試験結果の概要 - 武田薬品工業株式会社

試験結果の概要
試験実施者(企業名)
武田薬品工業株式会社
商品名
インフルエンザワクチン(開発コード:TAK-850)
有効成分名
A/H1N1/California/07/2009
+
A/H3N2/Victoria/361/2011
+
B/Hubei-Wujiagang/158/2009
[各株の赤血球凝集素(HA)含量は、1 株当たり 15μg]
試験の名称
健康成人男女を対象に TAK-850 を単回筋肉内接種した場合の
安全性及び免疫原性を検討するための第 1/2 相非盲検試験
試験実施医療機関及び
1 医療機関及び 1 名の治験責任医師
試験責任医師名
公表文献
なし
(本試験結果の報告文献)
試験期間
2014 年 3 月 23 日~2014 年 4 月 15 日
(最初の被験者の同意取得日~最
後の被験者の治療期終了日
試験のフェーズ
第 1/2 相
試験の目的
日本人の健康成人男女を対象として、TAK-850 の単回筋肉内接
種時の安全性及び免疫原性を検討する。
試験の方法
本治験は、日本人の健康成人男女を対象とした TAK-850 の第
1/2 相単回筋肉内接種試験であり、TAK-850(0.5 mL)を上腕三
角筋に単回で筋肉内接種した際の安全性及び免疫原性を非盲
検試験により検討した。治験は以下に示す治験デザイン(来院
スケジュール)の概略に従って実施した。
治験薬接種日(Day 1、Visit 1)に被験者の適格性判定を行った。
治験薬接種前に検査及び免疫原性評価のための採血を実施し
た後に、治験薬を筋肉内接種し、接種後 30 分間は医療機関に
て検査・観察を行った。
被験者に被験者日誌を交付し、接種日を含め接種後 7 日間(Day
1~Day 7)、体温(口腔温)
、全身症状及び注射部位反応等につ
いて記録するよう指示した。接種 7 日後(許容範囲:+ 2 日)
に来院し(Day 8、Visit 2)
、検査・観察及び被験者日誌の回収・
評価を行った。被験者に新たな被験者日誌を交付し、次回来院
までの間(Day 8 来院後~Day 22 来院前)
、有害事象等につい
て記録するよう指示した。接種 21 日後(許容範囲:± 2 日)
に来院し(Day 22、Visit 3)
、検査・観察、被験者日誌の回収・
評価及び免疫原性評価のための採血を実施し、治験終了とし
た。
被験者数
計画時
(計画時・解析時)
TAK-850(0.5 mL)筋肉内接種群:55 例
解析時
TAK-850(0.5 mL)筋肉内接種群:55 例
最大の解析対象集団(FAS):合計 55 例
安全性データの解析対象集団:合計 55 例
対象基準
<対象>
<主な選択基準>
1) 治験の内容を理解し、それを遵守する能力があると治験責
任医師又は治験分担医師が判断した者
2) 治験手順が行われる前に、同意・説明文書に被験者による
署名及び日付記入ができる者
3) 日本人の健康成人男女
4) 同意取得時に 20 歳以上 49 歳以下である者
5) 適格性判定時にBMIが 18.5 kg/m2以上 25.0 kg/m2以下である
者
6) 避妊治療を受けていない男性パートナーを持つ、妊娠する
可能性のある女性の場合、同意取得時から治験期間を通し
て、日常的に適切な避妊の実施に同意する者
<主な除外基準>
1) 治験薬接種前 4 ヵ月以内に他の治験薬の投与を受けた者
2) 治験薬接種前 6 ヵ月以内に季節性インフルエンザワクチン
の接種を受けた者
3) 治験薬接種前 6 ヵ月以内にインフルエンザに罹患した者
4) 治験実施医療機関の従業員、その家族、又は本治験の実施
に関わる治験実施医療機関の従業員と依存した関係にある
者(例:夫婦、親、子供、兄弟姉妹)
、若しくは強制の下に
同意するおそれがある者
5) コントロール不良かつ臨床的に問題のある神経、循環器、
肺、肝、腎、代謝、消化器、泌尿器又は内分泌疾患若しく
はその他の異常を有しており、治験参加や治験結果に影響
を与える可能性がある者
6) 治験薬接種日の接種前の検査で口腔温が 37.5°C 以上であ
る者
7) 過去に免疫不全の診断がなされている、又は疑われる者
8) 易感染性状態又は疾患のある、若しくは免疫反応に影響を
及ぼす可能性のある治療を現在受けている又は治験薬接種
前 30 日以内に受けた者。可能性のある治療には以下が含ま
れるが、これに限るものではない:全身性コルチコステロ
イド剤又は高用量の吸入コルチコステロイド剤(ジプロピ
