたらしてい
るため、ハンターによる個体数管理が行われておりますが慢性的な不足となっています。
そこでハンター不足を補完する手段として、より多くの人たちにも狩猟を楽しめるような
体制づくりを行い、狩猟が欧米諸国のように一つのスポーツとして浸透させ、エゾシカと
いう資源を地元経済に還元させることが「スポーツハンティング構想」の目標です。
2.狩猟の課題と今後の展望
課
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
題
エゾシカによる被害を食い止めるための対策として、個体数減少を目的とした狩猟や
計画的駆除が行われているが、既存ハンターの高齢化や銃取得が厳格なことによるハ
ンター数の減少傾向により、絶対数が不足している。
ハンター不足のもう一つの原因として、プロの猟師になっても生活していけない為、
猟師という職業が成立しない現状がある。
解決への道筋と、今後のエゾシカ資源の活用
 狩猟に対する敷居を下げ、狩猟が手軽にできる仕組みが構築できればハンター人口を
増やすことが可能となり、それから新たに生じる狩猟ツアーやジビエ肉の流通などの
「狩猟産業」により、地元の雇用拡大と経済活性化をもたらします。
 狩猟産業で得られた利益の一部を、エゾシカ被害に遭った森林の回復事業に充てるな
ど、自然とエゾシカの共存のための方策への活用も考えます。
 今回、構想内容の一つとして企画した「スポーツハンティングツアー」により、多く
の人達にハンティングが普及して、北海道に「狩猟産業」をもたらす起爆剤となれば
と思います。
3.「スポーツハンティングツアー」の概要
ツアーの募集・現地に引率者を派遣
ハンティング前の講習&銃の実技演習
ハンティングの実施
ジビエ料理を参加者で食す
余ったジエビ肉を市場へ流通
(リピーター)
解散後の交流(インターネット)
1. ハンティングツアーの募集
地元の旅行業者が、エゾシカ狩猟ツアーを企画して募集する。
※
地元狩猟産業の育成が目的のため、行政により地元企業を優先させる施策をとる。
参入を希望する旅行会社からツアーの企画案を集い、地元選考委員による評点(収
益性・安全性への配慮など)により決定する。
2. 「狩猟特区」に引率者(狩猟マイスター)を派遣
主催者は、初心者による狩猟が認められた「狩猟特区」に、ツアー客を引率・指導する
役割を担う「狩猟マイスター」とアシスタント(指導員の補助)を派遣することとする。
3.講習&実技演習
ツアー客は、狩猟に関する適性検査と一定時間の講習、射撃練習場における実習を受講
した適格者のみ、スポーツハンティング免許が取得できる。
4. ハンティングの実施
 ハンティング時にアシスタントを多く付けて、ツアー客の安全確保と併せプロハン
ターの早期育成にもつなげる。
 引率者は、ツアー客の誤射等の危険性を極力排除するため、狩猟時に獲物を見つけ
てから引率者が弾を渡して装填させる事を必須項目とし、将来的に遠隔操作による
銃のトリガーロック解除で銃の制御を行うなど安全に特別の配慮をする。
5. ジビエ料理を参加者同士で会食する
狩猟したエゾシカは、認証を受けた専門業者により、現地での1次処理と解体工場にて
衛生的に処理され、ツアー客は狩猟後に本格ジビエ料理として食すことができる。
6. 余ったジエビ肉を市場へ流通
 ツアー客は、狩猟したエゾシカを解体業者に売ることとし、その売却金をエゾシカ
対策として、鹿の被害に遭った森林の回復事業等へ寄付する。
 ハラル認証(http://www.jhalal.com/)を取得した解体業者は、北海道内のイスラム
教徒への食材を希望しているホテルやレストランに流通させることが可能。
 それと併せて、狩猟されたジエビ肉は北海道の地産地消のブランド品として、地元
のレストラン等に流通させる。
7. ツアー後の体験者同士の交流など
SNS 型のスポーツハンティングサイトを作成して
 狩猟ツアーの映像や狩った鹿の重量や頭数などの記録を更新して、スポーツハンテ
ィング愛好者同士の交流を図ることで、リピーター客の推進を図る。
 イベント告知やハンティングのルール、魅力、銃の扱い方、メンテナンス方法、
免許の取り方など、常にハンティングに関する情報をコンテンツに追加して、
スポーツハンティングの浸透に努める。
