工学英語論文作成のためのオンライン・コーパスおよび教材の開発 別府俊幸 1)、松田節郎 1)、服部真弓 1)、大森誠 1)、Marshall Higa1)、高橋栄 1) 橋本剛 1)、高尾学 1)、堀内匡 1)、稲葉洋 1)、堀智子 2)、飯島睦美 3) 松江高専 1)、東京高専 2)、明石高専 3) 1.はじめに ニューとして表示される) から、1 つの動詞を選択する。 学生が国際学会で発表する機会を得ることが増えてき 次に、選んだ動詞の主語、すなわち動作の主体を、同様 た。その際、学生は 1、2 ページの英文要旨を書くことが にプルダウンメニューから選択する。この主語リストは、 求められるが、この指導には苦労することが多い。工学系 将来的には出現頻度の高い順に並べたり、何らかのカテゴ にとって必要な英語発表力は、工学系の相手に分かる程度 リーに分類して表示したりする必要があるだろう。しかし、 の技術英文が作成できることと考える。そのためには、せ 初年度のプロトタイプ開発段階では、これを検討しない。 めて native speaker に直してもらえるレベルの英文を自 その代わりに、英語用例の収集および和訳データの拡充に 力で作成できることが必要となる。しかし、残念ながら学 努めたい。 生の書いた“英単語の羅列”は、指導教員が読んでも何を 本コーパスシステムは、以下の 2 つの視点から、テクニ 言いたいかがさっぱり分からないものが多い。本事業では、 カル・ライティングのための教材としても有効である。ま 専攻科学生を対象とした、工学英語抄録の自力作成支援オ ず、最初に文の中核である動詞を選び、次いで動作主を選 ンライン・コーパスシステムを開発する。 ばせることで、ユーザにネクサス (主語・述語動詞の結合 関係) を意識させることができる。次に、日本語訳は意味 順ファイリングシステム 1)に則った形式で表示される。意 2.コーパスシステム コーパス (corpus) とはテキストのデータベースを意 味順ファイリングシステムとは、英文とその和訳を「だれ 味する言葉であり、大量に収集されたテキストデータから が」「する(です)」「だれ・なに」「どこ」「いつ」「ど 語(句)の用法や、語(句)同士の共起関係 (collocation) を のように(して)」「なぜ」という 7 つの意味順フォルダに 調べることが可能である。すでに British National Corpus 分解して格納するものである。例えば”We propose a new や Brown Corpus などの大規模かつ有用なコーパスが存在 method in this paper.”は図 2 のように格納される。検索結 するが、いずれも英単語を入力し、その用例を検索するシ 果を意味順ファイリングシステムで提示すれば、ユーザは ステムである。当然ながら、日本語の訳文は付いてこない。 「配置の言語」と言われる英語の特徴的な語順を、母語で そこで本事業では、日本語から検索して、英語の例文を表 ある日本語と対比させながら学んでいくことが可能であ 示する日英対訳コーパスの構築を目標とする。図 1 に、本 る。 コーパスシステムの検索画面のイメージを示す。 C-STEW Corpus-based support System for Technical English Writing (C-STEW) 分析する V だれ・なに どこ We propose a new method in this paper 我々は 提案する 新しい手法 本論文で 図 2 意味順ファイリングシステムにより格納された英文 V ②動作の主体 (だれが・なにが) を選ぼう パラメータ する(です) と和訳の例 ①動作 (する・です) を選ぼう だれが だれが する (です) 用例 (English / Japanese) 3.開発状況と今後の方針 H26 年専攻科研究計画発表会予稿集 26 編より和文動詞を 抽出したところ 112 個であった。この英訳語に、専門科目 The following parameters were analyzed from each record. 次のパラメータは 分析された 各記録から Section tag: M 補足説明: ……… 教員にアンケートした英語論文に使う動詞を加え、計 200 The reasons for the appearance were analyzed in several theoretical and experimental works. 出現の理由は 分析された いくつかの理論的および実験的研究で Section tag: I 補足説明: ……… 用例収集および翻訳作成を目標としている。もとよりこれ 図 1 英語用例の検索画面 (イメージ図) ユーザはまず、作成したい文の動詞を選ぶ。初学者にと っては、そもそも自分が翻訳したい日本語の動詞に相応し い英単語を見つけるのが難しい。そこでユーザは、工学分 野でよく用いられる日本語の動詞リスト (プルダウンメ 語のリストを作成した。この動詞に対してそれぞれ 5 文の だけの用例ではコーパスとして不十分であるが、年末に作 成途上の本システムを用いて本年の専攻科 1 年生に研究計 画発表会の予稿の英訳を試みてもらう。これにより、コー パスをどれだけ拡張すれば実用になるかを探る。 引用文献 1) 田地野 彰 (2011)、「意味順」英語学習法、ディスカ ヴァー・トゥエンティワン、p.250
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