オン酸ベクロメタゾン 800 μg/日超若しくは相当量、これ
を超えないステロイドの吸入及び経鼻使用は可)
、放射線療
法、その他の免疫抑制剤、若しくは細胞傷害性薬剤
9) 治験薬接種前 4 時間以内に解熱剤を使用した者
10) ギラン・バレー症候群又は脱髄性疾患〔急性散在性脳脊髄
炎(ADEM)、多発性硬化症を含む〕又は痙攣の既往歴のあ
る者
11) 機能的又は解剖学的無脾症である者
12) 注射部位反応の評価に影響を及ぼす可能性がある発疹、そ
の他皮膚症状、又は刺青がある者
13) B 型肝炎ウイルス(HBsAg)、C 型肝炎ウイルス(HCV)、
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の既往がある又は罹患
している者
14) TAK-850 に含まれる成分(剤形及び含量の項を参照)に対
して過敏症を有する者
15) 重度のアレルギー反応又はアナフィラキシーの既往歴があ
る者
16) 治験薬接種前 1 年以内に薬物濫用(不法な薬物使用に定義
される)又はアルコール依存症の既往がある者、若しくは
治験期間中、アルコールの過剰摂取及び薬物使用をやめる
意思のない者
17) 治験薬接種前 90 日以内に血液製剤(輸血又は免疫グロブリ
ン)の投与を受けた者
18) 治験薬接種前 4 週(28 日)以内に生ワクチン、又は 2 週(14
日)以内に不活化ワクチンの接種を受けた者
19) 妊娠している又は授乳中の女性。同意取得前、本治験期間
中又は治験終了後 1 ヵ月以内に妊娠の予定がある女性又は
その期間中に卵子を提供する予定のある女性
20) 治験薬接種前 4 週(28 日)以内に 200 mL 以上又は治験薬
接種前 12 週(84 日)以内に 400 mL 以上若しくは治験薬接
種前 52 週(364 日)以内に合計 800 mL 以上の全血、又は
治験薬接種前 2 週(14 日)以内に血液成分を採取した者
21) 治験薬接種前の検査にて(臨床的に問題のある)心電図の
異常が認められた者
22) 治験薬接種前の検査にて臨床的に問題のある原疾患を示唆
する臨床検査値の異常を認めた者又は次の項目の異常値が
認められた者:正常上限の 3 倍を超える ALT 及び/又は
AST
23) 治験実施計画書に従う可能性の低い又はその他の理由で不
適と治験責任医師又は治験分担医師が判断する者
被験薬、用量・投与方法、ロット番
<用量・投与方法>
号
TAK-850(1 株当たりの HA 抗原量 15 µg)0.5 mL を、臨床検査
及び免疫原性検査の検体採取のために採血した部位と可能な
限り反対側の上腕部三角筋中央部の筋肉内に 1 回接種
<ロット番号>
SI850-001
治療期間
22 日間(1 回接種)
エンドポイント
<主要評価項目>
安全性:
・ 日誌収集項目として特定した注射部位及び全身性の有害事
象
・ 有害事象
免疫原性:
・ 接種 21 日後の 3 株それぞれに対する HI 抗体価〔鶏卵培養
由来ウイルス抗原(以下、鶏卵抗原)
〕の抗体保有率(HI 抗体
価 ≥40 を基準とする)
・ 接種 21 日後の 3 株それぞれに対する HI 抗体価(鶏卵抗原)
の抗体陽転率〔HI 抗体価が接種開始前値から 4 倍以上増加(前
値 ≥10 の場合)
、又は HI 抗体価 ≥40(前値 <10 の場合)〕
・ 接種 21 日後の 3 株それぞれに対する HI 抗体価(鶏卵抗原)
の接種開始前値からの増加倍率の幾何平均値(幾何平均増加倍
率)
<副次評価項目>
安全性:
・ バイタルサイン
・ 臨床検査
・ 心電図
免疫原性:
・ 接種 21 日後の 3 株それぞれに対する HI 抗体価(鶏卵抗原)
の幾何平均値(GMT)
・ 接種 21 日後の 3 株それぞれに対する SRH 抗体価(鶏卵抗
原)の GMT
・ 接種 21 日後の 3 株それぞれに対するSRH抗体価
(鶏卵抗原)
の抗体保有率(SRH抗体価 ≥25 mm2を基準とする)
・ 接種 21 日後の 3 株それぞれに対するSRH抗体価
(鶏卵抗原)
の抗体陽転率〔SRH抗体価が接種開始前値から 50%以上増加
(前値 >4 mm2の場合)、又はSRH抗体価 ≥25 mm2(前値 ≤4
mm2の場合)〕
・ 接種 21 日後の 3 株それぞれに対する SRH 抗体価(鶏卵抗
原)の接種開始前値からの増加倍率の幾何平均値(幾何平均増
加倍率)
統計手法
(1)
安全性の解析
安全性データの解析対象集団を対象として以下の解析を行っ
た。