 このハンティングサイトに、鹿角のアクセサリーや毛皮などオンラインショッピン
グ機能を付ける事により、広告(狩猟に特化している為広告効果が高い)という形
で収益が可能となる。
(解説)
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狩猟特区:狩猟に適したある特定エリアのみで、狩猟免許等を所持しない者でも、一
定の許可要件のもと、狩猟と銃の使用を認めるという規制緩和が実現した場合の仮称
狩猟マイスター:猟友会等の推薦があり、救命措置等の講習を終えた職業猟師。
スポーツハンティング免許:狩猟や銃の使用に関する一定の講義・実習を終えた者で、
指導者同伴のもと、「狩猟特区」のみ狩猟と銃の使用が許可される仮免許の仮称
トリガーロック解除機構:初心者による銃の安全性を高めるため、管理者が遠隔操作
で銃のロック解除ができる機構の仮称。通常(信号が無い状態)はロック状態で、暗
号化された信号を受信するとロックが解除される仕組みで、この機構の実現により銃
の使用に関する規制緩和に繋がるかもしれません。
銃の貸出し制度:トリガーロック解除機構の出現で、銃使用に関する規制緩和が実現
した場合、猟銃を所持していない初心者にもハンティングができるよう安全機構がつ
いた銃の貸出しをする制度。
4.スポーツハンティングの課題と解決への糸口
課題
銃所持の許可が難しいのは、猟銃は危険な武器になり得るため、犯罪抑制の観点から銃所
持に関して厳格であるという側面がある。
規制緩和が実現した場合のメリット
1.
2.
3.
狩猟を希望している多くの一般人の需要を取り込めるため、「狩猟産業」という地元
が潤う魅力的な体験型観光資源となり得る。
スポーツハンティングで狩猟マイスターとして雇用を増やす事ができれば、プロの猟
師として生計面の問題は解決する。また、新たなハンターへの狩猟技術の継承にもつ
ながる。
捕獲数をコントロールできれば、エゾシカ被害対策である個体管理に寄与することに
なり、自然と人間との共存が可能になる。
では、規制緩和の障壁を下げるためには
1. 狩猟時の安全性の確保
トリガーロック解除機構の銃による狩猟特区でのハンティングなど、安全に配慮した銃の
仕組みや狩猟ルールを構築することによって、初心者でも限定条件でハンティングができ
るという規制緩和への道しるべとなり得ます。
(別記5.「実現するための狩猟体制」、別記 7.「安全面に配慮する方法」)
2. 狩猟への理解を深める
エゾシカ問題や、その解決手段である狩猟の魅力を、DVD 作成や無料ネットなどのメディ
ア通じて発信をすれば、問題に対する理解と共感が得られるほか、スポーツハンティング
に興味を持つ人が増加して規制緩和への機運が高まるかもしれません。
5.実現するための体制づくり
スポーツハンティングを実現させる為に必要な事は
1. 狩猟に対する敷居を下げる(狩猟制度の緩和)
狩猟免許と銃刀法に関する規制緩和の必要があります。
この規制緩和により初心者でも銃による狩猟が出来る制度を、仮称「スポーツハンティン
グ免許」とします。この免許では単独での狩猟は行えず、引率者が必須となります。
また、狩猟できるエリアは狩猟特区のみとし、使える猟銃にも制限を設ける(トリガーロ
ック解除機構)など限定条件のもとで、従来の狩猟から敷居を下げて広く一般に体験して
もらう事とします。
2. 狩猟人口を増やすためのリピーターの確保
スポーツハンティングを観光業の視点から考えた場合、この狩猟ツアーの魅力を向上させ
る為には、ツアー内容を逐次改善していく必要があります。
お客の声を聞いて改善していく仕組みを導入することにより、リピーターの確保へとづな
げ、今まで日本では根付かなかった狩猟人口の増加を確実なものにしていきます。
3. 狩猟に対するイメージアップ
スポーツハンティングを実現させるためには、ヨーロッパにおける伝統的な貴族のスポー
ツのスタイルを手本に、狩猟に対する意識改革や狩猟ファッションの多様化などイメージ
アップを図る必要があると思います。
6.エゾシカ資源の商品化による活用
1.スポーツハンティングから生じるジビエ肉等の流通販路の整備
スポーツハンティングから生じるジビエ肉や角や皮などを商品化して、道内のホテル等
へ流通させることは、地元オリジナル商品としての価値を高め、地元の経済活性にもつな