日誌収集項目として特定した注射部位及び全身性の有害事象
について、頻度集計、程度別頻度集計及び発現時期別頻度集計
を行った。
Treatment-emergent adverse event(TEAE)とは、治験薬接種開
始後に発現した事象又は現病歴が悪化した事象とした。
TEAE について、以下の解析を行った。TEAE は MedDRA を用
いて読み替え、器官別大分類(System Organ Class; SOC)及び
基本語(Preferred Term; PT)で要約した。
∙
すべての TEAE の頻度集計
∙
治験薬との因果関係が「関連あり」である TEAE の頻
度集計
∙
すべての TEAE の程度別頻度集計
∙
治験薬との因果関係が「関連あり」である TEAE の程
度別頻度集計
∙
重篤な TEAE の頻度集計
(2)
免疫原性の解析
FAS を対象として、接種 21 日後の 3 株それぞれに対する HI
抗体価(鶏卵抗原)の抗体保有率及び抗体陽転率について、頻
度集計を行い、点推定値及び両側 95%信頼区間(CI)を算出し
た。また、接種 21 日後の 3 株それぞれに対する HI 抗体価(鶏
卵抗原)の幾何平均増加倍率について、HI 抗体価(鶏卵抗原)
の接種開始前値からの増加倍率の要約統計量、幾何平均値及び
幾何平均値の両側 95% CI を算出した。
幾何平均値の両側 95% CI は、抗体価を対数変換した値の平均
値の両側 95% CI の上限値及び下限値を逆対数変換することに
より算出した。
要約・結論
<免疫原性の結論>
FAS を対象に TAK-850 単回筋肉内接種時の免疫原性について
解析した結果、以下の結論が得られた。
∙
治験薬接種 21 日後のインフルエンザウイルス 3 株
(A/H1N1、A/H3N2、B)それぞれに対する HI 抗体価(鶏卵抗
原)の抗体保有率は、A/H1N1 が 81.8%(45/55 例、両側 95% CI:
69.095~90.921)、A/H3N2 が 87.3%(48/55 例、両側 95% CI:
75.520~94.726)及び B が 76.4%(42/55 例、両側 95% CI:62.980
~86.772)であり、接種前〔34.5%(19/55 例、両側 95% CI:22.237
~48.581)
、63.6%(35/55 例、両側 95% CI:49.563~76.186)及
び 20.0%(11/55 例、両側 95% CI:10.430~32.973)
〕に比べい
ずれも高値を示した。米国第 3 相試験〔721104 試験(TAK-850
と同一製法・製造株を用いた接種群の成人コホート[18~49
歳、581 例]
、以下同様)
:94.7%(両側 95% CI:92.5~96.3)
、
91.6%(両側 95% CI:89.0~97.3)及び 82.8%(両側 95% CI:
79.5~85.8)
〕と比較すると、全体的にやや低かった。
∙
治験薬接種 21 日後のインフルエンザウイルス 3 株
(A/H1N1、A/H3N2、B)それぞれに対する HI 抗体価(鶏卵抗
原)の抗体陽転率は、A/H1N1 が 70.9%(両側 95% CI:57.102
~82.370)、A/H3N2 が 52.7%(両側 95% CI:38.804~66.347)
及び B が 61.8%(両側 95% CI:47.726~74.591)であった。い
ずれも米国第 3 相試験〔721104 試験:70.9%(両側 95% CI:67.0
~74.6)
、57.5%(両側 95% CI:53.4~61.5)及び 61.4%(両側
95% CI:57.4~65.4)
〕と全体的に類似していた。
∙
治験薬接種 21 日後のインフルエンザウイルス 3 株
(A/H1N1、A/H3N2、B)それぞれに対する HI 抗体価(鶏卵抗
原)の接種開始前値からの幾何平均増加倍率は、A/H1N1 が
14.74(両側 95% CI:8.578~25.335)、A/H3N2 が 6.71(両側 95%
CI:3.997~11.252)及び B が 7.14(両側 95% CI:4.592~11.108)
であった。米国第 3 相試験〔721104 試験:9.6(両側 95% CI:
8.5~10.8)
、5.6(両側 95% CI:5.0~6.3)及び 6.7(両側 95% CI:
6.0~7.5)〕と比較すると、3 株いずれも高い平均値を示した。
∙
治験薬接種 21 日後のインフルエンザウイルス 3 株
(A/H1N1、A/H3N2 及び B)それぞれに対する HI 抗体価(鶏
卵抗原)の GMT は、A/H1N1 が 263.22(両側 95% CI:152.753
~453.562)、A/H3N2 が 510.11(両側 95% CI:299.040~870.144)
及び B が 59.49(両側 95% CI:39.810~88.908)であり、接種
前〔17.86(両側 95% CI:10.915~29.209)、76.07(両側 95% CI:
42.054~137.592)及び 8.33(両側 95% CI:6.342~10.943)
〕と
比べ、3 株いずれも上昇が認められた。
∙
治験薬接種 21 日後におけるインフルエンザウイルス
3 株(A/H1N1、A/H3N2、B)に対する鶏卵抗原を用いた HI 抗
体価と SRH 抗体価は、B 型を除き相関関係が示唆された。ま
た、鶏卵抗原を用いた測定の結果(HI 抗体価及び SRH 抗体価)
と Vero 抗原を用いた測定の結果は、3 株いずれにおいても相関
関係が示唆された。
以上より、本治験において日本人の健康成人男女(20~49 歳)
を対象とした TAK-850 単回筋肉内接種時の免疫原性は、18~49
歳の被験者を対象として本治験と同一の用法・用量で実施され
た米国第 3 相試験(721104 試験)の成績と全体的に大きく劣っ
ておらず、TAK-850 単回筋肉内接種時のインフルエンザウイル
ス 3 株(A/H1N1、A/H3N2 及び B)に対する免疫原性が確認さ
れた。
<安全性の結論>
本治験を通して、死亡例はなかった。また、アナフィラキシー
などの過敏反応の発現は認められなかった。その他の重篤な有
害事象及び治験薬接種又は治験の中止に至る有害事象は認め
られなかった。
本治験における有害事象の発現頻度及び発現件数は、54.5%
(30/55 例)54 件であり、副反応の発現頻度は、50.9%(28/55
例)であった。有害事象の程度は、すべて軽度であった。
発現頻度が 3%以上に認められた有害事象は、注射部位反応で
は注射部位疼痛 40.0%(22/55 例)
、注射部位そう痒感 3.6%(2/55
例)であり、全身反応では、倦怠感 16.4%(9/55 例)
、頭痛 5.5%
(3/55 例)
、悪寒 3.6%(2/55 例)
、筋肉痛 3.6%(2/55 例)であ
った。これらの有害事象の程度はすべて軽度であった。発現時
期別では、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加及びアスパ
ラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加の 1 例(同一被験者)
2 件が治験薬接種 8 日目(Day 8)以降(Day 22)に発現したの
に対し、その他はいずれも接種 7 日目(Day 7)以内に発現し
た。
また、副反応の発現頻度は、注射部位疼痛 40.0%(22/55 例)
、
倦怠感 14.5%(8/55 例)
、注射部位そう痒感 3.6%(2/55 例)
、筋
肉痛 3.6%(2/55 例)、頭痛 3.6%(2/55 例)、悪寒 1.8%(1/55 例)、
疲労 1.8%(1/55 例)
、注射部位熱感 1.8%(1/55 例)、関節痛 1.8%
(1/55 例)、多汗症 1.8%(1/55 例)であった。
臨床検査では、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加及びア
スパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加の 1 例(同一被験
者)2 件が有害事象と認められたものの、いずれも治験薬との
因果関係は否定された。
バイタルサイン(収縮期・拡張期血圧、脈拍数、体温及び呼吸
数)及び 12 誘導心電図の所見では、臨床的に問題となる異常
所見は認められなかった。
また、注射部位反応については、注射部位発赤、注射部位腫脹
及び注射部位硬結の最大径(cm)において、いずれも全被験者
の計測値は、規定した毒性評価尺度の最小値(2.5 cm)未満で
あり、有害事象と判断される事象は認められなかった。
以上より、日本人の健康成人男女を対象とした TAK-850 の単回
筋肉内接種時における忍容性及び安全性に大きな問題はない
と判断した。
本概要の作成日
2014 年 9 月 17 日