がります。
また、鹿肉の安定供給のためエゾシカの養鹿事業も手がけることで、北海道の「狩猟産
業」の体力と継続性を確実なものにします。
2.エゾシカ肉のハラル認証とブランド化
道内観光客のグローバル化に伴い、可能な限りハラル認証を得る形にします。
これはイスラム教徒への食材としてのお墨付きを貰う事で、イスラム圏諸国からの観光客
に安心して食べてもらう事への配慮です。(石油産出国からの観光客は、旅行業にとって
魅力的)
また、エゾシカ肉は北海道の地産地消の特産品として、新たなネーミング(産地の名称な
ど)によりブランド化させることにより、エゾシカ料理を食べに何度も北海道に足を運ん
でもらえるような魅力的な観光資源にします。
3.今後の展望
産地産消のエゾシカ料理の PR として、鹿肉を北海道以外の一部の店に流通させたり、
ジビエ料理やスポーツハンティングの魅力などを広く国内外へ情報発信をすれば、北海道
観光の魅力がより高まるのではないかと思います。
7.安全面に配慮する方法
1. 特許出願による安全な銃の開発
銃は危険な道具なため、狩猟時には特に安全面に配慮する必要があります。
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弾は引率者である狩猟マイスターが所持管理し、銃を撃つ際に弾を渡して撃たせる。
2
通常の(信号が無い状態)銃はロック状態で、射撃時に遠隔操作により暗号化された
信号を受信すると、ロックが解除される機構の開発。(トリガーロック解除機構)
さらに IT 技術を駆使して、射撃直前でも GPS や画像認識で人を検知し、トリガーを
ロックをする機能など様々な先端技術を使って実現させる。
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2-1. 安全な銃の今後の展望
②や③に関しては、特許出願を視野に検討をしています。
②は安価に製作できるため、これからの規制緩和に向けての推進剤とし、規制緩和の実現
後、③に移行する形が良いと思います。これらを商品化する事ができれば安全性は格段に
上がる為、より安全性の高いスポーツハンティングが可能となります。
2-2.商品としての実現化に向けて
トリガーロック解除機構に関する商品は、発案者が新会社を作り ODM として製造して貰え
る企業を探して製造し、それを流通させる方法がよいと思います。
将来的には、規制緩和によりリモコンによる解除機能が初心者銃用の銃として標準装備さ
れるのが理想です。
8.猟銃の貸出し業務および保管・メンテナンスの業務について
1.銃の貸出し業務・狩猟関連グッズの販売
スポーツハンティングで使用する、初心者用の猟銃(トリガーロック解除機構)の貸出業
務を行う施設です。規制緩和が実現すれば、初心者が高額な猟銃を所持しなくても、銃の
レンタルにより狩猟体験をする事ができます。公安委員会による指導のもと、安全な状態
で多くの銃の保管・管理ができる地元企業の参入が可能だと考えます。
また、ハンティングウエアなど狩猟関連用品のレンタルや販売のほか、派生商品(剥製、
毛皮、料理体験・・)の販売により、スポーツハンティングのカジュアル化と地元産業が
潤うことにもつなげます。
2. 個人所有の猟銃の保管・メンテナンスの併設
猟銃を所持する人の共通の悩み
銃を所持している人たちにとって、年に数回の狩猟のために銃を自宅に厳重保管する義務
や、狩猟時にその銃を慎重に運搬するなど、常に盗難対策に神経を使い銃を管理しなけれ
ばならないという煩わしさが付きまとう。
それらの解決策として
 「猟銃の貸出し業者」によって、個人所有の銃の厳重保管および届出書類の代行業務を
行えば、地域の銃の管理センターとして、多くの需要があると思われます。
 例えば、狩猟時期以外の銃はその業者に預け、オーバーホールや真空パックで保管す
るなど保管のクオリティーを上げる工夫をすることにより、最良の状態で銃を使用で
きます。
 ハンターの負担軽減だけではなく、公安委員会もまとめて個人の銃のチェックが行え
るようになり、メリットは更に大きくなると思われます。
 これらのメンテナンス作業を、地元雇用のプロハンターが禁猟期に行うことにより、
年間を通じて安定した雇用の確保が可能となります。